第21話 アレン達に話してみよう
赤ちゃん王子の体で起きた。と、今度は攫われたりはしておらず、無事に寝入った状態のままだった。
近くにはニーナと侍女と護衛と……あ、アレンがいた。
「アレン!ちょっとお願いがあるんだけど、手が空いてる奴連れて、町の中央の宿で裏ギルドの奴がたくさん捕まったから、応援に行って!」
「は、はいっ?」
「あと、そこにいる、裏ギルドの奴を倒した黒髪の男と女の子は俺の味方だから、良くしてやって!よろしく!じゃ俺また寝るから」
「殿下、詳しく……」
何か言っているが、無理やり頼んですぐに視点を切り替える。
「頼んできたから、しばらくしたら応援が来るんじゃないかな?」
もたれていた壁から離れ、ライラに告げる。
「そうなの?はやかったね」
「じゃあこいつら下におろしておくか。あと領主の弟も一応見張っておかないとな」
浮遊魔法で拘束した男たちを、床の大穴から下の部屋へ移動していると、衛兵が来たらしい。
「この男たちが裏ギルドメンバーだということはまだしも、領主の弟であるゲイリー様を、証拠もなく捕らえることはできません!」
「儂もそうは思うが、しかし、どうするんだ」
「なに、何かもめてる?」
下の部屋で衛兵と店主が何やら話している。
「あっ、貴方がゲイリー様をこのような目にあわせたのですか?他の男たちも動けない怪我を負っていますし、裏ギルドメンバーだというのは何か証拠があってのことなのですか?」
衛兵に詰め寄られる。
「自白はしてたけど、今は気絶してるから無理かな。男たちはゲイリーの命令で俺を襲ってきたんだ。正当防衛を主張する!」
「な、それでは貴方の証言が正しいという証拠はありますか?そもそも貴方は誰なんです?身分証を見せてください」
あ、しまった。身分証無いや。
「……見せられないのですか?貴方の話も聞かせて貰う必要があります、一緒に……」
「失礼、この町の衛兵殿ですか?我々は王子の護衛として滞在している王宮騎士です。裏ギルドメンバーが捕まったと聞き応援に来ました」
「あ、アレン!来てくれたんだな、ありがとう!あ、ヴィクターとキースも!」
「えっ、騎士様ですか!王子殿下の!それはありがとうございます!……あの、お知り合いですか?」
「……少し、彼と話をしてもよろしいでしょうか?」
「はっ、はい、どうぞ!」
アレンはいつか見たようなじっとりとした目で俺を見ている。あ、怪しまれてる……
「貴方が、王子殿下の味方だという方ですか?」
「そう、よろしく……」
「……ひどく殿下に似ておられますね?髪や目の色は違いますが……まるで王子殿下が育ったらこうなるであろうというような……」
「そ、そうかな?」
「それに、なぜ私たちの名前をご存知なのですか?まだ自己紹介もしておりませんし、呼び合ってもおりません」
「……」
「ルカ?どうしたの?この人たち人間だけどルカの味方なんでしょ。何か問題があったの?」
「ルカ……それは、殿下のお名前では……」
「あ、えーと……」
天井を眺めてみたが、大穴が開いているだけだった。この辺の始末もあるし……話してみるか。
「ごめん、信じられないかもしれないけど、俺は王子なんだ。というか王子が分身した姿なんだ。本体はあの赤ちゃんの王子なんだけど、こうして別の体として動き回ることができるんだ。王子がそんな変なことができるってのもどうかと思って言ってなかったけど……」
「……」
アレンが目を見開いて固まっている。
「えっ、王子?え、俺たちが出てくるとき部屋で寝てたよな?!ええっ?!でも確かに似てるけど」
ヴィクターは驚き戸惑っている。
「……王子殿下……そう言われると確かに……、あまり驚いていない自分に驚きます……王子なら……あるかもしれないな、と……」
キースは遠い目をしている。
「えーと、アレン?大丈夫か?」
目を見開いたまま停止しているアレンの目の前で手をヒラヒラしてみる。
「……では、そちらのお嬢様は?」
「え?ライラのことか?ライラは……」
「私は竜だよ、魔の森でルカを拾って一緒にいたの。ルカと一緒に居たいから、人間のフリしてついてきたんだよ!結構ちゃんと人間に見えるよね?」
「ああ……魔の森の……裏ギルドリーダーを追跡してくれるというお友達ですか」
「そう、友達なの!」
「なるほど……殿下……我々に黙って、裏ギルドリーダーを自分で追っていたわけですか?我々が赤ちゃんの王子殿下をお守りしていたその時に?」
「わあ、アレン、目が座ってるな!いや、赤ちゃんの方が本体だから!そっち守るのが正しいから!こっちの俺はたとえ死んでも、まぁ大丈夫だと思うし!試したことはないけど!」
「私がいるのに死なせたり絶対しないよ、ルカ!」
「ああうん、ありがとう、えーとアレン?」
「しばらく前に、宿の前で会いましたね?」
「あっハイ」
「その時にも、何もおっしゃいませんでしたね?」
「悪かったよ!黙っててごめん!」
「……いえ、こんなことを軽々しく告げられないのは……わかります。分身などと聞いたこともないですから。ですが、我々は心身ともに安全に王子をお守りしたいと思っております。黙って自ら危険に向かっていかれますと、困ります」
「ああ……ごめん。心配してくれたんだな。ありがとう、アレン」
「!勿体無いお言葉です、殿下」
「あ、それでさ、キース、お前あのゴイル、えーと小屋に放置してきた裏ギルドの幹部、あれが裏ギルドメンバーだって証言できるよな。俺が言ってるだけじゃ信憑性ないみたいでさ」
「はっ、はい」
「じゃああの衛兵に伝えてくれ、よろしくな!裏ギルドメンバーについてはそれでいいとして、領主の息子は起こして自白させるか」
「自白するっすかね?」
「するんじゃないかな、さっき結構怖がらせたから」
「殿下……」
「アレン!その目怖いから!」
「……では、自白させて宿に戻りましょうか」
「あ。それはいいんだけど……王弟が、近々王がいなくなるって言ってたらしいんだよ」
「いなくなる、とはどういう意味でしょうか?」
「そこまではわからないけど、病死させたりかな?」
「王はご健康ですが、それはまさか……」
「何か病気か、事故にでもあうのかもしれないな。で、俺はそうなるとちょっと面倒な立場になるよな?」
「そ、そうですね、殿下は現在王位継承権第1位です」
「そう、だから王弟からしたら、王子はこの辺で死んでてほしいよな。戻ったとしても幽閉か病死コースだと思うんだよ」
「それは……」
「で、もしかして最悪、今この瞬間に王が殺されてる可能性も無くはない」
「なっ……」
「可能性の話だけど。で、一応父親だし、王様だし、殺されるのは阻止したいから急いで帰ろうかなと思うんだ、王城に」
「はっ、はい、それはもちろん」
「でも、王子が戻ろうとすると、王弟が邪魔してくるんじゃないかな?ここの裏ギルドにだけ王子暗殺を依頼してたとは限らないし」
「は、は……はい……たしかに」
「あ、一応聞いておくけど、今の王様がとんだ愚王で、王弟が王になった方がよっぽど良かったりする?」
「そ、そんなことは、ありません!」
「……ちょっと詰まったな?」
「そんな!畏れ多い!やめてください!」
慌てて否定するアレン。ヴィクターもキースも首を振っている。
しかし俺は少し気になっているのだ。
ゲームシナリオでは、現王、つまり魔王の実父は、魔の森を襲ってきたり、銀竜の素材で勇者の鎧を作ったりする。割と好戦的な王なのかもしれないし、王子が魔の森で育っていたと気づかないあたり、王子がさらわれた時にも捜索が甘かったんじゃないかと。
それって良い王なんだろうか。そして王子への愛情も薄いんじゃないだろうか。
ゲームシナリオでは、って話だから、現実にどうなのかはわからない。だけど、気にはなる。
「ちなみに、王弟が王になったらこの国はお先真っ暗って感じするか?」
「そ、それはわかりません、王弟殿下は優秀な方だとお聞きしております、ですが現王の治世でも特に大きな問題は起きておりませんし、その……」
実は、俺の中でもどうするか決まっていないのだ。このまま急いで帰って、王を助ける、それは可能だろう、まだ生きているなら。死んでいても、蘇生が間に合うかもしれない。
だが、その王は、後に魔の森に侵攻する王なのだ。
王子の実父ではあるが、俺には会った記憶もないし、ゲームシナリオから考えると、ここで退場してもらって王弟に王位交代、俺は死んだ事にして国外に出るというのも、出来なくはない。王が殺されるのは後味が悪いので、こっそり命は助けるということも出来るかもしれないし。
俺自身は王子であるという身分にこだわりはないし。
……あれだな、やっぱり王にも王弟にも会ったことがないから、判断できないな。
「よし決めた!俺はこれから、ライラと俺だけで先に王城に行く。で、王と王弟をこの目で見て今後を決める!王子として王城にはいると、王弟の妨害もあるだろうから、赤ちゃんだし今回の誘拐騒動で大事をとって数日この町の滞在を伸ばしたって事にしよう。それで、その間に見てくるよ」
「それは、また今回のように、王子の幼いお身体はこちらにあり、今のその成長されたお姿でこの少女と王城に向かわれるということでしょうか?」
「そう、こっちでたくさん裏ギルドメンバーも捕まえたし、領主がちゃんと弟を調べて償わせるかとかも気になるし、しばらくその辺監督してて。赤ちゃんな俺を守りながら。たまに赤ちゃんの身体でも報告するから」
「……すごいっすね殿下、なんか凄すぎて想像できないっすけど」
「………分身……すごいです」
「お前反応遅くね?キース」
「……後からじわじわ……凄いなと……」
「殿下、わかりました。我々は殿下の判断に従います。殿下本体の安全は絶対にお守りしますので、必ずご無事でお戻りください」
「うん、面倒かけるけどよろしく頼む」
「はい!」




