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3/22

1/13夜─魔王─

あの日の選択は間違いではなかったと私は思いたい。

私があの世界に行ったのは間違いなく私にとって良いことだった筈だ。

だが何故か今の私はそれが原因でどうしようもない空しさに苛まれている。

この空しさを少しでも埋める為に私の思い出をここに記そうと思う。

 

午後10:00

 

私はマンションの8階のベランダから上半身を乗り出して、雲一つない空に浮かんだ寒月を眺めている。

 

だが都会の夜は町の明かりに照らされており、そこまで暗くはない。


だが、そのベランダから見えた景色は確かにあの世界の私の居場所から見えたそれを彷彿とさせる。

 

彼らは今どうしているだろうか。


日が経つに連れて、無茶なことをしていないだろうか、つまらないことで争っていないだろうか、人間共が彼らを虐めていないだろうか、そんな不安ばかりが募るようになった。


目を閉じれば今でも彼らの姿が目に浮かぶ。

 

ここ最近はここから飛び降りたら再び彼らの元に戻れるんじゃないかと考えるようになっていた。

 

私、篠崎 槇は半月前まで異世界に居た。

 

それもただ異世界に居た訳ではなく、私は異世界で魔族を率いて魔族を守り、魔族に害なす者達を駆逐する者、平たく言えば魔王をしていた。

魔王として人間達を駆逐して、魔族にとっての安息地を拡げる、そういう仕事をしていた。人間の領域を略奪する以上多かれ少なかれ人間の犠牲を出さなくてはならなかったのは心苦しかつ

たが、それも仕方がなかったと私は思う。

だって、人間は卑怯で、欲深くて、狡猾で、薄情だから…

 

私の視界の右端にメールのマークが点滅する。

 

私は無言のままメールを表示する。

 

差出人は『 』

 

端から解っていた事だ。

私にメールを送ってくるのなんて彼だけだから

 

「『拝啓 マキ魔王陛下

こちらは陛下のご意志の通りに平和を維持しております。ですがやはり陛下の御身が心配でなりません。魔族一同は陛下の更なるご健勝とお早いご帰還を心より願います。敬具 魔族一同より』と添付ファイルが沢山ありますよ。君の側近からの手紙だけ代筆しましたが、残りは画像ファイルで送りましたので暇な時にでも読んであげるといいでしょう。それにしてもなんですね、貴女もすっかり魔王陛下ですね。最初は側近しかいなかったのに。まあこいらは貴女の側近と彼の仲間達が上手く立ち回ってますから、安心して自分の人生を楽しんで下さい」

 

「みんな…手紙書きすぎだよ…これじゃあすぐにメモリーがいっぱいになっちゃうよ…」

 

そんな事を言ってはいるがこのとき私の目は潤んでいた。



12/24 午後18:00

 

私は都心の雑踏の中を独り歩いていた。

 

世間はクリスマスだって言うが、つい先日彼氏に振られた私には殆ど関係のない話だ。


じゃあなんでこんなとこをほっつき歩いているかって?


買い出しだよ。


学校帰りにショッピングモールに寄って、生活必需品を買い揃えた帰り際に少し気分転換に町を歩いてみるのもいいかと思ったのが間違いだった。

 

すでに私の気分は腹立たしいを通りすぎて虚しくなっていた。

 

外気温は1℃、風もあり風花も舞っているから体感気温はもっと低い。

 

だがしかし私の心はそれ以上に冷えていたと思う。


この胸くそ悪い空間に居ても何もないと思い、私は足早にその場を通り過ぎて帰路に付いた。


そしてマンションの八階に借りている自宅に帰ってきた。


駅から徒歩10分弱、近くにショッピングモールがあり、その他施設もだいたい揃っており、部屋のベランダからはさっきまで歩いていた胸くそ悪い雑踏を一望できると言う、それなりにいい立地条件の物件だが

今の私には腹立たしい限りだった。


私は聖なる夜に一人家でぬくぬくと過ごすのが嫌で、少しでも惨めな自分を振り払う為に冷えきった風に当たろうとベランダに出た。

 

白銀に染まった町は普段と打って変わって幻想的と表現するに足る程に美しく煌めいていた。

 

下の道路にも雪が積り月明かりに照らされて雪がキラキラと輝く


私はベランダの手すりに積もった雪を落として、上半身を乗り出して暫く考える。


自分のこと…大学生活のこと…サークル内のイジメのこと…


私の視界の右端にメールのマークが点滅する。

 

私は久々に出現したそのマークに少し戸惑いながらもメールを表示する。


差出人は『 』


かなり怪しかったが久々に届いたメールと言うことで開くことにする。

 

そこには一言「下を見ろ」とだけ書かれていた。

 

間違いなくイタズラだが、メールの指示通りに下を見た。

 

おそらくこのときの私は例えイタズラでもそれにすがり付きたい程に弱っていたんだと思う。

 

手すりから上半身を乗り出して下を見下ろすが特に何があるわけでもなく、ただひたすらに白い町が広がっていた。

 

ミシシッ、ピシッ、ギギギギギギ、バキンッ!

 

オノマトペで表すとこんな感じの音が白い町に響いた。

 

その音がしたことに気づいたときには既に私はベランダには居らず、7.5階ぐらいの高さから白い地面に向かっている途中だった。

 

そして私は地面に落ちた後のことに恐怖を覚える、と同時に呆気ない終幕に寂しさと安らぎを感じて、意識を手放した。

作者:「あれ?おかしくない?とか思ってるあなた!おかしくないんですよ?こういう仕様です」

マキ:「誰!?」

作者:「ハイハイハイハイ、ここ主人公禁制なんで速やかな退場をお願いします」

マキ:「ちょっちょっと押さないでよ!危ないでしょ」

作者:「知りません、興味ないです、出てってくれます?」

マキ:「出てくから、出てくから!そっち出口じゃなくて窓だけど!?」

作者:「二度目だから慣れてるでしょ?ほらポーイっとな。ふぅスッキリした~、後書きでは作者の近況とか解りにくい所の解説とか小ネタとかやる予定です、感想書いてくださると励みになります。続きが読みたいと思うなら感想欄に一言下さい。評価の方にもポチポチって4とか5とか付けて下さるとやる気が出ます、早く続きが読みたい方はどうにかして作者のやる気を引き出してください。よろしくお願いします」

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