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17/22

1/14夕暮れ─魔王─

作者:「いやー、ほんと大学生は暇だって言ったヤツ誰だよ。全然暇じゃないなじゃないか!」

私は久々にサークルに顔を出した。


サークルメンバーはいつも通りまるで奇異を見つめるような目で見てくる。


私は文ゲイ同好会と言う所謂BL小説を鑑賞することでLGBT改善の手助けをしようと言うのを表向きに掲げているサークルに参加している。


いじめの切っ掛けは些細な物で、カップリングが他のみんなとズレたからだ。


その後ズレはいっきに開いていき、間もなく現状に至った。


無視と奇異を見つめる視線はいつものことだ。


そして私が触った所を順に手で払っていく。


陰湿だが、ご苦労様なことだと思ってスルーする。


そして私は定位置となっている場所に座って持参した本を開く。


ダンッ


※誰かがダンを呼んでいるわけではありません。


私の前にこのサークルの事実上のリーダーみたいな感じの女、確か名前は…早瀬…芽愛だったと思った。

顔は中の中、スタイルは中の下、人間性は私からしたら下の上、ハッキリ言って馬が会わない。

女版ジャイア〇みたいな女だ。


「あんたさあ、いつまでここにいんの?」


無視して読み進める。


「あのさあ、もう自分の居場所がないことぐらいわかってるよねぇ?」


今いいとこなんだよ


「わかってなかったぁ?じゃあもうあんたはウチのメンバーじゃないの、だから出てって?」


・・・・・


「いつまでも無視してりゃどうにかなると思うなよこのアマ!」


あっ、張り手が来る。


私は張り手に合わせて首を捻って受け流しつつ、派手に吹っ飛んで見せる。


ガタンッ


椅子が倒れた。


手が伸びてくる、顔を掴むつもりらしい。


『姫、こう言うときは腕を掴んで地面に押し付けつつ後頭部を掴んで…』


ミカエラの戦闘訓練が懐かしい


私は反射的に芽愛の腕を掴んで地面に押し付けつつ手前に引っ張り、後頭部を掴んで…

…そのまま顔から床に叩きつけた。

 

ガンッ

 

椅子よりも大きな音が響いた。


たぶん首は折れてないと思いたい。

鼻とか顎とかは折れてるかも、歯も二三本は逝ったかも…

 

と相手の状況を予測する。


『顔を地面に叩きつけたら、何度も叩きつけて下さい。相手の動きが緩慢になったら頭を蹴り上げるといいですよ』


いや、そこまでしたら死んじゃうよ


私は芽愛の髪を掴んで持ち上げる。


「よかったね、どこも折れたり砕けたりしてないよ。鼻血は出てるし口のなかも切ったみたいだけど…」


ついでに言うと完全に白目剥いてしまっている。


さっきまで興味深そうにコッチを見ていた面子も今は本に集中している。


「はあ、なんか疲れたし帰るね」


特に何の返事もない

私は部屋を出た。


正直、内心ドキドキしていた。

久々の対人戦の興奮と、やってしまったことへの罪悪感と、うるさいジャイ〇ンを黙らせたことへの満足感とと色々な感情が複雑に絡み合ったことによる動悸だ。


まあ、思った以上に体が動いてビックリしたと言うのが一番だと思う。

 

私は近くの喫茶店に入った。

レジでアールグレイとシフォンケーキを注文して番号札を受け取る。

そして注文した物が来るまでテラス席で思い出に耽ろうと思う。


 

「マキ様、偽王討伐の準備が完了しました」


私は屋上庭園で魔宝を使って討伐の準備を整えていた。

その成果は城から生えるような形で聳え立ったの茸型の筒、とその回りを囲む様に設置された同じ材質の巨大な二つの球体と、こちらも巨大な立方体の機械?である。


根本は城の白い煉瓦を引き伸ばした様だが、その先は白い煉瓦が金属に変質している。

金属の継ぎ目は紅く不気味に発光しており、王道ファンタジーって言うよりはSFっぽい仕上がりになっている。

 

『うむ、上出来だな』

 

「うん、こっちも終わったところ」

 

『出発は明日にした方が良いだろう、兵に準備を整え明日に備えるよう指示を出せ』


「作戦決行は明後日であとの事は当初の計画通りに進めて、あと戦闘員には休息を取らせて作戦決行に備えさせて」

 

「かしこまりました」

 

『もう少し肩の力を抜け、そんなことでは成功するものも失敗するぞ』

 

「そうだね」

 

『とりあえずお前はワシを下ろしてゆっくりと休むといい』

 

「うん、そうする」

 

私は魔冠をその場の床に置いて屋内に戻る

 

『ここに置いてく!?ワシ魔冠だよ?魔宝だよ!?普通魔王の秘宝を城のテラスに置いてく?』


魔冠を外に置いて屋内に戻ってから私は手持無沙汰故に部屋に戻らずに執務室に籠っていた。

執務室で何をしているのかと言われたら、ただ過去の英雄に関する資料を読み漁っていた。


幸いな事にこの世界の文字は英語だ。

文学専攻の槇にとっては英語はもはや第一言語みたいな物であり、読むのは容易かった。

 

「うーん…法則は無さそう…」

 

唯一の法則として成長する武器を持っているというのがあるが、英雄討伐に役立つとは言えなかった。

他は攻め込んでくる方角、落下地点、戦闘スタイル、成長度合い、全てが点でバラバラなのだ。

 

だが、各代魔王に関しては幾つもの共通点がある。

呼魔の神殿に降り立ち、魔宝を扱い、多くの兵を従えて英雄を迎撃する。

故に魔王側は対策を立てられやすい。

各代で先代までにはないモノを用意するものの、倒された魔王も多い。

そんななかこれだけ長い間使われてきた逢魔が時の城が未だに使えているのは驚きである。

これも神の作った魔宝の為せる業なのだろう。

 

「姫、お茶と茶菓子をお持ちしました」

 

「ありがと、そこに置いといて」

 

私は手元の資料を見ながら言う

 

「姫、根を詰めすぎではありませんか?」

 

「そんなことないよ。今の内に出来ることをやってしまっておきたいの」

 

「明日は偽王討伐へ出発なさると聞きました。戦の前は休息を取るべきかと」

 

「休むって言ってもコレ以外にやることないし、それにミカには明日も私の護衛をお願いすることになるから早めに休んでおいて欲しいんだけど」

 

「では不躾なお願いだと思いますが、少し私に付き合って下さいませんか?」

 

「まあ、コレは後でもいいから別に構わないけど…」

 

「では行きましょうか城下に」

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