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第1話 ここは俺の作ったゲームの世界かもしれない

初投稿です。よろしくお願いいたします!

 明日は俺の作ったゲームの発売日だ!

 開発に3年、やっと迎えた発売日前日。

 プロジェクトメンバーと飲んで、明日を楽しみに発売前の反応をSNSでチェック。

 ソワソワしつつも風呂に行って、ちょっと飲みすぎと溜まった疲れで眠くなって……

 それから……それから?

 今、ここに至る。


 今ここ、異世界で赤子になって森に捨てられ、死にかけてます。


 どういうことだ?!


 叫んだつもりが、口から出るのはオギャーという赤子らしい泣き声ばかり。


 いやマジで死にそうだ。

 今の状況。

 俺は赤子、まだ立てないしハイハイも寝返りもできない。

 つまり自力で動けない。移動できない。

 そんな俺がいるのは、夜になりつつある森の中。

 しかもなんか見たことのない変な植物が生えている変な森だ。

 いや、それは正確ではない。実際にこうして実物を見るのは初めてだが、こんな景色はどこかで見たことがある気はする。


 ……その件についてはまた後で考えるとして。


 なぜ赤子の俺が夜の森の中にいるのか?

 まずなぜ俺が赤子になっているかはサッパリわからない。

 が、ここにいることについては、おそらく誰か他の人間に連れてこられたのだろう。

 というか、俺が自力で動けない以上誰かに移動させられたことは確かで、だがその人物はここにはいない。置き去りにされたのだろうか。

 ……捨てられたのだろうか。または……


 そして、この俺自身…の体も違う。

 もちろん成人男性から赤子になっているという違いはあるが、肌の色がもっと白く…病的なほど白くなっている気がする。髪は短くてあまり見えないが、チラリと見える毛先は金髪っぽい感じがする。

 そして…左手首あたりに痣がある。

 黒い……鱗のような……まるであのゲーム内の、魔王の『竜紋』のような……


 ……まさか。まさかまさかまさかと思っていたがそろそろ認めてもいいかもしれない。


 この痣、それからこの状況は、俺の作ってたゲームのキャラクター……ラスボスである魔王の過去と酷似している、と。


 ……えぇ?!

 なんだこれ今流行りの異世界転生か?!

 まさか俺は発売日前日に死んだのか?!

 あんなに頑張って……作ったのに……発売前に?

 酔って風呂で寝てうっかり溺死とか?うわああぁぁぁ何してんだろう俺!


 いやそれも衝撃だけど、なんで自分が作ったゲームに転生してるんだ?!

 あ、いやもちろんプロジェクトチーム全員で作ってるから俺一人で作ったわけじゃないけど、企画立案したの俺だし、ってそこじゃなくて。


 自分が作った異世界が実在していてそのキャラクターに転生しているなんてこと、あるだろうか?

 いや無い。

 100歩譲って、異世界自体は存在しているかもしれない。うっかり前世を覚えていることもあるかもしれない。日本でも、胎内記憶とか、前世を覚えてるとかいう話もあったし。


 だが、俺が作ったゲームの世界があるって何だ?

 別に神の啓示みたいなものがあって作ったわけじゃ無いし、内容も検討するたびに変わっていった。俺と思われるこのラスボスキャラクターだって、決定するまで二転三転した。

 だからこれは……


 ……夢かな?


 それが一番理性的にはしっくりくる答えなのだが、いかんせん感覚的にこれが夢とは思えない。

 背中に触れる地面の湿り気とか、変な霧が出てきて冷たいとか、土と草の匂いとか、こんなリアルな夢見たことがない。


 夢ならいい。そのうち覚めるだろう。

 だけどもし……夢じゃなかったら?

 現実だったら?

 ありえないが、万が一、この世界が俺の知るあのゲーム世界で、俺が魔王の過去を体験しているんだとしたら……?


 やばい。

 死ぬ。


 いや、死なない。

 最終的に主人公にやられて死ぬが、とりあえず今は死なない。


 が、そうだやばい、死にそうな目にあう!

 多分めちゃ怖い!


 ゲーム内の魔王は、実はとある国の王子だった。

 王族にごく稀に出る金髪金眼で産まれ、竜の鱗模様の痣を持ち、王族の始祖とされる伝説の神竜の血が強く出た、正当な王位後継者だった。

 だが、身体の弱かった母である王妃が産褥熱で臥せっている間に、王位を狙う王弟によって、王子は攫われ、魔の森に置き去りにされるのだ。


 王子を攫って置き去りにした実行犯は王弟の腹心で、初めは王子をその場で窒息させるなどして殺し、事故死に見せかけるつもりだったが、王妃のかけていた身代わり魔法によって王妃が死ぬ。

 さらにその魔法の発動によって王子は王妃の身体が朽ちるまで心身を保全された状態になり、殺せなくなった。


 このままでは王妃殺しな上に王子は生き延びる。

 なんとかしようと焦った実行犯は、王子を攫って、王都から遠く離れたこの魔の森まで連れてきて置き去りにしたのだ。

 保全魔法が切れた瞬間に、魔の森の魔物に殺されることを狙って。


 しかしその竜の血のせいか、魔の森のボスである古代竜に気に入られた王子は、竜や魔物に育てられる。そしてその後、祖国とは色々あるのだが、それは後で考えよう。

 まずは今の問題だ。


 あれだ。ゲームの設定的にはサラッと、魔の森のボスである古代竜に気に入られた…とか流していたが、この状況からどうやって古代竜に気に入られるんだ?

 自力で動けないのに?

 見た目ただの赤子なのに?

 古代竜に会う前に魔物に襲われるんじゃないか?

 いや、今の俺には母親が命をかけた保全魔法がかかっている。だから襲われても、死なないだろう、けど、だからと言って!

 襲われても怖くないというわけではなく!

 森の中から複数の光る目がこちらをガン見してたら!

 こええええぇぇぇよ!!


 そう、動けずにこの現状についてつらつら考えている間に、魔の森の中から魔物の目が複数、こちらをとらえている。

 目を赤く光らせて。


 おまえらこえーよ!!

 ぎゃー!!!


 焦りつつもちょっと手足をバタつかせる程度しか動けない俺の前に、森の茂みの中から、一匹のオオカミっぽい魔物が出てきた。ゲーム内での種族でいうと、ガルム。

 北欧神話の冥界の番犬だ。番犬ガルムと呼ぼう。

 後ろにはまだ他にもガルムが控えているようだが、番犬らしくまずは様子見に来たんだろうか。


 必死に逃げようとしてはいるのだが、足をバタつかせるだけで、う、動けない、いやまて、足に勢いをつけて、とうっ!ていっ!えりゃああぁぁ!


 ぽてん。


 足を勢いよく振ったことで、寝返りに成功した!

 やった!生まれて初めての寝返りじゃないか?!

 ってそれどころじゃないし!

 も、戻れない……!

 顔を上げることは出来るが、前には進めない、全然力が足りない!

 周りを番犬ガルムが俺の匂いを嗅いだりつついたりしてめちゃ近くにいるのに!

 うつ伏せから……動けないっ……!

 し!しぬ!いや多分死なないけど怖いって!

 ぎゃー!舐められたアァァ!ぎゃー!


 プルプル震える涙目の赤子な俺の前に、スッと綺麗な姿勢で立った番犬ガルム。

 ビジュアルはカッコいい、だけど白に赤の混じった毛で、それその赤は死者の血だって設定なんだよ!怖いよ!前科あるじゃんもう!

 ひいいぃぃぃ!


 ガブリ。


 俺の前で大きな口をあけた番犬ガルムに、首の後ろあたりをそっと噛まれ、持ち上げられた。


 え。

 もしかしてこのまま古代竜のところまで運んでくれたりして……?

 超怖がっちゃったけど、もしかして優しい魔物かな?


 なんてホッと気を抜いた瞬間に。

 ポーイと、空高く放り投げられた。


 NOーーーーーーー!!


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