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Germinal Asperge 正午─英雄─

作者:「なんかやる気削がれるから全部出しちゃおっかな…」

「んで、俺はどうしたらいい?なんもないなら勝手に動くぞ?」

 

「いや、それは困る。せっかく命懸けの戦闘したのになにもなしじゃ…な?ディック?頼むよ。こいつをパーティーに入れても良いだろ?」

 

「命あるだけマシだと思えよ。そいつなんかもしかしたら今頃チキングリルならぬヒューマングリルみたいになってたかもしれないし」

 

「ヒューマングリル?」

 

「意訳すると焼き人間」

 

「うげっ」


「まあ、ダンがいいって言うならいいんじゃないか?」

 

「ディックいいの?あんたを焼き人間にしようとした奴を仲間にしても?」

 

「実戦は何が起きてもしょうがない。例え自分が電流で焼かれてもな。今まで雑魚とばかり戦闘してきてみんな忘れてるんじゃないか?俺達がしてるのは「ごっこ遊び」じゃない「命懸けの戦い」なんだ、いつ死んでもおかしくないことは冒険者になったときに覚悟の上だろ?」

 

「そうだけどさ…」

 

ミアは黙って視線を落とす。

 

ダンは腕組みして見ている。

 

ディックは更に続ける 

  

「サラもサラだ。こいつが入ることを拒む理由があるか?確かに俺達はこいつと殺し合いをして、無様に負けた、俺も殺されかけた。だけど俺ら四人が束でかかって勝てなかったやつが仲間になってくれるって言うのはありがたい事じゃないのか?こいつがシアンが仲間になれば俺達の戦力は今までの倍、いやそれ以上にだってなりうる筈だ。それは単純に一流冒険者への近道なんじゃないか?少なくとも俺はこいつが入った方がパーティーのためになると思う」

 

「いや倍は言い過ぎだ、俺は地の利とお前らの数倍居たゴブリンと協力して勝利したに過ぎない。あのまま続けていたらジリ貧に陥っていただろうからな」

 

「それでも四対一で一人を無力化して一人を武器破壊に持ち込めただろ?それにお前は策がなければミアを殺して、そのままディックを殺せて、最終的には全滅させれただろ?」

 

「まあな、策が投げれば銃ではなく首を焼き切ってた。槍で突かれたのをかわした後、ディックの首を落とすことも容易かったな。だが現にどちらの首も地面で焦げて無いから結果的には俺を仲間にしても戦力は倍にはならない、寧ろ衝突が増えて戦力低下に繋がるかもな」

 

「そんなことは後々解決して行けばいい。目下は活動資金をどうにかしないと戦力低下どころか失業することになる」

 

「えっ?活動資金はこないだまで貯めてたんでしょ?」

 

「いや、装備と支度で全部消し飛んだよ。少しは残ってるが…アルバトロスの修理は無理だろうな…」

 

「えー!それって私には戦力外通告と同義じゃん!」

 

「だから言ったんだ。安い銃で妥協しようって」

 

「でも、こんなことになるなんて予測してなかったし」 

 

「でもじゃない。実戦は何が起きても不思議じゃないんだ。例えば新品の銃が折られるとかな」

 

「というか、あんたが壊したんだから弁償しなさいよ!!」

 

「悪いが俺は無一文なんだ。それに金が有ったら森でゴブリンの指揮官なんかやってない」

 

「そうだよなー、ここは多少でもなんか魔物を狩って活動資金の足しに…」

 

「この辺りにはそこまで強力な魔物はいないと思うぞ、ゴブリンが森に住めてるんだ、それより強力な魔物はいないと見ていい」

 

「いや待て、確かギルドではぐれオークの話が有ったよな?」

 

「あったな」

 

「確かこっちの方角だった筈だ。もしかしたらオークで一儲けいけるかもしれないな」

 

「オークか…この面子で勝てるか?」

 

「やってみなくちゃわからない」

 

「失敗したら?」


「死ぬ」

 

「成功したら?」

 

「明日、町で飯が食える」

 

「このまま町へ行ったら?」

 

「死ぬ」

 

「いや、死にはしないだろ?」

 

「いーや、絶対にいつか死ぬ」

 

「いや、そりゃそうだけど」

 

「俺はグダグタスラムで過ごして死ぬよりか、オークと一戦交えて華々しく死にたい!」

 

「とんだポンコツリーダーだな」

 

「ダンはポンコツじゃありません!ちょっと周りが見えてないだけです!」

 

サラがサポートに入る

 

「努力でなんでもどうにかなると思ってるだけなの!」

 

すかさずミアも入る

 

「リーダーとしては確かにポンコツだな」

 

そこで落とすディック

 

「さて、どうするかな…」

 

「そう言えば犬が居なくないか?」

 

『犬?』

 

四人の声が揃う

 

「猟犬が居ただろ?」

 

「いや、犬なんか飼ってないぞ?」

 

「第一、明日の飯を食うために無謀な戦いをするようなパーティーが犬なんか飼えるわけないだろ?」

 

「それもそうか…じゃあ朝お前らのところに居たのは野犬か」

 

「ミア?朝の見張りはミアだよな?」

 

「どうして野犬に気づかない!」

 

「いや、犬なんか居なかったって。絶対に居なかった。私は見てないもん」

 

「じゃあシアンが寝惚けてたのか?」

 

「ならお前らは寝惚けた奴に叩きのめされる冒険者だな」

 

「うーん、どうなんだろうか」

 

「その犬って何色でしたか?」

 

「黒かった。黒い猟犬」

 

「ブラックドッグかファントムハウンドかな?どっちにしても運が良かったですね」

 

「もしも追ってきたら?」

 

「命はないでしょうね。良くても四肢欠損ですかね」

 

「ファントムハウンドって?」

 

「読んで字のごとく、影の猟犬。その大きさは場所や個体によって様々。彼らは影の中に溶け込み、影の中から獲物を狙い、その鋭利な爪と凶悪な牙で獲物の命を刈り取る。どんなに大きくても一点の影に溶け込むことができるって本に書いてあった。」

 

「それって分体とか出せたり?」

 

「どうだろうね。一応生物らしいですけど、無性生殖するって書いてありました」

 

「ヤバイかも?」

 

「ヤバイな…」

 

とりあえず剣を抜き踊り始める

 

「おい、こんなときに躍りかよ」

 

メラメラと燃えるように、でも優しく全てを包み込むように、空で輝く大陽のように、更に思い付くまま詠唱してみる 

 

『照らせや照らせ、あまねく照らせ、一点の曇りも無いように、全てを光で包めるように』

 

俺は掌に出来た光の球を掲げる

 

『ライト!』

 

光の球は炸裂して辺りに閃光を迸らせ、あらゆる影を掻き消す。

 

ただし一つ影が残った。

 

サラの足下に黒い犬のような影が浮かび上がっている。

 

俺は剣を影に突き刺す。

 

影から赤黒い血が吹き出し地面を赤く濡らす。

 

すかさず影が地面から飛び出し、立体となる


それは黒い猟犬になった。


朝見た時より大きい。

  

「これがファントムハウンド…」

 

「デカくなってるな。体長1.5mって所か」

 

ファントムハウンドは背中から血を流しながらこっちを睨んでいる。

 

俺は既に舞っている。

 

流れる水流の如く、流れる電流の如く

 

時折紫電を迸らせる水は一般人の剣に纏わり付いて、刃を伸ばす。

 

「グルルルルルゥ」

 

あっちも臨戦態勢らしい

 

「こいよワン公。ホットドッグにしてやる」

 

「ちょ、シアン!逃げるぞ!」

 

「逃げても無駄だ、即追い付かれる」

 

ディックはすっと槍を構える。

 

「皆は逃げろ。ここは俺とシアンに任せてくれ」

 

「いや、俺も残って戦うぞ」

 

ダンも剣と盾を構える。


ミアとサラは下がって、各々の得物を構えている。

 

そして永遠にも感じられる緊張が場を支配する。

 

先に緊張を切らしたのはファントムハウンドだ。


俊敏さで圧倒して、全員殺すつもりらしい。

 

俺は突進をかわして、切りつける。

 

魔法の刃はファントムハウンドの肉を裂き、血を焼いた。

 

「へっ、切りつけたった。ちゃんと止血しといたから安心して?」

 

ディックの槍がファントムハウンドの手前の空を斬り、ディックに食らいつこうとしたファントムハウンドをダンが盾で殴り飛ばす。

飛んでいったファントムハウンドに短剣と火球が殺到して、雷撃が炸裂して地面もろとも焼き焦がす。

だがファントムハウンドは立ち上がった。

ファントムハウンドは一蹴りで俺の手前まで来た、そしてもう一蹴りでダンの所まで行った。

 

ダンは咄嗟に盾で防ぐ。

 

が防ぎきれなかった。

 

ファントムハウンドの腕から伸びた爪がダンのレザーアーマーの下の筋肉を抉る。

 

「ひぎぃぃ、シアン!今だ!」

 

「解ってる!」

 

俺は既に剣を振りかぶって空中にいる。

今更「止まれ」と言われても止まれない。

 

俺は剣をノリと勢いに任せて、ファントムハウンドの首に振り下ろした。

 

水の刃はなんの抵抗もなくファントムハウンドの肉に沈んでいき、骨さえも断ち切って、ファントムハウンドの首を水流で弾き飛ばした。

断面は焦げたがまあ良いだろう。

 

「全力戦闘はキツいな」

 

「大丈夫!?ダン」

 

ミアはダンにすぐさま駆け寄っていった。

 

「ちょっと深かった。サラ、回復魔法を」

 

「はい、直ぐに『彼の傷を癒したまえ ヒール』

 

杖から緑黄色の光がダンの傷口を覆う。

 

そして三分

 

「長くない?」

 

「私たち程度の下っ端冒険者じゃこれが限界よ」

 

「こんなんで無謀な戦いに挑むのはもはや自殺行為だな」

 

「この程度で済んだんだ、それだけで恩の時だろ」

 

「にしてもこのファントムハウンドなる犬は小さい方なのか?」

 

「一概には言えないけど大きくはないね」

 

「いくらぐらいになるかな?」

 

「どうだろう、明日のご飯代ぐらいにはなるといいけど」

 

とりあえず飛んでった頭を取りに行くことにする。

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