第11話 「捜し物発見!その2」
そろそろリリカル編も終盤ですにゃ。
〜六課隊舎・無月の部屋〜
ピピピ…
次の日の午後突然それは鳴った。
「通信だな」
このアラームは本部からの通信の合図。
「はい」
―丁度手が空いたのでソルダート姉弟に捜し物捜索の命を下した所、
3時間前、捜し物を3つ見つけたとの報告が入りました。そちらはどうですか?―
「「げっ!」」
オレと祢音が同時に同じ言葉を言った。
―ということは3つは見つけていない、ということですね?―
「まだ2つです…」
と答えたのは祢音。
―そうですか…―
隊長の声には怒りや呆れはないがどこか恐縮してしまう。
―回収次第連絡をしてください。
ソルダート姉弟を引き揚げさせますので。
逆の場合もありますが…。さて、どちらが一体早いのやら。それでは―
「行くぞっ!」
「うん!」
通信が切れるやいなやオレと祢音は走り出した。
奏も無言ながらついていく。
別に2人に対抗意識はないんだが、後に任務についた2人の方が3つ先に集めたというのは
2人の方が優秀だということになる。それは許せん。
〜六課隊舎・部隊長室〜
「「はやてさん!!」」
部隊長室のドアが開くと、そこにいたのははやてさんにフェイトさんだった。
「なんやタイミングのええこっちゃなぁ。今その捜し物が見つこうたって話してた所や」
「そうでしたか」
「見つこうたのは超高性能爆弾。一番高いビルの屋上に置いてあるそうや。
回収しに行こうとしてもなんかおるようで回収できてへんようや。
反応があったのは市街地やったからその周辺の住人は避難させた。
せやけどできる限り爆破は防いでほしい。建築物の問題もあるしな」
「残りの捜し物は仲間が見つけてくれたんで、あとはそれ一つです」
「そうか。今回はライトニングに無月くん、奏ちゃんで行ってもらう。
フェイト隊長、連絡よろしくな」
「はい」
〜六課隊舎・廊下〜
「私はシグナムたちに連絡するから無月と奏は部屋で用意して、集合。いいね」
「はい」
オレの返事と同時に奏は無言で頷く。
「じゃ、また」
廊下でフェイトさんと別れたオレたちは部屋に戻り、
いつもの黒いコートを着るなど準備して集合場所へ向かった。
〜異世界〜
「誰もいませんね」
「住人の避難はできてるみたいだね」
ビルの屋上から街を見渡してもこれだけの都市なのに人間どころか生き物すら見当たらない。
「さて、早く爆弾を見つけねぇとな。一番高いビル…」
「あれみたいですよ」
振り返ってキャロの指さす方向を見るといまいるビルの屋上からでもてっぺんが見えないほど大きいビル。
『ビル』というより最早『塔』と言った方がいいかもしれない。
「これを一番上まで行くわけか」
「行くよ」
「「「「はい!」」」」
「きゅくるー!」
『竜魂召喚』
キャロの召喚魔法によってフリードは初めて会った時のような大きな竜となる。
そしてエリオとキャロはフリードに跨り、飛び立つ。
「何か…いますね」
てっぺん目指して飛び立ってすぐ何かの影が何体も見える。
あれがはやてさんの言っていた『なんか』なんだろうな。
「敵…」
奏の言う通り、敵意剥き出しの魔術師…いや、魔法使いがいる。
「管理局の魔導師ではないな」
シグナムがそう言うんなら間違いないんだろう。
「なら容赦無しでいきますよ」
「無闇に殺しちゃだめだよ」
「わかりました」
フェイトさんの許可も得、オレが敵陣へ行こうとすると
「無月さん、待って下さい!」
キャロに呼び止められる。
「フリード!『ブラストレイ』!」
フリードから激しい炎が放たれ、ヤツらを包み込む。
確かに一人一人つぶしていくより手っ取り早いな。
だが突然炎の中からフリード目掛けて魔力砲が放たれた。
なんとか避けたものの、急に激しい動きをしたせいでキャロが振り落とされてしまった。
「キャロ!!」
一緒にフリードに跨っていたエリオがそのままフリードと共に救出に向かう。
さらにフェイトさんも続く。
上に注意しつつ、下を見るとキャロが無事に助け出されたのが見えた。
「ふぅ……行くぞ奏!」
改めてオレと奏は敵陣へ突っ込んでいった。
ヤツらには近・遠距離戦闘専門の魔導師がそれぞれいるようで
オレたちが近づくと剣などの武器を持ったヤツが前へ、
杖を持ち魔法で攻撃するヤツは離れてそれぞれ攻撃をしかけてくる。
オレや奏は剣を使った戦闘をし、魔法は補助程度にしか使っていない。
エリオたちも追いついてそれぞれ戦闘を開始する。
相手も数が多いってんでフェイトさんは鎌状態のバルディッシュを振るいつつ、
射撃も行うし、シグナムは連結刃でまとめて攻撃していく。
危ねぇとは思ったがさすが隊長、全く同士討ちすることもなく戦闘が続いている。
「無月…」
たまたま奏に近づいた時、奏がオレの名を呼んだ。
「どうした?」
「戦闘が楽です…」
「やっぱりそう思うか」
しばらく戦闘しているが集団での戦闘にも関わらず、いつもより疲労が少ない。
「無駄な動きもない…」
「それに訓練漬けの毎日だったからな。体力もついてるんだろ」
普段こんなにハードな訓練しなかったからな。
それに動きの型なんてその時次第だったし。
魔力もより器用に扱えるようになってる気がする。
戦技教導官という名は伊達じゃないということか。
少し時間が経過した。
重傷を負わせたヤツは退いていくのだが新たに来ているのか、数が減ったという実感はない。
それどころか遠方に援軍らしき集団が見えた。
「まだ出てくるのか」
うんざりするな。
「テスタロッサ、私とエリオ、キャロは増援を潰しに行く。そちらは任せた」
「はい。お願いします」
そして3人と1匹は援軍の出てきた方向へ進む。
―一気に突破した方がいいんじゃないですか!?―
オレは念話で遠くのフェイトさんへ呼びかける。
こいつらがその捜し物を守っているなら、それさえ取れば戦闘は終わるはず。
その考えはフェイトさんも一緒だったのか
―そうだね。キリがなさそうだし。私はここを抑えてるから無月と奏で行ってくれる?―
―1人で大丈夫ですか?―
念話に奏が割り込んでくる。
―大丈夫、これでも隊長なんだよ?安心して行ってくるといいよ―
―はい―
「頂上だな」
屋上のヘリポートの真ん中に直径1mぐらいの球体があった。
これがその高性能爆弾ってわけか。
まったく、やっかいな物を造ってくれた。
「さっさと回収するぞ」
早速回収しようと動き始めたが
「ちょっと待った」
目の前に他のヤツらとは一風違った男が現れた。
「お前が天照様を襲撃したヤツか」
「それはどうかな」
男はとぼけるように空を見る。
「それはともかく、さっさと持っていきなよ」
「どういうことだ?」
「その内わかるさ。じゃ、僕はここで」
そういうと男は次元転移した。
「何だったんですか?アレは」
「さあな、まぁこれで回収できる」
オレたちは高性能爆弾に近づくとその最後の捜し物を本部へ送った。
―フェイトさん、回収しました―
その後すぐさま連絡する。
―ありがと。魔導師も退いていくよ―
屋上から飛び立ち、下を見ると魔導師たちはほとんどいなくなっていた。
シグナムたちも合流し、さて帰ろうかとした瞬間
オレの見ている方向遠くから銃声もなく、銃弾が3発放たれたのが見えた。
おそらく狙いは目の前にいる奏。
銃弾に対して奏は背中を向けているからか
それとも戦闘が終わって一安心したからか気づいていない。
そんなことを考える前にオレは奏を突き飛ばし、変わりにオレが銃弾を受けることになった。
すぐそこまで来ていたので出来合いのシールドを張るしかなかった。
銃弾はシールドを難なく貫き、さらにはコートまで突き破る。
中途半端に強かったせいで銃弾は貫通せずにオレの体内で止まってしまったようだ。
一瞬だったが見た限り、銃弾に魔力をコーティングしてあるように見えた。
「「無月さん!!」」
まずエリオとキャロが悲痛な声をあげる。
突き飛ばされた瞬間の奏は状況を理解できず、目を丸くしていたが
オレが身代わりになって銃弾を受けたということを理解した瞬間奏はオレの名を叫んだ。
「無月!!」
「逃がさない」
『ソニックムーブ』
フェイトさんは一瞬で状況を理解し、銃弾が放たれたであろう場所へ向かう。
「無月!無月!!」
奏はオレの意識を保たせようとしているのか、両肩を持つと前後へ揺らしながら叫ぶ。
「揺さぶるな!」
シグナムの声で奏はピタリと動きを止めた。
「あまり動かさない方がいい」
「はい…」
オレはというと意識は保ってるがそれで精一杯だったりする。
銃弾3発くらうのなんてなかったからな。
当たり所もよくはないみたいだし。
吸血鬼状態ならまだしも今は人間だからな。
「無月は!?」
フェイトさんが一人の男を引き連れて帰ってきた。
そいつの手にはスナイパーライフル。
「…!」
「奏落ち着いて。まずは無月の治療だよ」
オレの意識はそこで途切れることとなった。
〜???〜
「ここは…?」
寝ている。
「気がついた?ここは機動六課の医務室よ」
「シャマル先生…」
オレの寝ているベッドの傍にはシャマル先生。
「お前らもいたのか」
そして祢音と奏もいた。
「うん、お兄ちゃん2日も眠ってたんだよ?……起きてよかった」
祢音は膝立ちをして、寝ているオレと視線の高さを合わせる。
「奏、ケガないよな」
オレが奏を見ると奏はそっぽを向いて言った。
「別に無月が余計なことしなくったって自分でちゃんと対処できてました。
それをわざわざ重傷まで負って…しかも自分より他人の事を気にするなんてどこのヒーローですか」
対処できなかったな、絶対。
それにあんなに叫んでたくせに……
まぁ言わないでおくか。
「でも……」
そこで奏はオレをチラリと見る。
「一応礼は言っておきます。……あ、ありがとう…ございます」
珍しくよく喋るな。
「お、奏ちゃんツンデレだねぇ〜。
あ、どっちかってゆうとクーデレかなぁ」
祢音は立つとニヤニヤしながら奏に寄り添う。
「な、なんですか?それは」
「奏ちゃんのことだよぉ〜〜」
奏は顔を赤くしながら寄り添ってくる祢音に戸惑っている。
「じゃあ私たちは一旦部屋に戻ってるね。何か用があったら呼んで」
「わかった。ありがとな」
「いえいえ♪」
祢音はまだ困惑している奏の背中を押してにこやかに部屋から出て行った。
そしてオレは結局この傷を完治させるのに3日かかった。
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