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第13話 「雨」

〜水月学園・昇降口〜


「…どうしましょうか」


空を見上げるとどんよりとした灰色の雲から水滴が次々と落ちていきます。


どしゃ降りです。


私が家にも帰らずにこうしているのは理由があります。


傘を持ってきてないのです。


朝では降水確率は30%とあったので傘を持たずに家を出たのですが、


午後から天気はどんどん悪くなり、今ではまさにバケツをひっくり返したような雨が降っています。


お姉様も無月も先に帰ってしまいましたし…。


実は学園にいる間に携帯に任務についてのメールが来たのですが、放課後に私は風紀委員の仕事がありました。


ついていきますと言ったのですが、2人は委員会に行ってこいと口をそろえて言うので、


仕方なく私だけが残ったのです。


その時は雨も弱かったので同じように傘を持ってきていなかった2人は走って帰って行きましたが、


今の私にできるはずがないです。


でも…。


「濡れて帰るしかないようですね」


私は飛び出し、走るのに適していないローファーなのにも関わらず拘わらず、全力疾走ノンストップで家へ帰りました。


それでも制服も体もびしょ濡れになってしまいましたが、


制服はもう1着あったのでそれを着て明日、学園へ通うことにしました。




☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★




〜水月学園・3−1〜


今日もまた雨……。


4月に入ってからと晴れと雨の繰り返し。


お姉様が言うには春にはよくあることだそうです。


雨は嫌いではありませんが晴れの日よりは幾分か気分が滅入ります。


『病は気から』というように、心なしか体もだるいように感じます。





「また雨だね…」


授業の間にある休み時間。


お姉様は窓側の席に座る私の所へ来るとまず外の様子を見ます。


「そうですね」


「仕方ないことだけど、雨はやだね〜。お出かけもそんなに行けなくなるし。


しかも梅雨まであるからね〜」


「『つゆ』…ですか?」


「そう、『梅雨』って書くの。よく雨が降る時期のこと」


お姉様は目の前の窓に指を触れさせ、文字を書いています。


水滴の着いた窓に『つゆ』を漢字で書いてくれたようです。


すぐ水が流れ出すのでどんな漢字はよくわかりませんでしたけど。


「つまり雨期のことですね」


「そうだね」


その日は傘を持ってきたので濡れることなく帰ることができました。




☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★




〜如月家・奏の部屋〜


「ふぅ……」


私は机にかばんを置くと制服のままベッドへ倒れ込みます。


そういえばメデスは先週本部へ戻りました。


家にいてもやることないから、本部で任務についてた方が暇じゃないからだそうです。


いつも怠惰に過ごしていたようですし、その方がメデスにもいいと思います。


それにしても今日は疲れました。


学園では疲れるようなことは何もなかったのですが…。


少し寝たらマシになるでしょうか…?


あまりにもだるいのでその体勢のまま、私は眼を閉じて眠りました。




☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★




「ん……」


眼を開けた時は昼間よりさらに暗くなり始めたころでした。


時刻は6時17分。


2時間30分ぐらい眠ってしまったようです。


そうだ。夕食の手伝いをしないと…。


立ってわかりましたがだるさはなくなるどころか、ひどくなっているようです。


ふらふらとしながらも私は1階へ降りて行きました。




〜如月家・キッチン〜


お姉様は既に夕食を作り始めていました。


「あ、起きた?…ってふらふらじゃん!大丈夫!?」


お姉様は心配そうな顔で私の体を支えてくれました。


「ええ……だいじょ…うぶ…………ではないかも…しれません」


「ベッドに戻ろ」


「はい…」




〜如月家・奏の部屋〜


「もう…調子が悪いならちゃんと言わなきゃだめじゃない」


「すみません…」


私はお姉様に運ばれ、再びベッドで横になっています。


額には熱をさげるための冷えぴたが張られています。


熱を測ってみると38度4分。


おそらく原因はこの間の雨の中の全力疾走でしょう。


あの後しっかり体を温めたつもりでしたが、どうもそうはいかなかったようです。


その証拠がこの状況です。


「私も気付いてあげられなかったのは謝らなきゃだめなんだけど」


「いえ、私が我慢していたからです」


「…ともかく、今下でお兄ちゃんがおかゆ作ってるから私も手伝いに行くけど、大人しくしてるんだよ」


「はい」




☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★




夕食後、突然私の部屋にパジャマ着のお姉様が入ってきました。


ちなみに食後に着替えさせてもらい、私もパジャマを着ています。


「どうしたんですか?」


「一緒に寝てあげようかと思ってね♪」


そう言うとお姉様は私に了解も得ずに布団の中に潜り込んできます。


もともと1人用のベッドなので結構狭いですし、密着してしまいます。


「風邪をうつしてしまいますよ?それに私は1人で寝れます」


「大丈夫大丈夫」


そんな根拠どこにあるんですか。


ということは言わないでおきました。


「それに、病気になった時は誰でも寂しがり屋さんになるんだよ」


「いえ、私はそんなこと…」


「ごたごた言わないで、大人しくしてなさい!」


「わかりました」


釈然としませんでしたがここはお姉様の好意に甘えることにしました。


「そういや奏ちゃんが病気になるなんて初めてなんじゃない?」


「はい。こんなことになるなんて思いもしませんでした」


「造られたとはいえ、私も奏ちゃんも人間なんだよ。風邪ぐらいひくよ」


「はい………くしゅっ!」


話が中断すると思い出したかのように急に寒気がして、思わずくしゃみをしてしまいました。


「ふふっ、寒いの?温めてあげる」


それを見たお姉様は嬉しそうに微笑んで抱きしめてくれました。


「あったかい?」


「温かいです……」


私たちはそのまま眠りにつき、次の日には熱は平熱まで下がっていました。


だるさもなくなり、普段の私に戻れた気がします。


しかし用心のため、今日1日は学園を休むことになりました。


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