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俺、家宅捜索をされる

「タクヤン! 今日部活ねぇから帰ろうぜ!」

「さぁ拓也君、一緒に帰りましょ」

「佐藤先輩……ワタシ、今日は先輩と二人きりで帰りたいなぁ……」


放課後、同時にそう言ってきた三人はそれに気付くと互いに牽制を始める。

俺はそんな三人に溜め息をついた。


「うるさいな、もう授業は終わったんだから少し落ち着きなよ。公共の場ではいつも笑顔で元気に過ごす、それが終われば最低限の作り笑顔とから元気でやり過ごす。今時の小学生でもわきまえてるよそんなことは」

「「「そんな小学生やだよ……」」」



「なぁタクヤン、お前最近変だぞ? なんかこう……元気がねぇっていうか」

「私もそう思うわ。まぁどんな拓也君でも私は受け入れるのだけど」

「えーワタシは今の佐藤先輩しか知らないのにぃ……クールなほうが先輩っぽいとワタシは思うけどなぁ」


帰り道、何故か四人で並び帰ることになった。

ちなみに並びは左から西園、俺、霧島さん、サラダである。

当初、サラダが俺の隣に来たがったが女子二名に般若の形相で睨まれ泣く泣くこの位置となった。

哀れ、サラダバー。


「……」


俺は彼らに自分の身に起こった事を話そうか考えた。

が、止めた。

考えてもみてくれ。

サラダはまだしも西園と霧島さんにあっては女子だ。

「デュフ……実は拙者、腰にあの有名な性剣エクスカリバーを装備してるんですがなんていうかその……折れちゃいまして、はい。コポォ」

なんて言ってみろ。

たちまち事案発生110番である。

表情や感情が抜け落ちてしまったことに関しても同様だ。

他人には到底理解できるものではない。


「気のせいだろ。俺は最初からこんな感じだよ」


そして少しの間を置いた後、結局こんな感じで俺はごまかすことにした。

その後も他愛のない会話が続き、とうとうサラダと別れる道に差し掛かる。


「それじゃあな」

「じゃあな。あ、タクヤン」


呼ばれた俺は足を止めサラダのほうを振り向いた。


「ん?」

「なんかあったら相談しろよ? 俺達は親友だかんな。あばよ!」


やはり誤魔化せなかったか。

全く……変なところで鋭いやつだよ。

伊達に長年親友やってないってことか。

俺はサラダの背中を見送った後、自分も帰ろうと前を向く。


「それで? 君達はいつまでついてくる気なの?」

「「家まで」」


……知っていたよ。

君達が金魚のフンみたいだってことは。



「わぁー! これが佐藤先輩の部屋かぁー! ワタシ男の人の部屋って初めてなんです!」

「そうなんだ。でも喜ぶのは良いけどどさくさに紛れて人の部屋の物を懐にしまうのはやめようね。それで、霧島さんのほうは何をしているの?」

「拓也君が寝ているであろう枕の匂いを嗅いでいるのよ。それが何か?」

「凄い。自分がしている事に一切のうしろめたさも感じていない百点満点の解答だよ。でも正直ドン引きどころかガチ引きだからやめようね」


そんなこんなで二人を家にあげた事を俺は激しく後悔していた。


自分の部屋に女子がいるというのはこんなに疲れるものなのか……。


そして俺は今、こちらにお尻を付きだし地面に這いつくばる二人を見下ろしている。

うら若き乙女の臀部(でんぶ)が目の前で左右に振られているという凄く扇情的なシチュエーションだったがそれよりも俺は二人に確認したいことがあった。


「霧島先輩、そっちはありました?」

「いいえ。一体どこにあるのかしら……」

「さっきから何を探しているの?」


二人はそれに対し互いの顔を見合せ、申し合わせたかのように言う。


「「エッチな本」」

「うん、大体想像はついてたよ」


なんという事だろう。

今時の女の子というのは異性の部屋にあがるとまず最初に部屋に隠してある成人雑誌を探そう、という思考に至るらしい。

……ちなみに俺のお宝は全部パソコンのフォルダの中に厳重に保管されている。

ここだけの秘密だゾ☆


「えー! どこにもなーい!」

「ベッドの下にないとしたら……次はタンスね」

「待て待て待て」


俺は躊躇なくタンスを開けようとした霧島さんを止める。


「……何よ? 邪魔をしないでくれるかしら」

「まるで俺が悪者みたいな言い方はやめて欲しいんだけど。まず確認として、この部屋の主は俺ということは理解してるよね?」

「ええ、そうね」

「じゃあその部屋にあるものは全部俺に所有権がある。これも理解出来るよね?」

「ええ、出来るわ」

「じゃあ分かるよね? 持ち主の許可なくタンスを勝手に開けちゃ?」

「いましょう?」

「何でだよ。開けちゃダメ、ダメなんだよ。何で今の流れからタンスを開けちゃうんだよ」

「うわー……佐藤先輩の私服だー……ということは下着も……」

「だって拓也君がどんな性癖を持っているのか知りたいじゃない。それっていけないこと?」

「……はぁ……はぁ……これが佐藤先輩の下着……(ゴクリ)……」

「うん、ちょっとごめんね? 西園はさっきから何してるの?」


俺は話を一旦中断するとタンスの前に座りながら俺の下着の匂いを嗅ごうとしていた西園に声をかける。

すると西園は面白いくらい驚きその場から飛び上がった。

ツェペ○さんもビックリの跳躍力である。


「っ!? しぇ、しぇんぱい!? あ、あのこれは違うんでふ! タンスから下着が落ちてきたので拾ってもとに戻そうかと思って!」

「……」


その言葉を俺は素直に信じたかった。

だがさきほど彼女が普通にタンスを開けて中を物色していたのを俺は知っている。

よって導きだされる結論は━━。


「ギルティ」



「もう! 霧島先輩のせいで追い出されちゃったじゃないですか!」

「私のせいにしないでくれる? あなたが性欲に従順だからこんなことになったのよ。この雌ブタ」

「雌っ!? だってしょうがないじゃないですか! 佐藤先輩の下着ですよ!? 理性なんか吹っ飛ぶに決まってるじゃないですか!」

「……まぁ、それは否定しないけど」


俺はそんな言い争いをしながら帰っていく二人に手を振った。


よし決めた!

もう部屋に女の子は呼ばない!


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