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第31話 「魅夜の依頼」

「はぁ…護衛…ですかぁ…」


「はい。あなたは月詠様を護衛してください」


説明すると長くなるのだが、今回の任務はオレ1人で魅夜の護衛。


とある魔法のない世界で魅夜が演じている人物に脅迫状が送られた。


『チップを渡せ さもなくば殺す』


チップとは魅夜を頭としているグループがその世界で見つけたものだ。


どうやらその世界の超大富豪の遺産のありかがわかるそうで、


それは世界の大富豪から見てもかなりの額になりそうで、


争いの原因になりかねないそうで、


魅夜がそれをぶっ潰す事で決着をつけるということだそうだ。


そのグループの主催するパーティのラストに関係者の目の前でそれを行うらしい。


オレはその護衛をしろというわけだ。


オレ1人で魅夜の護衛ねぇ…。


魅夜1人でなんかできそうな気がするんだけど。


てゆーかオレ一応殺し屋なんだけど。


「一応うちは殺し屋ですよ?


護衛はやっぱり向いてないかと。


この前も3人いて結局未遂にはできませんでしたし」


「ですが月詠様直の頼みですしね…」


まぁ………いいか。


「わかりました。


ただ小型のナイフと銃が欲しいんですけど頼めますか。


さすがに剣は長くて護衛時には扱いにくいですので」


人混みで長物振り回すわけにもいかないしな。


練習もしてきた。


「わかりました。用意します」





〜本部・食堂〜


「というわけでオレ1人での任務だ」


「へぇ…珍しいね」


「まぁそろそろ一人立ちしろって事だろ。


いつまで経っても3人1組じゃあ効率が悪いしな」


「はぁ…」


珍しく溜息をつく奏。


「どうした?」


「いえ…私たちの支援無しでは兄さんの任務成功はほぼありえません。


兄さんが泣いて帰ってくるのが目に見えて…」


「不吉な事を言うな」


そろそろ時間か。


「じゃあ後は頼むぞ」


「うん」





〜控え室〜


「さて、魔法を使ってないからって油断しないでよ」


オレが背を向けているカーテンの向こうで魅夜は衣装を着ている。


「当たり前だ」


魔法がなくても殺すことは可能だ。


「信頼してるからね」


「ああ」





〜パーティ会場〜


つまらないな…。


目の前で魅夜がどっかのお偉いさんと談笑している。


オレはその隣で周囲を警戒しているわけだ。


―暇?―


魅夜が念話で話しかけてくる。


―いや、仕事だしな―


―そう―



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



さて、とうとう盛り上がるわけもないメインイベントの始まりだ。


魅夜が壇上に立ち、オレがその隣の1歩後ろにいる。


ここからはよく会場が見渡せるが、誰もがいい顔はしてない。


脅迫してきそうなヤツはいくらでもいる。


演壇の上にはチップがあり、魅夜の手にはトンカチ。


そしてそれを大きく映すカメラもある。


「では…破壊します!」


宣言し、右手を振り上げる。


その時、オレは魅夜が今まさに狙われている事に気がついた。


「っ!」


「きゃっ!」


何も考えず、オレは魅夜の体を押し倒した。


魅夜の頭辺りの高さを銃弾が通った。


銃弾はその後ろの壁に当たった。


すぐ放たれたであろう場所を見ると、


開けられた窓の隙間から何かが出ていくのが見えた。


「っやろ!」


「待って!」


追おうとするオレの手首を魅夜が掴む。


「今のあなたは護衛!


私がもう狙われてない保障はないのよ!


だからここにいて!」


眉をひそめて心の中で舌打ちをする。


「わかった…」


結局、その後魅夜が狙われることはなかったが、


敵…魅夜に撃ってきた暗殺者は捕まらなかった。





〜控え室〜


現在開始前と同じような状況になっている。


「ありがとう。


自分の事で精一杯だったから助かったよ」


「ああ…」


祢音は感謝しているようだが、オレは不機嫌だった。


魅夜を守ることはできたが、相手を捕まえることができなかった。


元々オレは殺し屋だからその辺が関係しているんだろう。


守るための技術もまだまだだし、これは鍛える必要があるな。


「うしっ!」


「急にどうしたの?」


「いや、別に…」


今回は魅夜が守れた、任務達成できたしOKということにしよう。

暗殺者との決着ははたしてあるのか!??

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