とにかくガンガンいこうぜ!!!!!
「早速先制!ぶち飛ばす!」
チーターたちの波に突入する一団の最先端。一人の女性が巨大な斧を携えて飛び出していた。
このゲームで最も高い攻撃力を使いこなすプレイヤー、シロップ。
彼女の右手には巨大な斧が握られている。その斧は彼女の二倍ほどの長さをしており黄金の装飾に思わず目を引いてしまう。
だがそんなことよりも特筆すべきなのは彼女のゲームセンス!
「続いてね☆『羅豪』!!!」
チーターの波は綺麗に割かれて、彼女の放った一撃により渓谷が誕生!
その破壊規模はバエルさんの放ったものを凌駕していた。
だがそんなことではもう驚かない!他の攻略メンバーはその谷が埋まらぬよう奮戦を繰り広げた。
「はいはいはいはい!」
スピードさんは理不尽的な速度で谷の先端まで躍り出てそこの周辺で敵を殲滅。随分お楽しそうに暴れ回っているようだ。
「お前たちも隙にやっているといい」
ロードさんは優雅に歩きながら魔法による炎の雨で中腹にいる敵を殲滅しながら、俺と葵に語り掛けていた。
「みんな。テンション上げていこうか!」
シロップさんも一撃では満足した様子はなく、斧を振り回してチーターたちを切り刻んでいく。
「じゃあさ、近接戦闘について教えようか」
「よろし、うわぁぁぁ!!」
しかし、それだけでは足りない。奴らは攻撃という網を乗り越えてポロリ、ポロリと抜け出して俺たちをクリアさせないためにこちらに向かって迫ってくる。
その様子を眺めていた葵は、これぞチャンスだと言いたげな喜びを隠せない爽やかな笑顔で俺に手を引いた。かなり力強く腕を引かれたため驚きながら彼女に付いて行くことになる。
この光景に、俺のテンションはみるみると高まっていく。
新しい理論、倒すべき敵、それらを存分に活用できる環境。その三拍子は存分に昂らせてくれる。
「まず、近接戦で重要なのは自分の強みを押し付けること!サムの強みはその頭、さてどう戦う?」
目の前には迫るチーターたちがやけにいい姿勢に走っている。
「全員嵌め倒せばいいんだろう?バチバチにやってやる。気分は天才軍師だ」
すぐさまその位置関係を把握。同時に脳内に3Dマップを生成。
近距離の間合いに入る前に対処すべき脅威度を推定、優先度を決定。
彼女の手が握られていない、左手に杖を持ち目標を定める。
「火王炎剣」
そして全てを仕組んだ上で最適化された『強化されたファイアショット』を放つ。
全てのチーターを殲滅するために。
全ての敵を排除するために。
「行ってこい!ホリーハック!」
「はいらじゃ」
前方20名に対して全発命中。その様子を見た瞬間に彼女と繋がっている手を放し最前線の最高峰で戦場全体を俯瞰した。
「そことそことそことそことそこと!!!」
漏れ出る敵を杖で指差して剣を射出する。
第一の鍵獲得までの戦いで把握した推定HPに合わせて最低限の剣で攻撃することで、MPを削減しながらことでとある状況を待つ。それは……
「我慢できなかったな!」
チートを使用した攻撃。無尽蔵に伸びる腕。
この攻撃にも弱点がある。それは
「遅いんだよなぁ!お前は!」
攻撃速度が遅いこと。
「目で追えなくなってから出直してきな!」
伸びている腕を観測した俺はそれをあえて懐の内までもっていく。
「捕まえた!」
そして俺は炎をグローブのように展開することで攻撃判定を相殺しながら腕を掴む。
後はもうこっちのものだ。
「こっちに……来いっと!」
それを綱引きのように思い切り引っ張ると、滝の中からポロリ、とチーターが現れる。
「手ぇ出さないでくださいね!」
そのままチーターを地面に叩きつけると、そいつに向かって走り出した。
「このまま解析します!」
奴らとの戦闘で気付いたことが幾つかある。それを検証しながら俺の仮説を検証する。
その仮説とは……
「お前ら、AIだろ!?」
相手が人間ではない、という仮説である。
まず彼らにはまるで意思がない。
地面に叩きつけられたチーターは動揺する様子もなく俺に向かって走り出す。
「えっと、おいバカ!お前こんなところで何をっ危ねっ……してるんだ!」
ひとまず俺は目の前のチーターに意思があるのかどうか確認するために挑発をしてみたが期待した答えは返ってこない。喋りかけてくる途中に俺が掴んでいる腕を更に伸ばして攻撃してきた。
「挑発してんだよ、無反応だと悲しいでしょうが!」
その攻撃は避けながら奴に言葉を投げかけ続ける。
しかしそんな俺の、ぱっと見無様な光景であっても奴はなんの感情も見せなかった。
「ああ、そうか」
これ以上絞り出せることが何もなさそうだと感じた俺は、すぐに炎の剣を降らせることでそのチーターを討伐。そしてもう一つの仮説を思い浮かべる。
(やっぱり、これ試されているよな?)
少し考えすぎかもしれないがあまりにもチーターたちが弱すぎる。今までの敵はこんなものではなかった。もっと理不尽に力を振るってきたはずだ。今与えられている理不尽はまるで乗り越えることを前提としているみたいだった。試されているような感覚さえある。
(これからが本番だな。これは)
背筋に汗が流れているのを感じながらそれを一旦捨てて再び駆け始める。
今はそんなことに恐怖していても仕方がない。そんなものに思考を割いていたら対応できるものも対応できなくなってしまう。
「お~い。何か分かったの~?」
「全力で突破しようってことくらい!」
「ふふっ、なにそれ」
俺の先でチーターたちにクリティカルを叩き込む葵の言葉に反応しながら彼女の隣へスライディングで飛び込む。
「さぁ、行くぞ。好きに暴れて、合わせるから」
「だ~め。近接戦でその意識はダメ。俺について来い!くらいの気概を見せてくれないと、ということで……」
「え?」
兜を外している彼女が明らかに悪いことを考えているようなにやけ顔をしている。
「待ってまさか……」
その顔に恐れおののいた瞬間、俺の背中は引っ張られた。それはチーターによるものではなく、彼女のスキル『骨喰みの蛇』によるものだった。
「どりゃぁ!!」
彼女はそのまま俺を振り回して最前線へと投げ飛ばす。
「いってこ~い!」




