第1話 「正月」
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくです。
「あけましておめでと〜!!」
12時になろうとしている今日この頃、1階のリビングに来ての祢音の第一声がこれだった。
ようやく起きたようだ。
「ああ、おめでと」
「おめでとうございます。お姉様」
先に降りてきたオレと奏がそれぞれ返す。
そう今日は1月1日、元旦だ。
まぁそのセリフも年明けてすぐに聞いたから2回目になるんだが。
「おお!見事なおせち料理だねぇ!これだけ作れれば立派なお嫁さんになれるよ」
「ありがとうございます」
「つかお前も作っただろうが」
「まぁまぁ、そこは言いっこなしで」
ちなみに朝飯はおせちではない。
一応朝昼と食える量はあったのだが祢音が朝起きてこなかった。
オレが食おうとすると奏に「お姉様が降りてくるまで食べないで」、と止められる。
結局朝飯はパン一枚。ああ、餅も食ったっけな。
で、ようやくおせち料理にありつけるわけだ。
昼飯を食べ始めてしばらくすると祢音が言った。
「そういや昼からは千春たちと初詣に行くんだよね?」
「ああ」「はい」
それにオレと奏が同時に答える。
昼からに予定しておいてよかったよ。
朝からだったら祢音が寝坊していただろうからな。
初詣は元々大晦日の夜から元日の朝にかけて参るものなのだが案外ユルイ島で神社も気にしてないようだ。
というわけで集合場所の水月公園へ………
「よっ」
水月公園噴水前では既に新田康宏、安井祐介、新山千春の三人が来ていた。
祢音と奏と千春はそれぞれ振袖姿だ。
こうゆう時男だと着なくていいしメンドくさくなくていいなと思う。
「んじゃ、全員揃ったことで。行くか!」
「おお、すいてるすいてる」
康宏の言う通り神社がガラガラだった。
参拝客も数人、てか4人、数えるぐらいしかいない。
おみくじや破魔矢を売る巫女たちもなんだか暇そうだ。
ちゃっちゃと参拝を済ませ、おみくじ開封。
「やったぁ!私大吉!」
「私は中吉です」
「私もだよ」
ちなみにオレは末吉だ。中途半端だな。
さて、あいつらはっと
「ぼくは吉だったよ」
そういや末吉と吉ってどっちが上なんだ?まぁいい、問題は康宏だ。
「オレは…大凶っだああああああ!!」
さすがオチ要因、見事大凶を引き当てやがったな。
さて、オレたちは如月家へ
「まったりだねぇ」
「そうですね」
「まったりですなぁ」
祢音たちは特別に用意されたこたつに入り、机に頬をつけている。
オレはというとダイニングの椅子に座り元旦恒例の特番をぼーっと見ている。
ちなみに康宏と祐介は揃ってじゃんけんに負け、買い出し中だ。
「ただいま」
帰ってきたみたいだな。
「最後のポテチもらったー!」
「させないよ!」
「お姉様、はしたないです」
「オレ、阪神巨人正月しか見てねぇよ」
「普段はあんまり見ないよね」
「おせち料理まだ残ってるよねー!?」
「ええ、少し」
「じゃあそれみんなで食べよ!」
「あ〜あ、お菓子も食べ尽したし、おせちも食べたし、
千春たち帰っちゃったし、やることないし、眠いからこのまま寝ちゃおうか〜」
おいおい、それじゃあ話が進まねぇぞ。
「だって正月なんてそんなもんでしょ」
「勝手に人の思考を読むな」
「今日はこうしてまったりと過ごしましたとさ、終わり」
「って終わらせるかー!!」
「じゃあどうするんですか?」
「あ、そうそう。忘れてたよ」
ぐったりとしてた祢音が急に体を起こし、オレを見る。
「お年玉もらってないよ!」
「誰から?」
まぁ予想をつくが。
「お兄ちゃん」
やっぱりか……
うなだれるオレに両手が差し出される。
「私と奏ちゃんの分。1万円から受け付けております♪」
「ふざけるな。オレにそんな金はねぇ!」
「ウソツキ。任務の報酬で結構もらってるでしょ」
「お前たちも一緒だろが!」
「それとこれとは話が別だよ」
どこが別だ。
とは思いつつ結局渡すことに……ならねぇよ。
「では私から差し上げます」
と用意していたかのようにネズミが描かれたかわいいお年玉袋に入れられた金を渡す。
「正月にはこれを渡すものだと本に書いてありました。1万円とまではいきませんが」
「ううん。誰かさんと違って、くれるだけで嬉しいよ」
祢音はそう言ってチラリとオレを一瞥し
「……はぁ」
とため息をつく。
そんなことしてもやらねぇぞ。
「お、そうだ。お年玉とはいかねぇがいい物を持ってきてやろう」
「ホント!?じゃ早く持ってきて!」
「おう。ちょっと待ってろ」
そしてオレは2階へ
「これだ」
「なんか見たことがあるんだけど……ってこれ私の冬休みの宿題じゃん!!」
その通り祢音の分の冬休みの宿題(全部)だ。
「オレも奏も終わらせたのにお前だけ手つかずだろ?暇なこの時にやってしまえ」
「そういやお姉様が勉強してる所冬休みに入ってから見たことありませんね」
そうそう、どうやら奏もノってくれるようだ。これで敵は祢音のみ。
「いや、そういうのは最後の日にやるってのが決まりでしょ」
無茶な言い分だな。
「そういうわけにはいかないな。ちゃっちゃと終わらせろ」
「えーー!?」
んなわけでオレたちの元旦は過ぎていくのであった……
「って私がオチなのぉ!?」
え〜完全新作を考えつつ短編集を書く予定でしたがなあ〜んにも思いつかないのでしばらくこれ1本で考えていきます。