第2話外伝
今回は本編にある設定がプラスされています。
第2話の真の物語とでも考えてくれればいいと思います。
注意
<>は、本編のもの、
()は、幽霊時の祢音の感情を表しています。
【2008年1月某日】
【AM08:00分頃】
(「うっ…、こ、ここは?」
私は、ゆっくりと目を覚ましました。
私が立っていたのは、どこかの学校の廊下でした。
「うぅ…、私どうしてこんな所にいるの…!?」
私は自分の身体をよく目を凝らして見てみました。
私は、自分の身体が半透明になっていました。
「…これ、もしかして幽体離脱…!?」
私は幽霊のように、宙を浮いていました。)
「…じゃあ、もしかしたら!」
(皆さん、始めまして。
私は祢音と言います。
これから私を中心に話を展開していくので、宜しくお願いします。
さて…、自己紹介も済んだし、移動しますか…。
私がやってきたのは、本来の私がいる教室でした。
案の定、私はそこにいました。)
「これは私たちにしか解決できない問題よ!」
1月のある日、そんな祢音の言葉で立ち上がった独立問題解決機関、その名も………。
『如月 祢音探偵事務所』
事の始まりはこうである。
水月島にある水月学園では、ある噂が学園を包み込んでいた。
「ねーねー聞いた?昨夜の話」
丁度HRが終わった後の休み時間、祢音は隣に座る兄である無月の席へと向かった。
ちなみに兄妹だが色々あって同じクラスである。
(その辺は本編である終わりなき闘争曲シリーズを読んでくれ)
「ああ、嫌でも耳に入ってくるよ」
その無月は本当に嫌そうに言う。
話題の少ない水月学園では噂は広まりやすい。
それが幽霊なんてものだったらなおさらだ。
「その噂については私も聞きました」
続いてもう1人、奏がやってくる。
ちなみに彼女は2人の妹なのだが、これまた同じクラスである。
(くどいようだがその辺は本編である終わりなき闘争曲シリーズを読んでほしい)
「おもしろいよね、幽霊なんてさ〜」
そう言って祢音は手を胸の前まで持ってきて手首をだらんとさせる。
「どうせ誰かのいたずらだろ」
無月は素気なく言い、授業の用意を始める。
だが祢音は違うようだ。
「でも何人も驚かされたりいたずらされたりしてるんだよ?」
とわくわくさせているようだ。
幽霊なんてものは信じない人が多いのだが、
何人も幽霊の仕業と思われるいたずらをされているので、やけに信憑性が高い。
しかも七不思議があるとまで言われてくる始末。
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
授業開始のチャイムが鳴り、話は一時中断した。
そしてその授業後の休み時間になったころのことだった。
(私は教室の中にすぅ〜っと入り私がいる席へと向かいます。)
突然、祢音が自分の座っていた椅子の上に上履きを履いていながらにして登り始め、
「私、この事件解決してみせる!『じっちゃんの名にかけて…』なんてね!!」
とクラスの視線を浴びながら、高らかに宣言した。
昼休み、私とお兄ちゃんと奏ちゃん、
あと友達の千春に新田くんに安井くんに
お昼ご飯を一緒に食べようと誘って屋上にいました。
(その光景を、幽霊の私は距離を置いて見守っていました。)
「ね〜祢音、ホントにやるの?危ないんじゃない?」
千春ちゃんは私の顔を心配そうに見てるけど問題ない!
「大丈夫だって!私に任してよ!」
と胸を張って見せる私。
「幽霊探しなんておもしろそうじゃん。オレも仲間に入れてくれよ」
って新田くんは言う。
「ダ〜メ。私とお兄ちゃんと奏ちゃんでやるから。適任なんだよ」
そう、こーゆーのは私たちがやった方が適任なんだよね。
「何で無月はいいんだよ!?こいつ一番ノリ悪ぃだろ!」
新田くんの箸の先には黙々と私と奏ちゃんが作ったお弁当を食べてるお兄ちゃん。
「確かにノリは悪いし口悪いし素直じゃないけどこーゆー時は一番頼りになるんだよ♪ねーお兄ちゃん♪」
と、私はお兄ちゃんに抱き着きました。
そんな私を見て、ひとまず食べ終えたお兄ちゃんは
「だ〜、昼飯食ってる時くらいは離れろ!祢音〜!」
って言いますから。
「てへっ♪」
私は舌をちょっと出す。
「てへっ、じゃな〜い!!」
一方、千春はと言いますと…。
「はぁ〜…(溜息を吐く)。祢音、そろそろ兄離れしなきゃいけない年だよ…?彼氏もできてないし」
「という千春もできてないんだよね、彼氏…」
ニヤニヤと笑って千春を見ると
「はいはい…そうですよ」
千春はかわいい顔で拗ねて、ソーセージを頬張るのでした。
【解説】
実は祢音には浮いた話はない。
見ての通り兄の無月にベッタリだからである。
兄妹が同じクラスにいるというのは滅多にないケースだ。
だからこの事を知らない者がたまに祢音に釣られてクラスまで様子を見に来ると、
祢音と無月のやりとりを見て彼氏持ちかと勝手に思い込み、諦める者も少なくない。
「じゃあね〜また明日〜」
「気をつけてよね!」
「わかってるって!」
放課後、千春たちと別れて私とお兄ちゃんと奏ちゃんは家に帰りました。
(幽霊の私もこっそりついていくことにしました。)
そして夜、ついに私は立ち上がった。
(私は私自身を見つめました。)
「さてと!!」
気合を入れてお兄ちゃんと奏ちゃんの前に立って、
「お兄ちゃ〜ん、奏ちゃ〜ん、行くよ!」
と叫ぶと、
「はいはい。んじゃ行くか」
と、お兄ちゃんが
「わかりました。お姉様」
と、奏ちゃんが同時に言いました。
あとね、それからね…。
言うまでもないと思うけど、メデスはお留守番なの。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「夜の学園ってやっぱり不気味だよねぇ」
学園に侵入したのは午前0時。
先生たちは既に帰った時間だし、
この島は犯罪なんて滅多に起こらないからセキュリティなんてないし、安心して探検できるの。
「…だーっ!歩きにくいから引っ付くな!てかお前がリーダーだろ!前を歩け!」
お兄ちゃんはそういうの信じない人だし、
奏ちゃんは何も動じなさそうだから頼もしいんだけど、
でもやっぱりいまいち盛り上がりに欠けるなぁ。
夜の学園で幽霊探しなんて、最高のシチュエーションなんだけどなぁ…。
(幽霊の私も勿論います。ただ、お兄ちゃんたちは気付かないと思うけど…ね。)
「そもそも言いだしっぺのお前がビビるな!怖かったら来なけりゃよかっただろ」
「いやぁここまで不気味だと思わなかったしさぁ。それになんか空気生暖かいし」
「まぁいい。で、どこ行くんだ?」
「そうそう、まずはやっぱり音楽室だよね」
「…? どうしてやっぱりなんですか?」
そっかぁ、奏ちゃんはこういうの聞いたことないんだっけ……。
やっぱりこういうことはお姉様である私が教えていかなくちゃいけないよねぇ…。
「そうだね、学園の怪談てのがあってね。
簡単に言うとそれぞれの学園にまつわる怖い話のことなんだけど―――」
ガラガラガラガシャーーン!!
「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うるせぇっっ!!」
ゴツン
お兄ちゃんが私の頭に鈍い音を立てさせました。
「あいったぁっ!」
肘(かなぁ?)で頭を殴られてしまう私…。
ズキンという痛みを両手で頭をこすりながら、ちょっと私…涙目……(泣)
「ゴミ用具の扉が開いて、んでほうきとかが倒れただけだ。あと抱きつくな。苦しい」
お兄ちゃんは私を振りほどこうと私の腕を掴むけど、私はさらに力を込めて抱きつく!
「大丈夫?お姉様…?」
「うん……。これヤバいって幽霊の仕業だよ!もう帰ろうよ!」
私は精一杯悲痛な声でお願いするけど、
「まだ一つも調べてねぇだろうが。さっさと音楽室行くぞ」
お兄ちゃんはそう言って私の気も知らないで歩き出すの……。
「いやだあぁぁ!わ、わた…。私…、もうどこにも行きたくないよぉ〜…!」
と、叫ぶとお兄ちゃんが
「うるせぇ!リーダーはお前なんだがらな!リーダーがビビってんじゃねぇ!わかったか!」
と怒鳴って、私をずるずると引きずって音楽室に……。
今思ったんだけど、なんかお兄ちゃん楽しんでない?
(私もこっそり後を追います。)
「そんなわけで音楽室到着したんだけどさぁ…………あれって絶対おかしいよねぇ?」
絶対おかしいって………ピアノが勝手になってるしぃ!
「おお、すげぇな」
って言ってる割には冷静だねぇ!お兄ちゃん!
「あの絵は動くんですか?こっちを見ていますが…。気になりますね」
余計なことに気がつかないでよ!奏ちゃん!
「じゃ、次行くか」
お兄ちゃんは再び私の体を引きずって保健室にぃぃ……。
「ねぇ、もう帰ろうよぉ…(泣)」
「ん?向こうから誰か走ってくるぞ」
「誰かって………いやあああああぁぁぁぁ!!!!」
私は無我夢中で銃を放ち、気がついた時には穴だらけの人体模型が。
「あ〜あ、今回はそんなのナシって予定だったんだけどなぁ」
「だってぇ…」
…グスッ。
…怖かったんだもん。
ザッザッザッザッ!
後ろから無茶苦茶足音が聞こえてくるんですけど………。
「今度は何…!?」
振り返った私の視界には何人もの人体模型が!
「もうダメ………ばたんきゅ〜」
その瞬間、私の意識は途切れてしましました…。
(私、ここで途切れちゃったんだ…。)
「おい、祢音!しっかりしろ!言い出しっぺのお前が勝手に意識を失うんじゃねぇよ!」
オレは祢音の頬を何度かビンタするが、祢音は意識を失っているようなのか全く動じる気配がしない。
「ちっ…、祢音がこんなんじゃあ、今日はもう無理みてぇだな。せっかく用意した企画だったんだけどなぁ」
(え…、これどーゆーこと?)
オレが人体模型の集団を見ると、そいつらは今まさに煙のようにゆらめき、姿を消す所だった。
実はこの一連の事件、オレと奏が仕向けたものだった。
祢音は、年末年始に相次ぐテレビの特番の中で、幽霊やらUFOなどのミステリー物や、
探偵物のドラマをやっていたのを見て、影響されていた時があった。
それで最近「うちの学園にも何か起こらないかなぁ」とぶつぶつ呟いていた。
そしてある日奏が
「手伝ってくれませんか?」
と言いにきた。
奏が言うには最近退屈そうにしている祢音を楽しませる企画を作り上げたから、
それを手伝ってほしいというものだった。
奏の幻術を使い、たまたま夜にこの学園に来た生徒に幽霊を見させ、祢音に探検させようという企画だった。
オレの役割はその間奏に付き合ったり辻褄合わせをやったり、というものだった。
普段はメンドくさがるオレだったが、最近祢音をいじったりすることもなかったので嬉々(きき)として参加した。
(なるほどね…、どうりで出来過ぎてるわけだったんだ…)
ちなみにメデスは仲間外れだ。祢音の状態は知っているが、この企画のことは何も知らない。
そのつもりだったのだが夜にたまたま学園を通りがかり、魔力を嗅ぎつけバレてしまった。
まぁ知られたものの直接参加はしていないし、辻褄合わせに協力させたからその方がよかったかもしれない。
「少々刺激が強すぎたようですが楽しんでもらえたようで私は満足です」
奏は軽々と祢音の体を背中に背負う。
(ひどいよ!2人して私を騙してたなんて!許せない!)
「さて、後は後始末だな」
「メデスに風邪をひかせて、その影響で悪夢にうなされてた。ってことにするんですね」
一息ついてから奏は
「わざわざ風邪をひかせるのは気が進みませんが」
と言った。
「問題ないだろ。1日で治るぐらいの重さにするし、明日は土曜だ。
部活はオルタナティブ(如月兄妹が属する魔法使いたちの組織。詳しくは今までのシリーズ参照)
に入って任務があったせいで全然参加できなくてやめたからな。2日休める」
(ひどい!ひどすぎる!)
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「…ふ・ざ・け・ん・な!!オレの愛しの祢音ちゃんに風邪をひかせるだぁ!?
んなことできるわけねぇだろ!!…あぁ!?」
家に帰って早々メデスに怒鳴られる。
(メデスが怒るのも無理ないと思う。私がいちばん傷ついてるんだから…)
このことだけはメデスには話していなかった。こう言ってくるってわかってたしな。
「ほらほら祢音のためなんだよ。もうこれしか誤魔化せる方法ねぇんだからさっさとしてくれ」
「……仕方ねぇなぁ。ほれ」
メデスが手をかざすと、気絶する祢音の周囲だけ一気に気温が下がる。
しばらくすると思い通りに風邪をひいた。
(あれは夢じゃなかったんだ。それにしても、こんなやり方、私絶対に許せない!)
「…あとは2階のベッドで寝かせるだけだな」
【AM8:35分】
「ん……?う〜ん…、人体模型が迫ってくるよ〜。…って、アレ…?ここは私の部屋…?」
再び見えた私の視界には見覚えのある壁がある。
あと奏ちゃんの顔も見えてる。
「お姉様、大丈夫ですか?随分うなされてましたが」
額が冷たいなぁ。
(私は右手で額を触ってみる)
これは冷えピタ?
上半身を起こすと確かに私の部屋だった。
日差しが眩しい、どうやら朝みたい。
あの時気絶でもしちゃったのかな…?
ガチャ!
「よう、起きてたのか」
ドアからお兄ちゃんが入ってきました。
手にはプラスチックの桶があるのが見える。
「う、うん………。ひ…、ひぇ…、ひぇっっくしょい!」
「まだ治ってないみたいだな」
ああ、寝ぼけてたみたいだけどようやく思い出したよ。
そういえば私、風邪ひいてたんだ!
…私がみんなとお昼ご飯を一緒に食べたり、
午前0時に私とお兄ちゃん、奏ちゃんの3人で夜中の学園に忍び込んだ
あの出来事も全て夢だったんだ…って考え直したんだ。
やけにリアルに感じたけどね。
「夢オチだったんだね………。なぁ〜んだ、それなら安心だね♪」
<なんであんな夢を見たんだろう…?
もしかして、私の心のどこかにいつかこうなってほしいと思う感情があったのかなぁ…。
よくわかんないや。怖かったけど夢を思えば案外楽しめたし、そこは深く考えないでおこうかな…>
「…夢オチ?」
「いや、独り言だよぉ」
私はポフッと音をたてて横になった。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
物語は、再び夜の学園へ。
【AM24:00分頃】
全ての真実を知った私は、改めて自分の置かれた状況を見つめ直しました。
『ひどい、ひどいよ!お兄ちゃんも、奏ちゃんも、2人して私を騙していただなんて…!
現実にあったことなのに、夢だったことにしちゃおうだなんて!』
そんなことを考えつつも、私は再びあの音楽室へ………。
【音楽室】
『…やっぱり何度来ても不気味だよねぇ。まぁ、夜だからしかたないかな。』
私がピアノにゆっくりと足を踏み込むと、誰もいないはずなのにピアノから音楽が奏でられたのです。
『…これ、奏ちゃんの幻術じゃあないよね…?』
私はピアノに向かって呟いてみると、音は静かに止みました。
『…え、どうしてやめるの?』
私は見えない誰かに向かって声をかけました。
『…わたしの音楽、聴きたいの?』
『う、うん…。ダメ…かな?』
どうやら、ピアノを弾いていた相手は言葉遣いを聞く限りでは私と同じ女の子のようだった。
『…あなた、名前は?』
相手の女の子(?)が、私に声をかけてきたので
『…私?私、祢音。』
と、自己紹介してあげました。
『そう、祢音って言うのね。わたし、深雪。
実はねわたし、水月学園に通っていた生徒だったの。』
『だった、って…?』
『わたしは、生まれつき身体が悪くてね…。祢音ちゃんが知らないのも無理はないよ。
だってわたしは、学校内じゃ目立たなかったしお友達ができなかったしね…。
わたしはある日、学校の帰りに交通事故に遭っちゃってね…、それで死んじゃったの…。』
『…そうだったの…』
『でも嬉しいな…。わたしの存在に気付いてくれて…。』
『…深雪ちゃんは、ピアノが好きみたいだけど小さい頃よく弾いていたの…?』
『…うん。わたし、小さい頃、ピアノ教室に通っていたことあったから。
死んだ今でも、こうやってよく音楽室でピアノを弾くのがわたしの日課なのよ。』
『…へぇ、そうなんだ。ねぇ、深雪ちゃん。』
『…なぁに?』
『深雪ちゃんは私以外で、幽霊が実在するって信じてる…?』
『う〜ん、どうかな…。わたし、霊感とか強くないし…。』
『そっか。うん。ピアノの演奏をしていたのに邪魔しちゃってごめんね。私、そろそろ行かなきゃ。』
『…またわたしのお話し相手になって戴けますか?』
『…うん、いいよ。』
私は、深雪ちゃんに向かって手を振ると音楽室を出ていきました。
『祢音ちゃん…、また逢って話せるといいですね…。さて、わたしもそろそろおいとましなければなりませんね………。』
私が音楽室の次に向かったのは保健室でした。
『…あの時は、人体模型を見て気が動転しちゃったけれどさすがにもう驚かないはず………』
ギギギギギ…………!
私の前に再びあの人体模型が!
『キャアアアアァァァァ!!』
私の悲鳴を聞いていた人物が声をかけてきました。
『いやぁ、いやぁ、ごめん。まさか、こんな時間に人がやってくるなんてね。』
『う、うぅ…。(泣)』
『ごめん。祢音ちゃん。驚かせるつもりはなかったんだよ。』
『どうして私の名前を知っているんですか?』
『君はさっき、音楽室で妹と話をしていただろう?僕は、雪成。簡単に言うと深雪の兄だよ』
『で、雪成さんはここで何をしていらしてたんですか…?』
『うん。僕はここいらで悪霊とか出たら祓ってる仕事をしているんだ。
深雪も、一応除霊の力は身につけているんだけど恥ずかしがり屋でね…。
たまにでいいから深雪と接してやってくれないかな。』
『ええ、そのつもりですよ。』
と、私は胸を張って言いました。
『そうか。また夜になったらおいで。気をつけて帰るんだよ』
『深雪ちゃんに、雪成さんかぁ…。でも、2人とも名前に「雪」の字がついてるのは何でだろ?』
と、考えながら私は2Fの私の部屋にいる本体の私の身体に宿りました。
そして次の日…。
朝、お兄ちゃんと奏ちゃんと一緒に学園へ行こうとすると…。
『おい、どうしたんだ?』
お兄ちゃんが私に向かって言うところに、昨日見た深雪ちゃんが哀しそうなまなざしで私を見つめていました。
『どうしたの、深雪ちゃん?』
私が誰もいない場所に向かって声をかけたので、奏ちゃんは
『…誰と話しているのですか?お姉様…?』
と呟きました。
でも私は、深雪ちゃんを見つめていました。
『…今日、昼休みは逢える?』
深雪ちゃんと私のやりとりはどうやらお兄ちゃんと奏ちゃんには聞こえないみたいだし、見えないみたい。
『…うん、難しいかもしれないけど、作ってあげるよ。』
って私が言うと、
『…やったぁ〜♪』
って深雪ちゃんが言う。
『なぁ、今日の祢音の様子、おかしくないか?』
『少し気になりますね…。調査してみないとわかりませんが…』
それからと言うもの、私は段々お兄ちゃんや奏ちゃん、
千春や新田くん、安井くんとはお昼ご飯を一緒に取らなくなる日が続き、
毎回音楽室に通っては、深雪ちゃんと友達以上のお付き合いをしていくようになりました。
〜無月SIDE〜
オレと奏は、祢音の状態を知るため、ここ『オルタナティブ』に来ていた。
向かった先は、レミア隊長の所だった。
『ふむふむ…、なるほど。事情はわかりました。
今度の騒動は祢音さんに何か企画を打ち立てたとかそういうものではないことは間違いないんですね?』
『はい、最近お昼ご飯を一緒に摂りませんし、何かあったとしか言いようがないですね…。』
『あの企画は少しやり過ぎたって反省しています。
でも、せめて誰と接触しているのかさえわかれば…』
『わかりました。私にどれほどの力ができるかわかりませんが調査してみましょう…。
祢音さんが、何か口に出して言っていたこととかはありますか…?』
『確か…、深雪とかなんとかだったような…。』
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
『わかりましたよ。祢音さんが誰と接触しているのかが!』
『…誰なんです?』
『深雪の「雪」の字とこちらの雪成の「雪」の字を比較してみて下さい。
何か気付きませんか?』
『あ…!?』
『そうです。この2人は、雪女と雪男の生まれ変わりなのです。
人間のふりをして、近付き、氷づけにしてから喰らう化け物です。』
『お姉様の居場所は…?』
『学園の屋上です…。』
【水月学園・屋上】
【AM25:30分頃】
『あっけないものだな。簡単に騙されるなんてな。』
『ええ、お兄様。ねぇ、お兄様。わたし、祢音ちゃんを喰らってもいい?』
『好きにするがいい。僕はあの2人を始末するからな。』
『悪いが祢音を返してもらうぜっ!』
『お姉様をあなたたちの好きなようにはさせません!』
『ふん、身の程知らずをわきまえるがいい!』
無月VS雪成
奏VS深雪
カンカン、キン、カン、カン!
互いの剣と剣が交わる。
オレは祢音を見ようとするが
『余所見してると死ぬよ?』
ヤツの氷刃が邪魔をして身動きとれねぇ。
〜奏SIDE〜
『お姉様を返して下さい…!』
『ダ〜メ。祢音ちゃんはわたしのものなんだから絶対渡さないもん。』
『だったら力ずくでも………』
無月は炎の調律師だから氷と互角に渡り合えるけれど、私は無月ほどの力がない…………。
雪成と深雪にとどめを刺そうとしたとき、氷が溶けてお姉様が私のもとに降り立ちました。
『もうやめてあげて………。』
『しかし、こいつらはお前を氷づけにして喰らおうって……』
『深雪ちゃん、私、とても楽しかったよ。だから今度は私が2人を助ける番だよ。』
私は、天使の私になりました。
『天使の加護!』
雪成と深雪ちゃんの氷の魔力がどんどん浄化されていきました。
2人に取り憑いていた氷の妖怪を3人で撃破した。
それ以来、雪成と深雪には以前の記憶がなくなり普通に祢音やオレ達と付き合うようになっていったのだった。
いかがだったでしょうか?
こういうことがあったんです。
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