第29話 「久しぶりの…」
お久しぶりです。
「あーーー!あーーー!あーーー!」
「うるせぇっ!!聞こえねぇだろ!」
「兄さんの方がうるさいです」
とまぁこんな事をやってるわけだが、
どういうことか説明すると現在ホラー映画視聴中なわけだ。
ホラー映画を見れるようになりたいという祢音の希望で
わざわざレンタル店まで行ってメジャーなものを選んできた。
もちろん今は夜だ。
祢音は半分ぐらいまではなんとか見ていたようだが、
結局ビビッた祢音はテレビから視線を45度外し、
目をつむり、耳をふさいで、あーあー言っている。
「嫌だったら部屋にいればいいだろ」
「一人はいやーーーーーー!」
「わがままなヤツだ。ちゃんと見ろよ」
オレは祢音の手首を掴み、強引に耳元から手を離させる。
「ちょ…やーめーてー!やーケダモノーー!」
おいおい…。
これ以上騒がれても仕方ないから手を放してやった。
ま、おもしろいからこのまま映画は流しておくけど。
「はい、お疲れさん。終わったぞー」
たまに祢音を弄ったりしながら最後まで見た。
「さっさと寝ろよー。
あ、そうそう、夜中にトイレなんかついてかねぇぞ」
「わたしはそんなに子供じゃないよ」
「そ、じゃあついてかねぇからな」
〜夜中・無月の部屋〜
コンコン
コンコン
ノックの音で目を覚ます。
「お兄ちゃ〜ん…」
でた…。
「起きてる〜?」
シカト中…。
「お〜い」
ゆすってきた。
「何だ?」
わかってるがあえて訊く。
「ついてってくれない?」
寝室は2階にあり、トイレは1階だ。
多分ビビりながら進むには十分な距離だ。
「奏に言えばいいだろ。あいつなら喜んでついてくぞ」
「寝てるのに悪いよ」
オレは別にいいってか…。
「ついてかないって言っただろ」
「うう…そう言ったけどさー。
わたしが史上最悪の事態に陥ってもいいっての!?」
「自分の部屋でしろよー」
「もう知らない!」
バタンとドアが閉まり、バタバタと階段を降りる音がした。
はい、おやすみー。
〜翌朝・ダイニング〜
「おーっす」
「おはようございます」
下に降りるとテーブルに座って朝飯を食う奏がいた。
「祢音は?」
「部屋です」
「まだ寝てるのか?」
「朝食は食べましたよ」
「そうか…で、オレのは?」
テーブルに乗っている朝飯は奏が今食べてるのだけ。
「お姉様が食べました」
「2人分!?」
「2人分」
「祢音は!?」
「部屋」
奏はオレの質問に即答していく。
ん〜…どうしたことだ…?
「謝ってこればいいじゃないですか。怒ってましたよ」
「………怒ってた?」
「はい。
昨夜兄さんがトイレについてってくれなかったと近所に恥ずかしげもなく」
……そうか、そういやそんなことあったな。
「仕方ない」
2階へゴー。
〜祢音の部屋前〜
「ねお〜ん。あー悪かった。謝るよ」
と謝ってみるが反応はない。
「おーい、起きてるか〜?」
………やっぱり反応はない。
無理に出ない方がいいかもな。
〜ダイニング〜
「朝食、作りましょうか?」
降りてきたのがオレだけだということで結果を理解したようだ。
「ああ、頼むわ」
「さっさと仲直りしてくださいよ。
狭間にいる私の身にもなってください」
「はいはい」
食い終わったら任務の報告書の仕上げでもするか。
〜無月の部屋〜
「な…」
仕上げをしようと部屋に来てみれば、見つけたのは切り刻まれた書きかけの報告書。
「ねおーーーーーーん!!」
〜祢音の部屋〜
「お前報告書なんてことしてくれんだ!
もう仕上げだったのによぉ!」
バタンとドアを開けると同時に叫んだ。
「また書けばいいじゃない」
祢音はベッドに寝転びながら他人事のように返す。
「お・ま・え・が・書・け!」
「い・や・だ!」
報告書は責任者的な位置にあるオレが
書かなければならない決まりなんだがな。
「とうとうオレをキレさせちまったようだな」
「兄妹喧嘩なんて何年ぶりだろね」
祢音もベッドから起き上がって対峙する。
魔法なんか知らなかった頃にしたっきりだ。
「魔法はありか?なしか?」
「ありでいいんじゃない?」
なら結界張っとかないとな。
「じゃあ行くぞ!」
「いいかげんにしてください」
ん?かな――
トスッ
「っつ…!」
首に衝撃が…。
奏…お前なぁ…。
〜リビング〜
ここは…リビングか…。
動けない…!?
と思ったら鎖で縛られてるだと!?
「起きましたか」
「奏…どういうつもりだ?」
「少しは頭を冷やしてください」
そしてストンと頭に冷たいものが乗せられる。
氷水のようだ。
「だからって鎖で縛るのかよ…」
「縄でしたら兄さん燃やしますからね。
とにかく、今回は兄さんが悪いです。
私はお姉様を見てきますから、頭冷やしといてくださいね。
あ…報告書は私が書きますから」
ドアが閉まり、階段を上がる音がする。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
現在リビングのイスに向かい合うようにしてオレと祢音が座っている。
「はい。さっさと謝ってください」
「「……………」」
「ごめん!」
「ごめんなさい!」
同時に言った。
「いや、お前は謝らなくていいんだよ」
「ううん。わたしも悪かったよ」
「いやいやいやオレの方が悪かったし」
「でもわたしが意地はってたから」
「オレだって――」
「もういいですか?」
奏がオレと祢音のやりとりに呆れて言う。
「「あ…」」
「これで一件落着ですね。
では私はこれで」
奏は2階へ上がって行った。
取り残されたオレと祢音。
「これはもう水に流すってことでいいよね?」
「ああ。お詫びに何かしてやるよ」
「ふふっ、そうだねぇ。
こないだの借りもまとめて返してもらおうかな」
「あまりひどいのは勘弁な」
「うん♪」
手刀で気絶するのは当たり前です!w
まぁ現実世界では色々厳しいようですが。
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