Run!!!!!じゃないと乗り遅れるぞ!!!!!
「さて、まずこの状況について整理しようぜ。まず我々の目の前にいるプレイヤーたちは強制決闘モードのチートを使用しているチーターである。ということでいいのかな?チートハンター?」
この場の話し合いを取り仕切るアサヒさんが俺に話を振ってくる。
「はい。────」
彼に促されて情報を共有しようとしたその時、脳みそが待ったをかけた。
『ラウンズ』にはチーターもしくはそれに繋がっている者がいる。
彼らに情報を共有していいものだろうか、と考えたところでその迷いは放り投げた。
今はそんなことを考慮している暇はない。それにこの中にチーター側の人間がいたとしても情報の優位性は彼らにある。共有を行ったところで何ら問題はないはずだ。
「それで間違いないです。今のところ第一層、第二層のどちらにもチーターがいるので恐らくこのダンジョンはチーターに占拠されているとみて間違いないでしょう」
「チーターたちの組織的犯罪、ということだね。応援を呼ぶにしても生半可なプレイヤーは呼べないね」
「そうだな。それに一つ。俺たちが受け入れなくちゃならないことがある」
マスターさんの言葉を押しのけるようにアサヒさんが割り込む。鷹の兜でその表情をはかり知ることは出来ないが声色は鈍重なものだった。
「大きな前提を共有しておこう。ダンジョンの『仕様』が変更されている。そもそも我々がここに追いつけていることがおかしい」
(それもそうだ!!!)
その言葉に思わずハッとした。
ラウンズの面々は俺達がこのダンジョンに入って来た時にはいなかった。そもそもチーターがいる異常事態のせいで流されてしまったが、このダンジョンは事前に示し合わさなければ一緒に攻略できないものだった。
「このゲームは後乗りで他のプレイヤーのダンジョン攻略を助けることは出来ない。それに一つのダンジョンに入ることが出来る人数制限がある」
「おい。確かに仕様が変更されているのは事実だろう。だがお前らしくない。いつも通り効率よく結論を言ってくれ」
説明が長くなることを察知したロードさんは結論を失礼とも取られかねない口調で責める。その言葉に彼はばつが悪そうに目線を逸らした。
「……ああ、正直こんな荒唐無稽な結論を下したくなかったんだけどな……運営のサーバーがハッキングされている」
「あっ」
「?」
俺がその異常性を理解したことで、空気は瞬く間に重いものになった。
全身に走るぞわっとした悪寒。それを飼いならしながら彼の言葉を咀嚼していく。
つまり運営会社。もしくはサーバーを保管している場所にデータをいじることが出来る人間がいるということだ。
「……『どうやって?』という疑問は、口にしないほうが、いい。ハッキング、されている、という推論が正しければ、この状況の、説明ができる」
アサヒさんは言葉に詰まりながらも自身の推論を続けて話す。
「今までの攻略情報は通じないぞ。……面倒なことだ。しかも仕様が変更できるとなるとゲームシステム的な妨害、例えば『敵対するプレイヤーを攻撃不可にする』といった妨害も発生するかもしれん。これも面倒だ」
「一旦それはないと断じて攻略するしかありませんね。もしその手段を用いるつもりならもう発動しているはずだ」
ロードさんの懸念に対してそれを考慮していては思い切り戦うことが出来ないと考えた俺は提案を切り捨てた。
「ただ頭の隅には置いておいたほうが良いんじゃないかな?相手が愉快犯だった場合、どうしようもないタイミングでそういった妨害を発動する可能性があるし。だけども全員がそれを頭の中に入れていては本来の実力を発揮できないね。なら私の担当だな。うまくやるよ」
確かにマスターさんの言う通り、彼自身は攻撃をしないでダメージを与えることに特化している。妨害を警戒するというよりも彼にメインで暴れてもらうという方針を取る方がいいだろう。
「さぁて、随分と効率的に攻略しないといけないな。相手はなんでもできる。思考の時間を与えてはならない。みんな、スキルと装備編成はTeir1のものにしておいてくれ。そしてこの攻略の指揮についてだが全体は俺、前線はマスター後方はロード、そしてサポートはサム、という形で行く。異論はあるか?」
「「ない」」
「ないです」
ロードさんとマスターさん、そして俺はアサヒさんの提案を呑んで前線で暴れているラウンズのメンバーへと合流することにした。
「……ね。サム。どういうこと?」
背中をツンツンとつつかれ説明を催促された俺は葵にこれまでの情報と方針をまとめて伝える。
「相手はこのゲームの仕様を変えられる。面倒なことをされる前に超速突破。これが結論」
「う~ん。わっかりやすい……♪」
「どうやら作戦会議は終わったよう、だな」
すると円のようになっている俺達四人の中心に一人の男が黒いコートをたなびかせながら落下してきた。
落ちてきたのはプエル・バエル。
「それでは疾く行くぞ。どうやら敵は無限に湧いてくるようだ」
前線の方へ目をやると衝撃的な光景が広がっていた。
敵の数が変わっていないのだ。あれだけ話し合いをしていた時間の間であっても敵の数は減っていない。彼らがこの時間で敵を一人も倒せていないということも有り得ないので、敵が無限に出現しているという言葉は信じてよいだろう。
「それでは迷惑をかける前にとっととRun、だ。諸君!!!!」
すると俺たちの背後からビュン、と一陣の風が抜けていく。
それはウェポンズ達。彼らはそそくさと走って第二の鍵がある場所めがけて突き抜けていった。
「よし、彼らに続こう。善は急げ、流行には乗れるときに乗れってやつだ」
するとアサヒさんもすぐさま走り出し、それにつられて残りのメンバーも走り出す。
これ以上チーターどもに先手を取らせる訳にはいかない。俺はその決意を胸に力強く足を踏み込みながら駆けていく。




