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俺、災難に見舞われる

「じゃあ先輩、ワタシ教室あっちなのでここで失礼します」


結果として一緒に登校することになった西園がそう言って俺に頭を下げた。


「佐藤先輩、この度は本当にありがとうございました!」

「いやだから俺はなにも」

「そのお礼も含めまたあらためてうかがいますね!」

「話を」

「では失礼します!」


そして彼女は去っていった。


「やれやれ、人の話を聞かないお嬢ちゃんだ」

「そうね。昨日の誰かさんと一緒だわ」

「……」

「……」

「君か、驚いたな」

「全然そうは見えないんだけど!?」


気が付けば霧島さんが俺の後ろに立っていた。

心臓止まるかと思ったわ。


「それで? あの子1年生みたいだけどあなたとどういう関係なの?」

「いや別に。ただ偶然朝知り合っただけだよ」


すると霧島さんがズイっと顔を近付けてきた。


「本当に? 浮気は許さないわよ?」

「目が据わってて恐いんだけど、あと浮気もなにもまず俺達付き合ってないからね」

「え?」

「え?」


不思議そうな顔で彼女は俺に尋ねる。


「昨日私達は一緒に帰ったわよね? つまりそういうことじゃないの?」


何を言ってるのこの子?


「あれは君が無理矢理ついてきたんじゃないか」

「何よ! それだけあなたが好きなんだから仕方ないじゃない! それとも拓也君は私が嫌いなの!?」


うわー……。

答えづらい質問するなぁ……。


「いや別に嫌いなわけじゃ」

「それじゃあやっぱり好きなのね?」

「いや別に好きなわけでも」

「一体どっちなのよ!?」


俺はこの場をどうしのげばいいか考えた。

その結果━━。


「普通」

「は?」

「だから普通だよ。じゃあそういうことで」

「ちょっ、ちょっと!」


そして俺も立ち去った。

普通が一番。

シンプルイズベストってね。



「床屋で女の店員に髪を切ってもらう時、その店員の腕に切った毛が乗ってるとまるでその人から自分の毛が生えてるみたいで興奮するよな」

「何を言ってるの?」


昼休み、サラダとそんな会話をしていた時だった。

ヌッと誰かが俺の前に現れる。


「佐藤先輩やっと見つけました! クラス聞いてなかったので探しましたよ!」


西園だった。

そしてそのまま腕をつかまれ教室から連れ出されそうになる。


「西園さん一体何事なの?」

「やだなーもー朝言ったじゃないですか! 後でお礼にうかがいますねって、先輩……ワタシと一緒にお弁当食べましょ? ね?」


いや、「ね?」ってもう連れだす気満々だよね?

ちょっと俺としては凄い遠慮したいんだけど。

ほら、クラス全員に見られちゃってるよ?

後で絶対気まずくなるやつだよこれ。

どうしよう!?

誰か……誰か助けてくれ……!


チラリとサラダのほうを見る。


オイィィィッ!!

「南無……」じゃねぇよ!

あと合掌もやめろ!


もうダメだ、本格的に俺は助からないようだ。

このまま俺は午後の授業を白い目で見られながら過ごさなければならないのか……。

……いや、一つだけ助かる方法がある。

この状況を打破する方法が。

だがそれは同時にこの場を混沌(カオス)に巻き込むということ。

俺も無傷ではすまないかもしれない。

しかし四の五の言っている暇はない。

やらなければ殺られるんだ。


ピィーーーーーーー


「あら? 拓也君の指笛っぽい音が聞こえたから来てみれば、ちょっと私の拓也君を連れてどこに行こうというの?」


本当にキター!!!


俺が教室から出そうになったその時、霧島さんが出入り口に立ちふさがる。

来るかどうかはぶっちゃけ賭けだったが忠犬美奈は俺の助けを呼ぶ声に答えてくれた。

化け物をぶつけるならやはり化け物というわけだ。

さしづめミナVS(バーサス)ハルカといったところか。


「私の拓也君……? ちょっと、佐藤先輩がいつあなたのものになったんですか!? 先輩はワタシのものなんです、適当な事言わないでください!」

「笑わせるわね。拓也君は私に一度告白しているのよ? もう彼の心は私のものなの。ポッと出のあなたじゃ敵うはずないのよ」

「ぬぐぐ……っ! でも佐藤先輩は不良に絡まれているワタシを助けてくれたんです! 普通全然知らない女の子のためにそこまでしませんよね!? だからなにかしら先輩にもワタシに対する気持ちがあるはずなんです!」


互いに勝手な事を言いあう二人。

頼む、お願いだ。

ここで両方消滅してくれ。


「大体、あなた後輩じゃない。目上の者に対する礼儀がなってないわね」

「ふーんだ! ワタシより年上だろうが譲りたくないものは譲りたくないんです!」

「良いわ……そこまで言うならはっきりさせましょ? 拓也君にとってどちらが本命なのかを」

「良いですよ! 望むところです!」

「さぁ、拓也君どっちが本命なの!」「さぁ、佐藤先輩! どっちが本命なんですか!」



「サラダ……ごめんな?」


教室に帰って来ると両頬に赤いもみじを咲かせたサラダが座っていた。


「ほんなのふぁいしふぁほほらねーよ(訳:こんなのたいしたことじゃねーよ)」


俺はサラダを空蝉として教室から抜け出していた。

その結果、俺は午後の授業を白い目で見られながら過ごした。

南無。

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