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第14話 襲撃者の首領にお話を聞いてみよう

今年もよろしくお願いいたします!

 

 ふよふよ飛んでサミュエルの腕におさまる。


「護衛たち起きるかもしれないから、赤子らしくするよ。持ってて」

「畏まりました」

「護衛たちも助けられてよかった、けど、襲ってきた奴らの正体わかる?」

「見た感じはただの山賊ですな……問いただせば、殿下を狙っての襲撃かどうかはわかるでしょうが、誰かに依頼されたのだとしても、証拠と言えるほどのものは難しいかもしれませんな……こ奴らが殿下を王子と知っていたかどうかも怪しいものです」

「そうだな、単にここを通る2台の馬車にいる赤子を狙うように頼まれた、そこらへんの飲み屋で知らない奴に、って感じかもしれないよなー。襲われ損な感じがするなそれ。はぁ……」

「まずは彼らを調べさせましょう」

「あ、それ気になってたんだけどさ、30人も連れて城に戻るの大変じゃないか?それに次の町に泊まる予定だったんだろ、どうする?」

「殿下、このような犯罪者を捕まえた場合は、最寄りの町の牢屋に一旦入れるのです。次の町はそれなりに大きいので、まぁ牢に入りきるでしょう。取り調べののち、罪によってその地方の判官もしくは国の判官が刑罰を決め、まぁ大抵魔法で制約され、強制労働などを課せられる、という形でしょうかな」

「へええー、そうなのか。じゃあ次の町まで連れて行って引き渡せばいいのか。知らなかったよありがとう」

「とんでもございません、殿下がこのようにお話しされること自体が有り得ぬことですが、そのお年で全てをご存知であるはずもありません、何でも聞いてくだされ」

「うん、ありがとう」


 なんかサミュエルが孫を見るような目になってる気がするな……ごめん中身は赤子ではないんだが……


「じゃあ、町について彼らを引き渡したら、俺たちが直接問いただす機会はないってことかな」

「そうですな、そもそも殿下が直接ということはあり得ないのですが、何か気になることがおありですかな?」

「うーん。彼ら、多分たいしたことは知らないと思うんだけど。ただ、ちょっとした犯人の手がかりとかがあったとしても、証拠隠滅されるんじゃないかと思って」

「証拠隠滅ですか?」

「そう、例えば次の町の偉い人が、黒幕の味方だとか、判官ってやつが報告の内容を変えるとか。そういう事ないかな?大丈夫?」

「……確かに、絶対にないとは言い切れませんな……誰が犯人かまだ判明しておりませんし……」

「うーん。ちょっと聞いておこうか、この中のリーダーっぽい奴に。犯人のヒントくらいにはなるかもしれないし」


 俺はサミュエルに抱っこされつつ、縛られている襲撃者たちを見る。

 うーん。実際、本当の犯人というか黒幕は、王弟だとは思うんだよな、ゲームシナリオ的にも、状況的にも、俺がいなくなって得する……王になる可能性があるのは王弟だし。

 しかし、赤子な俺や、仮にサミュエルたちが、王弟がやった!と言っても証拠がないと処罰はできないだろう。王位継承権は俺に次いで2位、いい歳だから産まれたばかりの俺とは比べ物にならないくらい人脈があるだろうし。どんな奴かわからないが、王になろうとしているのならば人望もそれなりにあるのかもしれない。

 赤子な俺が倒すにはなかなか難しい気がするな。もちろん物理的には一瞬で可能かもしれないが、その後どうするんだって感じだし。


 というわけで、何か追い詰めるヒントくらい欲しいんだよなー。

 何か出るかわからないが、ちょっとコイツらに聞いてみよう。


 彼らを見る。

 正確には、彼らの上に出ている名前や強さの表示を。強そうなやつはさらに詳細を表示。年齢とレベル、あと称号からして、こいつがリーダーかな?称号に魔の森の盗賊団長とある。そのまんまだけど。年齢37、レベル38。


 ふうん。

 レベルの割に数値の伸びは悪いけど、まあ強いんだろうな、この世界の一般と比べたら。

 しかし簡単に口を割るんだろうか?

 それに俺が直接問いただすのも無理だ。赤子がバブバブ言っても緊迫感ゼロだし。

 だからと言って赤子以外の姿になるのは、まだ王子としての立場も確立していないのにコロコロ姿が変わるって怪しすぎるしな。本当に本物の王子なのかって疑惑も湧きそうだ。うーん。


「サミュエル、おれが横でこっそり聞きたいことサミュエルに言うから、かわりに問いただしてくれない?ある程度脅しになるような魔法も使ってみるし」

「承知いたしました、やってみましょう……ですが殿下、魔法は控えめにお願いします、脅しではなくあっさり死にそうですので」

「わ、わかってる、もちろんだ!間違っても死なないタイプの魔法にするから」

「お願い致します。では……確かにこれが首領に見えますな。起こしますか」

「あ、何かで目隠し出来ないかな?俺が見えると怖さ半減だし」

「そうですな、では布で目を覆いましょう。そこらの盗賊の服を割いたもので良いでしょう。……ヴィクター!」

「わかりましたよ!ほいっと、こんな感じですかね?」

「ありがとうヴィクター。じゃあ……起こそうか。水かければ起きるかな。あ、顔横に向けといて。窒息しないように……オッケー、じゃあいくよ!」


 水魔法発動!ザッパーンと水をかける。

 やべ、数値調整直すの忘れてた、威力がマックスになってる……サミュエルの視線が痛い!一番威力の小さい水魔法なはずなのにちょっとした洪水っぽくなってしまった……


「殿下今のはまさか、殿下なりのウォーターなのでしょうか……?」

「ごめんごめん!気をつけるから!」

「えっウォーター?!あの飲み水出す程度のアレかよ?!ちょっとマジ溺れそうな量出てたけど?!そんなことできんの?」

「殿下の魔法は何か……常軌を逸していますね……」


 酷い言われようだな!

 数値をこっそり元に戻しておく。俺は学習する男なのだ!


「ブフォ、おお、なんだ目が見えねぇ!くそ、捕まったのか?!」

「お前がこの一団の長だな。お前に聞きたいことがある。素直に答えないと酷い目にあうぞ」

「……くそっ、何だよ!言ってなんか良いことあんのかよ!」

「言わないと嫌なことがあるだろうな」


 何が効果的かわからないが、試しに浮遊魔法をかけてみた。ここまで移動してきたときにヴィクターが結構苦手っぽい感じだったから、この世界の人間は飛ぶことに恐怖感があるのかな?と思って。どうやら当たりだったようだ。


「やめ、やめてくれ、うあぁぁぁぁ!や、やめ………!!」


 浮遊魔法を調整して、高所から落としたり(地面に激突する前にもう一度浮遊魔法をかけた)、グルグル回したりしていたら、声が出なくなったので一旦止めてみる。あれ、酔った?いや、気絶してる。


「殿下……気絶させては聞き出せませんぞ」

「……うん……ごめん」


 再び水をかけてみる、今度は控えめに。

 そして、サミュエルはともかく、ヴィクターとアレンの俺をみる目が完全に異様なものをみる目になっている……この世界の魔法を使ってるはずなのに解せん……


 反省して、再度起こした後は、やや高度を落として浮遊魔法をかけたり切ったりしつつ、聞き出してみたところ。


「俺はただ、貴族のガキの乗る一団がここを通るからそれを狙えって確かな筋から依頼されて襲撃しただけだ、馬車2台とその中の人員配置についても聞き出すことができて、人数を揃え万全の体制だった。なぜ捕らえられたのか意味がわからない」


「貴族のガキが乗ってるから警備が多いが、非戦闘員も複数乗ってて機動力が低いから狙い目だって話で、貴族の跡取りのガキは生死問わずかなりの額で買い取るって話だった」


 という話だった。

 ここで気になるのはやっぱりその情報源だ。

 そこをさらに突っ込んで聞いてみると、初めは渋っていたが、ある程度(物理的にも)揺さぶってみたら吐いた。あ、マジで吐いてもいたけど……ちょっと悪いなとは思ったが、俺を狙ってきたわけだし、自業自得だよな?


「依頼人自体は知らねぇ。裏ギルドからの斡旋だ。前金も高ぇし、成功報酬もかなりの額だ。この辺の地理に詳しい俺らへの名指し依頼だったから、受けないわけねぇだろ!」


 とりあえず一通り聞きたいことを聞いた後で、再び魔法で眠らせる。


「裏ギルドかぁ。その辺情報どれくらいあるんだ?」

「存在は知られております。大小の裏ギルドが複数、各国に存在するようで、正規のギルドではなく、後ろ暗い依頼を受けているようです。各国でも取り締まりの対象ですが……なかなか壊滅という話は聞きませんな。末端を捕縛する事はありますが」

「ふうん……」


 ゲームでも少し登場させたんだよな、サブシナリオで。やり込み要素的に、とある裏ギルドを壊滅させよう!みたいな。この国は滅びてるから、別の国のだけど。

 イメージとしては冒険者要素のあるマフィアとかそんな感じだ。ゲームの中ではだけど。裏ギルドもいくつかあって、その間でも縄張りが近いと権力争いがあったり。


 この世界がどれくらいゲームと同じかわからないが、まぁどんな国にもそういう存在はあるんだろうしな……


 ゲームの時系列ではこの国、ソトリア王国は滅ぼされていたから、その裏ギルドってやつも知らないけど。そこに高額で依頼があったって事は……裏ギルドのボスの証言でもあれば、証拠になるんだろうか。しかしそんな奴を捕まえて簡単に証言するとは思えないしなぁ。うーん難しいな。


「王子殿下、どうされますか」

「聞きたい事は聞いたから、コイツらは規定通り次の町で牢に入れて、あとは任せるよ。裏ギルドへの依頼については、今すぐどうこうは無理そうだけど、そのうち調べようかな……」

「調べるとは、どのようにですかな?」

「いや、今すぐは無理だし、いいよ。覚えておく程度で!」

「そうですな……まずは無事に王城に戻ることを優先させましょう」

「そうそう。俺まだ赤ちゃんだしな!」

「赤ちゃん……そうですね、そうでしたね……まるでそうは思えなくなってきていましたが、殿下はまだ赤ちゃんであられましたね……」


 俺とサミュエルと話す横でアランが遠い目をしている。横を見るとヴィクターも目を見開いて「そうだった赤ちゃん……え、赤ちゃん?!え?」などと俺を二度見してくる。うん。見た目は赤ちゃんなんだ。


 その後、襲撃者をまとめて眠らせたまま浮遊魔法で浮かせて運び、次の町の役人に引き渡した。かなり引いていたが全部サミュエルのせいにしてみた。サミュエルから釈然としないと目で訴えられたがどうしようもない。若干サミュエル伝説が生まれていたが知らん!


 そして宿に着くと、キースがいた。

 キース・アーチャー、連絡役に王城まで戻って、さらにここまで迎えに戻ってきたようだ。大変だな……


 そういえばキースには意思疎通魔法をかけていなかった。ので、不便だしかけようかと思って、ふと彼の称号が気になった。


 称号: 弓の友 密告者


 弓の友は前もあった。けど。密告者は無かった。

 新たに増えたのだ。

 そうだ、俺たちが帰る道を把握し、護衛や侍女などの人数まで正確に伝えることができる者は限られている。しかも、こんなに早く実行できたとなると、かなり早く依頼しないと間に合わない。

 そんな情報を得ることができ、この地域の裏ギルドに依頼できる奴は限られる。


 もしかして、キースは、俺を狙う奴……王弟の仲間なのか?


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