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雲
少し長い間、夢を見ていた
もくもくと立ち込める雲の向こうに
ぴかぴかと光るものがあると信じてた
切れ目から覗く真っ白な……
それを褒め称えて、羨んで
むずむずする身体を我慢させて
時が迎えに来るのを待っていた
この手を掴まえて、きみはそこへ僕を運んだ
雲は晴れて、僕はそこへ立っていた
僕は、辺りを見渡した
頭が痛い
確かにここは、ここだ
夢に見ていた真っ白な光、確かにこの場所だ
でも、ここは……
僕の手を掴まえたきみを探す
姿はもう見えない
……遠く、
遥かに遠く、
消えていったはずの雲が、僕に悲しく手を振るのが見えた
シンボリックなものなので、少し解説。
「実態」「ギャップ」というワードを意識して読んでいただけるといいかも。
この詩を書いた当時、A・チェーホフの戯曲『かもめ』の、第四幕のセリフから着想を得たように記憶してます。