第18話 「滅茶苦茶姉妹」
そして時は過ぎて放課後…。
「さぁて帰るかな。………ん?」
ふと、ズボンのポケットに手を突っ込ませた時にようやく気付いた。
「どうしたの?」
一緒に帰ろうと奏と一緒に近づいた祢音が訊く。
「…ケータイがない」
「えー!?何してんの!?ケータイなくすなんて――」
ピンポンパンポン♪
―2年1組、如月無月くん。手が空きましたら生徒会室まで来て下さい。繰り返します。
2年1組、如月無月くん。手が空きましたら生徒会室まで来て下さい。―
ピンポンパンポン♪
「…いいタイミングだな」
「行ってらっしゃい。教室で待ってるよ」
「早く帰ってきてくださいね」
「はぁ…」
〜水月学園・生徒会室〜
「早かったですね」
目の前にはメデスが熱く語り、なりゆきとはいえ、朝一緒に登校してきた生徒会長、
そして側近と思われる女子生徒が2人、合計3人が待っていた。
「これは何でしょう?」
そう言って掲げる『コレ』はまさしくオレのケータイだった。
「落ちてたんですか?」
誰か見られて困るものは何もないが少し心配だ。
「いえ、私がスリました♪」
「おいぃ!!」
オレは反射的に即座にツッコんだ。
「本来持ってきてはいけないこうゆう物を持ってくるのはどうかと思いますねぇ」
生徒会長は目の前のテーブルにケータイを置いた。
「いや、それよりも他人の物をスッた方がどうかと思いますが?」
「これを返してほしければ、今後絶対に持ってこないということを誓ってもらいます。
先生たちにはまだ言ってませんから、今のうちですよ」
シカトかよ。
「はい誓います」
「誠意が感じられませんね。もう一度」
さっさと返して帰してほしいんだけど…。
コンコン
突然後ろのドアがノックされる。
「誰ですか?今は取り込み中なので待っていてください」
そういう言葉にも拘らず、ドアはゆっくりと開き、
隙間から野球ボール大の球が転がってきた。
「まさか!?」
そのボールは急に煙を放ち、室内が真っ白になる。
「目を閉じて!息もしないで!」
ここにいない、誰かの声を聞いてオレはとっさに言われた通りにする。
「っくしょん!」
「眼が…」
その煙には何か仕掛けがあったようで室内は混乱状態になる。
しかもオレまで巻き添えになっている。
「ほら、行くわよ」
「ちょ…!」
眼を閉じているのに急に手首を握られ、朝と同じように引っ張られる。
そのまま生徒会室を出る。
「もう開けていいわよ」
そしてようやくオレの手を引っ張ったヤツの姿が見えた。
「お前は…」
「また会ったわね」
朝会った女子生徒だった。
生徒会長の双子の妹の名前は…赤司邪 久遠。
そのまま階段を3階分降り、外へ出ると上履きのまま少し離れた体育館の裏まで走った。
「はぁ……はぁ…」
「あら?こんな距離でもう息切れ?だらしないわね」
久遠は全く息が切れていない。
「うるせぇ…体力作りなんて…普段からやってねぇんだよ。
それに…あれだけの距離走ったら…誰だって切れるだろ」
校舎の方では何やら騒がしくなっている。
まぁ原因はこいつだろうが…。
「ほら…ケータイ」
目の前にオレのケータイが差し出される。
「ありがとう。…あれは何だったんだ?」
「あれ…?ああ、あれは私が造った煙玉。
コショウを浴びた時のくしゃみと、催涙ガスで起こる眼や鼻への刺激を組み合わせたものよ。
ちなみに、無味無臭」
無味は必要ないだろ。
「どうするんだよ…こんなことして」
「大丈夫よ。慣れてるから」
「は!?」
「今まであった定期テストの妨害、この間の生徒総会で生徒会長の上から大量の水が降ってきたのも、
そんな大きな事件は全部私がやってたのよ。協力者もいたけどね」
あれはお前の仕業だったのか。
「本当だったのか。そんなことしていたのがお前だなんて。
外見だけならそんな風には見えねぇし。クールなアイドルって言われてるらしいしな」
「そりゃあね。外見には特に気を遣ってるから。
それにしても…アイドルねぇ……ロクなもんじゃないわね、そんなもん」
そして呆れたように小さく息を吐く。
「なんでそんな騒ぎ起こしてるんだよ。生徒会長が嫌いなのか?」
「そんなことないわ。むしろ好きよ」
「だったらなんで」
「あの子をいじめるのが好きだからよ。あの慌てふためく様がね、おかしいじゃない」
そう言ってその様子を思い出しているのか、ニヤニヤと笑っている。
なんてやつだ…そのためにこんなことしてるのか。
「そうかい。じゃあオレは戻ってるぞ。助けてくれて、ありがとな」
「どういたしまして」
〜水月学園・2−1〜
「あ、帰ってきた」
「遅い…」
「まぁ色々あってな」
「大変だったね。生徒会室で騒ぎがあったんだってね」
「まぁな」
ほんと…大変だったよ。
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