恋愛 by涼太
いつも通りの朝、ただ今日の朝は少しだけ違う。
百合と始めて手を繋いでの登校。
もとより俺はあまりそういうことではしゃぐような性格ではないのだが、百合は特別。
他の人とは違う。
昨日の出来事はまず一番に野島悠斗に話そうと決めていた。彼自身にもまた彼女がいて、そういうこともよく分かり合える友達である。
「悠斗‼」
「おぉ、おはよ。なんか良いことあったの?」
「なんでわかんだよ」
「だってお前らしくないじゃん?そうやって浮かれてるの。」
「百合と手、繋いだ!」
「よかったじゃん。恥ずかしがってただろ」
「かなりな」
「まぁ、よかったじゃん?」
「おう」
とまぁ、一日はこんな感じで始まった。
いつもは朝も部活があるがたまたま今日はなかった。部活は忙しくて朝昼放課後いつもある。まぁ、百合がいるからいいが…
俺は本当に自分が好きな人としか付き合わない。それが百合であって、俺は女と付き合ったことは殆どない。
だから、というのも可笑しいが、百合のことになると手もハグもキスも…となぜか積極的になってしまうのだが、普段からそういう性格なわけではない。悠斗が言うように。
自分で言うのもなんだが、わりと誠実なで温厚。
なんかすごく良い人のようだが、百合のことになるとやはり一変。
何故か誠実さを保てない。
恋愛って、逆にそういう風になるのが当たり前なのだろうか…
百合はどんな気持ちなんだろうか…
そして、いつもここに辿り着く。
百合に会いたい。
いつも、かなりの頻度で会っているのにも関わらず無性に百合に会いたくなる。
一日に一回は必ずこんな気持になる。
放課後、俺は少し仕事があって百合を教室で待たせていた。仕事を終え小走りで教室へ向かう。中へ入って
お待たせ、と言ったが返事がない。
「百合?」
もう一度話しかけるが返事がない。
俺は百合が寝ていることに気が付いた。
起こさない方がいいかな、と思って百合の隣に座ることにした。少し待とう。
百合の髪を撫でてみた。百合の長くこげ茶の髪の毛はとても綺麗にされていてさらさらしていた。
再び髪を撫でた。そうしてるうちに百合が急に愛おしくなってしまい、百合を自分の胸に引き寄せ抱きしめた。
その時、百合が目を覚ました。
「ごめん」
起こしちゃったかな、と少し後悔した。
「…」
百合は自分の状況に気づいて少し戸惑っているように涼太には見れた。
「…私…寝てた?」
「うん」
「ごめんね」
「大丈夫だから」
「…うん」
百合の身体が硬くなっているのがはっきりとわかる。
「そんな硬くなんなよ」
「…緊張するんだもん」
「緊張なんてしなくて大丈夫だって。俺が抱きしめてるんだから」
百合が俺の制服のシャツをキュっと握りしめたのがわかった。
「早水くん…」
「涼太」
「………。…りょ…うた…」
俺は嬉しすぎて百合を強く抱きしめた。
「…りょうた…痛い…」
「あっ、ごめん。」
「ううん、大丈夫」
「……なぁ百合?」
「ん?」
「今度の日曜さ、デートしない?」
「えっ?」
「ね?」
「…うん…!」
「場所はどこでもいいんだけど」
「…場所、考えてみるね」
「うん、よかったー」
「楽しみだね」
「うん。あっ、百合さっき何か言おうとしてた?」
「あっ、うん。そろそろ帰ろって」
「そうだな」
「うん」
俺は手を離し百合を待った。
支度が終わり教室を出た。
そうか、恋愛はこういうことなのか。