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Germinal Asperge 午後─英雄─

作者:「お久しぶりでーす!なんかこの頃のコレ短くて結合とか水増しに勤しんでまーす」

あの後、ファントムハウンドの死体を解体した。

 

初めて見た大型動物の解体作業はかなり面白かったが、その後の簡易バーベキューで気分が悪くなる程度に衝撃的だった。


と言うか、影に溶け込んで沈み混むような獣の肉を食べて大丈夫なのだろうか?

と思ったが昨日の晩飯も得体の知れない魚だったことを思い出して考えることをやめた。

 

「なんとか町に着けたな」

 

「あー、きっつ…お前らよく森まで歩いてきたな…」

 

「いや、行きは途中で野宿したからさ」

 

「さて、今日晩はどうしたもんか…」

 

「俺が泊まってる宿に来るか?」

 

ダンの後でミアが不愉快な顔をしたのを見逃さなかった。

 

「お前の所は問題が後にあるだろ?シアン、家に泊めてやるよ」

 

だがまたも俺は見逃さなかった。

後でサラが忙しなく杖を持ち替えるのを。

 

「じゃあお言葉に甘えて…」

 

サラには悪いがここはディックに泊めて貰うことにする。

 

「部屋は余ってるから気にするな。今朝は殺されかけたが、その後は助けられたからな」

 

「まあ、その件は互いに事情があったって事で水に流そう、な?」

 

「まあ、一日で色々あり過ぎてアレだけどな」

 

「そう言えば冒険者になって外に出るのになんかランクがどうこうって言ってたけど、どう言うこと?」

 

「ああ、Eになるには書類の提出だけでいいんだがDに上がるには装備を整えた上でテストを受ける必要がある」

 

「それで一ヶ月か」

 

「ああ、装備って言うと武器だけでも良いのか?」

 

「いや、多少の防具は必要だ。後衛職なら多少多目に見てもらえるが、それでもそのなりじゃ即弾かれるな」

 

「あー、装備か…因みに明日はどうするつもりだ?」

 

「明日は休む、明後日も休む、明明後日はどうだろうな、装備の手入れが終わってれば外に行く」

 

「じゃああと二日で多少の装備を整えてテストに合格すればいいのか」

 

「いや幾らなんでも二日じゃ無理だろ、主に資金面で」

 

「酒の席で舞いでも舞って派手な演出でもすれば少しはカンパしてくれるかもな」

 

「それいいな、魔法の練習にもなるし」

 

「じゃあさっそく酒場に」

 

「無理だろって、今の俺らの現状は殆ど文無しだぞ?」

 

そうファントムハウンドの皮と牙と爪を売ったら多少金にならないかと思ってギルドに持っていた所、皮は傷が酷くて使い物にならないらしい、牙も爪も小さすぎて殆ど使えないから買い取れないと言われて、結局収入はほぼゼロだ。

 

「残りの資金で後何日持ちそうなんだ?」

 

「持って三日だな、アルバトロスを直したら今日晩から宿無しだ」

 

「うーん、じゃあ取り敢えず酒場に行って店主と交渉して舞子でもさせてくれないか頼んでみるか」

 

「男の舞子とかあんまり好まれなさそうだな」

 

すると後ろから肩を叩かれた

  

「ちょっとお兄さん」

 

「えっ俺?」

 

「いいからいいから、こっちきて」

 

「わっちょっと、そこで待ってて」

 

俺は後ろから肩を叩いてきた女に有り得ないような力で引っ張られて路地裏に引っ張り込まれた。

 

「ふふふ、僕としたことが色々忘れててさ」

 

「僕?誰?」

 

「あれ?一日ぶりでしょ?僕だよ僕!か・み・さ・ま!」

 

「ああ!この野郎!もうちょっとマシなところに落とせなかったのかよ!」

 

「僕は気紛れだし、君は暇潰しに巻き込まれたんだから多少は理解してね」

 

「ホントに傍迷惑な神だな」

 

「だから色々用意してあげたんだよ?」

 

「何を用意したって?刃渡り6cmの剣には確かに助けられたけど、面倒事なら遠慮して欲しいな」

 

「ん?単に詰まらない事で挫折して欲しくないから当面の金子と神託と英雄の証を用意してきたんだけど」

 

「当面の金子は有り難いけど、神託と英雄の証って言うのはなんだ?」

 

「ん?教会に英雄に関するヒントとこの証の事を教えて来たんだよ」

 

自称神様はロ〇の紋章そっくりの板を金の入った袋に放り込んで俺に投げる。

 

「それを俺に渡して教会の協力を得やすくさせるって事か」

 

「そう言うこと、いや~おにじゃなくて魔神の召喚した魔王の動きが速くてね。もう魔王城を継承しちゃうんだもんね」

 

「どう言うことだ?」

 

「要するに今代の魔王は凄く優秀ってこと」

 

「それに対して俺は未だに自分の存在すら明かしていないから焦って出てきたと」

 

「そう言うこと、まあ少し急いでね?このままじゃ何の抵抗もできずに殺されちゃうよ?それじゃあサクッと殺されないように頑張ってね」

 

神様は唐突に姿を消す。 

 

「毎回唐突に現れる神様だな」


「おい、遅いから心配したぞ」

 

ダンが路地裏に入ってきた。

 

「ああ、悪い。カツアゲ野郎共が五月蝿くてな、黙らせるのに時間がかかった」

 

「無事で良かった。最近は魔王どうこうで皆動揺している。それのせいか最近は治安も悪くなって来ててな、カツアゲとか美人局とかが横行しててな。ちょっと心配になった」

 

「カツアゲ程度に屈する俺だと?」

 

「最近はランクC、Bの冒険者による犯罪が頻発しているから、場合に寄ってはお前でも危険だ」

 

「心配掛けたな、俺は何ともない。いや、少し金子を手に入れた。どのぐらいなのかはよく解らないがそんなに多くないだろう」

 

「そう言えば一文無しだったな。俺が見てやるよ」

 

俺は袋をダンに渡す

 

「ん?袋の大きさにしては重いな」


「ああ、忘れてた。拾った板を入れてたんだ」

 

俺は袋から例の証を取り出す。

 

「んじゃ改めて…!全部金貨じゃないか!」

 

「高いのか?」

 

「ああ、こんだけあれば俺ら程度なら一年は仕事しないで暮らせるぞ」

 

おっと神様め、やってくれたな?

 

「いや、偶々貰ったんだ。魔法使いのおっさんにさ」

 

「貰ったって、もしかしたら汚い金かもしれないぞ?」

 

「まあ、今の俺らには少なからず金が必要だ。これを使えばアルバトロスの修理も可能だろ?」

 

「まあ、そうだけどさ」

 

「なら使えばいい。なんだかんだ言って俺の金だ。あとファントムハウンドの素材を使ってもいいか?それで装備を作って貰えたら作って貰おうと思って」

 

「まあ、売れなかったしいいけど」

 

「ああ、大事にするよ」

 

俺はファントムハウンドの皮で包んだ素材一式を受けとる、変わりに金貨数枚を渡す。

 

「これでアルバトロスを直せるか?」

 

「ああ!お釣りがくるぜ」

 

「じゃあ各々準備を整えるか」

 

そうして俺達は路地裏から出ると、少し不機嫌な三人が待っていた。

中でもミアは不機嫌と言うか怒っている。


期せずして転がり込んだ大金を持って俺達は定食屋に入り、こってりした肉料理を食べた。

 

その後、ダンとミアと別れて俺とディックとサラの三人で町を歩いた。

 

街並みは徐々に上品に、聞こえる声は喧騒から賑わいに変わって、話している言葉にも敬語が混じるようになってきた。

 

「そう言えば、ディックの家はそんなに大きいのか?」

 

「いや、普通の一軒家だよ。でも一人暮しするには大きすぎるんだよ」

 

「うんうん」

 

「それで家の手入れも大変だから、家事を手伝って貰うってことでサラも家で泊めてあげてるんだ」

 

「それってダンの所に泊まるのと変わんなくないか?」

 

「いや、ミアは一応剣を納めたがお前がダン所に入って不満が爆発して夜襲なんて事にならないとも解らんかったからな」

 

「うへぇ…やっぱりダンとミアってそういう関係なんだ」

 

「いや、ダンはミアの事を気にも止めてないから。ミアが一方的に想ってる形だな。だからこそ夜襲の可能性があるんだ。注意しとけよ?」

 

「そうだな、夜中に雷撃でこんがり焼かれないように注意するよ」

 

「サラは大丈夫だ。だって俺の幼馴染みだし、お前を潰す理由もないだろ」

 

「そうだよな」

 

地雷パーティー踏み抜いたかもしれないと思ったが時すでに遅かった。


そして気不味い気分のままディックの家に来た。

 

それは一軒家と表現しても間違いじゃないが、解りやすく言えば豪邸だった。

一軒家では無いが俺の住んでるアパートの部屋の十倍以上、実家の三倍か四倍かって大きさだ。

 

「デカイな」

 

「そうでもないさ、実家に比べれば掘っ建て小屋みたいなもんさ」

 

なら俺の実家はなんなんだろうか、犬小屋かな?

 

「さっ遠慮しなくていいぞ。自分家だと思って寛いでくれどうせ片付けるのは自分たちだからな」

 

「もしかしてディックは貴族なのか?」

 

「今気づいたのか?そう俺は伯爵家の跡取り息子で騎士見習いだ。実家を次ぐ前に世間に出て社会を知って己の腕と心を磨いてこいって父さんに言われて冒険者になった。この家は父さんがいくら冒険者になるって言っても大事な跡取り息子にそこらのボロ宿で寝泊まりはさせれんって事で建てた家だ」

 

「息子のために家まで建てちゃうとか」

 

「弱い者を守れる強さを持て、父さんはいつも俺にそう言ってくれた。俺はそんな父さんと同じように皆を守れる強さを持ちたいんだ」

 

「立派な夢だ」

 

少なくとも、特に目的もなく現状打破のために大学に入った俺とは大違いだ。

 

「そう言えば、それってファントムハウンドの素材だよな?」

 

「ああ、装備の材料にしたいからダンに頼んで預かってきた」

 

「どんな装備を作るつもりなんだ?」

 

「これでマントとかいいかなって」

 

「マントか、魔法使いのお前にはいいかもな」

 

「ローブとかモッサリしたのだと近接戦が出来ないからさ」

 

「どこの職人に頼むつもりなんだ?なんなら俺が鎧の手入れを頼む職人を紹介してやろうか」

 

「そうしてくれると助かる」

 

「どうせ俺も鎧を手入れに出すから構わない、明日の朝でいいか?」

 

「大丈夫だ。何から何まで済まないな」

 

「気にするな。弱きを助けるのは騎士の務めだ」

 

その後はディックに家の中を案内してもらい、客間のベッド眠りに就いた。

 

一日ぶりのベッドは森地面とは大違いで、入って間もなく深い眠りに入れてしまった。

 


そして翌朝、日が出て間もなく俺は起床した。

 

元の世界での習慣が残っているのだろう、この時間に起きても全然眠くない

 

「じゃあ、ちょっと素振りでもするか…」

 

ベッドから抜け出て、庭に出る。

 

先ずはウォーミングアップで二三回踊る。

 

先ずは一般人の剣に炎を纏わせる

 

次に雷撃を空中で炸裂させる。

 

更に水を薄く膜のように広げて地面と壁とその他全てを覆う。

簡単に言えば水のバリアを作った。

 

「さてと、素振りするか」

 

とりあえず漫画とかアニメとか剣道やってる友達とかで見た振り方をしてみる。

 

どうもしっくり来ないから、色々試してみる。

 

袈裟斬り、逆袈裟、切り上げ、横凪ぎ、上段、逆手

 

ちょっと乗ってきた。

 

一振り一振りを繋げてみる。

 

更に舞いながら斬るといった動作を暫く続ける。

 

『Lv2からLv3に上がりました。称号:炎の剣士、水の剣士、雷の剣士、踊る魔法剣士を獲得しました。スキル:魔法剣舞を獲得しました』

 

「魔法剣舞?」

 

『スキルの獲得により、ステータスのスキル欄が解放されます』

 

左手を振り下ろしてステータスを確認する

 

確かに

skill

・sword dance of magic

と追加されている。

 

とりあえず、もう一度踊りながら魔法を使う。

 

『称号:踊る魔法剣士、奮闘する一般人、ゴブリン魔法の使い手、炎の魔法使い、炎の剣士が発動しました。職業:魔法使いが発動しました。スキル:魔法剣舞が発動しました』

 

魔法の制御が一気に楽になり動きが少し楽になる。

 

横凪ぎ、逆袈裟に切り上げつつ一回転してもう一回逆袈裟に切り上げつつ雷撃を炸裂させて、袈裟斬り、腰だめからの抜刀まがいから氷刺を連続で飛ばして、からの切り返して切り下ろしに落雷を纏わせて振り下ろす。

 

跳んで、回って、斬りつけて、撃って、回って、斬って、跳び上がり、斬って、回って、斬りつける

 

そんな具合に跳んで、回って、斬りつけるを色々なフォームで行い、跳ばずに斬るのも組合せつつ合間合間で魔法も挟む。


使えば使うだけ魔法制御が楽になり、挙動が複雑になる。

正直、めっちゃ楽しい 

 

俺はラストで青い焔を炸裂させる。

 

青い焔は辺りに満遍なく飛び散って、水の障壁を燃え移る。

水の障壁自体を焼いてるのではなく、水の障壁の魔力を焼いているのだ。


魔力を燃やし尽くされた障壁は白い煙を上げて消滅した。

 

「朝から頑丈な結界まで張って何してるのかと思ったら、こんな早くから素振りですか」

 

「サラも素振りに?」

 

「いいえ、少し気になっただけです」

 

「ゴブリン魔法か」

 

「それもありますね」

 

「あーコワイコワイ、やっぱり地雷踏んだな~。直接的なミアのがやり易かったかもしれないな…」

 

「いえ、私は何もしませんよ?」

 

「夜中にいつの間にか雷雲が俺の上に来て、雷でこんがり焼かれた日にゃ手に負えないな…」

 

「ふふふ、私とディックの邪魔をしなければ何もしませんよ」

 

サラは家の中に入っていった。 

 

「ヤンデレ怖っ!」

 

ホントに寝る前にバリアを張った方がいいかもしれない。

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