第30話 「バレンタインデーその2」
バレンタインデーとかクリスマスとか…そういう行事で一度やったネタは避けようと思っていたのですが、案外作れたので投稿しようと思います。
〜本部・奏の部屋〜
「………何やってんの?」
暇だから何をしてるかと奏の部屋へ行けば祢音と奏がいた。
ただ、奏は妖狐を憑依させているようだが。
そして祢音は奏の尻尾を抱き枕のように抱いて寝ている。
「いえ、なんか気持良さそうだからやらしてくれと」
「ふ〜ん」
まぁ確かにふさふさして気持良さそうだな。
「言っておきますけど、兄さんには触らせませんから」
そう言って奏は尻尾を揺らす。
「あ、そ。
もう少しであいつらが来るんじゃねぇのか?」
あいつらというのはリルラ・ソルダートのことだ。
バレンタインのチョコ作りとかなんとか…。
「その時にはお姉様を起こしますよ」
〜食堂〜
「あれはもちろんオレの分だよなー?」
「なんでお前の分なんだよ」
食堂では祢音と奏をリルラがチョコを作っている。
そしてそれを眺めるオレと…なぜかメデス。
リストは修行だとか言ってどっかへ行ってしまった。
なかなか一匹狼なヤツだ。
「できあがりが楽しみだ」
「だからなんでお前が楽しみにすんだよ」
「だからってお前の分とは限らねぇだろ。
お前の知らない男だったらどうする?」
「べっつにぃ…勝手にすればいいさ」
「あ…時間かかりそうならちょっと出てるわ」
「戻ってこなくていいぞ」
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「よし!」
食堂の机でダラ〜ンとしてると台所で声がした。
「お、できたか」
「お兄ちゃん、メデス呼んできてくれない?」
は?
「なんでオレが…」
「いいじゃん。どうせ暇でしょ?」
確かに…そりゃそうだ。
「わかった」
〜廊下〜
「ちっ、どこ行ったんだよ!」
あいつの行きそうな所は結構回ったと思うんだけどな。
「手当たり次第回るしかないようだな」
で、目の前にあったのが……墓地。
いや、まさかな。
まぁ、とりあえず行くか。
〜墓地〜
「お」
予想に反してメデス発見。
「こんなトコにいたのか」
「よー。チョコできたのか?」
「ああ…。誰の墓だ?」
「一応…妹のだ」
妹ぉ…そんなの組織にいたのか。
墓に刻まれた文字を読むと…ルリア・カルレット…。
「って、ルリア・カルレットて書いてあるぞ」
「妹だよ。神話での位置で」
あ、そういうことか。
「あいつの方が年上なんだけどな。
宴会すれば兄に先に酔わせるわ、費用全部押しつけるわとかで色々苦労したよ。
そっちの妹に比べれば可愛くもなんともないんだけど、妹だったよ」
へ〜。
「そういう位置づけだといえ、兄妹でいるとは思わなかったけどな」
「人前ではなかったからな。恥ずかしがり屋だし。
はい終了!祢音ちゃんのチョコ食いに行こうぜ」
なんつー兄だ。
〜食堂〜
「うまー!鼻血出そ」
そうして鼻を押さえるメデス。
出すな。
「うまいけどさぁ。かなり甘い…」
「確かに甘いですね…」
隣で食ってるリストも同意のようだ。
「チョコだから甘いのは当たり前ですよ」
確かにリルラの言う通りだ。
「おいしいんだよね?
よかった…これなら大丈夫かも」
「ん?何が?」
おいしいなら大丈夫……誰かに渡すとか?
「あ、いや、何でもないよ」
誤魔化したな。
こうなると気になるな。
暇だし丁度いい。
「誰かに渡すのかぁ?」
ちょっといじわるっぽく言ってみる。
「あーまーそーんなートコかなー」
祢音は間延びした声で答えた。
「マジで!?誰に!?」
これに大きく反応したのはメデス。
「言うほどの人じゃないって。
じゃあ渡してくるね」
そうして食堂から出て行った。
「お前らは誰に渡すか聞いてるのか?」
目の前にいる奏とリルラに訊く。
「いいえ」
「私は知ってますよ」
そうか…って何ぃ!?
「奏は知ってるのか!?」
「ええ、かっこいい男の人に渡すそうです。
もうメロメロメロンパンだそうです」
「なんだメロンパンって…」
「気になりますねぇ〜おもしろい展開ですねぇ〜無月さん」
メデスが肩を組みながら言ってきた。
「変なしゃべり方をするな。
まぁ気にはなるし、おもしろそうだな」
「趣味悪いですよ」
「「確かに」」
奏が言い、それにソルダート姉弟も同時に同意する。
「まぁまぁ、そう言いながら気になるだろ?
ちょっと見てくる」
そうしてオレとメデスは祢音の後を追いかけた。
〜廊下〜
「っと、いたぞ」
廊下で祢音と見知らぬ1人の男を発見。
「あーあいつは…」
メデスは知っているようだ。
「誰だ?」
「おいつはオレとここで美男の一、二を争う男だ。
この時期になるとあいつの部屋は花束やケーキ、チョコで一杯になるのだ。
名前は知らん」
なんだその説明は。
ホワイトデーは……欧米ではないからそんな大変でもないのか。
それに見た感じ渡すよりもらう方が多そうなヤツだし。
「お前はもらってるのか?」
「正直言うとぼちぼち…だな」
まぁ、お前の素を知ってるヤツが多いからな、ここは。
「それにしても話が聞こえないな。
もう少し近づいて――」
「バカ野郎、角から見なけりゃバレちまうだろうが」
廊下は見通しがいいからな。
何を話してるかは知らないが楽しそうにしている。
「ふ〜む、これは兄離れも近いな」
メデスはニヤニヤしている。
本命と決まったわけじゃないけどな。
「まぁ…それならそれでいいよ」
バレないうちに退散だ。
〜食堂〜
「男だったぞ」
「あ、そうですか」
奏の反応はやはり薄かった。
「お前も姉離れが近いなー」
「それオレの――いてっ!」
不要な事を言いかけるメデスの足を踏む。
「祢音ちゃんもやっぱ恋する乙女ってわけだな」
「お姉様が恋……正直…意外ですね」
「お前ほどじゃねぇよ」
「帰ってきましたよ」
出入口を見ると祢音がやってきた。
「お姉様、兄さんとメデスが覗きやがってましたよ」
「「なっ!?」」
「あー見てたの。趣味悪いなぁ」
「で?あいつの事好きなのか!?」
メデスが身を乗り出さんばかりの姿勢で訊く。
「いやぁ…別にそういうわけじゃないよ。
ただ…ちょっと手伝ってくれたお礼にね」
「いや奏ちゃんがメロメロメロンパンだって――」
「なんですかそれは??」
そう言ったはずの奏が真っ先にいつもより2割増疑わしげな声をあげる。
「みんなの期待する展開にはならなくて残念だったね」
舌を出して台所へ消えていった。
あ〜あ、せっかくいい暇潰しができそうだったのになぁ。
まぁ…いいか。
ちなみにこの作品はサザエさん方式を採用してますw
感想&評価お待ちしてます。