表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/47

第28話 「     」

今回長いです。

分割してもよかったんですが、一応短編なんでまとめました。

今回久々に戦闘有なんですがあまり期待しないでください。

後書きに今後の決意あり

〜奏SIDE・奏の部屋〜


「…っ!!?」


悪夢でも見たような寝起きでした。


実際、悪夢を見たのかもしれません。


胸の上に何かっているようなざわざわとした感じがしてます。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


最近こんなのばっかりです。


酷く気分が悪い…。


酷くむしゃくしゃする…。


酷く切ない…。


酷く憎い…。


でもどんな夢だったか思い出せません。


でも…たかが夢です。


今日ものんびり過ごしましょうか。





〜無月SIDE・食堂〜


食堂で飯を食った後、奏は一人立ち上がった。


「…ん?どっか行くのか?」


奏が最初に立ち上がるのは珍しいことだった。


「はい」


「どこに?」


「…どこへ行こうと私の勝手です」


いつもの感情の読めない口調ではなかった。


明らかな苛立いらだちが見えた。


「奏ちゃん、どうしたの?」


祢音も異変に気づいたようで尋ねる。


「なんでもないです。


では、お先に失礼します」


そしてさっさと去ってしまった。


「なぁ祢音…最近奏おかしくないか?


なんつーか…敵意ってのを感じるんだよ」


「確かに…そうだね、私に対しても時々つれないよね」


祢音にもそうだとするとこれは問題だな。


「心配?」


「まぁな。


………………待てよ。


また久遠の仕業じゃねぇのか?」


「あ、なるほど。


訊きに行ってみようか」




〜久遠の部屋〜


「そんなの知らないわよ。


素っ気なくする薬?そんなの造ってもつまらないし」


心外だとばかりに眉をせばめて言う。


「そう…か…」


「奏は特に何も言ってない?」


「訊いても何も答えてくれませんでした…」


奏にあんなこと言われたの初めてだからな。


「そんなにひどいの?


あのこがねぇ…。


私も短気な奏は気に入らないし、できるだけ調べてみるわ」


「お願いします」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★





だが奏の性格が変わることはなく、日増しにひどくなっていった。





〜奏SIDE・奏の部屋〜


「…………っ!」


何で!?


兄さんとお姉様に苛立つ理由はわかってる。


毎日見るあの嫌な夢。


最近その夢の内容がわかってきました。


だけど…!


そんなのもう割り切ったはずなのに…!


2人にあたっても意味ないのに…!


お父様が還ってくるわけ…ないのに…!



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



〜夢の中〜


「お父さんのこと…残念だったな」


「誰!?」


真っ暗な中に誰かの声が聞こえてきます。


「あいつらが来なかったらずっと幸せに過ごせたのに」


「それは…兄さんとお姉様のお母さんを殺したから…組織を裏切ったから…。


それに仕方なかったんです。


お父様のせいで兄さんが傷ついて、それで出てきた堕天使を封印するために…」


「だから許せるの?


ちゃんと納得したのか?


過ごしてきただろ?


お父さんのお世話してきただろ?


褒めてもらえただろ?


楽しかっただろ?


嬉しかっただろ?


それをあの2人は、組織は奪ったんだよ。


その暮らしを…」


「でも新しい居場所をくれました」


「じゃあその苛立ちは何?」


「!」


確かに2人の顔を見ると胸が掻き毟られるような、色んな負の感情が湧き出てきます。


たかが夢なのに…。


「ね。


納得したように思いこんで心の底では納得してないんだ」


「……………」


「ほら…その苛立ち、ぶつけちゃいなよ。


いつまでもそんな気持ちでいるの嫌だろ?


それの解消法もわかってるはずだ」





〜奏の部屋〜


「もう嫌ぁ!!!」


心は嫌な気持ちで一杯です。


こんな気持ち……掻き毟って体から取り除いてしまいたい。


「どうしたの!?大丈夫!?」


扉の方からお姉様の声が聞こえてきました。


「大丈夫…です。


先に朝食を食べて下さい。


後で行きます」


「そう……じゃあ先に行ってるね」


そしてお姉様の声は聞こえなくなりました。


姿が目障り、声が耳障り、匂いも…鼻障り?


とにかく嫌です。


「もう…ダメ。耐えられない」


私の足は自然と食堂へ動きました。





〜無月SIDE・食堂〜


「奏ちゃん、なんとかしてあげたいけど私たち見ると苛立つみたいだし」


「病院行った方がいいんじゃないか?」


マジでそう思えてくる。


「あ、奏ちゃんだ」


奏は真っ直ぐこちらに向かってくる。


殺気?


奏からはバレバレの殺気が感じられた。


「死んでください」


奏は剣を取り出し、斬りかかってきた。


「うわっ!」


バレバレの殺気が感じられたから難なく避けられたがどういうことだ?


「はああっ!」


奏は続けて斬りかかる。


「ちっ!」


食堂には人もいるってのによぉ。


「何やってるお前!」


「答える必要はありません!」


うーむ、これは力づくか?


「どうするの!?」


少し離れた所から祢音の声が聞こえる。


「祢音、お前は離れてろ。


オレが止める」


オレも剣を出した。


食堂にいたヤツらはオレたちから遠く離れた所にいる。


少々暴れても問題はない。


だが机とかが邪魔だから宙に浮いておく。


「殺しにくるなら覚悟しろよ」


キィィン


まさかまた奏と戦うことになるとはな。


オレはあの時とは違うぞ。


まぁ奏もだろうが…。


『狐火』


『火球』


互いの火がぶつかりあってできた煙の中から奏が現れた。


読めてる。


胴のあたりを剣の側面で叩く。


が、奏の姿は煙のようにゆらめいて剣をすり抜ける。


幻か!


背後に回る奏の姿が見えた。


くっ。


剣での攻撃を剣で防ぐ。


空いた左手で奏のえりを掴みに行く。


が、手でパシッと払い除けられることで邪魔される。


一旦距離をとる。


「兄さん…。


妖狐!憑依!」


奏は妖狐を呼び出し、憑依させた。


おいおい、マジかよ。


こんな所でソレを使うか。


だったらオレも使わなきゃな。


そしてオレもフェニックスを憑依させた。


『鞠』


奏の手に鞠が現れる。


奏は鞠を落とし、オレめがけて蹴って来た。


どうしてあるかは知らないが、普通に蹴った以上のスピードだ。


オレはその向かってきた鞠を斬った。


が、その鞠は煙のように揺らめき、さらにそれを突き破るようにもう1つの鞠が現れた。


また幻か!


「ってぇ…」


左手でシールドを創ったが、それすらも突き破り、オレに当たった。


すげぇ回転のせいで左手はひりひりするし、


そのまま鳩尾みぞおちに衝撃が伝わったせいで気持ち悪ぃ。


「容赦ねぇな」


と言ってる間にも九の尾が扇状に開き、魔力が高まっているのがわかる。


『千本鳥居』


一瞬で周りが真っ暗になり、目の前に鳥居がいくつも並んであるのだけが見える。


鳥居が迫っているのか、オレが無意識に動いているのかはわからない。


けど近づいている。


そして無数の鳥居をくぐっていく。


その光景に目をそむける事ができずに見つめてしまう。


そのうちに眠たくなってきた。


「お兄ちゃん!!」


ダァン


その声と銃声、そして急に感じた腹部の痛みで我に返る。


その声が祢音とわかるまで少し時間が必要だった。


オレの視界には見覚えのある食堂と、目の前で今にも剣を振り下ろしそうな奏がいた。


瞬時に、避けなければならないという今の状況を理解して、奏の剣を避ける。


憑依が解けてる?


かえってきましたか」


奏の言葉は意味がわからないから無視し、痛みを感じた部分に触れると強い痛みを感じた。


ああ、撃たれたのか……。


撃たれた!?


……………そういうことか。


「今のは幻術か」


「そうです。もう少しで死んでましたね」


「で、祢音が起こしてくれたわけか。


銃で撃つってのは過激すぎじゃないか?」


多分オレの後ろにいるだろう祢音に言う。


「そうでもしないと死ぬとこだったんだよ!?」


「まぁ礼は言っておくよ。


奏……ホントに殺す気らしいな」


「……………」


「1発2発、殴られるの覚悟しろよ」


オレは奏へ向って飛んだ。


剣を奏へ投げる。


奏はそれを剣で弾いた。


すぐに奏の襟を掴む。


剣が振り下ろされるが、シールドを使いながら弾く。


奏は弾く力に耐えられなかったようで、剣は奏の手を放れ、後方へ回転しながら飛んでいく。


そして本気で頬を殴った。


ここまでの動作はかなり短い時間で行われた。


「ちょ、お兄ちゃん!」


奏は床へ吹っ飛びながら落ちていく。


さらに奏に馬乗りになった。


「どいてくださいっ!!」


奏は足をバタバタさせながらオレの胸を押す。


「奏ぇっ!!」


「っ!」


もう1発殴った。


そこで奏はピタリと動きを止めた。


抵抗するならもう1発殴ってやろうかと思ったが、奏は抵抗しそうにない。


どこかをぼーっと見てるだけだ。


見てるのかも疑わしい。


「………どうして…」


長い時間が経ってようやく口を開いた。


「どうしてこれだけ力があるのに助けられなかったんですか…お父様を!!」


………………はぁ………。


「これだけ力があるってなぁ……それは今だ。


あの時オレは弱かった。


そんなことぐらいお前ならわかってるだろ」


すると急にぐっと奏の体に力が入り、逆にオレが押し倒される。


「わかってます!でも…悔しいんです!


あの時私がいればなんとかできた自信があります。


そもそもあの時あなたがお父様を止めていればお姉様の堕天使も目覚めなかった」


「じゃあオレも訊くぞ。


あの時祢音をなんとかしてれば祢音があの場に来る事はなかったんじゃないか?」


その言葉に奏はひるむ。


「っ…でも!兄さんの方が止められるチャンスが多かったです」


もはやここまで来ると醜い言葉喧嘩だ。


頭でわかっているはずなのに無意味な事を訴え続ける奏は子供のようだった。


「もっとお父様には生きて欲しかった。


そしてもっと私を見て欲しかった。愛して欲しかった。触れて欲しかった。笑って欲しかった。


抱きしめて欲しかった。喜んで欲しかった。知って欲しかった。遊んで欲しかった。話して欲しかった。


暮して欲しかった。楽しんで欲しかった。握って欲しかった。幸せにして欲しかった。


見させて欲しかった。愛させて欲しかった。笑わせて欲しかった。触れさせて欲しかった。笑わせて欲しかった。


抱きしめさせて欲しかった。喜ばせて欲しかった。知らせて欲しかった。遊ばせて欲しかった。話させて欲しかった。


暮させて欲しかった。楽しませて欲しかった。握らせて欲しかった。幸せにさせて欲しかった」


言い始めてから奏の目から涙が流れ始めた。


「なのに……なのにどうして!?


どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして


どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!!!???」


叫んでいる間も、流し始めた奏の涙は止まらなかった。


流した涙はオレの顔に当たり続けている。


「兄さんが!…あなたのせいで!!」


奏の握りこぶしが振り上げられる。


「もう止めてよぉ!!」


それは振り下ろされることなく、祢音に止められる。


「くっ…」


「そこまでよ!!」


その言葉で食堂の出入口を見ると誰か3人現れた。


それは天照様、久遠……と知らない男だった。


服装から見るとここの人間のようだが…。


「全てはこの男…とこの装置のせいよ」


携帯ゲームのような大きさの機械を床へ投げつける。


「その装置、奏の部屋の枕元に仕掛けてあったわ。


とっちめて吐かせたらその装置、催眠効果のあるものだった。


私が見たところ、奏はまだまだ幼いわね、心が。


見た目はこうでも生まれてから十年も経ってないもの。


感受性が強くて一度振れると振れ幅が大きく、激しく振れる。


催眠効果はかなりあったハズよ。


見ての通りということかしら」


久遠が多くの観衆の見つめる中、名探偵の推理ショーとでも言いたげな解説をした。


「奏さんは私に任せて下さい」


奏は意外にも素直に従い、天照様は奏を連れて食堂を出た。


「これにて一件落着。


ささ、あんたたちぼーっとしてないで、食堂片付けなさい」


その一声で観衆は観衆でなくなった。


わいわいと壊れた机などを直す者。


料理を作りなおす者など。


久遠はさっきの男とどっか行ったようだ。


「はい」


「よっ、と」


祢音が差し出した手を握り、起こしてもらう。


「なんか…大変だったね」


「ああ。


まったく…誰か知らんが迷惑千万だ」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



その後聞かされたのは男が元々親父に賛同していたこと。


親父が組織から抜けてもここにいたのは、


どうやらスパイだったらしい。


親父がいなくなってからは大人しくしていたようだが


久遠に説明されたあの機械を使って、精神的に脆い奏を手駒にオレたちを殺そうとしたらしい。


動機は実験と、親父を消したただの恨みという簡単なものだった。


その後、一連の叫びを多くの観衆に聞かれていた奏は、


催眠がかけられる以前と同じ性格に戻ったが、


無愛想で近寄りにくいという印象が大きく修正され、


みんなから可愛がられることになった。


奏は周りからそう扱われる度に迷惑そうにしていた。


だが、ちゃんと返事をしている分、少しは喜んでいるのかもしれない。

もうしない!奏の話はしばらくなしです!

次は祢音だな…いや、脇役キャラにもライトを…。

何か希望があればよろしくお願いします。

なんでもやらせてもらいます。(できるだけ)

感想&評価お待ちしてます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ