表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/13

俺、黙々とプレイする

ゲームといえばお馴染みの主人公の名前ネタ。

みなさんは何にしてました?

ちなみに私はうんk……おっと誰か来たようだ。

「いけ【ハナクソタベタロウ】」

「そこよ! 【ハナクソタベタロウ】!」

「やりましたね! 【ハナクソタベタロウ】先輩! 略して【ハナクソ】先輩っ!」

「あのさぁ……」


するとサラダがもう我慢出来ないというような顔でそう切り出した。

俺は何事かと思い尋ねる。


「どうした? 【ハナクソタベタロウ】」

「はい言ったー! 【ハナクソタベタロウ】ってまた言いましたー! どういうことなの!? ホワーイ!? なんで俺がトイレ行ってる間にいつの間にかチュートリアルがクリアされてて主人公の名前が【ハナクソタベタロウ】に設定されてんの!? たぶん嫌がらせなんだろうけど俺がいなかったの長くて2、3分だしそれでチュートリアルクリアするって逆に凄いぜ!? あと今更だけど誰が【ハナクソ】先輩だオラッ!」


それに対して俺は、そんなことかと興味を失ったようにゲーム画面に視線を戻した。

代わりに西園が返答する。


「え? でも問題なくないですか?」

「あるわ! ありすぎてもはや問題を見失うレベルだわ! まずなんだよ【ハナクソタベタロウ】って! ご丁寧に10文字までっていう文字制限をフルに活用しやがって! ……そうだよ、濁点も一文字に含まれるんだよこのゲームは! 文句あるか!」

「えぇ……誰も何も言ってないのに……」


ほう、あの西園が引くとはな。

サラダはさらに続ける。


「あとな! 他人に呼ばれた時に凄く不快! ゲームを進めるうえで必ず誰かしらに名前が呼ばれるわけだけどそれが煽られてるようにしか感じないんだよ!」


サラダは叫びながら自分のゲーム画面を俺達に見せつける。

そこには通信プレイを終えたばかりのサラダのキャラクターがギルドの受付嬢に話しかけている姿が映っていた。

その吹き出しの台詞には


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


受付嬢

『おかえりなさい【ハナクソタベタロウ】さん』


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


と表示されている。


「見ろよ! 王様にも婚約者にも果ては魔王までにも全世界から共通して【ハナクソタベタロウ】って呼ばれるんだぜ!? お前ら道行く人々全てから【ハナクソタベタロウ】って呼ばれるヤツの気持ち考えたことあんのかよ!? 危うく、あれ……? 俺ってもしかしたら本当に【ハナクソタベタロウ】なんじゃないか……? っていう錯覚まで起こしかけたわ!」


ようやく落ち着いたのかゼーゼーと荒い息を吐きながらサラダはジュースを飲む。

その間、俺と霧島さんは二人で通信プレイをしていた。


「でもサラダ先輩……いえ、【ハナクソ】先輩はそのデータでずっとプレイしてますよね? データ消して最初からプレイすればいいのになんでそうしないんですか?」


西園が至極真っ当な事を言う。


「……出来ないんだよ。あとわざわざ言い直さなくていいから」


サラダはやけに照れくさそうに鼻をかいてこう言った。


「どうせこんなことするのタクヤンくらいしかいねぇし、タクヤンが決めてくれた名前ならそれでもいいかな……ってさ」

「【ハナクソ】先輩……」


すると、ゲーム中の霧島さんがそれに割り込んだ。


「「今良い事言ってます」みたいな雰囲気の中悪いんだけど、それ付けたの私だから」


例えるならそれは家族団らんの中、突然放り込まれる手榴弾のようであった。

その瞬間、固まるサラダ。


「……え?」

「だから、その名前をつけたのは私なのよ。【ハナクソタベタロウ】君」

「……す」

「え?」


ぷるぷると震えながら何事かを呟くサラダ。


「もうデータ消す!」


サラダは目元を手でゴシゴシ擦りながらそう叫ぶとゲームデータを初期化するため持っていたゲーム機をいじりだした。


「ちょっ!? 【ハナクソ】先輩落ち着いて!」

「そうそう、データを消してもあなたは一生【ハナクソタベタロウ】のままだから無駄よ」

「うわああああっ! お前らなんか大っ嫌いだあぁぁっ!!」


サラダの絶叫が響き渡る中、俺は一人黙々とプレイしていた。



「じゃあタクヤン、また明日な!」

「またね拓也君」

「佐藤先輩! 今度は二人きりでゲームしましょうね!」


そう言って帰っていく3人の後ろ姿を眺めながら俺は溜め息をついた。


「はぁ、疲れた」


ただでさえ強烈なあの女子二人組に加えてハイテンションなサラダまで一緒だったのだ、疲れないわけがない。

とんだハッピーセットである。


3人の姿が見えなくなり、部屋に戻ると俺はベッドに横になった。

意図せずに瞼が勝手に降りていく。


「でも、悪くないかもな」


一人そう呟くと俺は夢の世界へと旅立っていった。


◇◆◇


━━翌日、タンスから全てのシャツが忽然と姿を消していた。


今回は主人公のツッコミはお休みです

テンポよくやるのって難しいですね笑

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ