熾烈すぎる戦い②
(目的は勝利。そのためにまず────)
キリュウは爆発するようにギアを上げて走り出す。
(邪魔な狙撃手を倒す!いいタイミングで邪魔されたらたまったものじゃない!)
彼は第一目標を『魔法を放っているチーターの撃破』と定めた。
唐突かつ流麗な射出に、クレナータは遅れることなく飛び出しながらその意図を理解する。
「おいおい!!こっち来てくれんのか!?」
そしてその狙いを一切理解していないクライハートは、キリュウの到来を喜びながら剣を構えた。目には好奇と渇望を覗かせている。
「「流星剣戟」!!!」
投げかける感情に応える間もなく、黒い剣士と白い鎧の剣士は衝突した。
今度は青い閃光が2人の間で衝突する。
「さぁ、どう攻略してやろうか!」
チーターから歓喜が迸る。その熱は殺意となってキリュウに伝わり脳の奥底に小さな恐怖を生み出した。
しかし彼らに自身の感情を分析をしている時間はない。鍔迫り合いをしている間に第三者が介入を果たす。
「王道軌跡」
クレナータが鍔迫り合いをしている彼らの間を縫うようにチーターへとスキルを放った。
「クソが!!」
介入は防御によって防がれるがその隙をキリュウは見逃さない。
瞬時に放つ3つの斬撃は確実にクライハートの体を切り刻む。
「2度も邪魔するナァ!!メスブタァ!!!!」
すると、ステージに耳を塞ぎたくなる程の罵声が響いた。
クレナータの一撃によりクライハートの怒りは沸点を超えた。彼の愉悦は強者との戦闘。彼にとってキリュウは倒すべき強者でありクレナータはその強者が抱える弱者。存在さえも認知したくない邪魔なモノであった。
「心臓荊棘!!」
(これはまずいな)
「彗星拳戟」
チーターがモードのスキルを発動した直後、キリュウは咄嗟に最速の攻撃を放つ。
怒りのまま、クライハートが発動させたスキルはモードのスキル。
効果は自身の体力が徐々に減る代わりに攻撃速度を高めるもの。
クライハートはチートによりそのデメリットを踏み倒している。
「鬼神合掌!」
キリュウの拳は片手斧と衝突。威力の差によりキリュウは負けてダメージを負いながら後退してしまった。
焦りの理由は相手の戦略を脅威であると判断したから。
(かなり完成された戦略をしているな)
キリュウはその衝突を終えると、瞬時に相手の戦略を見透かす。
(彼らの戦略はざっくり言うと、クライハートがメインで攻めてエンドが近距離で、もう一人の狙撃手が遠距離で妨害するというものだ。役割が完成されている。そして連携もできている。このまま戦っていては崩されるのは俺達だ)
「キリュウさん。私が狙撃手を戦場に連れてきます」
「頼んだ」
すると作戦を提案してきたクレナータ。それをキリュウはすぐに承諾すると、一旦戦場を離れて根っこを飛び回り狙撃手を探し始めた。
(いい弟子だ。自分から良い作戦を提示してくれた。あの狙撃が止めばやりやすくなるだろう。さて問題は、その間ハイ・チーター二人を足止めしなければならないことだが……)
「ここは通行止めだ」
脅威となる存在に前と背後を挟まれているが、二刀の剣士の戦意は衰えない。恐怖に怯える段階は既に脱却している。
「元々、俺たちはそのつもりだ」
するとエンドがハルバードを構えて低い姿勢になりながらに話しかける。
「これで邪魔が入らずにボス戦が出来るな」
さらにクライハートも両腕の武器を構えて剣士に斬りかかろうとしていた。その表情は爆発しそうなくらいの喜びがぎゅうぎゅうと蓄えている。
その殺気と近い視線を受け取るキリュウは二度軽くジャンプをして二刀を構えた。
「来い」
その言葉を皮切りに戦いは再会される。
「行くぞキリュウ!」
飛び掛かるクライハート。
その剣と斧は青く輝き始める。
「「流星剣戟・潮流」」
青い閃光の奔流が衝突する。
武器に装填していないスキルは両手で使うことが出来る。その仕様を利用したクライハートは超連撃を放つ。
対し黒衣の剣士も両の剣に蒼い閃光を灯して斬撃の濁流を放つ。
剣速はほぼ同じ。彼らの間には常人では捉えきれない剣戟が繰り広げられていた。
線香花火のように攻撃同士の衝突するエフェクトが散っていく。竜巻とも形容できる斬撃の嵐。そこに介入する者が一人。
「ガンズロック!」
エンドはダメージを承知で嵐に飛び込んだ。
ガンズロックとは命中した者の動きを少しだけ停止させる斧スキル。これを命中させられればチーター側に戦況が傾く。
だがしかし、チーターたちが相手をしているプレイヤーはその程度の思惑が通じる相手ではない。
斧による横一線をキリュウはジャンプで避けながら回し蹴りを放つ。
「こっちを見ろよ!鬼神合掌!」
その飛び上がった隙を、クライハートは見逃さない。
嵐の中に光る赤い一撃によってキリュウは吹き飛ばされ地面に転がってしまった。
「まだまだ続くぞ!エンド、付いて来い!」
彼らは好機と見て黒い剣士に向かって追撃を始めた。
迫撃を察知した彼はすぐに立ち上がり現状に必要な一手を発動させる。
「流星剣戟」
両手の剣にスキルを灯してそれらを───
山なりに頬り投げた。
「!?!?」
意味不明な行動に驚愕している二人に対して彗星が近づいていく。
まず標的にされたのはクライハート。
「彗星拳戟」
両手の拳から青い閃光を迸らせながら、飛び蹴りをした。キリュウはそのままチーターを踏み台として別の標的へ飛んで行く。
不意を突いた一撃により反撃が出来ないチーターはそのまま踏み台となってしまった。目的地はエンドの眼前。そこに向かって弾丸のように黒い影が爆ぜる。
「こっちかよ!」
エンドはアクロバティックな戦い方をするキリュウのせいで一つのことを忘れていた。
放たれた剣の行方だ。
その着地点は、まさにエンドがいる座標である。
青い四つの星々重力で引かれ合うように一つの点に収束する。
「四海恒星」
彼の放てる瞬間最大火力がチーターに向かって降り注がれた。




