第19話 「生徒会長の提案」
〜水月島・並木道〜
「それでさー千春がねぇ…」
「ふ〜ん。へぇ〜。ほぉ〜」
「って聞いてる!?…わけないか」
昨日と違い、今日はいつも通りの通学…ではなかった。
「こらぁー!!」
「ん?」
怒声に振り替えると向こうから昨日の2人が走ってきた。
それも目の前に。
「邪魔よ」
「のわっ!」
久遠は横へ避けようとせず、オレを押しのけて直進していった。
「すみませんでした!久遠!」
その後やってきた天照は、一時停止して慌ただしく一礼すると、
すぐに久遠を追って走って行った。
「ってぇ…!」
オレが体勢を整えた時、
嵐のように来ては去って行った2人の背中はかなり小さく見えていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「まぁ押されただけだしな、大丈夫だ」
疲れは増したけどな…。
〜水月学園2−1〜
「無月!」
「はい」
その日の放課後、担任の御影日向に呼ばれた。
「これを生徒会室に届けてくれないか?」
そうして渡されたプリントはこの前のLHRで、
もうすぐある、遠足はどこへ行くかというアンケートをとったプリントだった。
1年、2年、3年で行く場所と日にちは違うがだいたい同じ時期にある。
「オレがですか?」
それぐらいの役目なら他にいくらでもいるのに、
なんでオレを選んだのか気に入らなかったから訊いてみた。
「そう言うな。どうせこれから暇だろう?」
「まぁ…そうですけど」
部活にも入っていないオレはこう言われると何も言い返せない。
仕方なくアンケートの束を受け取った。
はぁ…またあそこに行くのか。
「わたしもついていこうか?」
「あぁ、だが生徒会室の外で待っていてくれないか?」
あの2人のゴタゴタに巻き込みたくないしな。
「ん、わかった。じゃあ行こ」
〜生徒会室〜
「遠足のアンケート持ってきましたー」
「はい。ちょっと待って下さい」
部屋には前回来た時と同じように生徒会長が座っていた。
だが前回と違うのは何人かの生徒とせっせと書類整理をしている所。
「では受け取ります」
しばらく待っていると天照は手を休め、こちらを見ると両手を差し出してきた。
そしてプリントを渡すと
「ご苦労様です」
「じゃ、オレはこれで…」
今回は無事に終わりそうだな。
オレが生徒会室のドアノブに手をかけると
「そういえば無月さん…」
と天照から声がかかった。
げ。
「なんですか…?」
「久遠…見ませんでしたか?」
「いえ、今朝以外は会ってませんけど?」
「ちょっと…探してきてくれませんか?」
「え…なんでわざわざ災いの元を…」
わけわからんな。
「監視しておいて欲しいんですよ」
「監視??」
ますますわけわからん。
「これから忙しくなるんですよ。そんな時に邪魔をされでもしたら面倒な事になるので。
あの子はこっちの都合なんてお構いなしですからね」
「なぜオレを…?」
「そこにいますから。それにこれ、必要ですよね?」
「く…いつの間に」
手に持っているのは間違いなくオレのケータイ。今回はサイフまで盗られてしまった。
「必要でしたらこれから最大1週間、放課後1時間だけで結構ですから久遠を監視してくれませんか?
一緒にいて、生徒会室に何かしようとしたら全力で止めてください。
契約料としてこれらは返しますし、
成功報酬として体育祭と文化祭での2年1組の予算、いくらか融通きかせますよ?」
手段を選ばない会長なんだな、それでここまでのし上がってきたとか?
そもそもこれは脅迫じゃないか?
成功報酬はどーでもいいが、ケータイとサイフは返してもらわなくちゃならない。
「わかりました。だからさっさとケータイとサイフ返して下さい」
「ありがとうございます。それでは今から早速お願いしますね」
ケータイを返してもらい、オレはようやく生徒会室から出ることができた。
〜生徒会室前〜
「お兄ちゃん!絶対成功させてよね!」
ドアを閉じると祢音がそんなことを言いだしてきた。
「聞いてたのか」
「結構長かったしね。ヒマだったから盗み聞きしちゃった」
「なら説明する必要ないよな?オレは今から久遠を探しに行く。お前らは先に帰ってろ」
「ううん。わたしも手伝うよ」
「別にいいって」
「いや、手伝わせてもらうよ!全ては予算のため!」
そして祢音はグッと手を握り締めた。
「そんなに予算が欲しいのか?」
「当り前だよ!少しでも上がった方がいいものが創れるじゃん!
だから、だめだと言っても手伝うからね。
おっと、こうしちゃいられない!さっさと捜しに行かないと!行くよ奏ちゃん!」
「私はもう帰りたいんですけど…?」
「問答無用!!」
祢音は奏の腕を強引に掴むと振り向いて走って行った。
「はぁ…どいつもこいつも…」
祢音に任せておけば、オレはこのまま帰っても良さそうだなとは思った。
だがオレは約束を破るのは好きじゃない。
仕方なくオレは祢音と反対方向にトボトボと歩きだした。
「ったく、どこ行ったんだ?」
だいたいの所を回ったが全く見つからなかった。
まさかもう帰ってるんじゃないだろうな。
♪〜♪〜〜♪〜
廊下を歩いていると窓の外から歌声が聞こえてきた。
「歌…?」
外かと思い、窓から外を見渡すがその歌声の持ち主は見えない。
聞こえてきた歌声に耳を澄ませる者や、それを知ってか知らずか普通に過ごしている者もいる。
屋上か…?
屋上へ繋がる階段への唯一の扉は常に鍵がかけられているがあいつなら何とかできそうな気がする。
オレはその扉がある方向へ体を向けた。
一つ質問があるんですが今までは奏は無月を呼び捨てにし、兄として認識していませんが、兄として呼ばせたいですか?
呼ばせたいか呼ばせたくないか、できれば理由も添えて私の作者紹介ページからメッセージを送ってください。
この結果で今後どうしていくかが決まりますので意見がある人はできるだけメッセージください。
そうでないと私が勝手に決めてしまい、あなたの希望通りにできないかもしれませんのでよろしくお願いします。
感想&評価お待ちしています。