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第19話 天井裏から盗み聞きって忍者っぽいな、スライムだけど

 

「何だ、どういうことだ、誰もいねえのか?!いるなら出てこい!おい!」


 良かった、まだ小屋の中にいるようだ。

 ライラと、リーダーを放置していた小屋の前に移動してきた。

 ここだと出てきたときに見つかるな。


「ライラ、屋根の上に移動しよう」

「はぁい」


 軽くジャンプして屋根の上に移動する。

 いや、能力値カンストしてるせいか、ジャンプ力も半端ないんだよな……ライラもあっさりついてくる。


 どうやら、あのリーダーは自分1人だということの意味がわからず、小屋の中を調べているらしい。

 まぁ、意味はわからないよな。


 と、小屋のドアが開いて、リーダーが出てきた。

 あ、意識があるとやっぱりステータスは見えないんだな。ちなみにこのリーダーの名前は、気絶してるときに見たけど、ゴイルという。


 そのゴイルは、小屋の外を見回している。仲間か、又はキースやその仲間を探しているのか。俺とライラは屋根の上で死角になるポイントから眺める。


 しばらくあたりを調べた後、やはり誰もいないと判断したようだ。実際俺たち以外には誰もいないし。


「くそっどうなってんだ!部下もキースも王子もどこ行きやがった!っち……どうするか……」


 呟きながら、道の方へ移動していった。


「まずは拠点にでも戻るのかな、あ、あいつにコッソリついていくから」

「はぁい……あれがルカを攫おうとした奴なの?ね、ちょっとやっつけていい?」

「いや待って、あいつに命令してるボスがいるはずだから、そいつを捕まえたいんだ。まだやっつけるのは無し!」

「うーん、わかった……でもルカを攫うとか本当、許せないよ、私は許さないから!」


 ライラの目が黄金に輝いててちょっと怖いな!


「気持ちはありがたいけど、まずは追いかけよう!行くぞ!」

「はーい」


 音を立てずについていくため、浮遊魔法で木より高く浮かんで、木に隠れながら着いていく。

 木があるうちはいいけど、これ草原とかになったらどうしようかな。


 そんなことを心配していたが、ある程度距離を開けて尾行したら特に気づかれることもなく、裏ギルド幹部ゴイルは一人で町に入ろうとしている。町の中に拠点があるのかな。


 ライラとともに町に入ろうとして、気づいた。

 門番がいて検問がある。

 王子として入った時は赤ちゃんだったし身分もあって検問なんて受けてないが、今は何の身分証明もない。ライラは竜だし。


「……ちょっと検問は通れないから、直接町の中に移動しよう、つかまって」

「うん!」


 セーブしていた、宿の前に移動。突然現れたことに気づかれないよう、移動ポイントは宿の門後ろの木陰だ。あまり注目して見る場所ではない……うげ。


「……今、突然ここに現れませんでしたか?」


 まじまじと俺を見てくるアレン。

 宿の警備でもしてたのかな……


「突然現れるって、何言ってるんだ?ちょっと宿を探してただけだよ」


 何でもないふりで前を通りすぎるが、アレンのじっとりした視線が痛い。

 それでも、去っていく俺を捕まえて尋問まではできないだろうアレンは俺が見えなくなるまでジッと見ていた。相当怪しい奴だったかもしれない。


 しかし今は、まずあの裏ギルド幹部ゴイルの尾行が先だ!


 急ぎ門へ行くと、ふつうに検問を受けて問題なく町に入ってきたゴイルを発見した。

 どういう身分証なんだろうか。普通の冒険者ギルドにでも入ってるのかもしれないな。裏ギルドのメンバーだなんてわからないし登録は出来るんだろう。ちなみにこの世界にはまだ戸籍は無い。

 教会が把握してる分と、生活していくために何かしらのギルドに入るから、そこで何かと領主や王に税金を取られる感じ……とゲームではふんわり設定していたが、同じなんだろうか。


 身分証あると便利だし、そのうち冒険者ギルドにでも入るかな。楽しそうだし!


 今はもう明け方というか朝だ。

 町の中は普通に人が歩いているので、俺たちも人に紛れながら、付かず離れず、ゴイルの後をついていく。


 すると、ゴイルは大きな食堂兼宿屋に入っていった。ここは俺たちがいる宿より中央に近く、つまり領主館などにも近い、この町の中心部だ。


「店に入っていったな、どうやって追いかけようか……」

「私たちもついてく?お店、行ってみたい!」


 何だか楽しそうに言うライラ。


「……あれ、ライラ、もしかして町に来るの初めて?」

「うん!話は聞いて知ってるけど、遠くから見るだけで入ったのは初めて!これまではそんなに興味もなかったんだけど、人間がいっぱいで面白いね!」


 おおぅ、魔の森から出る機会もないもんな。そりゃ初めてだよな。ライラのためにも色々見学して回りたいが、今は無理だな……


「また今度一緒に見てまわろう。今はあいつを追跡しなきゃいけないから。店に入っても良いけど、店の奥とか個室だとついて行けないから、何か別の方法は無いかな……」

「ね、じゃあ、ルカがあのいろんな見た目になれるやつで、一番小さい魔物になって、コッソリ入ってついていったら?私は待ってるから、あとで移動させてくれたら良いし」

「そっか、良いかもな。小さい……スライムとかだったら、細い隙間から入れるかも。やってみよう」


 人目を避けて、2人で宿の屋根の上に登り、メニュー画面からマップを出す。

 これだな、この点がゴイルだ。

 しばらく見ていると、点は動かなくなった。


「よし、行ってくる。ちょっと待ってて」

「気をつけてね!」


 浮遊魔法とスライムの合わせ技で、空気取りに少し空いていた隙間から侵入し、マップ上のゴイルの点に向かって屋根裏を進む。

 このへんだな。天井板の隙間から覗くと、ゴイルが座っていた。ここは宿屋部分の、良い部屋みたいだ。


 椅子に座るゴイルの前に、誰かがいる。

 ステータスを確認すると……え、領主の弟?!

 まさか領主の弟が裏ギルドのボスなのか?

 問答無用で倒すのはちょっと難しい……というか、もしかしてここの領主も裏ギルドに関係してたりするんだろうか。


「ゴイル、つまり王子もキースも、部下も見失ったということか?何だそれは?」

「全く訳がわからず、戻りましたが、こちらにも何もありませんでしたか。部下が戻ってきたりなどは……」

「新たに何人かの族か捕まって町の判官に引き渡されたという報告は聞いている。もしかするとそれがお前の部下なのではないか?」

「そ、それではなぜ俺は無傷で残されたのでしょう?もしキースが何かして騎士が動いたのなら、俺も捕らえられるはずでは」

「それがわからん……お前、後をつけられているのではないか?」

「そんな、ここまでそんな気配はありませんでした!」

「ふむ……たしかにお前が気配を全く感じないというなら、つけられてはいないのかもしれないが……誰かを追跡するような魔法は聞いたことがないしな。しかしそうすると意味がわからん」

「ですから、意味がわからず、こうしてここに……」

「しかし、王子を取り逃がしたのは不味かったな」

「申し訳ありません……」

「……ここだけの話だがな。この件の依頼人から、そろそろ邪魔者がいなくなりそうだとだと聞いている」

「……と、すると……」

「そうなれば我々は安泰だが……王子が生きていると面倒なことになる。まだ幼い甥を手にかけたとなると印象も悪いしな。どこかで幽閉する事になると、万が一正当性を主張されると厄介だ。火種は消しておくに限る。王子は賊に襲われ死んだというのが最も良いのだ」

「もしかすると、キースに連れられて、元の宿に戻っているやもしれません。まだ王城までに道のりがあります、そこで……」

「何度もの失敗は許されん。お前に汚名を濯ぐ機会をやろう。確実に仕留めろ」

「はっ……!」


 なんだって、どういう事だ?

 王弟が依頼人だとすると……何らかの方法で邪魔者……兄である現王を排除して自分が王位を継承するつもりだということか?

 単純に暗殺でもするのか、毒殺でもして病死扱いにでもするか……俺がいければ、王位継承権は王弟が一位だ。

 俺が戻ったとしても、まだ幼いという理由で王弟が王座につく可能性は高い。いずれ王子が育ったら王座を返すとしておき、実際には王子が病弱なり何なりの問題があると触れ込み、継承権を剥奪することもできる。もちろん途中で病死させてもいい。いやそう簡単には死なないけどさ。


 つまり……俺の立場はより危険になってるってわけだ。


 さて、どうしよう。

 もしかすると裏ギルドぐるみで、この領地の領主も王弟の味方なのかもしれない。


 そして、このまま帰ると、帰る道すがら裏ギルドの奴に全力で襲われるだろう。

 それは嫌だな。面倒だし、同行者も危ないし。


 じゃあ、ここでこいつらを壊滅させたら?

 とりあえず帰り道で襲われることがなくなる。

 あと、王弟派の力も少し削げるだろう。


 ……よし。

 今王城で何がおきてるかわからなくて少し心配だけど、ここで、こいつらは動けなくさせよう。

 それから、できる限り早く王城に向かって、王弟が何かして王を退位させるのを止める。


 できればこの領主の弟から、さらに詳しい王弟の情報を聞き出したいが……できるかな?

 あと、領主が王弟派なのかどうかも気になるな。キースの家族の安全性や捕まえて判官に引き渡した奴らがちゃんと裁かれるのかも気になるし。


 ドゴオォォォン!

「なっ、何だ?!」


 ざっくり方針を決めた俺は、スライムから若者魔王のモデルに戻り、ある程度話が終わった様子なのを確認して、天井裏をぶち抜いて部屋に降りた。


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