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第20話 「屋上の謳姫」

〜水月学園・屋上〜


ガチャ…キィィ…


重そうな音を立て(実際重かったんだが)、屋上への扉が開いた。


すると屋上の中心で歌う久遠を見つけた


「♪〜〜♪♪〜♪〜〜〜〜―――っ誰!?」


オレの気配を感じ取った久遠は途中で歌うのを止め、こちらへ振り向いた。


「あなたは…」


そこで言葉を止めたが、ここ最近顔を合わせているからオレのことはすぐわかっただろう。


「こんな所で歌ってたんだな」


「なんでここに……」


久遠余計な所を見られた、というような顔をしている。


「生徒会長からあんたを見張るように頼まれたんだよ。


忙しい時に邪魔されちゃかなわないからって。んで捜してたら歌が聞こえてきて屋上へ来たわけだ」


「鍵は……閉めた覚えがないわ。らしくないミスね」


なんで鍵持ってるんだ?


「どうしたんだ?歌ってる途中だったんだろ?


オレは見張ってるだけで生徒会の邪魔をしないようなら何もしねぇし」


「存在自体が邪魔なのよ…。はぁ…帰る」


すっかり気分を削がれてしまったようで、溜息を一つ吐くと傍にあったカバンを持ち、扉の前まで歩いた。


そこで止まると


「何ボーッとしてるのよ。あなたが帰らないと鍵閉められないじゃない」


と、呆れたようにオレに言ってくる。


「あ、ああ」


とりあえず、オレも屋上から出ることにした。




〜水月学園・4階廊下〜


「あーっ!こんな所にいた!」


扉を開けると丁度祢音と奏が目の前を通り過ぎようとした所に出くわした。


「久遠さん!わけあって監視させてもらいます!」


すると祢音は久遠の後ろに立つオレの隣に立ち、奏もそれに続いた。


「天照も余計なことしてくれるわね。


私はもう帰るわよ。天照の邪魔しないからさっさと離れてくれる?」


ちょっと不機嫌そうだな。


まぁ自分の楽しみを邪魔されたんなら仕方ないことなんだろうけど。


「私なんか監視してるより天照を手伝ってあげた方がよっぽど役に立つわよ。じゃ」


そして久遠は下駄箱の方へ向かって歩き出した。


「だったら私と遊びませんか?久遠さんの趣味も知りたいですし」


そうするとコロッと態度を変えた祢音は久遠について行き、さらに奏も後を追う。


「あまりへばりつかないでくれる?」


「いやいや、今日は一日お供させてもらいますよ〜」


そこで祢音は振り返り、ウインクする。


なんのサインだそれは。


「はぁ…勝手にしたら?」


「そうさせてもらいます♪」


そんなやり取りをしながら3人は階段を降りて行った。


「………手伝った方がいいのか?」


あのウインクが行けということなら行った方がいいんだろうな。


メンドくせ。


とは言いつつもオレは生徒会室へ足を運んだ。




〜生徒会室〜


「生徒会長ー。ちょっといいですか?」


「? どうしました?」


生徒会長は休憩中だったのか、口につけていたティーカップを離して訊いてきた。


他の生徒はいない。もう帰ったんだろうか?


「久遠さんに邪魔しないから監視するぐらいなら生徒会を手伝ってこいって言われた上、


妹にも会長の評価を上げておいてくれというウインクまでされて手伝いに来たわけです」


「心の通じ合う兄妹なんですね」


「いや、それはないと思いますけど」


嬉しそうに言う生徒会長には申し訳ないがそれは否定させてもらおう。


通じ合っているというか魂胆が見え見えという方が表現が合っている。


「そうですか…。無月さんは手伝う気はありますか?別に無理にとは言いませんよ?


無月さんには無月さんの都合があるでしょうし」


どうせ帰っても暇だしなぁ…。


かと言ってわざわざメンドくさいことに飛び込むのもなぁ…。


まぁいっか。


「いいですよ。素人のオレが力になれるんでしたら」


「ありがとうございます」


生徒会長は満足そうにお礼を言った。


「じゃあ早速ですけどこれからすることについて説明していいですか?」


「はい」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「無月さんにしてもらうことはこんなものですかね」


説明はだいたい5分かそれぐらいで終わった。


仕事は第一に郊外研修という名の遠足で行く所について各クラスで集めたアンケートの集計、


それが終われば後1ヶ月後に迫った体育祭についての書類整理。


アンケートの集計という単純な作業の割に一番時間がかかるからこの時期は忙しくなるんだそうだ。


人気にんきがないのか生徒会の役員も少ない。


それで余計に忙しくなる。


そこでオレはアンケートの集計を1人でこなすことになる。


だが2人か3人でやった方が早いし、ミスも確認しやすい。


だから誰か他に手伝ってくれる人を探して手伝ってもらってほしいとのこと。


まぁその辺は祢音や奏にでも手伝ってもらうか。


丁度そこで下校時刻が近づいているという放送が入る。


「それじゃあオレはこれで…」


そして席を立つと


「あ、私も帰りますので待っていてくれませんか?」


「え……あ、いいですけど」


意外な言葉だったから返答するのに少し時間がかかってしまった。


生徒会長は書類の束を引き出しに入れたり後片付けをするとカバンを持って


「では行きましょう」


と言った。




〜通学路〜


「………………」


「………………」


無言だ…。


なんとなく気まずい。


「生徒会長は普段家で何してるんです?」


必死で考え抜いたありきたりな疑問を言ってみる。


「私は家事ですねぇ。妹の久遠は自分から手伝おうとしませんから」


「家事は母親とでも一緒に?」


「ええ。お父さんは仕事で海外にいるので2人でやってます。


良い職に就いていて、家も大きいんですよ?」


へぇ…、お嬢様ってヤツか…。


久遠の方はワガママお嬢様って感じだけどな。


「久遠ももう少し家事を手伝ってほしいんですけれど…」


「苦労してるんですねぇ。その上ちょっかい出してくるなんて」


「まったくです……。あ、私はここで」


止まった所はバス停。


もうすぐバスが来る時間のようで、すでに何人かの生徒が喋りながらバスを待っている。


なるほど、バス通か。


「じゃ、また明日」


「はい。また明日」



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