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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

親友

作者: Uki
掲載日:2026/02/24

 「お前らってさ、ほんと仲いいよな」


 クラスの誰かがそう言って、笑った。


 その瞬間、僕の心臓は少しだけ跳ねる。


 期待してしまうからだ。


 もしかして、と。


 ほんの一瞬だけ。


 でも、君は迷いなく言う。


「こいつは親友だから」


 ——親友。


 教室のざわめきに紛れて、胸の奥が静かにひび割れた。


 僕も笑う。


「そうそう、腐れ縁」


 うまく言えたと思う。

 声は震えていなかったはずだ。


 親友。


 それはきっと、最高の称号だ。


 誰よりも近くて、誰よりも信頼されていて、

 秘密も弱音も共有できる。


 でも。


 “好き”とは、違う。


 放課後、いつものように一緒に帰る。


 君は無防備だ。


 隣を歩きながら、当たり前みたいに僕の肩を叩く。


「今日の数学やばくね?」


「やばいのは君の点数でしょ」


「うるせ」


 笑い合う。


 この距離感が、心地いい。


 苦しいけど、離れたくない。


 信号待ちで、君がふと真面目な顔をした。


「俺さ」


「ん?」


「お前いなかったら、たぶん高校つまんなかった」


 胸が止まる。


 期待してしまう。


 もしかして。


 もしかして。


 でも。


「彼女できても、ちゃんと遊ぼうな」


 世界が、すっと色を失う。


 ……ああ、そうか。


 そこに、僕はいない。


 “彼女”と並ぶことはできない。


 親友だから。


「当たり前じゃん」


 笑うのは得意だ。


 君が嬉しそうにしてるなら、それでいい。


 本当はよくないけど。


 ある日、君に好きな人ができた。


 放課後の教室で、真剣な顔で相談してくる。


「どう思う?」


 どう思う?


 好きな人の好きな人の話を、どう思えばいいんだろう。


 喉が痛い。


「……いいと思うよ」


 ちゃんと背中を押せた。


 完璧な親友だ。


 君は照れくさそうに笑う。


「ありがとな。やっぱお前に相談して正解だわ」


 ——正解。


 僕はいつも、正解でいる。


 間違えない。


 告白もしない。


 期待もしない。


 君の隣にいられるなら、それでいい。


 そう思っていたのに。


 君が彼女と並んで歩く姿を見た日、

 初めて、足が止まった。


 こんなにも苦しいなら。


 親友なんて、なりたくなかった。


 放課後、呼び出される。


「彼女とさ、うまくいった」


 嬉しそうな顔。


 胸が軋む。


「よかったね」


 本心だ。


 本心なのに、痛い。


 そのとき、君が少しだけ真面目な目をした。


「でもさ」


「?」


「なんか変なんだよな」


 風が吹く。


「一番に話したいの、やっぱお前だし」


 やめて。


「嬉しいのも、不安なのも、最初に顔浮かぶの、お前だし」


 やめて。


 そんなこと言われたら。


「これって、なんなんだろな」


 僕は、笑った。


「親友だからでしょ」


 それが、いちばん安全な答え。


 君はしばらく黙って、それから小さく笑った。


「……だよな」


 夕焼けが、長い影を伸ばす。


 僕たちは並んで歩く。


 距離は変わらない。


 関係も変わらない。


 きっとこれからも。


 君は僕を“親友”と呼ぶ。


 そして僕は、その言葉に救われながら、少しずつ削れていく。


 好きだよ。


 言わないけど。


 だって、親友だから。


 それがいちばん近くて、いちばん遠い。

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