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~誰かの軌跡~ 1

作者: ハル



私の人生は不幸が多かった・・・


多かったというだけで、幸せな時がなかったわけではない。


父との二人の生活は私にとっての幸せだった。


私の母は私の物心つく前に海外のテロに巻き込まれて死んだらしい。


それが父から私に聞かされた話だった・・・


片親で一生懸命仕事と育児を両立してくれている父。


母を思ってのことなのか、父は頑なに親戚の人たちに説得されていても首を縦には降らなかった。


そして、私に見られているとわかると居心地が悪そうにして帰っていった。


あの頃は授業参観日に汗だくで急いでくる父のことを少し嫌になった気持ちがあった・・・でも、今となって思えば凄く大変で私だけ親が来ていないといじめられないように、心配されないように頑張って仕事との折り合いをつけて来てくれたんだと思った。


そうしてある時、父の紹介で同じ学年の少女と会った。


その子はとても綺麗だった、父のお世話になっている人の娘らしい。


私から声をかけてみても、その子は父親?の後ろに引っ込んでいて、あんまり話してはくれなかった。


そして、小学校で会えば決まって声をかけて、少しずつだが、仲良くなれてきた?かな?と私は思っていた。


ある日、彼女がいじめられている現場を見て、私はその子たちをついカッとなって殴ってしまった。


それで父親が小学校に呼び出されて、私は正しいことをしたのに怒られることがとても悔しくて、それで忙しい父に来てもらってとても私が私自身が情けなかった。


でも、あの子が必死に私が悪くないよ!助けられた!とかそんなことを言ってくれたのが、それが救いだった。


あの子の父親にもお礼を言われ、だけど、私が殴ってしまった子の父親は父の働くところに関係があるところだったらしく、それで父は違うところに移ったほうがいいらしいと、私と父は試験都市?という場所に引っ越した。



その子もあとから引っ越してくるのだけど・・・口調が、というより外面がとても変わっていた。


そういえば、私が悪役令嬢みたいなら、君のこと誰も苛めないよ!なんて、その時にハマってた少女漫画のことを口に出していたせいかもしれない・・・・


とても頭はいいのだけど、言動がアホの子と化していた・・・私のせいでこうなってしまったのだ・・・私が何とかしなければと!その子の父親に謝りに行ったことがある。


『僕の天使(エンジェル)の中身なんて一切変わってないから!問題ないさ!あの子はいつかこの会社の取締役になるんだからね、多少強気になったとしてもいいんだよ、あの子の外面だけで取り巻きに、その優しさに付け込もうとするクズは僕の天使(エンジェル)には指一切触れさせたくないからね、今のあの子でもきっと君みたいな優しい友達が増えるさ!』


と言われてしまった。


その通りに、彼女はどんどん友達を増やしていった?・・・いや、たぶん、私達のグループの拠り所はあの子だ。


バカで頼りなくて、今の時代じゃ弱くてすぐ狩られそうな小動物みたいな子。


でも、それでいて、すぐ他人の心に突っ込んで、自分のことじゃないのに自分のことみたいに悲しんで、外見じゃない・・・その人の内面を見てくれる、いや、自然と見るあの子だから


こんなメンバーが集まったんだろうなと私は思っていた。



だけど、そんな楽しくて、かけがえのない友達は


全員死んだ・・・・


いや、あの子にある希望を信じて・・・みんな死んでいった。


私はあの5人のように力がなかった・・・あれには射撃なんて生半可なものなんて通じなかった。


彼女のような勇気がなかった。


彼のような愛がなかった。


彼女のような知恵がなかった。


彼のようなが正義がなかった。


彼女のような希望がなかった。


ただ、私はケガをし、蹂躙される友を・・・見てることしかできなかった。


私は何のために父の背中を見て育ったのだろう・・・


私はこんなにも無力でちっぽけな医者の卵だった。




私は白いベットの上で目を覚ました。


なぜ私がこんなところで寝ているのかなんて私自身何も分からなかった。


私が起きたことが定期的に見回りに来ているナースに知れて、私の担当医であろう人が私の前へと来た。


そして、信じられないことに私は五年間昏睡状態であったことを知らされた。


・・・ありえない


私以外のみんなは!?と声を荒げて聞いてしまった。


いや、私以外は全員あの化け物に蹂躙されていたのが最後の記憶だった・・・


だけど、私が生きている!なら


あれが夢なんじゃないか・・・悪い夢なんじゃないかと・・・そう思わずには・・・いられなかった。


医者から手鏡を渡され・・・それで自分の顔を見たら


白い髪、皴のある頬、垂れた目・・・・


私は老婆に変わっていた。


「私達も信じられなかった・・・いくらDNAが同じだったとしても、つい五年前まで高校生であったはずのあなたがそんな老いているなど、特殊メイクなんて・・・いえ、そんなことありえないとこれが現実だと私達も分かってはいるのですが、決して今の医学では信じられないことでした・・・これを知っている者は私とあの方だけです」


世話をしているナース服の人たちも私が老婆で何年か前から脳に腫瘍ができていて、それが原因で起きなくなって植物状態になってしまったどこかの財閥の方という説明をしていたらしい。


「・・・・あの方とは?」


今の状況は信じられない・・・信じられないけど・・・震える声で私の詳細を知っている人が誰なのか・・・尋ねた。


「あなたはそのご息女と仲が大変よろしかったですからな・・・あの方は■■■■様です」


「・・・・そうですか、あの人が私を保護してくれたんですね」


そうだ・・・こんなありえないこと・・・もっと大変なことが起きていてもおかしくはない・・・


■■さんが手をまわして、こんな無力な私を保護してくれていたんだと納得した・・・・


「私からご息女が関わっていたとされる事故の詳細などをあなたから聞いて■■さんに教えるという形でもよかったのですが・・・あの方に連絡したところ、今すぐこちらにいらっしゃるようです・・・決してあれからの真実を知っても取り乱さないように、そしてできるだけ、あなたが体験したであろうあの日の真実をあの方に話してあげてください」


そう医者は深く頭を下げてから、病室から出て行った。




五年前?・・・いや、少し、老けたように見えた源道さんが私の前に現れた。


「やぁ、久しぶりだね、■■君」


「・・・お久しぶりです、■■さん」


眠っていた数年間に何があったのかを聞くべきであろう・・・でも、そんなことより私の両目からとめどなく涙があふれてきた、私が知っている日常という一部が私の目の前に現れてくれて、やっとあれから解放されたんだと思ってくると今までの不安からか私は涙が止まらなかった。


数分の間、■■さんは私のその様子に何も言わずにただ『タバコを吸ってくるよ』と言って、私にハンカチを渡して外の喫煙所へと出て行った、あの子が嫌いだったタバコなんて、■■さん吸うはずもないのにとそう私は泣きながらあの子のことについても思い出し、また涙があふれてくる。


涙が止まった数分後に■■さんは戻ってきた。


「僕には君の体験したことの大変さや、その苦しみを少しでも分かるなんて無責任なこと言えないけどね、娘を失った僕にはそのことを君がつらくても思い出すのが苦しくても最後のあの子のことを知りたい!君の苦しみも分からない愚かな男だと罵ってくれも構わない、だから、どうか!どうかあの日のことを僕に教えてはくれないか」


その目には涙が浮かんでおり、娘を失ったという後悔が、理不尽にその命を奪いとったであろう何かに対しての怒りが、自分には何もできなかったという無力さが・・・そのどれもが浮かんでいたと思う、そんな中に私に向けて、一人ここに生きている私に深く深くお辞儀をして、頼まれてしまった・・・・


そして■■さんにあの日のすべてを・・・私の、私たちが抗ってきた荒唐無稽な存在を話してしまった。


最初は他の人が聞けば何かの冗談かと思う、そんな話だったけど、そんなことよりも今はこんな姿になってしまっているけど、現実でありえない姿をしている元高校生の私が話しているから■■さんは真剣にその話を聞いてくれている。


そしてもう夕暮れ時になろうか、外は夕陽の赤色がもうすぐ終わりそうになる時に私の話の全てが、全てを話し終えた。


『すまない、心の整理をさせてはくれないか、一週間以内にはまた医者を通して連絡する』と言って帰って行ってしまった。


『医者が言っていたであろうあれからの真実』については今日は私の話だけでいっぱいいっぱいだった、また源道さんの気持ちが落ち着いた時にでも聞いてみようと、老けていたからか、またまだあの日の恐怖を思い出すからか、あまり良い睡眠はとれなかった。




その日■■さんから告げられていた真実は私にはあまりにも残酷なことであった。


1つに私の戸籍は色んなマスコミ政府からのブラックリスト扱いになっており、古屋千恵子(ふるやちえこ)という戸籍を別に用意させたということ。


2つに私以外の生存者は未だ現在発見されていない、学校には一切の争いの痕跡などが残っておらず異例の集団神隠しとして行方不明として処理されていたが・・・あの学校はいろいろ優秀な教師もいたからね、ほぼ間違いなく君以外の生存者はいないだろうと私達は結論付けている。


3つに私の命の先はあまり長くはないということ。


4つに君のお父さんが今は君がいなくなった2年後に過労で倒れ、それと合わせ極度の認知症になったということ。が表向きの話だ。


・・・いや、事実を話そう、君の現状に会いに来て、錯乱し病院の階段から転げ落ち酷く頭を打ち付けたようで重度の記憶障害を発症された、もっと僕達が君のお父さんを慎重に君会わせるべきであった


僕は3年前に君を発見したときに神の奇跡だと思ったよ、君が生きているならもしかしたら僕の娘も・・・どんな姿になっていてもいい、どんな姿形が変わり果てて居ようとも生きていてさえくれればよかったんだ・・・すまない、これは君には失礼な言い方だったかもしれないね。


そう言い力なく彼は私に向けて申し訳なさそうな顔を向けてきた・・・そんな表現をされてしまっても仕方のないと思うほどに私の容姿は年齢は変わってしまっているし・・・私はあなたの娘・・・いや、私の親友を助けられなかった・・ただ見ているだけしかできなかった私を罵ってくれても構わないと思うぐらいには私はあなたに罪悪感を感じていた。


そうして彼から聞かされた情報を噛み砕き、私の中で整理する・・・そして一番最初に出てきた言葉はやっぱりこの言葉だった・・・


「・・・父に会いたいです」


彼はそっと私の手を取り、備え付けてある車椅子に私を乗せ、同じ病院の少し歩いたところにある病室へと向かった。





「母さん?」


父から私に声をかけられた第一声だった・・・


「■■、元気だったかい?」


咄嗟にこの言葉が出てきた・・・私も父の母、私の祖母に会う機会があって、いつもこう穏やかに私に話しかけてきた記憶があるからだ・・・でも、その祖母は私が中学に上がると同時に亡くなってしまった。


「やっぱり母さん!最近来てくれなくて寂しかったよ、でもね、僕は元気でお利口に待っていられたんだよ!凄いでしょ!それでね、聞いて今日はね!」


今目の前にいる父には私が祖母のように見えてしまっているのだ・・・だから、私は彼を、私自身をだますことにした。


父の病室には見舞い用の果物と花・・・落書き用のノート、クレヨン、医学書、日記帳・・・


今の口調の彼とは合わないであろう物があった・・・だけど、目の前の父は私を祖母だと思い、上手にかけていたであろう絵を自慢げに見せてくれていた。


そんな父の前で・・・いや、彼の前で何かを遮ることなんて私にはできなかった、■■さんは私を父のベットのそばへと運んでいくと、『また後で来るよ』と言い残し、私と父を2人きりにしてくれた


「それでね!それでね!」


彼との時間は楽しくてうれしくて・・でも、それでも私は少し騙していることに罪悪感を覚え・・・すぐに空は夕日に染まっており、そのぐらいにちょうど■■さんが来て、私を病室へと戻していってくれた


「また来るよね?母さん?」


不安そうに彼は私に尋ねてきた。


「うん、明日からね、毎日来るからね、いい子にしてるのよ」


不安が見え隠れする父の表情を見せられ、私は今の父には私が祖母だと信じて疑わない彼には・・・せめて優しい、けれど、残酷な嘘をつけ続けようと思った、


「うん!」


彼は元気よく返事をして、またねと手を振り、私は父の病室から出て行った。


それから毎日のように父の病室へと通っている、私の秘密を知っている担当医の方に送ってもらって、決まって夕方に迎えに来てもらう。


彼は春の子どものような暖かな笑顔で毎回私に色んなことを話してくれる、時折子どもじゃない、大学時代や、私が生まれたばかりの頃の父が私の前へ出てきた・・・けれど、どの彼も私を通して祖母を見ているだけなのだけれども・・・


何度も何度も彼と会っているけど、その目には私の姿から見るその祖母に笑顔を向けているんだと時折感じてしまい・・・私が嘘をついてそうなってしまったんだと、私のせいだとは・・・分かってはいるのだけど、悲しくなってしまう。



2年が過ぎたころ・・・私はもう自分で体を起こすことも難しくなってきてしまっています・・・


あぁ・・・もっと長く生きて父と一緒に過ごしたかった・・・


もっと笑顔を向けてほしかった・・・・


もっと私の自慢話を聞きたかった・・・


もっと私の母のことを話してほしかった・・


もっと・・・みんなといたかった・


あと少しで私の命は尽きてしまうんだろうと・・・私自身が何よりも自覚してしまう・・・


そして、今の私は彼に二度目の祖母の死という残酷な現実を突きつけしまうのだと思ってしまうと・・・


ただ一言・・・『ごめんなさい、愛しています』と伝えたかったな。 

名前はいつか本編出すと酷いネタバレになるからやめます・・・・いや、そんなこんな駄作見る人多くないと思いますけどね。


たぶん主人公、主人公の知り合いのおっさん、医者、主人公の父の四人でお送りしております。


2と3が別視点で物語を出す可能性が微レ存・・・

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