部屋
「誰かに追いかけられたの?ここにいれば大丈夫、絶対に見つからないよ。この部屋は好きに使ってくれていいからね。私はもうこの部屋は必要ないからさ…」
ーバタンー
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小さな頃から夢で追いかけられると必ず逃げ込める部屋があった。
その部屋は夢の中でしか出てこない部屋、家の2階の額縁の裏。覗くと引き戸がある。
そこにいればどんなものでも必ず逃げ切れる部屋。おばけや人さらいなんて怖くなくなるほど頼もしい部屋だった。
その部屋は埃っぽく、ログハウス風の部屋で二段ベットと木の机と椅子があった。
私はよくそこで遊んだりした。
誰かをその部屋で見たのは2回しかない。
私がとても小さい時、その部屋に最初に入った時は中に誰かいた。
「誰かに追いかけられたの?ここにいれば大丈夫、絶対に見つからないよ。この部屋は好きに使ってくれていいからね。私はもうこの部屋は必要ないからさ…」
そう言い大人に見えたお姉さんは扉をくぐり出て行った。
1回目、人に会った時である。
その日から何年も夢の中でその部屋に逃げ込んでは遊んで目を覚ました。
何年も何年も…そんなある日、私は部屋の中から夢が始まった。
そんな夢初めてのことで少し新鮮だった。そういえば部屋に入った夢はあるが、部屋から出た夢は見たことがないと思った。
私も随分と成長していた、初めて部屋に来たことを思い出し、懐かしい気持ちになった。
そう思ってた時、誰かが慌てて部屋に入ってきた。2回目人に会った時である。
「誰かに追われたの?大丈夫、ここにいれば絶対に見つからないよ。
もう、この部屋は好きに使ってくれていいからね。私はこの部屋が必要なくなったみたいだから。」
なぜかスラスラとこんな言葉が出た。
そして部屋に用事がなくなったとも思い、初めて部屋から出た。
ーバタンー
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目が覚め、その日以来、何度寝てもその部屋は出てくることがなかった。
今はもしかするとまだ誰かに使われてるかもしれない部屋。誰かを助けてるかもしれない部屋。そんな部屋を懐かしく思った。
ここまで読んでいただきありがとうございました。誰かこの部屋を見たことある人いませんか?夢の中で誰かに使われてると良いです。