初めての町
「兄さん!朝だよー!!」
そんな声で目覚めた俺は早朝の冷えた風に当たってなるものかと寝袋にくるまっていた。
「朝ごはん作ったから食べてよ!僕の手作りだよ!!」
「・・・ああ、ありがとう。今起きるから少し待ってくれ・・・」
・・・・そうだった。
俺には前日家族ができたんだよな。
マコはまだかまだかと俺の服を引っ張ってくる。
俺たちは新しい町へ向け宿屋を出発したが日が沈んでしまったため山の中で一晩過ごすことにしたのだった。
そして起きてみると俺の戦闘服(料理限定)エプロンをマコが装備していた。
小柄なマコのエプロン姿はとてつもなく似合っていた。
「なんでエプロンの使い方知ってるんだ?」
「兄さんが昨日着てたから。」
・・・ああ、なるほど。
とりあえず俺は昨夜に用意しといた簡易テーブルのもとへいき席に着いた。
「どう?おいしい?」
朝早くから俺が寝てる間に用意したのか野菜が沢山使われたシチューが置かれている。
マコは少し不安そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「そう急かすなって~。まだ一口も食べてないんだから・・・」
まだ目が覚めていないため大きなあくびをしながらシチューを口に運び・・・
一瞬で目が覚めた。
「マコ!おまえは天才か!?朝飯から俺はこんなうまいものを食べたことはないぞ!」
「ほんとに?」
「ああ、5年旅をしてきた俺の手料理より数倍おいしいよ。出来のいい弟がいるとやっぱり違うなー。」
影斗はマコの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ん・・」
マコは頬を少し赤く染めながらおいしそうにシチューを黙々と食べ続ける影斗を見て満足そうにほほ笑んだ。
「そろそろ次の町までつくはずなんだがな・・・」
影斗は前回の失敗を反省し宿屋でしっかり地図を購入していた。
「ねえねえ、町ってどんなとこ?人がいっぱいいるの?」
初めて行く町にわくわくしてるのかテンションが高い。
「そこまで大きくない町だからすごいいるってわけではないがマコが今まで見てきた人数と比べるとすごい人数かもしれないな。」
森に囲まれたたった一本の整備された道を歩き続けること数十分、ようやく町へ到着した。
「人がいっぱい・・・・」
町は賑わっていた。
いろいろなお店が出ていて食べ物、洋服、道具など様々なものが売りに出されている。遠くの町から来ているのか大きな荷物や武具を持ち歩いている人が多くいるようだ。
「こりゃなんかの祭りでもやってるのか?まあそれよりぱっと用事を済ませてから見物でもしよう」
少し歩くと魔物、いわゆるドラゴンと思われる絵が書かれた看板のかかっている店にたどり着いた。
「何のお店?今日泊まるとこ?」
「いやマコが家族になったからマコの職業の制約と金がそろそろ危険な感じになってきたから適当な依頼を受けようと思ってね。」
中に入ると鎧を着た人やあきらかに強そうな人が見当たった。
そのほかにもちらほらと受付を済ましている住民の姿も見える。
ここはギルドという組織が取り締まっている店である。ほかにも冒険者をまとめているギルドは多くあり、主に職業の制約を行ったりお手伝いから魔物の討伐依頼などさまざまな仕事を提供してもらえる。報酬で受け取るお金は3割ほどギルドのほうに納めることになるが別報酬としてもらえる物などはそのまま受け取ることができる。ちなみにここのギルド名はペガサスである
「まあそんなわけでマコの新規の制約と以来を見に来たんだが・・・・マコは魔法使いで決定だろ。」
「僕も兄さんみたいに勇者になれないの?」
「なれるにはなれるけど勇者になるにはそれなりの試験を受けなきゃいけないからとりあえずマコの体質からして魔法使いになるのが妥当だな。」
「ふ~ん・・・」
マコは少し残念そうな顔をしながら受付へと歩く影斗の後を追った。
「はい。こちらはギルド・ペガサスの受付でございます。どのようなご用件でございましょうか?」
「あ~ちょっと俺の弟がギルドに入るために介入の契約をしに来たんだが大丈夫か?」
「はい大丈夫ですよ。ではこちらの契約書に記入お願いします。」
影斗は記入を終え受付に通した。
「はい確かに受け取りました。お名前はマコ様、種族は・・・魔族!?」
「魔族だと!?」
驚きの声は一瞬にして店内にいる人々に伝わっていった。
「すいません、魔族だとなんか迷惑かかりますかねえ?」
「申し訳ありません!迷惑とかそういうのは何もないんですが初めて魔族の方を見たので少々驚いてしまいまして・・・・しかし魔族の方が加入しているギルドなんて他にはたぶんありませんからギルドの知名度も上がりむしろ大歓迎です!!」
「確かにそうだろうな。なんかいやにテンション上がってるしな。」
受付を済まし依頼を受けようと依頼掲示板を眺めていると
「・・・・おい、魔族だぜ・・・俺始めて見たよ」
「ああ、しかし魔族ってかなり高額でやり取りされてるんだろ?しかも一緒にいるやつはあの影斗だ。どうせなんかうまいことやらかしてきたんだろ。」
「影斗ってあの『影の勇者』か!?戦い方が卑怯だって噂が多いが生活もずるがしこいってことなのか?」
鎧を着た男たちが影斗の話で盛り上がっている。
「兄さんって有名なの?人気者?」
「どちらかというとその逆だな。俺にも唯一使える魔法があるんだがそれが特殊な魔法でな、魔法使いにも使うことができない俺だけの技があるんだ。」
「それって僕にも使えないの?」
「たぶんできないと思う。今まであった魔法使いどころか魔法の書物にも載ってない魔法だからね。」
マコは考えた。
―なぜそんなにすごいことができるのに嫌われ者なのだろう。
僕を助けてくれた。そんな人が人から嫌われるようなことをするものなのかな?
そんなことを考えていたとき遠くから声がかけられた。
「お、影斗じゃねえか!?お前も武道大会に参加しに来たのか?」
身長が190を超えているであろう体格のよいがっしりした大男が話しかけてきた。
「武人!?久しぶりだなあ!?相変わらずでかいなお前とりあえず俺の横に立つなむかつくから。」
「おおすまねえな。それより隣のその子は誰だ?お前の子供か?」
「!?」
いきなり話を振られ驚いたのか影斗の後ろに急いで隠れてしまった
「おいあんまり驚かさないでくれ。こいつはマコ、俺の弟だ」
「驚かしたつもりはねえよ。お前に弟いたっけか?もしかして俺が旅に出た後に生まれたとか?まあそんなことよりお前大会に出るんだろ!お前と戦えるとしたらこれほどテンション上がることはねえわな!」
「まあそんなとこだね。お前、もしかしてまだ俺らが小さいころに喧嘩でまけたこと根に持ってるのか?そろそろ忘れてくれよ・・・・。それより大会って何だ?てか別ギルドのお前が何でここにいる?」
「お前しらねえのか?ここの町は2年に1回武道大会が行われて賞金も出るんだぜ!強えやつと戦えて金も手に入り、俺の知名度が上がる。こんなにいいイベントなんてめったにないぜ!それとお前らしきやつがいたから追っかけてきた!」
この世では知名度というのはとても大切である。仕事の依頼や職業のランクの階級の変化、時には自分のとおり名がつき冒険者として生活していくうえでとても重大なものだ。
他のギルドにそれだけの理由に入るなよ・・・・
大会といってもまとまったお金が手に入ることは捨てがたいが俺としては目立っても何の得もないしな・・
「ゴメン、俺目立つことが好きじゃないしこの町に長く居座る気もないから適当な依頼をこなして町を出るつもりだから」
「長居する気がないならなおさらだ。なんせ大会は明日行われるんだからな!ついにお前に俺の真の実力を見せ付けるときが来たぜ!」
なぜこいつは俺が出ると決め付けている・・・・
「あのなあ・・だから俺は」
「逃げるのか?」
空気が凍った。
「そうやって逃げるのか?まあ確かに俺にかなわないのは確かだろう。」
ピクッ
影との眉が一瞬つりあがり口元が引きつったのを武人は見逃さなかった。
「お前はいつもそうだ。この前も俺と会った次の日には何も言わずに町を出てただろ?俺と実力の差を感じるのが怖かったんだろ?そうなんだろ?」
「・・・・いいだろう。そこまでいうのなら出てやろうじゃないかその大会に!マコいくぞ、兄さんがかっこよくこいつを倒すとこを見させてやるからな!」
「うん!兄さんカッコいい!」
このとき店内の誰もが影斗は実際ずるがしこいことができるやつではないと考え直していたことに本人は気がつかなかった。
そしてむしろこいつの方が悪だなとだと批難の目を浴びているのにももちろん気がついていない武人であった。
投稿が遅れました申し訳ありません。
文などのことでアドバイスありましたらよろしくお願いします。
感想のほうも書いてもらえるとうれしいです。