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第4話 「奏の夢、奏の想い」

〜夢の中〜


私の前には、今は亡きお父様が私をじっと見て、そして言いました。


かなで、その力、オレのために尽くしてくれ」


と…。


「はい、お父様…」


そう言って私は軽くうなずくのでした。





【10月某日】



〜現実世界・奏の部屋〜


「…!!」


私はベッドから飛び起きた。


なんだ、夢でしたか……


私はホッとため息を漏らしました。


どうにも最近お父様の夢をよく見ます。


まだお父様のことを(心のどこかでいつまでも)引きずっているんでしょうか。


私はベッドから起き上がり、掛け布団を整えると窓を開けました。


夏も終わり、涼しい風が私を通り抜けて部屋に入ってきます。


「気持ちいいですね。……そうだ、早く着替えてお姉様たちの食事を用意しないと」


冷えるといけないので窓を一旦いったん閉めると素早く着替えました。


夏の終わりごろ、複雑な制服の着替えにも慣れなくて、


お姉様に迷惑をかけることもあったけれど、


お姉様が教えていただいた今は楽に着替えられるようになりました。


色々と感謝しないといけませんね。






「では起こしに行きましょうか」


朝食を作り終え、2階へ続く階段を駆け上がりました。


無月むつきはいつもお姉様に任せています。


いつも通りの朝、そして今日もいつも通り時が過ぎていくのでした。


ですが夜だけはいつもと違い、眠りにつくと私は再びお父様の夢を見ました。





〜夢の中〜


また私はお父様の前に立っています。


「奏、お前は強い、だから人一倍働いてもらわなければならない」


と言うお父様の言葉に


「はい。お父様がお喜びになるのでしたら……」


また私は素直に頷くのでした。







「ぐああっ!」


「これはもらっていきます」






「よくやってくれたな、奏偉いぞ」


お父様は大きな手で私の頭を撫でてくれました。


「………はい。ありがとうございます。お父様……」


そして私はわずかに頬を朱に染めていました。





「何のようだ?」


「お父様の障害となるあなたたちには死んでもらおう、と思って」






「これからオレの息子たちが攻めてくる。奏、任せたぞ」


「わかりました」






「なかなかやりますね」


「そりゃあ『お姉様』ですからね」






「ぐあああぁぁっ!!!」






「はっ!!……はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ……」


またお父様の夢。


一体私はどうしたのでしょう?


「…今日は休みでしたね。お父様のお墓参りでもした方がいいんでしょうか」





〜ダイニング〜


「お姉様、今日午後からお父様とお母様のお墓参りに行こうと思うのですがいいでしょうか?」


朝ごはんの途中で、私は目の前で食事をされているお姉様に言い出しました。


「お墓参り?そういや夏に行ってからそれきりだったよね。

私も行ってみようかな。お兄ちゃんもどう…?」


お姉様はすぐに同意してくださり、隣にいる無月に話しかけました。


「そうだな。ま、あれでもオレたちの親だからな。よし、オレも行く」


というわけで、私たちはお墓参りに行くことになりました。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「涼しいから夏よりも気持ちいいね。夏の暑さも好きだけどさ」


祢音ねおん〜、奏〜、オレは準備できたぞ」


「では出発しましょうか」





お父様とお母様のお墓は水月島みなつきじますみ


海が見える墓地の真ん中より少し右の方にあります。


私は夏に一度行っただけですけれど、ちゃんと覚えていました。


お父様の魂はあの世へいくことなく消滅したと聞いていましたが


(お父様の死について知りたい方は本編『終わりなき闘争曲』参照してくださいね)


せめてお墓だけでもということで私とお姉様と無月がそれぞれ任務で稼いだお金を出し合って造ったものです。


その時の私は調律師になりたての頃でしたので、


給料はあまり多くもらえませんでしたし、お金もあまり持っていませんでした。


なので、位牌代のほとんどをお姉様と無月に出してもらったのです。


「やっと着いたね」


私たちはようやくお父様とお母様のお墓の前に着きました。


まだお墓は少し風雨にさらされて汚れていますが、


造ったのが最近でしたのでそれでも他のお墓と比べると綺麗に見えます。


「さてピカピカにしないとね!」


お姉様はお供えする花を持ってやる気満々のようです。


私は水をみに行き、そして無月には雑巾で墓石をいてもらいました。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



チーン



掃除が終わり、お墓の前に3人で並ぶと、私がりんを鳴らして3人で拝みました。




お父様、お母様、ご無沙汰しています。


そちらでは元気にしていますでしょうか?


私はお姉様と無月と楽しく暮らしています。


学園も初めは人見知りして困っていましたが、お姉様たちのおかげで友達もできました。


これからも危険な任務につくこともあると思います。


そのときは私たちを見守っていてください。


また来ます。




「…終わったか?奏?」


「はい」


「じゃあ帰ろっか」


「はい」




〜奏の部屋〜


その夜、私は初めて日記を書きました。


お姉様に聞いたところ、日記というものはその日あった印象に残ったことを書きしるし、


思い出として記録として残しておくことだと教わりました。


私は日記帳を持っていなかったのでルーズリーフに今日の事を書き記しました。




『今日、私はお姉様と無月とでお父様とお母様のお墓参りに行きました。


夏以来のお墓参りでしたが、私はお父様とお母様に会えて嬉しかったです。


私は時々家族の在り方について考えます。


今、家には私たちだけでお父様とお母様はいません。


3人だけでもこんなに楽しいんですから、さらに2人増えればもっと楽しいと思います。


1日だけでも5人で過ごしてみたいです。誰一人欠けることなくです。


私もお姉様もお父様もお母様も、もちろん無月も。


でもそうはいきませんよね。私はお父様に与えられた命を精一杯生きていきます』




「ふぅ……」


私は日記を書き終えると、それを机に挟み、ベランダへ出てみました。


「……綺麗」


空を見上げると雲一つなく、綺麗な満月が輝いていました。



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