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出会い

「あ~・・・アツい・・・」


なぜ夏はこうも決まって毎年暑いのだろう。

たまには春から秋へ季節が飛んでもいいではないか。

腕で顔に流れ落ちる汗を拭く。


「はぁ・・・やっぱり地図買うべきだったかな・・・。」


俺は旅に出てから5年もたち、さまざまな土地を歩き、さまざまな依頼を受け、さまざまな知識や心得なども会得した。

山越えなんぞどうにでもなると町を出る際に地図を買わずに出たら案の定道に迷ってしまい山道から抜けだせないでいる。

やはり調子に乗るものではないと胸の中で深く反省し今も歩き続けていた。


「腹が減ったなぁ、しょうがないここで飯にするか!」


大きめの荷物袋から干し肉と保存のきく木の実を取り出し調理を開始する。


「フンフフ~ン♪」


俺は5年間旅をしてきて料理も自分でするようにはなったが腕は全く上達せず、今でも工程は切る、焼く、煮るの3パターンしかできなかった。


「よし、できたぜ!!少し焦げたがわれながら良い出来だ!」


ただの焼いた肉と木の実だが腹に入れば肉は肉だ!

悲しい言い訳を自分に言い聞かせながらいざ口に運ぼうとしたとき・・・


「おーい、こっちに逃げたぞ!」


少し離れたところで声がしたと思った瞬間。


「・・・は?」


目の前の肉が吹っ飛んだ。

そして肉が吹っ飛んだ後に残ったのは一人の少年だった。


「な、なんだ!?何が起こった!まず俺の肉は!?」


あたりを見渡すと一匹の狐がうれしそうに肉を咥えて走り去っていた。


・・・はあ。

今週の俺はなんか駄目だな・・。

悲しみに涙ぐみながら倒れている少年に話しかけて見る。


「おい、何があったんだ?それよりお前大丈夫か?」


ん~返事がないな・・・気を失ってるのか?

ゆすって起こそうと思い少年に手をかけると赤い液体が手に付いた


「血が出てるじゃねえか!!」


すぐさま荷物から薬草と包帯を取り出し応急処置を行おうと服を脱がし作業を始めた。

傷は浅く、これなら応急処置だけでも何とかなるなと思い、汗をぬぐってやろうとタオルで顔を拭こうと髪をかき分けたとき


「耳が長い・・・?もしかして魔族か!」


魔族。それは精霊と精霊の間に希に生まれてくる種族。

そして魔族という種族は魔法を扱いに特化している。

しかし魔族は森や谷などの大自然での暮らしを好み、魔族と出会える可能性は生涯会えるか会えないか程度である。

そのあまりに稀な存在のせいで、生きて捕獲された魔族は莫大な大金で売買されているのであった。


「魔族がどうしてこんなところに・・・・!」


横の茂みから男たちが飛び出してきた。


「ここにいたか!もう逃がさねえぞ!」


さっきの遠くから聞こえた声はこいつらか・・・

およそこの魔族を追って走ってきたのであろう。


「なんかようか?」


男たちのリーダーなのか無精ひげの生えている大柄な男が口を開いた。


「お前誰だ?おれはそこの倒れてるやつに用があるんだ。そこをどいてくれや兄ちゃん。」


「だめだ、こいつは怪我してるんだ 」


おそらくこの男たちに襲われたのであろう。男は剣や弓といった武器を備えている。


「兄ちゃん。俺らはお金がほしいんだよ。痛い目にあわなくなければそこをどけよ。」


俺は無言で刀を構えた。倒れてる人がいるんだ。どけと言われてどけるわけがないだろう。


「そうか、痛い目にあわねえとわからねえらしいな。やるぞてめえら」


「「「オウ」」」


男たちは一人ずつではなく遠慮なく全員でかかってきた。

男たちの人数は5人、剣士が4人、弓使いが1人。


「フッ!!」


俺は腰に掛けてあった小刀を弓に向かって投げると同時に走り出した。

プツッ!っと弦が切れ弓使いは攻撃手段を失い俺は剣をふるう。


「ぐっ!?」


弓使いを峯うちで切り、その勢いで周りの剣士たちを薙ぎ払った。


「たった一太刀で、3人も倒すとは・・・貴様何者だ!?」


「俺の名は逢沢 影斗!!職業は勇者だ!!」




「・・・ん・・」


温かい・・・

ここはどこだろう・・・

確か僕は追われていたんだっけ?

でも切られて、それでも逃げて結局どうなったんだろう?


「お、目が覚めたか?」


「!?」


目を開くと一人の青年が顔をのぞいていた。


「おい!?そんなにおびえるなって~悪い奴らは追っ払ったからさ!」


そういえばさっき追ってきた人たちはもういない。そして目の前にいるのは見知らぬ男性。

いつでも逃げ出せるように身構えようとしたとき。


「イタッ!」


「おいおい~お前さっき切られたんだから無茶しないの!」


そういえば体には布が巻きつけられている・・・・

それよりここはどこだろう?見たことのないものだらけだ。


「あなたは・・・・誰?」


「俺か?俺は影斗、逢沢影斗だ。よろしくな」


・・・悪い人じゃなさそうだ。


「お前は名前なんて言うんだ?」


「僕は魔族だよ?」


「いやそれはそうなんだが、種族じゃなくて名前だ。」


名前って何だろう・・・・?僕は魔族でしかないのに?


「そうか名前がないのか~・・・・それじゃあな~・・」


「よし決めた!今日からお前は魔族の子で《マコ》だ!よろしくな!」


影斗は自分勝手ながらも魔族の少年にマコと名づけた。

意味が分からないマコあたりを見渡していると


「ああここか?ここはさっきの山を下ったとこにある街で宿を借りたんだ。マコも疲れてるだろうから寝てくれていいぞ?俺は悪い奴らが来ないか見守ってるからな。」


マコは確かに疲れていた。


状況を考えるのは明日にしよう・・・それよりここはフワフワで気持ちいいや・・・


マコは初めての布団の気持ちよさにすぐに寝息を立て始めた。




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