第32話 「天照様の歌」
本部は一応戦う事を第一に考えて作られた建物だが、
実はここで暮らす者のために娯楽関係の施設もちゃんとある。
オレたちはその中の音楽館に来ていた。
ひょんな事で足を運んだ音楽館には大勢の人がいた。
目的はここで行われる天照様のコンサートだ。
企画したのは久遠。
久遠に招待…というか無理矢理チケットを買わされて任務後にやってきたわけだ。
人は100人は確実にいそうだ。
もうコンサートは始まっていた。
自由席…というか椅子がないから全員立ち見だ。
だから前の方に人数が密集している。
声は後ろの方でも十分聴けたのでオレたちは一番後ろに立つ。
歌は綺麗だった………と思う。
とにかく、終わった直後なのにもう一度聴いてみたいと思った。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「いやぁ儲かってしょうがないわ」
全員退けるとそこには天照様と札束を数える久遠がいた。
「久遠、私を金儲けの道具にするのは止めてくれませんか?」
「いいじゃない。
戦いに疲れた戦士は癒やされ、私はその儲けた金で研究して癒される。
一石二鳥じゃない」
「私は得をしていないような気がするんですが…」
「まぁまぁ、あなただって人の役に立って嬉しいでしょ?」
「前はそんなこと言われて渋々承諾しましたけど…やっぱりおかしいんじゃ…」
「………よし、まぁまぁね。
こんだけ儲かるなら定期的に開催しようかしら」
「久遠聞いてますか!?」
「聞いてないわよ。
……ってあんたたちまだいたの?」
顔を上げてオレたちを見る。
ようやく気づいたのか。
「歌、うまいんですね」
祢音が天照様に声をかける。
「いやぁ…それほど――」
「それほどでもないわよ」
天照様が謙遜の言葉を言っている最中に久遠が割り込む。
「歌がうまくなくても崇拝…というか…アイドル的なところがあるからね。
顔が良けりゃ少々下手でも問題ないわよ。
事実人も金も結構集まったしね。
ところでどう?歌を聴いて何か感じた?」
どういうことだ?
「まぁ……綺麗だなぁって」
「もう1回聴いてみたいと思った?」
「そうだな…思った」
2度と聴きたくないなんて言えるわけがない。
実際は聴いてみたいと思ったけどな。
「本当?社交辞令なんてしなくていいわよ」
そういう事は久遠も考えているようだ。
「本当だ」
「祢音と奏は?」
「わたしも思いました」
「私もです」
2人も同じように答えた。
「よし、成功ね」
なぜか久遠はニヤリとする。
「成功??」
「この歌、もう一度聴きたいと思うように精神を操作するのよ。
歌によっては滅茶苦茶な事はできないけど
自分の中にある感情を増幅させるとかその程度の事ができる」
「精神を操作!?」
「リピーターを増やすためよ。
これでさらに金が入ってくるわけ」
そうしてニヤリと笑う。
こいつ…。
「そんなに金を集めるなんてどうしたんだ?」
「ん…?まぁ…物を造ってるとね、金がかかるのよ。
一応いくらかはこの組織から支給されるんだけど、失敗すると全くお金が入らない。
ただの金と時間の浪費」
ふーん。
賭け的な事があるんだろうな。
「あ、CD化すればさらに儲かるかも…」
「絶・対・に・止めてください!」
とんでもない構想…いや、野望に天照様は強く反対した。
「冗談よ。さすがにそこまではしないわ。
さぁて…さっそくこれを使って何か造ろうかしらね。
じゃ、私はさよならよ。バイバイ」
久遠は札束を持ち、満足気に去った。
「まったく、久遠は…。
皆さん来て下さってありがとうございます」
「いい歌でしたよ。
精神が操作されてたって知った時は驚きましたけど」
祢音が天照様へ感想を言うと天照様は小さく笑い、そして溜息を吐いた。
「本当に申し訳ないです。
どうせならちゃんとした歌が歌いたかったです」
「今度聴かせてもらっていいですか?
あの…天照様がよければ…ですけど…」
祢音が控え目に言うが天照様はさっきより笑って答える。
「はい、もちろん。
今度は何もなしで」
天照様との小さな約束をしてオレたちは音楽館を去った。
現状としては本編では2作執筆中
1つはバトル描写の問題で停止中。
バトル描写が単純でうまく書けません。
1つは中編としてコラボを書き始めようかと…
1通り完成したら投稿していきます。
18禁の方ですが全4か5作中、仮ですが2作作りました。
せっかく作ったんで全部完成してから投稿します
いつになるかわかりませんがw
感想&評価お待ちしてます。