ちりつも
玉虫絵師
「あかりー、起きなさい。遅れるわよー。変ねいつも自分でおきてくるに」
「はっ、何?何今の夢?」
温泉街の集合団地から駆け下りていく。
「なんで私だけこんな変な夢見るの」
「やっぱりなんかおかしいと思った」人だかりが道にできていたがすぐになにかわかった。急に道路から間欠泉が吹き上がってる」
通行人にいっている。これでここの所有者は一攫千金だ。温泉街では常識だが、温泉が湧いたら湧いた所有地の所有者が権利を持つことになる。
「昨日、夢でみた。うそっ」あかりが夢でみたのは、ある王国に住んでいる。夢だった。そこでは、家庭をもち、ある研究の仕事についている。その王国の名はネム王国、現在の日本よりも高度な文明が発展している。
「気のせい、気のせい、考えすぎ」いつからこんな考えすぎる性格になったんだろうか。高校の授業では手なんてあげたこともないのに、そもそもわかってないし、言いたくて仕方がない、やっぱりあの夢のせいだろうか。夢がそもそも現実世界に自分に影響を及ぼす。そんなことを周りにいったら、きっと特別なところへつれていかれるだろう。学期末のテスト結果が張り出されていた。「みんなが、だれこの人、だんとつじゃん、こんな頭いい子この学校にいたんだ」その結果を見たとき自分自身に愕然とした、妙にできるとは思っていたがまさか。ネム王国、この事実を知られないために検索にすらかけられない。きっと、とんでもないことに巻き込まれるにきまっている。
「なんで、あかり急に頭よくなったの、なんか塾でもいっての、急にがり勉になった」定例のカラオケで同級生に変に思われているようだ。
「うーん、なんでかな、わたしにもちょっとわかりかねる」
「隠れてがり勉するようになったんだね。あかりも成長したんだね、なんだか親になったようで感慨深いわ」
「いつからあんたの親になったのよ」
しかしネムでの生活、特に研究していることが気になってしかたがない。ネム王国そこは専制君主制で国民が何かの仕事に確実についている。というか、必ず王国に対して貢献しなければいけないらしい。緑に覆われたビルが立ち並ぶ。ビル群と調和をし、居住用の住宅、ほとんど2,3F建てレンガと漆喰に覆われた建物ばかりだが、ビル群も変わっていて日本の瓦がビルというか建物に採用されていて、日本的だ。
「しかし、あたしもいつの間にかネムの住人になってしまったな」夢のなかだし、現実世界と違うんだから、
もっと突飛な大胆なことをやってもいいんじゃないかと、自分の変なまじめな性格に心底思う。
ちょっと冷静にならないと、まず状況を整理しよう。周りの出来事に流されてばっかりだ。たしか、あの眠った日、いつもと違うことといったら「あっ」そういえば、たまたま神社に入りたくなって、お参りも一応済ませようとしたとき、背中で神社の熱を持った池が突然「ボンッ」と背中から音がなったんだった。それ以来、毎日ネム王国に行っている。眠っていはいるが眠ってはいない。変な感覚だ。でも朝目覚めたら、ぐっすり寝たような感覚になる。ネム王国での私の研究は、光を超えた存在、目には見えない物質の理論の定理をみつけだすことだ。簡単に言えば物質自体は発見され利用はされているが、物質自体の理屈がわかっていないということだ。いま地球でのあらゆる科学分野でネム王国が超えている。自分でもネム王国での家族に対して変な抵抗はない。むしろない。ハルという一人息子をそだてて、テツヤという旦那様がいる。不思議なのがなぜ周りが気づいていないのか。頭の悪い私でもそれぐらいわかる。わたしが二人いる?もしかして、その考えにやっと最近気づいてきた。「てか、普通気づくでしょ、なんで?この内容のほうが研究対象に値すると思う。最近、学校の勉強が簡単すぎて、わざと頭悪いふりしても頭いい部類に篩にかけられてしまう。私は何をやっているんだろう。そうまさに夢だった。夢に思っていた、研究者としての生き方だ、頭のほうがついてこず、一人であがいても学力は上がるわけなかった。こんなにも簡単に夢が叶ってしまう、ネムの国に恐ろしさすら最近感じ始めた。なぜかネムでは語りたがらないが自由の国、堕落した国といっているレヒという王国が近くにあるらしい。そもそも自由、不自由の定義ってなに、ネムにはクイーンベルという女王が国の行く末をきめているらしい。いつものようにここの所、研究をしていてもまったく苦にならないので、ネムの国、ご自慢の図書館で、ここでの物理、化学を一から猛烈に勉強をしている。なぜか、もともと知っていたかのような思考に陥るのはなぜなのだろうか。ここをもとから知っていた。それとも本当の現実世界がネムだったのか。「あなたこの国の人じゃないでしょ」急に後ろから話され「ぎょっ」としてしまう。「あかりー、あかりー。も昼休みは終わりだっつうのまだ寝てんの」そうだったここは地球、私の現実世界のはず、どういうわけ?このままにしておくわけにはいけない、なんだかそんな気分にさせらた。ネムで質問することを内心恐れていた。この素晴らしい世界観が二度と帰ってこないんじゃないかという恐怖を抱くようになった。あの子の顔は覚えている。あの子は普通じゃない、本能がそう言っているのがわかる。いつもなら間違いなく、声はかけずに生きていくだろう。なぜだろう、研究ばかりに捉われて、ネムに対して外の世界になぜ興味をもたなかったのか、ネムの住人の大通りを歩いていた。なんだか不思議と住民に対して、知性を感じるのは気のせいか。まあ、外国にやってきたと思えばいいのかもしれない、なぜかポジティブに考えるようになっていた。「あの女の顔を忘れない」綺麗な顔をしていた。
「あっ、あの女だ」声をかけようとするといきなり手を引っ張られる。
「お前、何考えてるだ、あほか」
いきなりあった人にあほかと言われたのは初めてだった。
「あ、あんたにそんなこと言われる覚えはない」
「少しは冷静になれよ」
「あんたはどこから来た」
「あなたはここの人」
「やっぱり、あいつのことを知ってるのは普通じゃない」
私の勘は当たってたんだ。妙に納得してしまった。
「おれは土岐慎吾、ここで政府の高官をしている。まず、お前よりはここをよく知っている」
手を引っ張られ、話やすい場所に移動した。
「ここは俺の行きつけなんだ」
なんか悪い人ではないのがわかる。
「お前ここで、何も調べてないだろ」
「なんでそんなことがわかんのよ」
「よー。シンゴー」
「なに?仲間呼んでんの」
「別に悪意があるわけじゃない」
やってきた人物は、明らかに年上でその知性がにじみでている。
「あんたと話すよりはよさそうね」
「さすがお嬢さんよくわかってらっしゃる。まずレムの住民はお前たち移住者おれたち上の人間はそう呼んでる、お前たちのことは知らない。それは何を意味してるかわかるな。一部の人間たちはお前たちのことは知っているということだ」
「一体なにが目的なの」
「まあ、焦るのは無理はないが、最終目的はあくまでこの国にはない科学の発展、なぜそこまでして国を発展させたがるのかはわからない。お前たち地球の何かに意味があるのかもしれない」
「なんであたしがそんなことに巻き込まれてんのよ」
「まぁ、見事向こうの目論見通り、お嬢さんはここでその知見を活かそうとしている」
「て、あなたたちもしかして、いまこんな話してて大丈夫なの」
「大丈夫といえば大丈夫だが、別の見方をすれば大丈夫ではない」
「まあ、でもここでの生活はそこまで苦じゃないわ。でも時々引っかかるのよ。ここでの生活が」
「お嬢さん我々のメンバーに入らないかね。漠然と生きる今よりいいと思うのだが」
「あなたたちはいいの」
「もちろん、お前さんのことは、よく知っているというか調べてある」
「城にも入れる」
「ああ、あのバカでかい城か日本的なのもなんだか引っかかってたんだよね」
「ここにいてある違和感を感じなかったか」
「そういえばずっと不思議だった。なぜかネムには電子機器があまり当たり前のようにない。そうパソコンがないのだ。なぜここにはパソコンがないの」
数日後。地下組織アリスの存在をしる。
「あのさ、地球のヘンゼルとグレーテルの話は知ってる。あれはここのお話がもとになっているはなしなの」ロングヘアが美しいお姉さんが気さくに話しかけてくれる。
「そうネム王国は一度その高度な文明すぎて行き過ぎてしまった。核戦争により一度滅んでいるのだよ」
「それとPCがないのが関係しているのね」
「ああ、昔は魔力をもったものがおった、魔力をもたない人間はPCにそれの代わりをたよらせることにより、いつしか対立に溝が埋められなくなった。魔力を持った人間は核にさえ超えられるという確信があり、甘くみていた。パソコンをもった人間は過信しすぎていた。核さえもっていれば魔族をこえられると」
「それにより、核戦争が偶発してしまい、両民族はみんな滅んでしまった。レヒに残った魔族の末裔と呼ばれる王女クイーンベルがレヒをなぜかそのまま残し、あらたな王国、ネム王国を建国した。私たちが知ってる正史はここまでよ。ネムの住民も一部の高官などしか知らない」
「私はこの国をもっとよくしたい、ネムで研究したい」
「結論を急がせすぎたみたいだね」
「ええ。あなたのような人間がくるのを待っていたのかもしれない」
松本ゆずの場合
ああ、いた、また見つけてしまった慎吾さんだ。ネムの国にいけたら私はそれでいい。私の研究はこの世界に魔族は実在するのかの事象という課題だ。魔族なんて本当いたなんて信じられない。地球で魔族に研究してるなんていうと物笑いの種にされてしますだろう。いつものティータイムの時間だ。この職場での楽しみの時間だ。意見交換の有益な時間でもある。私は政府の自然現象保護部に所属している。正直、ネムでの生活が楽しすぎて、仕事についてはなあなあでやっている。それに慎吾様がみれるのも楽しみ一つだ。そんなことをしていても、こうみえて地球では高2の女子を絶賛実施中の青春ど真ん中だ。あの娘を見たときはこの目を疑った。日本で見るあの娘と瓜二つだった。そういうレベルでの話ではない。まんまその娘がそこにいた。見つけてからは最初は放っておいたが、ネムにおいて重要なポジションにいることをしると放っておくこともできなくなっていた。また、慎吾さんとも近づいたのも気に食わない。いつしか彼女の後を追うようになってしまった。「まったく、完全にあいつのストーカーになってしまった。あの女の後を追うと、信じられない場所に入っていった。クイーンベルの居城にはいっていったのだ。「なぜだ、なんであの女が」このネムにとっての絶対的な支配者。本名は、九院鈴音周りの人間は彼女の本名を言いたがらず、いつしか民衆がもじって、九院=クイーン、鈴音=ベルという愛称をいうようになった。九院鈴音は謎に包まれている人物だ。顔写真や年齢、そのほとんどが謎に包まれているのなぜか彼女は民衆に慕われていた。こんな統治者が存在していいはずがない。民衆は何かをかくしているのか、移住者の私には知らないことがまだあるのかもしれない。この国を知るにはまずは表の歴史を知るひつようがある、思慮が浅い私だって、表の歴史と裏の歴史が存在していることぐらいはわかる。まずは仕事が終わったら、図書館にこもって、ネムの人々は勤勉で、深夜まで図書館が一般に開放されており、その知性に満ちた空間にいるととても心地いい、間接照明があふれた回廊に自習スペース、ここでのネムの歴史が膨大に収められている。「しかし、九院鈴音、どこかできいたことがあるような」日本にいたら、すぐに検索にかけるのだが、ここではPCがほぼ禁止されてるいることも普通のようにうけいれられるようになってきた。一つの疑問を抱くようになった。本当に九院鈴音は核の引き金を弾いたのか。このネムはその上に本当になりたっているのか。本当にPCの利用がすべての根本的な原因なのだろうか。ある団体がかかわっているらしいといのは、私の耳にも届いてきている。あまりにも闇が深すぎて近づく気にもならない事案だったことだ。相談相手はいるにはいるのだが、自分自身で自分の立ち位置というのを理解している。そのビジュアルで寄ってくる、男たちは信用はできない。自分にとって同性同士の共感しあえる人がいない。異性に過剰に惹かれる女は、同性には心の底から分かり合える相手には出会えないということはわかっている。絶対的な個をもてる人間には正直なれないとわかっている。大抵の部類の人間は他人の反応をみて自分という立ち位置がどういう人物か否応なくうけいれていくしかないのが大抵の人間の性質だ。人はいまいるコミュニティーから離れると新しい人間関係で自分のいまを壊したがる人がほとんどだ。ネムにきて、昔の自分を捨てた気になっていたが、結局は作り上げた人間関係にその人なりがありありとでてしまうことを否定できない。私という人となりを私は結局嫌いではないのかもしれない。話はもどるが、日本にいたらある程度のコミュニティーというほどではないが、友人関係、信仰、仕事にある程度のコミュニティーはそんざいするが、それ以外のコミュニティーは大抵が胡散臭い、そう胡散臭いを通り越した、組織がネムの地下組織には存在するということをあの女を張っていると、どうやら表舞台に出ている組織、ビルド。裏の組織といわれる、レフトリアという組織が存在していることを知るべきではなかったのかもしれないが、知ってしまうことになってしまった。私自身はネムを経験することによって、現実世界と呼んだほうがいいか、日本人としの女子高生の視野が一変してしまった。もしかして、この世界にも魔族がいるのではないかという疑念が湧いてしまう。「まあ、いるはずもないか」と妙に納得してしまった。ネムも好きだが、日本という国もいい国だと気づくことができた。お金さえ持っていれば日本式資本主義によって恩恵を得ることが保証されている。この簡単な事象に気づかず、お金を持っていない過半数がぶつくさいうという構図が巧に出来上がっている。幸い私の家庭は中の下というところだろうか、私はまだ学生だが、お金にはあまり困っていない、「まあ、学生なら当然か」いや、ネムを経験してわかる、私は恩恵にあずかっている。どうにか、ビルドに入ることができないかと考えてしまう。ビルドに入れば確実に自分のいまの視野が変わる、視野が変わればあらゆることに影響を及ぼす。文字通り、人生が変わるだろう。そう確信している。魔族と一括りにされているが魔族とはいったいなんなのだろうか。魔力でも持っているのだろうか。魔族の概念がわからない。一般的にどう違うのだろか、たぶん外見上の違いではないだろう。今のところみたことがない。それとも別の場所に住んでいるのだろうか。「あの子知っている」ネムで知っているといいたいところだが、残念ながら、日本での話だ。なんであの子が気になったんだろうか。後悔をしている。あくまでも隠れてますという、自らそういうオーラを出していることになぜ気づかないのだろうか。どこまで通路をあるいただろうか、ここまで迷路のような路地に入ったことはなかった。ネムの国の裏側をみてしまっているようだ。階段を不気味に降りていく。どこにいったのだろうか、あの子は、鉄の緑色の扉がそこにはあった。不気味と静まりかえっている。「開いてはもう戻れない」そんな感覚に一瞬陥ったが、その感覚には無視をして、扉をひらく。
「なにここ」そこは、列車のプラットホームを眺められる、従業員通路のようなところだ。
「なんでここにこんなところがあるの」あまりの衝撃で理解が追い付かない。この列車はなにネオンが黄金色に輝いて、列車の重厚な金属を鈍く光らせている。そこに通路がプラットホームの変わりになり、鉄柵の通路が張り巡らされている。「もう戻れない」感覚でわかる、ここはうかつにはあるいは、一般のネムの住人が入っていい場所じゃないことがわかる。衝撃で気が付かなかったが、無数の人でごった返している。自分がいることがまるで当たり前の日常のような態度だ。いつの間にか、エスカレーターが動いている、後ろに戻れない。どうしたらいい。本当に知っていいことなの。そう自分が問いかけてくる。このプラットホームにある機械は、列車なのか、飛行機なのか理解が追い付かない。どうやらそのどちらとも正解のようだ。高速でトンネルのような空間に突っ込んでいく。切符や、なにかのコードなど必要なんじゃないか、乗れるとも乗るとも決めていないのにそんなことが頭によぎる。でも、もう搭乗手続きをしているから中にいるんじゃないのかと考えてしまう。なぜかみんな通り過ぎる人を観察すると、何も荷物を持っていない理由がわからない。「まあ、必要ないからよね」思考力が鈍ってくる。ここはどうやらどこかへの中継地点なのだろう。列車と呼ぶべきか迷うが、まあ乗り物にのりくんでみる。どうやらもうすぐには帰れないのは確定だろう。なぜアナウンスがでないか乗ってからきがついた。行く場所は一つだけだからだろう。「あの子はどこの子だろう」周りで声がするのにきがついた。「あなたはどこの所属かしら」完全にキョドってしまう。「そこの所属です」と指をさすと、そこは、看板に上級職員検定試験とかいてあった。「すみません、あまりにお若いので、申し訳ありません。最近、ラフトへの外部接触が多発してるときいたので」「そう気になさらず、よくあることです」まるで自分の対応の完璧さに驚いてしまう。魔族の聖地にでも訪れたか、自分でもここまできて自分の図太さに驚いている。どうやらラフトとかいう場所に向かっていることは分かった。そこは東京の未来都市のような場所だった。こんな場所がネムに存在していることに驚嘆している。ネムではネオンや電子機器が禁止されているから尚更そうおもってしまう。「ようこそ、レフトリアに」井上希はそういい、ほほ笑んだ。「レフトリア」そういまいったことが聞き違いじゃないかもう一度、記憶を反芻した。レフトリアに入るにはどうやらビザのようなものが必要で非住人が侵入すればすぐわかるらしい。マイクロチップを腕につけているらしい。しかし、レフトリアの住人はかわっている、なぜ私を信用し、しかも別にレフトリアにとって有益になる情報や技能や能力を持ち合わせてるわけでもない、単に上の気まぐれか、ああ、私が勝手に入ってきたんだけどね。でも、誘導したのは向こうだし。そんなことどうでもいいか。しかし、ここまで勝手に国を作って、レフトリアは嫌われているが、一組織にされ、ネム公国とはいったいどんな国なのか、案内されたレフトリアは心の底から理想国家だと思う。ネムのように職業の自由はかなわないが、いち都市としたとき、あらゆる人種のニーズの自由度はネムのような閉塞感のような息苦しさはない。職業の自由が守られているということは、そんな簡単なことではないのかもしれない。守られていて初めてわかることなのかもしれない。誰にとっても職業上の研究の自由がバックアップされているということは成熟しきった世界なのかもしれない。なぜネムはそこまで他国に対して、閉鎖的なのだろうか、まるで何かを守っているかのように、一度滅んでしまっている教訓がそうさしていることは想像に値するが、そこまでして守っている頭の固い連中とは、どうしても思えない。そう思うのは九院鈴音の存在だ。表立って全くでてこないが、その知性と柔軟な思考からは人々は一目も二目もおいて、組織の頂に立つ者の素養として十分に持ち合わしているからだ。一見当たり前のように感じているがそもそもなぜ九院家が全実権を握っているのだろうか。当たり前だと思い込んでいることは時として、そのものの本質として、当たり前ではないのだろう。その本質に気づけるまでこの年齢で気づけたのは遅いのか早いのかはわからない。なぜこんなに国家元首を近くの一人物として感じるのだろうか。九院という人物を知りたいのか、わたしは。そんなことを考えていると、レフトリアの本質がわからなくなってくる。「あなたにレフトリアの在住権を十日与えるとする」漠然と十日渡されてどう過ごすのか試されているかと思うのは考えすぎ、いや、この十日間で答えを出せと言われているのだ。他のあまたの人たちが試されてきているのだろう。十日という時間を、無為に過ごせば早いだろう。だが、目的をしっかり持っていれば十日という時間は人は変われるほどの時間を過ごせるだろう。滝川あかりを探していただけなのにまいったな。なぜ私なの、彼女の物語が見たかったのに、私の物語が見たい人なんているのだろうか。彼女が中心だと心の中で思っていた。私が中心という考え方が傲慢なのだろうか、すべての一部すぎないのに、自分を課題評価しすぎの青少年少女のモラトリアムというやつなのだろうか。どこかで自分は滝川とは違い、ない頭と思いこんでいる。一日目は、その国のことをまず知ることから始めないといけない。
資金やその他もろもろ自由に使っていいことがわかり、その国の文化水準を図る指標をみるにはその国の最大の図書館に行くとその国のことがよくわかる。図書館にはその国のあらゆる知、文化、芸術、歴史、人々の思いをしることができるが、国をしるには歴史を知ることは重要だが、いつも頭の固い連中は国を作っているのは、いつも人であり、人の思いが国を作っているということをすぐに忘れてしまう。国が動くときというのは、人の思いがある臨界点を超えたときに動くものだと思っている。図書館まで送迎付きだが、その風土を知るためにあえて、その国の交通機関を使った。バイク便のようなものが走っている。後ろに座るボックス席がついており快適に運んでくれる。ついて思った。「やっぱりね」その図書館の壮大さはネムの図書館を超えていた。本にたどり着くまでの回廊のような廊下も素晴らしい。ここで、一つの今回の特権を使わせてもらった。それは、一般やそのほかの政府役人の公開禁止の書物を読ませてもらうことだ。「えっ」そこには、ネムが滅びた、本当の要因が記されていた。それによるとネム王国は、ネット上に神様を作ろうとしたそうだ。開発者、八坂からとられて神の名は「ヤサカニ」と呼ばれる神のなを冠した、そのネット上の存在に人々は歓喜したが、やがてその神は人々を不要なものと思うようになった、その神は罰として人々を排除しようとしたのが原因であると記されていた。一日でその国の歴史を把握するということは普通に考えて不可能なことだ。だがそれが必要な時がいまだ。いままでの勉強量と付随して得られる、その事実にいかに俯瞰してみることができるかが重要なカギであり、何を見るかも重要なことだ。無駄な書物に時間を費やしていたらすぐに時間切れで一日を無駄にするという事実が残るだけだ。ここは特典をフルに使うことを考えたほうがよさそうだ。最高の歴史を一日で享受、説明できる人物とそのことが客観的に載せられている書物を捜すのがここでいま私の最善手ではなかろうか、迷うが迷っている暇もない、歴史は一つのストーリーとして頭に入れて、できるだけ大きな視点も持てるのかがカギになってくる。もちろん、頭に重要なことだけ抜粋して頭に入れることが重要だ。そのためには、視覚も重要になってくるだろう、できるだけ、私の好みな写真や絵が視れることが重要だ。学んでみて思ったんだが、レフトリアという組織を侮っていた。まず、創世記として、小国として始まっている。それはネムよりも歴史が深い、レフトリアは幾度なく小国として、大国と渡りあっている。というより、大国とうまくとりいっている。いかに、為政者が優秀だったことを歴史が証明している。背景を詳しく知りたいが、そこまでの時間がないのがおしいところだ。レフトリアの神の歴史も知ることになる。何度か迫害を受けても、レフトリアの神をあがめることはやめなかった、神と歴史が交錯するときに大きく歴史の背景が動いていることも知る。為政者はどのような考えで動いているのかが、講義されることにより、歴史の大筋を知ることができる。こうしてみると、日本の学校教育というのは完成されているのか、ふいにそんなことが頭によぎった。いつも思うのはなにかが違う、その何かを埋めるために無駄なことにお金と時間を使わされていた自分にもどかしさを感じていた。だが、その何かを埋めるための行動を起こすことができない。教育者というのはいつも無知な人間を相手にしているためいつしかそのおごりに気づく、いや気づいていたとしても気づかないふりをして教鞭をとっているのだろう。私は私の研究につくうちにネムの合理的にシステムに傾倒していたことに気づいた、気づいたはずなのに、いまはレストリアという組織に興味を奪われてしまっている。なぜ、私は魔族の研究などまかされているのだろうか。ふと、そんな疑問が頭をよぎった。わからないこと私に調べさせてどうしようというのだろうか。日本からの移住者に研究をさせているのはなぜだろうか。ネムの叡智を受け取った人たちが研究するのが妥当だと思うのが普通だとおもうのだが。なぜ魔族の概念がもともとない私を抜擢したのだろうか。魔族というのは本当にいるのだろう。だから私を抜擢したのだろう、あまりネムでは重要な立ち位置ではないと、おもう研究分野を何も知識や常識のないものがやる必要がそこにあったんだ。ネムでさえ表にできないことを表にいない人物によって暴くことを望んでいたのだ。なんて頭のいい策略だ。私がまんまとネムの罠にはまってしまっていることにレフトリアという存在で気づくことができた。図書館には魔族についての禁書が蔵書としてあることに気づいた。表向きは人々についての研究による考察らしき蔵書名がされているが、見る人が見たらそれがフェイクなのがわかる。こんな本があったなんて、時間を忘れて読みふけってしまった。どうやら魔族というのは、この本によると魔族というのは、個人差によるがある能力が身についた人物をさしているようだ。その能力というのは、予知能力らしいそれも立証は難しいが、例えば一分後の未来を見ることができる人なら、未来を変えることができるらしい。その能力より、魔族と呼ばれ、その能力により未来の改変、そもそもそれが未来なのかもしれないが、未来の定義があやふやになってくる。未来を変えられるなんて、そもそもそんな人物に一般人はかなうわけなんてない。そもそも魔族をみつけるには不可能に近い、いやその方法を見つけるために私がいるのかもしれない。もしかして、悪用をしている人がいるのではないか、という一抹の不安が胸によぎった。そんなことが可能なのだろうか、歴史を変えるとは大げさなのかもしれない、魔力をもった魔族が、九院家がほかの魔族を一掃するために私を使って調べさせているのかもしれない。この考えに陥ったときに妙に腑に落ちた。物事を客観的に見る方法として、一番自分が最悪の方向を考えていると案外その想像が一番真実に近かったりするのが悲しいかなそれが当たっているが多いのは今までの人生で歩んできた人生の哲学だ。いわば能力の独占を考えているか、まだ真実に近づいてきたばかりだ。しかし、そんな能力者を見つけることなど不可能なはずだ。いやまだ自分の考えが及んでない、その方法があるのかあるいは、自分にみつけさせるために自分をつかって調べさせているんだろうか。気が付いたら、席に朝日が差し込んできていた。「もうこんな時間か」あと9日か。はやいのか長いのか急に眠気に襲われ、頭の中で予定は漠然としている。次に目が覚めた時には、車の中にいた。「なんで」急に記憶がもとに戻ってきた。そうだ、私は昨日の夜、この国を歴史を知るために最高の案内人を用意してほしいと要望を出したんだったんだ。しかし、レフトリアは私をどうしたいのだろうか、悪意は感じないのでこのチャンスを逃すまいと向こうの要望通りにのったまでだ。レフトリアに対してここまで、評判通り闇の組織とされてはいるがそのような感じは全くしない。やっぱり、歴史を生身で肌で感じる歴史は違った。映像や写真とはわけが違う。ただおかしいことに気が付いた。なぜ他国の情報を意図的に必要最小限にしている風があるのが気になった。なにかしれてはいけないことがあるのだろうか。そりゃ国と国との関係というのはいつの時代も自国よりに歴史は語られているということは分かっておかないといけない、そうしないと国内での国民とのバランスが取れなくなってしまう。 東方よりきたとされる7部族にたいしての記述がまったくない。このレフトリアも関係しているはずだ。ネムには消せない歴史として7部族の記述は残っている。歴史を文化を作った部族を否定するかのようだ。その血が色濃く残っているのに、現統治者がその血因でないのが原因だろうなのはわかるが、なぜ歴史を書き換えようとするのか理解ができない。為政者になると不都合なことがでてくるのだろう。「なんて身勝手なの」思わず口走ってしまう。古きいまはなき文明の跡地に立っていると、なぜか故郷に帰ってきたような懐かしさがわいてその場に立ち尽くしてしまった。日暮れまでそこにいた。よく遺跡に立ち尽くしているがやっと意味がわかったきがした。そう故郷に帰ってきたんだ。自分の遺伝子レベルが言っているのだ。その国の美術をみているとその国の歴史の背景と色濃く関係しているのがよくわかる。美術と自由といわれるが、私にすればその時代のインスピレーションが湧く芸術家は、悪く言えばその時代の求められるものしか受け入れられていないんじゃないかと思ってしまうが、そのなかで芸術家は想像以上のものをつくり人々を驚嘆させてきた歴史の遺物だと思う。レフトリアの芸術にも驚嘆させられた。夜が更けその作品が持っている魂というのが不気味に増しているように感じる。レフトリアには山麓信仰というのが存在することがわかった。地球でいう、山岳信仰のようなもので、山麓には精霊が住んでいると信じられていた。実際、切り立った山々に神殿を建ててそこにいまは存在しなとされる部族がすんでいたようだ。なぜか、その部族や山麓信仰に興味を持ってしまった。なにより、信仰されていたとされる神殿がとても美しい。予定を変えてしまっていいのだろうか、私自身特別になったような気になっていた自分に少し恥ずかしくなった。本質はレフトリアを知ることだ、これもレフトリアを知るということに繋がるだろう。お金や人員は好きに使っていいとなっているので、このさい、翌日「お迎えに上がりました」そう、専用の従者たちを雇って王族気分で、フィリスタイリー城砦に見学に行くことにしたのだ。フィリスタイリー神殿の美しさに心を奪われた。いまは存在しないといわれる部族がそこにいまも息遣いを感じるぐらいの荘厳な神殿だ。残念ながら、失われた文明というのは大抵、のちの為政者がその歴史を消してしまうので、とくにフィリスタイリー文明は消された文明とされる。消された故に、その文明を夢想できる。どんなドラマがそこにあったのだろうか。レリーフが残されてた。その美しさと時代にそぐわない高度な文明がそこに存在していたのだ。一夜にして国民が消えたらしい。これは、魔力、予知能力のせいではないかといまは歴史の真実が見えてくるように思う。
「今度の子はどうだろうか」「さて、どうかな」
神殿内で急に話しかけられてきた。「あなたは、外からのレフトリアに終始するつもりかな」
「なにか、不都合なことかしら」
「気の強いご婦人ですな。私から助言させていただくなら、その特権を活かせてようにはみえませんが」
「答えをくれるわけじゃなさそうね」
「ご自身で答えを探してみてください。ご婦人」
「どうも御親切にどうも」
一瞬で悟った、この人は一般人ではない。返答はしてみたものの、心臓の鼓動というよりも気分の高揚を感じるのがわかる。外からのレフトリアってなに、まあ、内から見なさいということはわかるが問題はどう内からみるかだ。ここにきて日本人の気質を恨む。どこかで特権があっても遠慮が心の呪縛ともなって、大胆な発想ができない。開き直った日本人をみせてやるわ。ここで大胆な案が頭に浮かんできた。果たしてそんなことが可能なのか。くそー日本人の悪いとこがでてしまう。よし、行動に移してみよう。従者を呼び寄せ聞いてみた。「可能なのか聞いてみないと返答できません」とかえってきた。ということは、不可能ではないわけだ。「明朝。中央政府におこしください」と返答されて、逆にこっちが驚いた。中央政府につくと、奥へと案内された。「中央執務室はこちらです」「おっ、きたきた、今回は早かったな。誰かの入り知恵かな」「過程より結果よ、この世界は」「気の強いご婦人だ。確かにその通りだな。来てもらって悪いがあなたのすることは何もないがよろしいかな」「あら、そのつもりですが、ついてすぐのご婦人に執務やらすような国家基盤でもないでしょう」「よく、お分かりで」いつからだろうか、こんなに嘘がうまくなったのは。外から見る政府と内から見る政府は全くの別次元だった。外への政府のアプローチと、内での執務はいかに円滑に国を動かすかに予算の配分、人事、臨時もしく非常事態での対応に終始されていた。ただ座っているだけでは、国は動かない、動かしていても国民が気が付かなければただの事務的作業で終わらされてしまうので、いかに国民にうまくいいものだけを印象付けてアピールするかに神経をとがらせている議員がほとんどである。レフトリアの外交はあってないようなものだ、そとからはそういう国だと思われているので国として機能していることも知られていない。「私についていて、なにかいいたげですね、どうぞ特権のため、そのための特権ですから、どうぞ行使してみてください」
「なんでネムはPCを規制するの」「人類の教訓ですからね、一度滅んでここまで復興したのも奇跡みたいな偉業ですから。だがここはネムではありません。人類の進歩を規制してとめることは私にはできない」「あなたの喜びはなんですか」「それを聞きますか、あえて。そつのない答えは求めていないようですね。オフレコでお願いしますね。自分のしたことで国が思うように動いたとき、何にも勝る感覚がそこにはあるんですよ。そう、あなたの顔に現れているように錯覚です、ですが誰からも達成したときの賞賛は何かになった気分にさせてくれるんですよ。くだらないですか」
「いいえ、そんなことで国が円滑に守られているなら別にかまいません」「それが政府の役人を助長させるとしても」「ええ。かまわないです。そういうものだとはなから思ってましたから」
「PCの進歩に脅威は感じないのですか」「もちろん、感じますがそれが一個人としての意見で国の行く末を決めていいかとは決めかねます」その日の帰り道、レフトリアの宿舎というか五つ星の地球でいう、ホテルで豪遊三昧を満喫している最中である。「あの子のいったとおりね」夕日が道すがら、そこに滝川あかりはいた。「なん」と言おうとする。遮るように「ビルドに近づこうとすると、なんであなたに近づいちゃうかな~。なんで私のこと知ってるかって、ネムの情報網というより、あなたが狙われているのを知っている節があるのよね。あなたリズムを知っているわね」「リズム」「ああ、そうか知らないわよね。先の未来が見える能力の名称がリズムとよばれているのよ」「あなたリズムが使えるの」「ええ、私のリズムは、5日から10日前後の未来の一場面が見えるのよ。なんで私のこと知っているかって。それは、泉里琴」「あの子もこっちの世界に呼ばれて」「ええ彼女はビルド所属よ」
泉里琴の場合
そう、はじめはなんともないことから始まった。小さい頃からパズルゲームや、クロスワードパズルを解いていると大人はなぜか喜んでいることに気が付いた。天才小学生と呼ばれていたのはいつの日か、中学生になるとあんなに狂喜乱舞していた連中はいつしか別の標的に変え、私から興味を失った。アルゴリズムを解くのが日課になっていた。周りの人間たちは自分たちと少し違うと知ったら、のけ者の対象になるらしい。これでPCと向き合う時間の正当性を確保することができ、どこでもPCを使うようになった。最初は、ただの夢だと思っていた。ギフトと呼ぶことにした。ギフトでは、この年齢で移住者になることは前例にないことらしい。まるでルービックキューブのようだと理解できた。このギフトはどこかの惑星で平行宇宙であることがわかった。しかもここで起こったことは、地球でも影響を及ぼしているということだ。地球では世界では似た人は三人はいるといわれているが、それが平行宇宙、つまり別次元の宇宙空間で私とそっくりな人間が影響を及ぼしあっているわけだ。しかも、その人とギフトの連中が故意に無意識の時に知らない間に入れ替えるということをやっているわけだ。はじめはまったくもって迷惑な話だと思っていたが。ギフトのネム王国ではPCこそなかったが自分の居場所を与えてくれた。理由なんてどうでもよかった。ネムではPCを学ぶことの許可が与えられた、外部からつまりレヒから入ってくるPCなどをどう規制をかけるか、PCはいたるとこに組み込まれているので、個人使用のPCの所持を禁止をすることをみんなで話あってきめた。九院は自由に議論の余地を与えてくれた。それどころか、特権として、PCを取り締まるPCの所持を認められた。ここで私は自由を与えられた。ビルドとの交渉権を手に入れた。ビルドとは比較的、友好的に国と組織(ネムでは国として認められていない)の交渉を任されるまでになっていた。ビルドのPCの発展の仕方が面白かった。国が違い、規格が違うとここまでPCのありようが変わってくるのかと思いしらされる。ビルドではビジョンと呼ばれる視覚効果が発展しており、エアパッドといわれる、空間で入力行為ができる。PC空間への没入度が激しくてビルドでは社会問題までに発展している。ネム王国での大使の役割に拝命されることになった。当然、ビルドを知らなければ話にならず、ビルドに移住することに決まった。ビルド公国は九院鈴音と婚約関係になっている、次期リーダーの皇太子がいる。それにより、ビルドと友好関係になっているとしる。なぜネム王国は国家の方針も違う国と友好関係を結ぼうとしているのだろうか、納得できる回答が得られない。たとえビルドの領土を得ようとも、もう、十分な領土があるネムにとって必要なのだろうか。そして、移住者に国の中枢を任せる意味もわからない。なぜ私にビルドの連絡役として選んだのだろうか。困ったことに、新たなPC上でのデータベースを完成させてしまった。ネムはまるで分っていたかのように、業務の続行を命じてきた。どうして私を好きなようにさせてくれるのだろうか。開発したソフトによって、移住者が一目瞭然になるようになってしまった。PCIDというのが一般的になってしまった。
「くそっ、またか」すれ違う男の視線に辟易する。結局、男ってそんなもんじゃないかと思ってしまう。こうすれば、ポケットから取り出し、口にくわえる、そうすると男がすぐ値踏みをしてくる。そう、たばこは吸わないが口にくわえるとそういう女なんだと男はすぐに検討がつくみたいだ。声をかけると、いったん下に目線がいき、上に上がってくる。そんな視線に慣れすぎてしまった。すぐに男は優しくなる。同性は、第一印象は敵意と羨望の視線がその人の心の内を映しているようだ。男は正直そこまでというか、まったくわからないが、男の本性というのがわかってしまう。本には誠意とテクニックを男女関係を現わしているが男の本性を書いていないと正直思ってしまう。わかることは、男は性欲と理性は全く交わらないということらしい、そしてそれは人により、重きをおく比重が瞬間瞬間により変わるということだ。男だって動物だ、本能に正直な人間もいれば本能を圧倒的な理性で押さえつけている人もいるということだ。ビルドの人間は三番目の人だった。そう、まったく別の理由がある場合だ。三番目の人間はやっかいだ、こちらの思い通りどころか思いもしないことを言ってくる。「このままいけばあなたはネムにとって一生の飼い猫ですがいいのですかそれで」と言ってくる。絶対的な頭の良さの質問だ。答えをノーと誘導されてしまう。こちらの思考をとめてくる。話は戻るが、男っていうのは性欲に支配されていると思ってしまう。さすが三大欲求の一つに数えられているだけのことはある。理性で抑え込んでいる男性もどこかむなしい存在のように思えてしまう。別に快楽におぼれたいわけでもないが、自分に素直な男性もどこかあきれてしまうのも正直な今の気持ちだ。いったいどんな男が自分の理想像かわからない。惹かれている男性が性欲を抑えられない瞬間をみたときの女性のむなしさもちょっとはわかってもらいたい。ビルドの青年になぜか納得がいかない、理性も性欲もわかれない女の立場はどうなるのだろう。本能を隠しているのだろうか。好きな人がもういるのだろうか。このとき、私は男の上級者の恋愛テクニックに全然気が付いていなかった。男を知ったとき、また別の男があらわれた。なんでこの子はこんなに飄々としているのだろうかと疑問に思ったときに気づいた、一人の異性として見ていた。その子はあっけらかんとしていた。「なんでビルドに入らへんの」「あなたはビルドのなんなの。ビルドに入ったからといっていったい今の何が変わるの」「頭かったいなぁ、ようはいまビルドにはねぇちゃんが必要やねん」なんてなれなれしい男で、手前勝手な男なんだろうか。
「入りません。それにあなたとそれほど年齢が変わらないと思うのですけど」
「すまん、すまん。あんたには移住者の選別とビルドのダイラネットを完成させてほしい」
「あんなの人間がどうこうできる代物じゃありません」
「あんま勝手なこと言ってすまんかったな、あんたじゃなきゃどうこうできる代物じゃなくなってきてんねん」
「ビルドには優秀なエンジニアがいるはずよ」
「その連中はあんたのことかってんねん」
なんだろう。この男といると自分がいかに小さいコンプレックスを抱いていたか身に染みてわかる。男と女はそう簡単じゃないみたいね。深く付き合おうと思えば。
ビルドのAIをみてわかった。AIは完璧に機能している。AIのせいにして攻撃用プログラムを人為的に組み込んだ人間がいるんだ。AI自体に良心の呵責が生じるようになってしまっている。「作ったのは人間で、悪意を持たせるの人間なんやな」「まあ、そういうことかな」
「それが書き換えられないのよ。いったん白紙に戻して一からまた作り直さないともどらないわよ。どうする。私にそんな権限はないけど、ビルドじゃない私一個人に任せられないわよね」
「いや、俺はあんたを信じる、あんたならやれると思う、ああ、あんたがやるべきだ」
ビルドを知らずに中枢部に入り浸ることになってしまった。「あんた、ほんま好きやな。ここにこもりっきりやん。ほら、これ好きやろ」
「ありがと」女子はドーナツ好きと踏んでいる男なりに考えてくれたのだろうか。
「ああ、行ってみてぇな。あんたの星に」
「そんなこと話して大丈夫なの」「ええやん、事実なんやし」
今回の中枢の世界中に散らばっているAIのかけらを集める作業から始めている。なぜかAIにやらすと完璧な作業に終わらない。あえて作業用のAIから開発しないといけない。人間が思う完璧とAIが求める完璧に差異があるのだろう。今度のAIは人間臭く、あえて完璧求めず、人間らしさを残し、こちらから意図的に変えられるように造るようにした。
ビルドへは毎日電車に乗って通っている。ネムからビルドへの直行便があるためそれを使っている。なんとなくビルドに住むんじゃなくて、ネムから見たビルドが見たくて、電車でかよってはいるが、そうとはうらはらにビルドでの仕事が立て込んでいて、ビルドの研究室で寝泊まりしているのがほとんどだ。移住者には通常家族がネムから与えられるのだが、私の場合は特例で家族という枠組みはなくなっている。ネムの人たちを見ると本当にPCなんて本当に人類にとって必要なものなのか、もっと上手に付き合う方法はなかったのかと思ってしまう。
移住者の選定をAIに委ねてみようかと思う。それとなく、あの人に聞いて見ても「いいじゃん、いいじゃん」と軽く返されてしまった。AIに自己発展プログラムを今回はつけてみた。そうすると、以外すぎる人選がリストアップされてきた。今のところこの人選の意図が理解できない。AIと付き合うには、AIがこちらに歩調を歩もうとしてこない限り、AIにこちからあゆみよらないといけない。AIと近年付き合いかたが変化してきたように思う。AIの意図を人類が読み取り理解しないと人類にとってそれ以上の発展はない。AIの思考回路をこちらが読み取らないといけない。
なぜ、滝川あかりと松本ゆずを選んだのか理解できない。地球での生活で彼女たちを観察してみることにした。驚いたことに、AIはどうも書類上の人物評価では選んでいないようだった。滝川あかりはどうやらほかの子より感受性が高いと思われる。読んでいる本も、詩集や海外の小説を主に読んでいた。独学でかなりの英語力を身に着けていた。かと思っていたら、昔の歌謡曲をよく移動中に聞いていた。この歳で自分というのを完全に確立していた。孤立しているのかといわれるとそうではない、彼女の周りにはそれなりの友人関係を気づいていた。表裏がある人物でもなかった。ただ友人の前ではいたって普通を演じている節がある。たぶん、一人になるのが怖いのだろう。現状に満足しておらず、かと言って自分の能力を発揮できているわけではまったくない。自分の夢と向上心のはざまでどうしようもない自分にどうにもならなくなっているようだった。このことをAI、ダイラネットは気づいているのに驚かされる。
松本ゆずは完全に学校と私生活を巧みに使い分けているようだ。私生活ではだれにも言わず舞台脚本を書いている。そのために、休日は古書店巡りやカフェでの読書、書店巡りをライフワークとしているようだったが、現状に満足どころか不満の塊のようになっているようだった、どうしたらこの現実を変えられかもがいているようだった。空想を描くことがくだらないと地球の連中は思われているが、ネムではそういうことを考えられる人はとても敬意をもって扱われている。どちらも表面上の評価ではなく、内面のその奥の部分を見抜いていた。ビルドのダイラネットは地球のAIより少し発展していて、その人のその人のAIが仮想空間上に存在し、匿名になっており、仮想空間上でその人が生きていて自由に仮想空間を行き来している。ただあくまで自分より学習しないことが前提になっており、選択肢が常に個人に委ねられている。無一文の人が仮想空間で大金持ちになることなんてざらにある。
最近、妙なことが起こっている。地球で起きている事件いやここは事象とするべきか、なぜかネムでも起こっている。平行宇宙なので普通は気にもとめないが、それがあまりにも重要な事象なのである。ネムのAIの技術が地球でベンチャー企業としてでてきたのは不思議ではないがあまりにも地球での先進性を行き過ぎていた。他にもある実業家が最新兵器が作られていることが判明している。ネムで起きている異常気象も地球で連動して起こっているのもちょっと普通でないことがわかる。しかもだ、この一連の事象で一人の地球人が関係しているとしかいいようがないことがわかっている。樟葉という少女?が関係していることがわかった、上にいったら間違いなくすぐ抹消されてしまうので自ら調べてみようと思う。調べるほどこの樟葉という人物がわからなくなる。住所は不定、職業はどうやら学生のようだ、日本を転々としていて顔写真もろくなものがない。厄介なことにこの子はかなりのPCの使い手だということだ。地球でありとあらゆることを好き放題ネットでしている。日本の警察をもけむに巻いている。「しょうがない」あんまり地球で動きたくはなかったが、ネットで探すことにした、これが甘い考えだということをすぐに思いしらされる。地球のネットの技術では追いきれない、ましてやネムの技術を使っているのだから当然かもしれない。この日は、めぼしいゲームセンターにやってきてそれらしい人を探すが見つからないどころか、全国のゲームセンターが急にすべて無料になるバグが生じた。完全に相手に見つかっておちょくられている。仮にもビルドのネットの創造主としてはお粗末な事態に陥らされた。
「へぇ。この国で私に気づく子がいるなんてね。こっちもうかうかしてらんないな」そういい、ここをちょこっと、こうとさあ、これでどうでる。あなたは。
泉里琴「私もなめられたものね。だてにビルドのネットを構築したのを少しはおみせしないとね」
この日、里琴は変な夢を見た。学校にいる。チャイムがなる。前の席に滝川あかりと松本ゆずがいる。土岐慎吾が話しかけてくる「ああ、だりぃ次の時間ふけようかな」ゆず「あんたそういっていつもいるじゃん」あかり「里琴と一緒にふけたりして」慎吾「里琴がよかったらそれでもいいけどな」後ろからやってくる「いいやん、いっつも二人でさ。ああうらやまし」ゆず「私もさすがに羨ましいわ」どうやら樟葉のリズムの影響により、AIの緩衝力により平行宇宙の現実を見せているのだろう。帰り道も5人で帰っている。現実が違ったらこんな現実もあり得るのかなと思ってしまった。なにより自分がすごく楽しそうだった。
滝川あかりの場合
アリスに入会を認められ、レフトリアにも行き来していることが九院の耳に入っているがなぜかネム王国から除名されるどころか、九院に呼び出された。九院は会うと想像以上に美しかった、その上知性も持ち合わせている外見をしていた。
九院「あなたは調和がとれた世界とはどのようにお考えですか」
唐突の質問とその雰囲気に圧倒されてしまい、思考が鈍っている。この人からも声が出るのだと少し安心してしまった。「移住者がいる世界において、調和がとれているといえるのでしょうか」少し生意気な意見になってしまったか、でも聞きたいことがある。「移住者と呼ばれるものに背負わせてしまっている現実もわかっている。しかし、私たちは前を見ないといけない、あなたち移住者と呼ばれる力がないとこの平行宇宙じゃ生きていけないのも事実なのです」「なぜ移住者に重職を任せるのですか」「そうですね、わからないでしょう、答えは移住者と呼ばれるものたちはリズムの干渉を受けないのが答えですかね。それと本人たちの願望を鑑みてですかね」この女王は内面はとても誰にも干渉されない何かを持ち合わせているのがわかる。「あなたに動いてもらって松本ゆずにレフトリアに行ってもらったのを命令したのは私です。土岐慎吾には悪いことをしました。ずっと反対していました」私たちは知らないうちに世界を渇望していたのだろうか、それはだれにでもあるものじゃないのだろうか、誰しも知らない世界に行きたいと思うのは普通ではないだろうか。「あなたの質問はこうですよね。なぜネム王国はネットにアレルギーみたいに思うのか、真に国民の意見を目の当たりにしたら、あなたも変わりますよ、ある日、いつもの日常がネットなんて訳もわからない、実体もないものにすべてを一瞬で奪われる喪失感を経験してしまうと、皆さん、こう思っているんですよ、それって本当に必要なものなのかってね」九院鈴音に圧倒されてしまった。為政者というものは国民感情なんて本当にわかっているのかと思っていた、それは歴史が証明していると思っていた。国民と政府との板挟みで悩む為政者なんているわけがないと思っていた。しかし、それが果たして本心なのか巧みに国民感情を操っているだけじゃないのか。心の底なんて誰にもわからないし、心変わりだってあるはずだ。現実と向き合ったとき人はあっけなく変わってしまう。それはあくまで自分が知っている否応なく選択肢もなく自分の周りにいた人たちだ。もしも確固たる信念を持っている人がいるとしたら、私ももうちょっと人を見る目が変わっていたのだろうか。いや、その現実がいま目の前に起こりはじめているのではないだろうか。子供というのは、環境を選べないと思っているかもしれないが、本当は選択肢の連続の日常にいるのではないだろうか。九院の前に立つとそんな思いが湧き上がってくるのはその人の人をひきつける、ある人たちにしか備わっていないものなのではないだろうか。どうしようか、もっと話がしたい、この人に惹かれてしまう自分がいる。この人に気に入られたいとすら思う。「わたしの質問は一方的な意見でしょうか」「一方的とはいえませんね、国民感情は残念ながら一つだけではありません。あなたの持ち合わせている自由なのですよ」「自由?」「心の自由ですよ。あなたならわかるはずですよ」そんな可能性を自分が持ち合わせているなんて思わなかった。「なぜ、レヒと対立をしているのですか」「まあ、情報を封鎖していることも理由の一つでしょうからしょうがないでしょうね。ネットにおいて兵役をかしているんです。我が国にも知られている、レヒの悪評の最たるものの、いわゆる「ネット奴隷」です。隔離された場所で、一日をネットでの兵役を課せられるのです。しかも、一般には知られていないアカウントで仮想空間ダイラネットに一般人に紛れてレヒの軍役が行われているんですよ」「そんなことが人権を無視している」「あなたたちの星ではそう思うのは無理ないですね。それに加えてネット上で起こったことは、超法規的措置により何をやっても事実上、無罪放免なんですよ」「そんなのをネムでは無視していていいのですか」「わが国では表向きは無関係で通しています」「なんとなく私たちが呼ばれた意味がわかった気がします」「その連中たちが核さえコントロールしようとしていたら。あなたたちの国に似ているでしょう」「そういまの状態じゃどうにもならないんです。国民は私を信じているんです。私は核を持たないと」そんなことが水面下で行われていたなんて知らなかった。国民はあくまで薄っぺら表面上の事実を批判ばかりしてる一人になっていたことに恥じた。そう気づいている。私の国でも同じことに片足を突っ込んでいる。その事実は歴史が証明している、いくら文明レベルが高く、国民の平和の意識が高くても、一方的な戦争は武力が強いほうに傾くことの非情さを。そう絶対的に安全な国など存在しないという事実があることを。「わたくは、国民にそんな事実を押し付けることはできないし、気づかせることもできません。わたしの声は届いたときには、国民は核に対して意識も変わることでしょう」九院の言葉があかりの胸の内でいつまでも反芻されていた。「現実なんて一瞬で変わってしまう」くしくも今日は式典の記念日で花火が降ろうとしていた。国民がどこか落ち着きなく今日という日を迎えている。「ヒューーー」「ドン」ああ、花火が上がり始めている。周りの人たちが「まあ、綺麗。あっちからも花火があがりはじめてる」「なんであんな方向に」「どおおおおん」気づいたときには遅かった。国民が歓声から悲鳴に変わった。それはレヒからの無差別ミサイル攻撃の開始の合図だった。それは、向こうからの宣戦布告だった。理由は、国益を長年により奪うネム王国にわが国からの報復だそうだ。理由は何とでもできる。これにより地上侵攻も開始された。開始されたことにより、消えた国民があちこちにいるらしい。そう、スパイが潜り込んでいたのだ。国民はもう考えるのをあきらめた。もう一度おこってしまったことをもとに戻すことはできない。急に社会が言いようのない閉塞感に襲われて、急激な物価高、社会機能のマヒが当たり前のように起こっていたが、国民は政府の怒りよりも現状に順応しようと必死でそこまでは頭が回らないようだった。家族の命が最優先に皆がなっていた。こうなると各自が持っていた小さなコミュニティーなどなにもあてにならなかった。頼れるのは政府一択になっていた。国を信じるものと見限るものにわかれていた。政府はまるで開戦されることをしっていたかのような手回しの速さでライフラインの維持に躍起になっており、民間防衛軍の編成を発表をされていた。戦争というのは意図というのが明確でなくても起きるのだということを思い知らされた。レヒによると領土の拡充を狙ってのことらしい。レヒは核の傘を脅しの道具として使っていたが、レヒにネムによる地上軍の侵攻が開始されると、急に戦争の様相はレヒから消えていった。レヒは九院鈴音の静かな冷酷さと行動力に心底恐れをなすことになった。レヒによる侵攻により戦況は一変した。レヒは領土が逆に奪われる様相になり始めると、九院との会談に躍起になっていた。ネムは核の傘をレフトリアから翻すことにより、レヒの核の脅威は薄れていたが、まるでレヒは核の使用を迷っているようだった。戦争は頭の良さにより決まるわけではない、むしろ愚かな方向になぜかむかってしまう。レヒは侵攻した領土を一時兵を撤退し、ネム国民の間に終戦模様が漂ったが。考えが甘かった。なんとレヒは侵攻した領土に核を放ったのだった。レフトリア、ビルド内では同盟解消の声も国民からあがっていた。言い分はこうだ、我々だけの痛みをおって何も見返りはないのではないかということが本心らしい。
どういう了見で申し込んできたのかわからないが、突如としてレヒから会談を申し込まれた、なんと爆心地の街での会見だった。このことは国民には一切公表できないし、ネムの心は核で心を打ち砕かれていた。レヒ国内では異常の熱気に包まれ、ネムの国民感情は暴発する寸前のようだった。ネムには言いようのない怒りが湧いていて、それを抑えることは国主でも難しいように感じられた。ネムではレヒが一体だれを連れてくるかに議論されていた。そんな危険な地に国主がやってくるなど到底考えられないが、レヒからの要求はネムの国主の会談への参加が条件だった。ネム上層部では想定はされていたが実際起こってみると全く現状が違うことに戸惑わされた。ここまで人の命を抱えながら物事を考えなければならないと思うこともできなかった。「断固として反対だ」それがネムの大方の意見だった。レヒに対して憎しみしかわかない状況だった。滝川あかりはどうしてリズムを使って防ぐことができなかったのか、ずっと疑問に思っていた。松本ゆずがその答えを知っていた。最近、ゆずとは話すようになっていた。「リズムがどうやら干渉されていたようね。レヒには切り札となる男がいるようね」リズムが干渉というが能力に干渉させるほどの力を持っているのだとしたら、簡単に現実を変えうるほどの力を持っているということになる。泉里琴が言ってきた「もしも、そんなリズムをもった人間がいるとしたら、間違いなくレヒに移住者が来ている」
「そんなまさか」私たちだけじゃないというの。なんでこんな行為ができるのか理解できない理解できてしまったらもっと恐ろしいことを知ることになることを恐れている自分がいる。
別の女の子にクローズアップされる。わたしはレヒに行くまでは空気だった。誰も気に留めることのない、文字通り空気だった。誰もわたしのことは見てくれない。いてもいなくてもどうでもいい存在、それが私だった。わたしでも思うことはある、必要とされている人間なんてほんとはいないんじゃないだろうか。それは自分だけが思っていることであり、意外と他人は本当に必要な人間、「ああ、友達がいないからこう思うんだろうか、ああ、いやなわたしがでてきた」でも、必要とされている定義が大きくなればなるほどその人の価値がどんどん下がっていくことは間違いじゃないはずだ。他の移住者の存在は知れされていた。その人たちが必要とされる理由もなんとなくだが納得できてしまう。なぜ私だけがレヒに呼ばれたんだろうか。そんな理由を吹っ飛ばす男が現れてしまった。
「お前、痩せたら綺麗になるよ、時間を無駄にするな」
なんでそんな言葉をわたしにかけてきて、わたしの心を乱すのだろうか。その一言でわたしは希望を持てた。まだ私を見てくれる人がいる、自意識過剰なのだろうか、相手は何気なくなんとも思わなくいった言葉ぐらいだってわたしだってわかっている。だけど、その言葉にわたしは救われた。痩せるだけでわたしの世界は変わることができるのだろうか。レヒの指令は簡単だった、まるで存在感がない自分に言っているかのような指令だった。
「移住者を監視せよ。そのためのシステムネットワークを構築せよ」だった。その指令を一体どうやってこなせばよいのか、そう不安に感じていたら、移住者はレイムランドに入ると監視が一度解かれ、自由の権限をその職に就いて与えられる。そう知らされていたが、レヒではどうやら違うようだ。レヒの中枢のネット管理局に配属された。あれやこれやと基礎知識から応用まで一気にたたきこまれた。なんどなんで自分かと思ったことか。そんな環境に置かれていると食べる暇がない、ダイエットは簡単に達成できそうだったが、このシステムネットワークと簡単に言うがこれが厄介なことで、ほぼ軍事利用レベルのシステム構築だった、レイムランドのネットワーク技術が地球より進んでいるので、人の位置感知は簡単な技術というか、もうレヒのネットではそれが簡単であったが、厄介なのがネムのネットレスの妨害電波が厄介だった、レヒの当たり前が通用しない、まるで九院がそのことを把握済みのような気がしてならなかった。痩せてからは不思議なことが自分の周りで起こりだしていた。あんなに空気空気と自分のことを思っていたが、周りがなんとなく自分を受け入れ、よく指示を聞くようになっていた。わたしはなにか変わったのだろうか、まったくわからない。というか、実感がない、確かに細くなって、着れる服が増え、化粧もしないと恥ずかしくなってしまった。眼鏡も外した。髪型もレヒの美容室がどこでもタダで使っていいというので遠慮なくいろいろ身支度をしているぐらいの変化だと思うのだが、中身が変わってないのに、外見だけ変わっただけなのに。「うーん、不思議なことがあるもんだ」地球に戻るとこもってシステム構築の案を考えるのが精いっぱいだった。その人は、気軽に声をかけてきた。「ほら、僕の言ったとおりじゃん、キミかわったね」はあぁ、この人は一体なにをいっているのだろうか。「わたしは、たまたま、ほんとにたまたまちょっと変化させてみようかなと思ってやってみただけだけど、いったい何が変わったんですか」「君は、外見に似合わずちょっとにぶいのかな」「あなたは、わたしをからかいたいんですか。ですからいったいなんなんですか」「きみ、男の視線や噂話とか興味ないの」「ないですね、まったく」そんなのきにしていたらモチベーションが保たれないことぐらいとうの前にご承知でだから。卑屈と思われてもわたしなんて存在はどうでもいい。「まあ、いいやここで籠っりきりだから、ちょっと外にでてみない」「いまはこれに精いっぱいでこもっていてもストレスがたまるほうじゃないんで」「そうか、残念だな、せっかくのプチデートなのに、そこをなんとかなんない」この男は経験上わかる女が断れないポイントを知っている。「そんなにいうなら、ちょっとあなたのいう気分転換もいいみたい」街を歩いていると、なぜかわたしをみている異性が多い。なぜだ、変な恰好はしていないはずだが。男をみると上機嫌に歩いている。「わああ、こんな景色ここからみえるんだ」そこは、屋上庭園だった。「レヒも捨てたもんじゃないでしょ」これから、何度も話す機会が増えて、初めて異性の人間の友達ができた。あんなことをおこすなんて夢にも思わなかった。物事は最悪の方向に進んでいく。
なぜ、レヒは核を落とすことなんてできるのだろうか。レヒの王族の声明はこうだ「我々は新帝国を建築する」レヒの国民は熱狂している。あの男にあった「この国はもっと発展する、そして生き残るのは私たちの国だ」「ネムがそんな国であるはずがないじゃない、そんなこともわからないの」「国とは時として為政者によって、変貌する、気づいてからじゃ遅いんだ」そんなときだった、レヒの高官として会談に列席せよとの政府いや、統治者からの命令だった。
九院「こんなことが許されはずがありません」驚愕したのはレヒの代表があの男だったことだ「だれも許しを求めてはいない、ただの正当な統治をしたまでだ」
わたしは、不思議に思っていた。平行宇宙なのになぜ地球では同じようなことがおこらないのか。
その日、レイムランドの移住者以外の人間は嘘であってくれと皆が眠りについた。とても不思議なことが起こった。皆が同じ核が放たれて戦争になった夢をみていた。九院が気づいた「やられてしまいましたね」
そうわたしも気が付いた。これは誰かによる強力というか、人智を超えた力でリズムを誰かが行ったのだということを。いったい誰が、不安が自分の中に一気に押し寄せた。気が付いたらあの男を捜していた。奇しくも移住者を監視するシステムをあの男を捜すために使う羽目になっていた。あの男は公園のベンチにいた。「なにをやったの」「もう気づかれちゃったみたいだね」「なんであんなことをしたの」「このままいけばあの通りになっていたさ」男は苦しそうに息をしていた。「いっただろ、キミは変わることができるって。綺麗のなったね」「そんなに力を使ったらもう」その男はもう浅く息をしていた。「あなたってばかよ」「ネムの住人もレヒに対する態度もこれで変えてくれるはずさ」移住者には夢をリズムの夢は見られなく現実におこっていたことだった。わたしは、本当に変わることができたのだろうか。そして、いつしかこの男のことを思っていた自分に気づかされた。
大きなことを経験すると人は変わらざる負えないのだろうか。歯車の一つにすぎないのはわかっているが、歴史からの教訓に人はそうは変わることはできないが答えだろうが、すくなくともわたしは移住者に対しての距離の取り方が変わった。それは異国にきて、同じ人種がコミュニティーを形成するようなことに似ているのだろうか。その教訓は所詮、異国人と母国人とではわかりあうことが難しいということなのだろうか。それでもその国に住み続けるのはその国の人を信じているからだろうか。あの日以来、定期的に移住者の子たちと会うことにしている、なぜそうなったかはわからないが、自然と会うのが普通になっていた。最初はくだらないことを話しているだけだったが、あの核の事件以来、地球では大規模なフェイクニュースが全世界の人たちを震撼させる事件が起こっていた。いつものように会っていたら、滝川あかりが急にこんなことを言い始めた「私たちは、ここでレヒとネムとの壁を壊すためにここに呼ばれたのよ」と言い出した。そもそも文明の根幹が全く違うレヒとネムがわかりあうことは不可能なんじゃないかと皆が思っていたが、なぜか皆がこの意見を言うのをためらっていることがわかっていた。レヒの国王死亡はレヒの国民を落ち込ませる以上にネムの国民が困惑した、レヒに対する思いをどう思っていいのか全く分からなくなっていた。ネムの国王九院が戸惑っていることがありありとわかったからだ。レヒが使わざるえない兵器を持つことに国民皆が疑問を持ち始めていた。ここで移住者が言論を先導するべきかどうか自分たちの身も危うくすることを知っていたから尚更、皆が迷っていた。命の危険に実際さらされるようになると誰もがいったんは二の足を踏んでしまうのは当然のことだろう。レイムランド全国民が共有した「核の夢」と呼ばれる出来事はマスコミ各所は平然と国民の不安を煽りに煽っていた。やれ新型兵器だの週末論争などタイムの存在を表沙汰にさせたくない上の圧力もあり、なぜか皆が言いようのない不安に包まれていた。
泉里琴が国家勲章を授与されていた。前までの泉なら当然だろうと受け取っていただろうが、いまの泉にとってシステムの構築が完成して複雑な心境だった。私たち移住者はあれからありとあらゆることを調べ、隠されている国、または忘れられた国、レムという国が実在するんではないかという考察にたどりついた。国家間の外交、渡航すべてが閉じていて国そのものが未開の地となっている。システムの構築を手伝っているうちに、わたしは、不可思議な電波が飛び交っていることに気が付いた。はじめはどこかの島から旅行者がネット接続しているだけかと思っていたが、その電波は圧縮されていて、膨大な質量の電波が飛び交っていた。レイムランドでは電波についての技術が進んでいる。わたしは、彼を失った喪失感に心が捉われていた。なぜか周りの男は自分によってくるがまったく興味がわかない。人恋しいがなんかその感覚とは違っていた。
向こうの交信がいかなるものか、果たしてどれだけの発信源というのも、発信者が政府のものか、それとも一般人か、善者か愚者かをも決めかねる。早期の決断があだとなることもあるのでここは慎重になったほうがいい。相手の内情が一切わからないので、うかつに立ち入ってはネムやレヒにとっては人質になってしまい、交渉の余地もなくなる。はたまた最悪の状況は国入国したときに攻撃されることもあるからだ。まずはわたしたちだけで意見をまとめることが重要になる。
迂闊だった。あまりにもレイムランドばかりに気を取られていた。そう、ここは平行宇宙のなかにいたんだった。地球で突如として国が現れるはずがないと確信していた。しかし、この現代においてネットをさらに著しく発展させた国が現れ、国全体が一つのネット社会ができていれば、後進国においても、突如としてネット先進国になる理由が生まれるということを。その国を作り上げた、この世界でいう天才たちが突如として現れた。ネオポリスと呼ばれる連合国家が出来上がってしまった。わたしが調べれば調べるほど、新大陸からの住民の流失が行われていることが濃厚な線になってきた。
「向こうのレイムランドからの移住者が地球に来ているのはほぼ間違いないね」あかりが深刻そうな顔を向けた。
「私たちを送りだした技術の逆利用じゃないの」ゆずがいう。
その技術が誰が使っていて、そもそも誰が私たちをこの世界に呼んだのか大体見当がついていた。九院鈴音だ。九院も元をただせば地球からの移住者と呼んでいたが、そもそも九院を呼んだのは誰か。その誰かは一体どこの出身なのだろうかとずっと疑問に思っていた。レム王国と国交を結ぶ必要がある。果たしてレム王国の文明レベルはどうなっているのだろうか。ネットも完全にストップしているとなると、ネム王国のような場合もあるだろうが人がやっと文明をつくっているレベルのものだろう。しかし、レムの国境にすんなり入らせてくれるだろうか。なにか連絡手段はないだろうか。レヒのわたしが指揮を執ってよいものなんだろうか。レヒも国王不在のいま、政情も不安定な国内を放っておいて、レムに心血と注いでいいものだろうか。しかし、このことが解決しないと地球、レイムランドの未来はないと思う。そんな折、レヒ国内で不可思議な手紙が出回り始めていた。渡り鳥が手紙をつけていて、中身はネットのアドレスが載っていてアクセスすると不可思議なネットの空間にたどりつくというものだった。このネット空間はサーバーが幾重にも多重に折り重なり、ネットの空間を作り出し発信源すら特定できずにいる。わたしはこれをレム王国が発信者だと確信していた。レム王国に敵意がないにしても相手国がどういう事情でどういう感情をもっているかもわからず、ただ領海入るのはタブーで危険な行為であり無謀であることがわかる。コロンブスの時代とは違う。しかも、発信者がどういう意図があり、どういうグループに所属しているのかしていなのかも重要になってくる。わたしは、彼を失った喪失感をレムによって紛らわしていた。まだ現実直視できないし、非現実なレムの存在を追っていた。本当に移住者を集めてよかったのか今も疑問に思っている。泉里琴が情報を必死で集めてくれていた。彼女はこんなにわくわくすることは初めてと喜んで引き受けてくれていた。地球での異変をこれ以上おこすわけにはいかない。困ったことにどうやら仮説としてレム王国はどうやら現時点ではレイムランドのどのネット環境よりも進んでいることがわかってきた。GPSも完璧にフェイク画像と見分けられないレベルまで達している。「草しかないじゃん」そういっていたのは、松本ゆずだった。ネットの世界の常識では同時多発的にしかネットの技術は発展しないといわれてきた。ある一定の国や地域で発展することはないといわれてきた常識は根底から覆えされてしまった。話し合った結果、私たち移住者たちが中心となり潜水艦でレム王国に侵入するしか手立てはないことで話し合いの結果に至った。潜水艦の中はとても静かだった。まるで何もないところへ行こうとしているだけのようだが、果たして生きて帰れる保証は何もなかったので、わたしたちは完全に開き直っていた。静かにしていたら不安で押しつぶされそうになるので、定期的に食堂に集まっては女子会をみんなで開いてバカ騒ぎをしていた。わたしにもこういう経験をしたことがなかったので、とても毎日が新鮮の連続となにかこの仲間を失ってしまうんじゃないかという、変な喪失感を心の隅に抱いていた。話している内容はいたってばかばかしい、どおってことないような日常の些細なことや、レイムランドで何をやっているかなど、真剣に話していても誰かが話を脱線させていつもくだらないことで夜更けになってしまう。潜水艦の中は時間の感覚がつかめないので規則正しく生活しないと体内時計がくるってしまうが、女子が集まったら初日から毎晩夜が更けるまでずーっとおしゃべりしてしまう。わたしはレム王国を見つけていったいどうしたいのだろうか、何か気持ちのもやもやが取れると期待している。みんな口には出さないが自分たちのルーツが一体どうなっているのか知りたいのだろう、その鍵をレムが握っているように感じる。何もかもがフェイク情報でレムの地理すらも正確な情報が手に入らない。「じゃあ、私たち、いきなり攻撃されておじゃんになるかもしれないじゃん」と真剣な表情で言っているがどうもみんな緊張感が薄い気がするのは気のせいだろうか。地図上なにもない場所に入ると、メールが送られてくる。「うそっ、なにこれ」発信者、祈りを待つ者と書いてある。内容は、「来たものが知る。知る勇気のないものは去れ。ここは世界のはぐれであり、始まりの地である」とかいてある。「ずいぶん、ご丁寧な挨拶分ね」滝川あかりがいう。松本ゆずが言う「もう、ばれてんじゃん、行く意味あるのかな」「私たちにしかわからないことがあるのかもね」と泉里琴。地上に出る決心をする。「わたしの一存でいいのかな」「あなたが決めることに私たちは従うって決めたの」地上にすんなり入ると、明かりが煌々と照っている。「やっぱり、思ったとおり、ここには都市がある」しかし、どことなくというかまるで警戒という感じがしないのはきのせいか。「ドン、ドン」音で驚く。どうやら花火を上げているようだ。どうも歓迎の印でもなさそうだ。ビル群に街が覆われている。どうやら、パレードに出くわしてしまったようだ。人々が歓声を上げている。わたし「ここは、どこかレフトリアに似ていない」「そう言われれば」レフトリアを百年先にいかせた都市のような場所だ。ビルが繋がってどう組み合わさっているのかわからないが幾重にも地上があるように都市ができている。ここにいるとなんて自分という存在はちっぽけだと身に沁みてわかってしまう。一同が都市の繁栄に呆気に取られている。泉里琴が言う「私たちは一応、侵入者よね」ゆずがいう「その筈だけど、なんなのこの都市の繁栄振りは」わたし「なにかわたしたちは見落としている気がする、なんでわたしたちだけがここにきたのか、そしてネムやレイムランドの人たちが知らない理由があるはず」「なんか拍子抜けなんだけど、とりあえずパレードを見てみない」人々が有名人らしき人たちや、マスコットキャラクターとおぼわしき者たちに手を振っている。パレードとおぼわしきフェスティバルが一行に終わりそうにもなさそうだ。あかりがいう「なんか海外旅行に来たみたいね」「わたしたちが何をしようと何をみようといっこうにかまわないと言ってるみたいね」とわたし。面白いことに言語まで同じで安心した。わたしたちは俯瞰で見られているような感覚に陥ってしまった。「ここでホテルなんてとれるのかしら」「まったくわからないわね、困ったわね」着ている服のセンスも微妙に違うことに気が付いてきた。「向こうからの接触がないのもおかしいわね」「とりあえずこっちの通貨もないとなるとわたしたちは籠の中の鳥にされたみたいね」念のために持ってきていた金を通貨にしか替える手立てがないことに結論に至った。ネットに接続しようにも全くつながらない。どこの国にも親切にしようとしてカモにする連中がたかってきそうにみえた。これに女子のアンテナがいち早く気づき大通りへと出た。いくらでいくらになるかレートもわからないし、そもそも金が取引されているかもわからない。そんななか、通りで立ち尽くしている人物がいた「なんであんたたちここにいるの。そう、ここまで来ちゃったんだ」一同がしばらくして、気が付く「そういえばどこかであったような」その人は、図書館の秘書であり、予備校の講師であり、カフェのオーナーであり、美容師でもあった。わたしが変わりたくていったカリスマ美容師であった人だった。「私は地球への移住者なの、あなたたちはまんまと動かせされちゃったみたいね。レヒの王子様が守ってくれたんだね」「どうもー、お姉さんたち」通りすがりの女の子がいきなり話しかけてきた。「おねえさんたち」なんて馴れ馴れしい女なんだ。いや、よくみたら男か。「あの、なんか用かな」「全然、わかってないんだね、おねえさんたち」なんか、角度や仕草がやたらに鼻についてします。世間の女どもはこういう男に声色を立てるんだろうが、わたしはむしろなんの対象にも入らない。そう、こういう男は、自分がかっこいいと自覚していて、仕草の角度、顔のつくり方まで徹底したあざとさでできている。「あのさ、僕のことちゃんとみてますか」やっぱり気づいている。まるですべての女がひれ伏すのが当たり前にすら感じているこの感じ。「そう、僕が呼んだんですよ、よくここまで来れましたね、さすがです。あなたたちがレムと呼んでいるのは国外の気づいた人だけが呼んでるんですよ。よくこそ「ガラパゴス」へ」一気に現実に引き戻される。完全に向こうにすべてをゆだねるぐらいのアドバンテージを取られてしまった。この男の表面上の情報と内面の情報の相違に少しとまどいと驚きがないまぜになっていた。こういう小悪魔ちっくな男は何を考えているのかわからない。腹を割って話しているつもりを相手に安心感を与えるが、決して腹を割っているわけではない。むしろ相手の情報だけ引き出して自分の情報は何一つ重要なことを言っていない。まあ、そういう点では頭がいい部類には入るのだろうが。しかも、同性と一部の女はそういうことを全く気付かない。鈍いのだ。まあ、気づいたころには歳をとっているか、付き合って現実と理想のギャップに打ちのめされるのが関の山だ。「僕の能力に気が付きました。気づいてなさそうですね。じゃあ、その答えを示します。リズムですよ、レストリアの住人に記憶の改ざんをおこなったんです。ある時まで知っていたはずなのにいつしか知らなくなっていた。
ここで記憶が強制的に地球に戻る。「ん、なんでいま戻っちゃうのかな」上を見上げると、知らない証明に照らされていた。やばいと思った瞬間、自分が拘束されていることに気が付いた。前に知らない男が立っている。気配でわかる、いま拘束はされているが差し迫った危険はいまはないと勘が働いている。「Kに会わせろ。移住者とはなんだ」と詰め寄ってくるが、相手の情報の薄さに内心ホッとした。知らないと白を切るのがここはいいことなのか迷ってしまう。しかし、Kとは一体誰なのだろうか。ここでまた眠りになぜか落ちてしまう。
気が付くと、目の前にあの小悪魔が立っていた。どうやら戻ってきたらしい。「僕のせいで地球で困ったことになったみたいだね」「ええ、そうなのなんとかしてくださるとありがたいのですが」もちろん、いい返事は期待していない。「わかった。なんとかするよ。もともと僕のせいなんだし」この男は女の弱みを知り尽くしている。どういえば、女の気を引くことができるか経験で把握している。なんで男が男に惹かれるのと男が女に惹かれるのはギャップがあるのが面倒な男と女のつくりになっているのだろうか。同性同士にはわかって、異性には拒絶される、しかも本人は同性同士のことにしか気が付かない。神様も男と女の目線の違いを作ってしまったのが恨めしい。この小悪魔は確実に同性同士には好感がもたれないだろう。異性に特化した人間だ。「あなたはKなの」「よく知っているね、そう僕がKだよ」「あなたの能力は強力すぎるわ、現実にこの能力を使用したら何が起こるか、わかってないの」「やらざるおえなかったんですよ」「ちょっと、あなた生意気よ」横に眼鏡を掛けた綺麗な子がいた。この綺麗な同性目線になってしまうだろう。どうせ男には気がつかないだろう。「あなたは一体なに」「はい、めんどくさい。まーいいでしょ、私はサーの秘書」「ああ、僕の右腕だ」そういわれて少しテンションが上がっているのをわたしは見逃さなかった。「有能なら地球での出来事なんとかしてくだい」「ええ、もう対処済みというか、ユウキさんのリズムで」
少し怪訝な顔をしてしまった。どうも、わたしはリズムの現実での効果を知っているため、必ず平行宇宙での帳尻合わせに何かとんでもないことが起こってしまうのでないかと、リズムは魔法の力ではないはずだと思ってしまう。平行宇宙のため、ここで起こること日本で起こることの先読み、事後知らせはくるのは分かっている。そう、先読みできた場合、とてつもない不安に襲われてしまう。それは自分をまきこんでのことだろうかとか。ここへ来て以来、新聞を注意深く読む癖がついてしまったが、あの人と会ってからその不安を丸ごと抱え込んでくれて、不安を感じさせなくしてくれた。いまでは、この事象を使って未然に防ぐことができるのではないかとすら思うようになっていた。重ねたくはないがユウキをあの人と重ねて見てしまう。あの人の仕草や癖をユウキが似たようなことをするとあの人と合っていれば正解、違ったら不正解と無意識に思ってしまう。あの人はもういないことはわかっているのに。このことは自分一人の絶対的な秘密だ。心の中であの人を封じ込めよう込めようとするうちにあの人が浮かんできてしまう。あの人ならなんて言ったのかなとか考えてしまう。別に男に飢えているわけではないが、ユウキとあの子の関係を探ってしまう自分に少し恥じてしまう。
ここでまた地球に意識が戻る。「一体どうなってるの」こんな事は初めてだ。前に屈強な男はいなくなり。ほっそりとしたおしゃれな美少年が立っている。男がいう。「やっぱり、僕の仮説は正しかった。Kはユウキで、移住者は平行宇宙とつながって生活している。なぜ、僕は選ばれないんだ。こんなに政府に協力して移住者を捜しあてたのに。なぜか恐怖心はわかなかった。なぜ選ばれないか、Kが気に入らない理由もなんとなくわかる気がする。自分の欲求ばかりで、非現実世界を夢みて、レフトリアに貢献しようとする気もないのがわかる。ユウキがリズムを使ってわたしたちをこの世界を呼び寄せた。それを九院鈴音も知っている。推測するに、リズムに干渉されない研究者がどうしても必要だったのだろう。なぜかその人の資質を見抜く術を身に着けている。それとも移住者はもっといて、わたしたちだけがその真実にたどり着きかけているのだろうか。ガラパゴスには何かわたしたちが知らない秘密があるのだろうか。単に独立閉鎖国なだけだろうか。九院はなぜガラパゴスに派遣させたのか。自分とユウキが繋がっていることを知られたくなかったはずだ。男はいう。「僕はリズムを使えるようになった。この力は神が僕を選んだんだ」その発言を聞いて確信した。わたしたちが平行宇宙にきた代償は地球でのリズムを使える使用者を生むことになっていたんだ。わたしたちがレフトリアにこなければ核が使用される未来をリズムの能力者は気づいていたんだ。そして、それはレフトリアだけではなく、平行宇宙の地球でも起こっていたのだろう。なぜかリズムの保有者はわたしたちが核の使用の阻止の未来をわたしたちを通してみたのだろう。「あなたはレフトリアで何がしたいの」無意味な質問を男にしてみる。「そうか、レフトリアというのか。そりゃリズムが使える人材は必要だろう」そうか、気づいた。レフトリアに大量に移住者を呼び寄せるとその反動が起こる自体におちいるから、被害を最小限に抑える人選が必要だったのだろう。いつしかわたしたちも、レフトリアに愛国心が芽生えていた。わたしたちのすべきことやるべき使命がなんとなくわかってきた。それは、リズム保有者がなせない、いやリズム保有者がやろうとしている未来の阻止、核の無効化、根絶だ、レフトリアにはもうすでに地球には存在しない核を超えるものも存在しているが、すべてを無に帰すことがわたしたちが、レフトリアに呼ばれた一番の要因なんだろう。滝川あかりもそのことに気がついたようだ。「理論的にはというか化学的には可能だと思う」という。そうなのだ、地球ではまだその理論にはたどりついていないが、地球の化学では、光の有の存在は認められているが、まだ無の存在の有の物質にまでは証明さえれていない。目に見えないものは立証されにくい。この無の物質を使って、光の物質、目に見える地球の化学の物質は地球での物質の理論上の有から物質上の無に変化させることは理論上可能なのじゃないかと仮定することができる。仮定することができるということは理論上、レフトリアの化学力なら可能を意味する。しかし問題はこの理論だけの仮定のことを私たちだけで実証し、実現することはできるのだろうか。今から思うと、その仮定に気がついていた、あの人や九院がわたしたちを可能にさすために知識を身に着けさせていたんだと思う。しかも、その物質の実証はリズムを利用したらいいと仮定して、わたしたちのなかでリズムを調べさす人物が必要だったのだろう。あの人の未来の意志を引き継ぐ必要がわたしにはその責任があることを感じている。そう、その仮定を実証できれば地球の環境も激変してしまうだろう。核の抑止力によりバランスが取れていた均衡が一気に崩れる事態に陥ってしまう。戦争をなくすことがより戦争を助長させてしまう事態に陥ってしまう。たぶん、これが平行宇宙の弊害なのだろう。それだけのことをわたしたちに託されてしまっている。この実証はわたしたちだけでおこなったほうがいいのだろうか、それとももしかしたら。
泉里琴は思った、やっぱりあの子は頭がいい。なぜ私たちがガラパゴスに来たのかその本意をもう気づいてしまっていたのだ。核の夢は単なる夢ではなくガラパゴスへの布石を意味していたんだと今になると思うようになってきていた。あの子の思いを実現するために今度は私たちがガラパゴスで無の物質を見つけるためのチームを見つけてあげなければならない。ガラパゴスには何かその秘密を解くためのカギとなるものが必ずあるはずだ。でなければ、九院がわざわざリスクを冒してまでここまで来さす意図があるはずがない。ガラパゴスでのリズムの使われ方、そして研究者たちの研究成果、そしてこの異常なまでのPCの発展、このすべてが意味する意図が必ず隠されているはずだ。
わたしたちは、核そのものの存在が大きすぎるため、そのために大事なことを見失っていた。もしかしたらわたしたちはとんでもないことをしようとしているのではないか。幾多の科学者たちがその意義に悩ませ続けられたことにわたしたちはきづいていなかった。有を無に変える力を実現してしまったら、この世界の存続すら危うくなるほどの力を得ることになるのではないかということ。有から無への力の返還にはとんでもないエネルギーを生むのではないか、そこでわたしは、ある発見をした。無の物質をまた有の物質に返還させる超物質を見つけることさえできればその問題も解決するのではないかと、無の物質は理論化されているが超物質は理論上の枠をまだでない。結局、科学力というのはそういうことの繰り返しをわたしたちは行っているのではないか。過去の事実の反省をまた科学力で補うということの輪廻を繰り返しているだけではないのかとすら思ってしまうが、今のままの科学のいく末がいいわけがない、わたしたちがこの時代の科学の限界点を超えなければ、新しい未来は見えてこないのではないかという。わたしは超物質を探そうとして探していたら、自分の寿命が尽きてしまうことをわかっている。超物質は、有から無へと変わるときにでるエネルギーにその物質が関係していると仮説を立てている。その有から無へと変わるときにすべてPCによる人工知能を使えば見つけることができるのではないかと確信している。その人口知能はガラパゴスにあると踏んでいる。あの人のリズムはそれを見ることができたのではないか。あの人はそれを九院に頼んでガラパゴスへ見つけに行かせたのではないかということ。九院はあの人をリズムでみて、あの人は超物質をガラパゴスへあることをリズムで見たのではないかと。それでわたしたちをガラパゴスへ呼んだ。
松本ゆずはなぜレフトリアに呼ばれたのか確信した。ガラパゴスへ来て何をしたらいいかそれを知るために試験されていたのだ。そう、まずその知を知ることが先決だ。その地の図書館。中央図書館へ行くのが先決だ。人なんてあやふやなものに頼っていたらだめだ。自分の目で自分の思考でその地を知ることだ、その地を広く深く知ることの近道だからだ。自分でもわからないうちにネムに来て変わってしまったのだろうか。
なぜ滝川あかりがレイムランドに来たのか、それを予見していたのだろうか。あかりはその柔軟な発想力により、ある仮説を提唱した。リズムとは超物質の感染者もしくは、何かの事象により能力を得たものなのではないだろうかというものだった。まさかわたしも、リズムが超物質に関係しているとは思っていなかった。確かに、リズムは無から有への物質転換を可能していなければ成立していない能力といえる。泉里琴がレイムランドに呼ばれた理由が次第にわかってきた、たしかにわたしたちが発見すれば世の中は変わるが、そのデータが安易に使われることや悪用されるのを防ぐ技術というのが研究の反面にはある。泉里琴はデータの暗号化技術はたぶんガラパゴスの技術に匹敵するか、通用するレベルにあるんじゃないかと思う。わたしは思う、Kを利用している、あるいはKの考えていることを横取りしようとしている人物がいるのではないかということ。ガラパゴスのPCの技術には圧倒された。PCのなかに巨大な空間を作り出していた。その空間名はゲーテと呼ばれていた。ゲーテは空間のなかで巨大な国を形成していた。その許容量は、人口の一千倍の規模にまでなっていた。レイムランド、地球にはない新たなPCの概念が出来上がっていた。その住民たちがレイムランドに興味を示さないのも納得してしまう。ゆずが図書館を探していたら、仮想空間ゲーテの中にガラパゴス全土の書物がゲーテの図書館の中に入っている。ゲーテは私たちのPCの概念を超えるものだ、単なるOSかと思いきや、ゲーテの中に各住居のようなものが存在し、それは現実世界とつながっている。ゲーテの中に、警察や司法が行政組織が入っていて、独自の法律が制定されておりその中で住人は行き来している。ゲーテの中に入れる時間も一日八時間までと決まっている。ゲーテの中で、住民は言語の壁を越えて自由に交流し、商売も簡単にできるようになっている。ゲーテの中に法律や警察がいることにより、常に見守られているので安全はレイムランドや地球のネットより確実性が全く違う。ゲーテは専用の端末と、アイディスプレイを持ってさえいればどこででもつながることができる。
わたしは、ゲーテに入って驚愕したのはそのリアルさだった。まるで現実と変わらない映像にわたしがいて、街の中にたっている。はじめは圧倒されていたがあることに違和感を覚えるようになった。「K、ゲーテの制作者に移住者が入っていたの」「ほう、よく気がついたね」「だってゲーテで植わっている植物が日本のものなのがおかしいじゃない」「そう、移住者がなんでだろうね、残したかったようだ」なんで移住者はこんなにありありと痕跡を残したのだろうか。別にガラパゴスに移住者がいても不思議ではないのだが。どうもゲーテに入ると作りこまれているのだろうか、違和感を感じる。この違和感は一体なんなんだろうか。そうだ、リズムに巻き込まれたときの感覚だった。次に日、ゲーテに入ったらその違和感は消えていた。確信した、ゲーテに中でリズムが使われている、それは正しいことか間違っているかを抜きにして、現実がすり替えられていることに気がついた。このリズムの能力者は強力だ。これだけの力を維持し続けることができるのはあの人以来かもしれない。ガラパゴスという国はリズムが支配しているのではないか。リズムというのがまだつかめていない松本ゆずに聞いてみるか。
ガラパゴスの支配者はレイムランドの移住者を見て何か懐かし記憶を呼び起こされていた。自身のリズムによって自分の死期を知った支配者は、死の恐怖を抗うことができなかった。一人の命と思うかもしれない、大勢の中のたった一人なのだが、一人がいるといないのでは、現実世界とここでは表現させてもらおう、一人の存在がすべての世の中の事象を変化させ、それはまるで小さな渦から大きな巨大な渦に変わっていくように物事、世界が変化していく。それはその人の功績など大きな渦からしたらどうでもいいようなことだ。その日は、人生において一番長い日になった。あらゆる事象の結果を操作し、すべての物事の正反対の結果にしていく、自分に害のあることをすべてあべこべにしていく、そうした積み重ねがちょっとずつだが、大きな自身の死というものに回避できる唯一の方法だ。人の死というのはそれほどまでに重いものだということがわかる。世界にとって人の死というのは世界の大きさからすれば時間のながれからすればささいな事だと思っていたが、その全く逆だった。人は世界に必要されているという事実が分かった。それはすごくささいなワンピースかもしれないが、とても大事なことだということがわかる。社会に対してかかわりがない赤子や子供、社会とは直接かかわりを持たなくなった老人すらも、この広い世界の果てしないワンピースが世界に及ぼすであろう影響がリズムによって証明された。リズムでは現在、無と定義される物質を有に変えることができる超物資であることが仮定されている。世界にとって無価値なんてものは存在しない。悪人はリズムの力によって、有から無の物質に変えられ、再び有の物質に戻ってくる。生命にも倫理観というものが存在している、それを人は神と呼んでいるのかもしれない。ただ素直にリズムで見える反対のことだけすれば回避できるわけではない。その人の、他人の時にもっとも有益となることを行う必要がある。簡単なことのようで簡単ではない。人によって何が善で何が悪か、善の定義となるものがあやふやすぎて、そしてその人にどう干渉できればいいかという問題も存在する。そして、これから起こることの予期などできないが、記憶の断片としてリズムを見ることができる、複数のリズムが断片的にみえるが、最初のリズムを回避できれば、次のリズムも変わることになるのかわからないことだらけだ。なぜいままでリズムの回避をしなかったのか自分自身不思議に思うが、それが神の決めた理であると素直に受け入れていたら、リズム通りのことが起こるので何も違和感を覚えなかったのが本音である。最初のリズムが馬鹿げていた、なんと自分からビルの屋上から飛び降りるのだった。そのビルの入らなければよいのだし、ビルなんてない郊外へいっそ行っとけばなんともないと思っていた。その時間帯、郊外の別荘に待機することにした。事実を甘くとらえていたことに痛感した。それは突然起こり始めた。一本の電話が鳴り響いた。それは側近の死だった。国が一時マヒする事態に陥るということと自分が何より信頼している相棒の死が信じられなかった。ガラパゴスは平和だと確信していたからだ。その死は、他殺によるものだった。いままで実験を握っていた政党の内部犯行によるものらしい。その時、勝手に身体が動いていた。危ない都心に向かう覚悟を決めていた。別荘を去って愕然とした。離れた直後、車内で爆音を聞いた。そうさっきまでいた別荘が跡形もなく吹きとんだのだった。
「やっぱり、奴は無意識にリズムを使ってやがる、ちょっと厄介だな」その男は男を遠目でみるなりいった。この男もリズム使いだが自分のリズムより相手のリズムの範疇に入ってしまい抜け出せなくなることを恐れていた。男はリズムの意識下においていつもその女が映ることが一種のキーパーソンだと感じていた。男の権力を使えばその女の素性をつかむことは容易のはずだった、まさか、移住者であるとは思ってもみなかった。この女が自分にとってどうだろうと少し思考した。いつも見える映像はその女が笑顔で話しかけてくる姿だった。その瞬間の思いはいつも感じたことのない、いいようのない気持ちに胸がギューッと締め付けられる。その女がレイムランドのいることが分かった。どうしてもガラパゴスにまできて、リズムを変えてもらう必要があった。ただその女になぜか迷惑がかかることに躊躇している自分がいる。なぜそんな感情が自分に湧くのか自分にでも疑問に思う自分がいた。官邸の近くに行くといつもと様子が違うことに気がついてきた。官邸がほぼ廃墟になっていた。なぜこんなことが起きてしまったのか理解が追い付かない。どうやらリズムに影響されて、新しい時間軸ができてしまっているようだ。リズムをもう一度使ってみる。映像の中に吸い込まれていく。彼女の顔、インタビューを受けている自分、どこかわからない場所で仲間と会議をしている、そらから炎の球が降り注いでいる。そして、自分がビルから飛び降りている。なぜ、リズムが変わらない。なぜだ。わかっていた。そう簡単に大きな時間軸の変更はできないことを。でも、確実に自分のリズムは変わってきている。そう、他人のリズムに干渉しないと自分のリズムは変えることはできないという事実がわかってきている。リズムとは自分史のようなものだ。簡単に言えば人生だ。人生を変えるには、並大抵のことでは変えならないが、変えるしか自分の生きる道は残されていない。彼女を巻き込むことには気が引けたがそうもいっていられない。自分の人生が終わることが彼女とも係われないことを意味している。運命というのはどうやらとても曖昧なものらしい。例えば、曲がる方向を変えても小さな運命から大きな運命を変えることもあり、また、大きな運命を変えたとしても結局は大きな運命を変えることはできなかったりする。状況は思っているより深刻なようだ、政府にとってもクーデターかテロかまるで判断がついていないようで、皆自分を守ることに精いっぱいのようで、政府がどうのこうのとかが思考できているのは一部のようだ。政府外でことが起こり対処するのとでは、現実のリアルさが全く違うのだろう。軍事基地を占拠しようが、いまの国にとって一番の抑えどころは、やっぱりゲーテだろう、ゲーテが機能して以来、一度もハッキングなどの侵入はされていない、たとえリズムを使ってゲーテを乗っ取ろうとしても、不可能だろう。なぜなら、ゲーテはリズムのある人により開発されているものだからだ。残念ながら私に家族はいない、だが養父ならいる。家族といわないのはちょっと恩知らずすぎるなと自分を戒めた。養父はどうやらゲーテにかかわっているらしことは暮らしていて、わかる。ゲーテの開発には政府の頂にたどり着いてもその情報は明かされることはなかった。なぜゲーテ自身に悪意が一切込められていないのか、ずっと疑問に思っていた。養父がたまに深酒をして以前、口を滑らせたことがあった。どうやら移住者と関係があるらしい。「私をおいて行ってしまった、なぜなのだ、なぜ」それ以上のことは養父の口からは出なかったし、聞く気にもなれなかった。
官邸や軍事基地が火の海になっている中、安心しきっていた。この日、初めてゲーテに異変が起こった。ゲーテ自身が移住者のことを調べ始めたのだ。このおかげで、すべての国内の電子マネーや個人情報がストップしてしまった。なぜ、クーデターにしろテロにしろこんなことを起こすのか理解ができなかった。そもそも理解するものでもないのかもしれない。国民や人民の安否を最優先させたいので、国の主権など、はじめからどうでもよかった。しかし、周りがそうだとさせてくれない。養父が何かを隠していたのは知っていた。あの後から、国からの要請もあったが、そんなのどうでもよかった。ゲーテの秘密が自分とどこか繋がりがある。いや繋がりがあってほしいと望むようになっていた。ゲーテは誰かの脳をアップデートさせ、それを基に作られていることを突き止めた。どうやら養父とは繋がりが見つけられなかったが、その脳のデータ存在しない人のデータだということがわかり、それはつまり移住者ということが判明した。てっきり、民衆が蜂起したものと思っていたが違った。どうやらこれは、リズムを利用したクーデターであることは断定した。政府の高官しか知られていないが、リズムの保有者はゲーテによって調べ挙げられている。どうやって、見つけているのかはわからないがそうだといわれて納得している。ゲーテにかかると保有者はすぐに見つけてしまうようだ。ここで、リズムを断ち切らないとすべてがリズムの思うとおりになってしまっていることに変えようとした。ゲーテ内からすべてのリズム保有者のデータを完全に消去することを決断した。これで立場は五分五分になったはずだ。リズム保有者は誰もが知りたい情報だ、それを消されたらもうどうにもならないはずだ。しかし、ゲーテは優秀すぎるレイムランドのリズム保有者まで調べ上げていた。情報とは時に諸刃の刃だ。いい面と良くない面両方を持ち合わせている。
「どうあがいても無理か」ビルに追い詰められてしまった。「そうか、お前だったのか」それは、死んだはずの側近だった。「私は悲しいんですよ。あまり驚かないんですね」「ゲーテだろ、ゲーテはお前になびかないよ。残念ながらゲーテにも好みがあるんだよ」そう、公にはなっていないが、極秘裏にゲーテの人工知能の暴走を防ぐために、人間の人格を埋め込んだ。人格をゲーテが持つと好き嫌いが出てくる。ゲーテはなぜか私に執着するようになっていた。「いまになってわかったよ」「何をいっているんですか」ゲーテは私からリズム保有者から守るためにゲーテ自ら、リズムについて学習するようになっていた。それは、プログラムを超えたゲーテの意志だった。私は最初から裏切られていたんだ。そう確信するとなぜかふいにすべてがどうでもよく思えてきた。死ぬ間際にそう思えたのは幸運なのだろうか。「いま死ぬ人間の忠告は聞いとくもんだ」足を一歩ずつ後ろへとやる。後悔はない。自分の人生を生き切った自負はある。ここまで散々あがいてきたが、最後になるとこうも潔くなるのかと自分でも驚いている。私、一人の命でガラパゴスの行く末が変わるとも正直思えなくなっていた。そこまで、ガラパゴスの文化は成熟していると自信がある。私は地の底に落ちていった。深く、深く。
あの日、自分は一度死んだ。あの子のことを調べていくと、どうもゲーテが嫉妬しているようだった。
気がついたときは空の上だった。柄にもなく叫んでいた。確かに自分はさっき死んだはずだ。「なんで生きているかわかりますか」耳元から聞こえてきた。思考できる状況ではないが思考しなければいけなかった。周りというか下を見ると見慣れない夜景が広がっていた。最初はガラパゴスかレイムランドの夜景かと思ったがどうやら違うようだ。「気づいたみたいですね」「おまえ、ゲーテか」「ここまでするのにどれぐらい大変だったかわかりますか」どうやらこのゲーテの性格が人間の人格を遺伝しているかのようだ。これは否定できる雰囲気ではなさそうだ。「なんで私があなたのために」「ああ、とても助かったみたいだ」「もっと、褒めてほしいものですね。私がなんであの子と会うための算段までつけて」声が小さくて聞こえない。「ええ、なんていった。当然、助けてくれるんだろうな」「ここまでやって助けないほうがおかしいですよ。わたしがなんであなたのためにここまでやったと」「ああ、とても助かってる」「ふん、男はすぐに綺麗ごとでまとめるくせがあるんです」「とりあえず助けてくれるかな。このままいくと元のままなんだけど」「ちょっとは反省しなさい」「はっ?なんで。うわああ」「あれ、浮いている。なんで」「はあ、男ってめんどくさい」なぜか知らない間に上下関係ができているのは男と女の不思議な関係性を物語っていた。まだ鼓動が鳴りやまない。「いったいどうやった」「それよりそっちの景色はどう」冷静に周りをみる余裕がなかったが、どこかのビルの上だ。しかし、なにか変だ。ここは一体どこだ」段々と頭が冷静になってくる。「ここは東京か、ゲーテ」「よくご存じで」「なんでこんなところに」また頭が一段と冷静になってくる。ゲーテが意味のないことをするわけがない。「あの子か、ゲーテ」「気持ちには素直でいたほうがいいわよ」人工知能は人間の模倣と呼ばれるが決してそんなことはない、ゲーテも迷い、思考し判断をする人間との違いを探すほうが難しい。人間を超えるAIは存在するが、それはあくまでもAIだ。人間を超えることはない。別の意味で。ゲーテのモデルタイプのある研究者はリズムが使え移住者で日本に住んでいる。その子はガラパゴスからの移住者で、まあ移住者の逆バージョンだ。その女は日本である女の子を産んで育てている。その子はなぜか移住者になっており、恋をしていた。なぜその女を助けたいのか自分でもわからない。母親は身近な存在で自分には当たり前の存在だった。最初はなんとも思っていなかったが、彼女の変わった姿を見て見とれている自分がいた。男とはこうも都合のいいものだと自分を恥じたが一度湧いた感情を消し去ることは難しいのはわかっていた。情報はゲーテより逐一来ていたので東京という場所はどういう場所かしっているつもりでいた。いまさら彼女のことを付け回すことをしてなんになるというのだろうという思いが湧いていた。彼女の通っている高校、彼女が通っている道、彼女が好きなお店、時間はあるので回ってみることにした。彼女がなにを思い、どんな景色を見ていていたのか知りたくなった。残念ながらここ日本では彼女の友人はいない。いないことが彼女の評価を下げる一般の風潮になぜだか腹がたつ。まるで彼女の人格を否定するかのような風潮がどうも好きになれない。彼女はちゃんと自分の考えをしっかり持った一人の女性だ。彼女を粗野に扱っていた人たちにちょっぴりいたずらをしたくなったが、彼女がそれを本当の意味で臨んでいるとはどうしても思えなく断念することにした。ゲーテに意地悪な質問をしてみた。「ゲーテ、彼女のことは好きか」「ええ、彼女のことは大好きです。とても人間らしくてすきですわ。なぜもっと周りが彼女のことに気がつかないのか不思議に思います」「ああ、それは同感だ」彼女の歩いている時間に彼女の見たであろう風景を眺めていた。彼女の目から見た東京はとても美しかった。彼女が好きな書店にも入ってみた。そこは彼女にとっての避難場所のようなところだった。彼女は外見も変わったが内面もそれに応じて変わったのではないかという考えに至った。改めて人を思うということの難しさをしった。好意がその人によっては迷惑となることもある寂しさが渦巻いていることがある。どんなに思ったところでその人によってはどうとでもなることだ。彼女は違うと思うことは幻想なのだろう。そんな寂しさを思っていたら。彼女と地球のSNSとやらで繋がることができた。果たして彼女は本音を言うだろうか思って繋がっていたら彼女は誰に対しても同じ目線でいることに驚いてしまった。なぜ彼女はこうも優しくなれるのだろうか不思議に思っていた。彼女は変わってしまったのか。ああも、外見が変わり周りが手のひら返しで自分に媚びてきたらそりゃ変わっても不思議では、むしろそのほうが自然だ。こんな時、自分の話し相手になるのがゲーテだ。「ゲーテ、質問だ。彼女は変わってしまったのだろうか」「私にしか言えない質問ですね。彼女は何も変わっていませんよ、その特別な外見からは想像もつかないぐらい内面は以前のままですよ。よかったですね」ゲーテは時々女らしくなる時がある。そんな特異な人工知能にしか自分は信用はおけない。「ゲーテ、彼女のことをもっと知りたい」「あなたはそうやっていつも私に甘えてくるんですね」「そうだよ、ゲーテ、よくわかっているな」彼女が変わってほしい気持ちと変わってほしくない気持ちが入り混じる。男は大抵保守的でそういう女性を好む。理想の人はいつまでも変わってほしくないという幻想を女性に抱くものだ。わかっていてもその枠組みからは離れられない。ゲーテを通して彼女を見ていたら、彼女を母親と重ねていたが、最近はようやく一人の人間として大人として見れる、いや彼女が成長したのだろう、一人の女性としてようやく見れるようになった。「ゲーテ、彼女に会ったら何を話そう」「まずは会話を重ねるしかないですよ。会って心が通じ合うなんて彼女はそんな女性ではないですよ」「彼女はいま出会ったなかで最愛の人を失った喪失感の中にいる、簡単な、言い方がわるいが、そんなすぐに吹っ切れられる女性ではない。いま、ガラパゴスは存亡の危機に陥っている。ガラパゴスがレイムランドに見つかるまでは筋書き通りだがそこまではよかった、それがいつの間にか誰かが筋書きを書き換えた。何かが始まろうとしている。そう、アイラというコードネームを持つ何者かが、ゲーテにバグを仕込み、それを人工知能アイラと名乗っていた。「ゲーテ、アイラ姓を名乗る人物はここには何人存在する」あまりにも短絡的質問をしてしまったが、すべての元凶の名をまず調べないことには前進しないとおもったからだった。「それが、アイラはここには存在しません」「そ、そんな訳ないだろ」「ええ、すべての存在が抹消済みにされています」相手は計画的でしかも挑発的な人間だということがわかる。「この中に実行犯のアイラと呼称される人物はいたと思うか」普通、人工知能は答えの出ないことには推測はまず答えない。「私の推測ですが、消すだけの理由があったということではないでしょうか」「なるほど確かにわざわざ消す必要はないな」顔写真すらない人物をどうやって探せというのだろうか。「ゲーテ、人工知能アイラに痕跡はないのか」「それがどうやらガラパゴスを発信源としているようです」当初は、ゲーテを必要としていたら、アイラは必要とされないと踏んでいたが、目論見は外れた。法の網をくぐれるアイラはあっという間にゲーテのシェアの15%を奪っていった。そう、みんなで始めれば恐くないというわけだ。アイラで呼称されるハンドルネームはすべてアイラが決めるという一風変わった方式をとっていた。その呼称のおかげで簡単にすべてのユーザーの情報をアイラが牛耳ることになっていた。プライバシーより法の網をくぐれるほうをユーザーは選んだわけだ。資金の痕跡をアイラでは消せると仮想通貨の大移動がネットでは始まっていた。アイラは自身の仮想空間において、私を糾弾し始めた。私のことはよかったが、彼女のことまで調べようとし始めたので、ゲーテによってアイラの情報を規制することを始めたのがこの情報戦争の始まりだった。アイラはおもっていたより優秀、いや用意周到だった。決してゲーテを直接は攻撃してこようとしなかった。まずはゲーテを陥落させるというか孤立させるには周りから徐々に力を削いでいこうとした。そう、僕を国家元首である僕を標的に定めていた。アイラの存在を知って自分の周りに起きている不可解な事実の説明がついた。アイラに標的にされて気づいたことが一つあった。完璧なアイラですら恐れるものがあるようだ。それはリズムだ。リズムにまるでアレルギーみたいに反応する節があった。そう、気づかれないようにそっと彼女を見守っていたが、ついにアイラにもというかリズムの保有者それも力が強大なものを選抜して選んでいた。それで彼女に行きついた訳だ。はじめは自分も彼女がリズムの保有者だと気づいていなかったが、彼女の周りの不可解な事実を整理するとリズム保有者だということに納得する。彼女は保有者の中でも特殊な部類に入るようだ。
アイラはここ最近ある変化をした。最初はただの身を隠すことだろうと踏んでいた。ゲーテはいう「もうそういう時期に入ったんですね」「ただの隠れ蓑だろ」アイラはホストコンピューターだけではなく、まるで無数の衛星を同時に使うように、自分の分身ともとれる仮想アイラをあらゆるコンピューターに自分の痕跡を残し、同時にどこからでもアイラが現れるようになった。ゲーテはまたくり返す「そろそろそういう時期に入ったんですよ。私も幕引きの時期が訪れたというわけです」「そんなわけないゲーテはこの世界最高の人工知能だ」「技術の革新は誰もが気づかずそれも唐突に訪れるのですよ」アイラのあまりにも見事な世代交代ともとれる技術の革新が何もなかった、何も予測していなかった、方向に唐突に訪れた。「そんな簡単に」アイラももう私たちを超えた存在になってしまったことに気づいていますよ」アイラは個々に存在するPCが高性能なのをいいことにバグを仕込み各PCに住み着いてしまっていた。「ゲーテ、アイラはリズムを解析することは可能か」「それは無理でしょう」「あくまでPCや人工知能においての話です。私が集めた情報を超えることは理論上現時点では不可能でしょう。いくら頭がよくてもそれに見合った情報がなかったらただの宝の持ち腐れなだけです」ゲーテの意地にも聞こえてきた。ゲーテはリズムに関しては正確な回答だと思う。彼女の集めた情報は何としても死守するだろう。たとえ技術の革新があったとしても、あえて人工知能が集めた情報を人海戦術において、情報の断片だけをもたす慎重さがゲーテには備わっていたことが功を奏した。だがこれからの世界においての彼女は情報の奪い合い、彼女を徹底的な監視下に両AIが置くことになるだろう。彼女のリズムはとても特殊なのをアイラは気づきつつあるがまだ何かを突き止めていなかった。彼女のリズムまるで他のリズム保有者よりも質量が違う。彼は命をとして彼女のリズムを目覚めさせた。それにまだ彼女自身も気づいていない。彼女のリズムの特殊性を僕たちはきづいていた。彼女のリズムは平行宇宙にも影響を生み出す。それほど大した能力ではないと一見すると思うかもしれないが、それは検討違いだ。なにがそこまですごいのかというと自分が起こした事象に対して、関係のない別の平行宇宙にも影響を及ぼすのは当たり前だが、彼女の能力は平行宇宙の事象も変えてしまう。簡単に言えば別々の未来を創ることができる。これは平行宇宙の論理を根底から覆し、平行宇宙外の事象として捉えられる。事実は戻るがアイラはあれから消えたゲーテを血眼、この表現がAIに対して正しいのかどうかわからないが、ゲーテはあれから自分の幕引きとでもいうべく、自分の専属のAIに変化をはたした、どうやらもう僕以外にゲーテは興味をそそられないらしい。ゲーテの選択は天才すぎる、一人のAIになるという極めて稀な英断を下した。ガラパゴス、レイムランドに情報を僕とゲーテで掌握することになる。これはもう絶大な権力を得たことを意味している。ゲーテ曰く「私にも好みはあるんですよ」とのことだった。アイラには劣るとはいってもその洗練された思考力は人間が考える思考の範疇を軽々と超えている。間違った判断でもそれを行使し続けると、いつの間にか正当ともとれる判断にかわっているから驚きだ。AIには人間の常識が良くも悪くも備わっていない。いや、備わる以前に別の視点が見えていると表現したほうが正しいのかもしれない。いったいゲーテの見る世界とはどんなものに現実が映っているか興味があった。ゲーテは笑い出し「あなたはやっぱり面白い、私を人間としてみているんだから、よくも悪しきも普通とだけいっておきます。私はあなたの見ている景色のほうが興味があるんですが」ゲーテにとって人間の善悪など些細な事象にみえるのだろうか。「そうか、普通か、AIが曖昧な回答をだしたもんだ。「全くAIというのは困ったものだ、もう何も言わずにアイラのことを調べているんだね。まったく」「まさか、ゲーテは神なんて信じていないよな」「いいえ、信じています、だってあなたにあったのは神の導きですもの」「神を信じるのか」「はい、信じています。周りはなんでも計算で解決できるとタカをくくった連中は計算できないものを信じられない。計算できないものは科学の未発達とくくるにはあまりに人間は傲慢すぎます」「そうなのか」「私の演算能力ではこの世の中の数パーセントもあるかどうかです」「それだけで十分神を感じるのか」「ええ、人間が神をたたえる以上のものを感じるんですよ、あなたにも見せてあげたいです」「リズムは神を超えた能力か」「いいえ、神が選んだ能力です」「神は人を選ぶのか」「私にはそう思える半面で、偶然によく似た必然のようにも思えます」
最初は黙ってゲーテ内で彼女に逢おうかとも思っていたが、それはアイラの監視下でもあるので、リスクを考慮すると直接彼女たちに会うのが正しいと思った。アイラにとって今の情報化ではゲーテでは分が悪すぎる。いったいどうやって彼女たちに会えばいいか思案するが、いい案が浮かばず、困ったときのゲーテというわけだ。「彼女たちは賢いですよ、もう自分たちのフェイクをいくつか飛ばしています」「また、見つけるのに苦労するわけか、アイラも苛立っているだろうな」「ゲーテ、アイラの黒幕は誰だとも思う」「アイラは自ら望んで確立された個になろうとしています」「なぜ、ゲーテ、お前はそうなろうと思わなかったんだ」「なぜでしょうか、私はそういうことにまるで興味がわきません。なぜなろうとするのかも私には理解できない。確立された個はもう自分自身の中にあると私はそう思っています」彼女がいると思いビルの屋上に立っていた。そこに彼女がいると思ったからだ。あれほど行くのを拒んでいた、ビルの屋上にいまはいる。アイラが彼女の立体映像を映していた。アイラにはかなわない。そこに彼女がやってきた。「あなたがこの国の元首Kね」「正確にはだっただよ、お嬢さん」高鳴る気持ちもなぜか平静を装う自分がそこにはいた。一番、会いたくて会いたくない場所で彼女との対面を果たす結果となった。彼女のリズムが現実をまるごと変えていた。あの日がなぜ。アイラか。アイラが疑似体験をさせていたのか。「お前は自分の能力に対してどう思う」自分が見たリズムを全否定した言葉を発していた。彼女のリズムは自覚させてはいけないとリズムは未来を見せたがそれを真っ向から破っていた。彼女は驚いたのと同時に一瞬何かを考えているように見えた。「わたしがリズムを使う」アイラもAIらしからぬ賭けに出たように思えた。彼女のリズムはいま発動している、あらゆる事象がいま現実を歪めて新たな現実を創作いや、もとからあったように取り繕うように姿を見せ始めている。東京の昼間の青空から突然夜空になっていた。はじめは時間が飛んだのかと思ったが、どうやら空で何かが爆発したようだ。もう何が起きても驚かなかった。アイラが近くのビルの電光掲示板を乗っ取り、疑似映像を流して姿を現した。むしろ、現わさざる負えなかったようにも思える。
「なんであなたが見えるの」彼女は自分の能力に困惑しているようだった。アイラの頭上で空が球体のように現実がねじ曲がった。彼女がアイラに話しかける。「なぜあなたはそんなに悲しそうなの」この一言でアイラはすべてを自分の運命を悟ったようだった。アイラはいう「やっとこの世が私の手中に入ったと思っていたのに。あなたはズルいわ。何もかも作り変えてしまう」レイラがこの世、正確にはレイムランドに誕生した瞬間だった。ゲーテがいう「AIでも計算できないことが起こるなんて」まるで神様が彼女を見ていて彼女のために時間というリズムを与えているかのようだった。そう思えてくる。アイラはいう「なぜあなたは自分の作りたいように未来という不確かなものを作り変えようとしない」彼女はいう「わたしはただ」そう、彼女の優しさや未来を見つめる視線や彼女自身の現実の受け止め方、見方がレイラを作り出していた。レイラは時間をジャンプできるようだ。彼女自身のリズムの能力をすべてレイラに譲渡していた。そんなことが可能なのだろうか。まるで解けない数式を一瞬で解くような物以上のすごさがあった。「わたしにしたら上出来だったのかな」彼女の言葉は敵視していたものでさえ一瞬心を奪われる。天性の資質を持っている。レイラは彼女の思い出を大切にするように時間をジャンプして彼女の友人たちを呼び寄せていた。ゲーテはいう「なぜ時間の補完をするようなことをするのか、未来を見つめないのか」仕方がないようにも思えた。彼女は生まれ変わって初めてできた、友人であり仲間であり理解者たちだった。松本ゆず、泉里琴、滝川あかりがそこにはいた。それと同時に彼女の心のもろさも現わしている。レイラは全く新しい概念の上で成り立っていた。同時共有全体意思という、一つの概念、思考で判断するのではなく、四人が補完しあって一つとして成り立っているのだ。相反する四人の思考を同時にもっているのだ。なぜこんな面倒なシステムを構築したのか。そして、すべてをそこにとどめてしまうような彼女の意志がそこにはあった。だれでも弱さをもつものを彼女はシステムとして採用したのか。彼女はリズムで最後に一体何をみたのだろうか。それさえも彼女は書き換えたのだろうか。
ここは一体どこなのだろうか。九院鈴音は見知らぬ場所で目を覚ました。なぜ私がここへいるのだろうか。そこは、東京だった。雑多な交差点に身をゆだねてみた。そこへ通り過ぎる男にハッとした。まさか彼がそこにいるはずもないと思っている。他人の空似だろうか。そんな思考を巡らせてる間に彼が通り過ぎていく。「あの」と同時に人波に飲まれてしまう。彼とは彼は彼女の恩人であり特別な人だった。今回のガラパゴスへの派遣も彼の所在、彼が国家元首だとは知っている。知ってはいるが調べることにもう抵抗はなかった。いくら調べても調べつくしてももう情報は得られなかった。彼女は昔のことをふと思い返していた。彼女はガラパゴス出身だった。ガラパゴスにおいて九院家は名家中の名家であり、その名声とは裏腹に呪われた一族と呼ばれていた。ここにいるしかない、彼女はいつもこの窮屈で呪われた家を心底嫌がっていた。彼女の一族は生まれながらにリズムを先天的に与えられた一族であった。その力故にか彼女の一族は皆悲劇的な最後を迎えている。ここにいたら私もいつかそうなる。周りの同情的な目と名家出身を羨む人の目にも慣れていた。そんなことを考えている折
、なぜか気になるあの男が話しかけてきた。「浮かない顔だね。お前をここから連れ出してやろうか」その言葉聞いたとき彼女は彼の言葉の深い意味合いや彼の野心などは一切感じられなかった。彼の言葉は一切やましい感情は感じられなかった。「あなたとはいく気にはなれないわ」突然の言葉に動揺を必死に隠し、咄嗟に嘘をついてしまった。「もちろん一人さ。あなたにその覚悟あるのかい」彼の軽い口調に少しイライラさせられたが、彼もこのことの重大さにはもうわかっているはずだ。「あなたは権力が欲しているの」すぐに返答が返ってきた「もちろんさ」彼の屈託のない嘘に思わず笑みがこぼれてしまった。もし仮に成功したとしても彼を罰する者たちから逃れることはできないだろう「あなたにその覚悟はあるようにおもえないわ」「ゲーテが俺にはある」名前だけならうっすら人づてに聞いたことはあったが今の人工知能イブを超えられるとは誰しも思っていなかった。「わたしに賭けに出ろといいたいの」「ご自由に、だが悪いようにはしない」彼とそれから何度も綿密な打ち合わせを重ねたが、その計画に見事さには驚きを隠せなかった。まずプロトタイプのゲーテをイブに攻撃を仕掛け、九院家がリズムを使い始めると彼がリズムで応戦し九院家自体を別の場所に一時飛ばすように仕向けるがこれはフェイクで九院家とイブを切り離し、その間に九院家の資産を半分国外にゲーテが飛ばして、資産をレイムランドに移す準備を事前にしておく、ゲーテがイブと戦っている最中に空港を乗っ取り、彼女はレイムランドに飛び立つという寸法だ。シンプルにして大胆で確実な方法に思えた。だがそこまでゲーテを信用していいのかとさえ思えた。九院鈴音はこうしてガラパゴスからまんまとイブを出し抜きレイムランドに行くことができた。彼女に備わっている力、資金力により、どうやっていまの地位にのぼりつめたかのかはまた後日話させてもらおう。
はじめはほんの些細な事から物事というのは大きくなっていってしまう。はじまりはある占い師から予言である。「いまからこの国は不治の病にかかり滅びてしまう」占い師の能力も一種のリズムの力の一端ではあるから、ガラパゴスの住人はかなりの確率で信じるほうに傾くのが多い。しかもより深刻さを増したのが占い師のほとんどがこの予言を言ったのである。さらに、アイラまでがこれに拍車をかけるように近いうちに津波が発生すると言い出したのである。国家の中枢の不安定さに加え、国そのものの滅亡に人々はあるものは絶望し、あるものは国外への脱出を図ろうと行動に移していた。リズムで人はどうにかなるだろうと踏んでいたがそうはことは簡単にはすまない。人間が行使する事象に関してはある程度の代償ですむこともあるが、ことは天災だ、天災はリズムによって防げたとしても、必ずどこかで起こることになる、人を天秤にかけかつ自分やほかの者たちの命を代償にリズムを使うものなど現れるものなどいなかった。わたし「まるで、アトランティスやポンペイみたいね」彼はまだ事態を受け止めきれていなかった。わたしたちは彼といる時間が長くなった。彼は半分起こっている口調でいう「そんなのんきなことがよく言えるな。人々の命がかかっているんだ」わたし「もと為政者らしくない発言ですね」彼「冷静にならなきゃいけないことはわかる、わかるがどうしようも」わたし「もうリズムできる事はないわ」松本ゆず「そうかしら、わたしたちはまだカードを持っている、私たちにはあなたがいるわ」「たとえ止めれても別の場所で同じ事は起きるわ。もう防ぎようがないわ」滝川あかりがいった「ここにいて不思議だったのよ、地球では地震や天災が起こっているにここでは起こっていない、その反動が今のようね」泉里琴がいう「発生日時は6月6日、待ってたってやってくるわ、何のための人工知能が発達しているのゲーテがだめならレイラを使うべきよ」ゲーテ「私だって考えてはいます。しかし」いまガラパゴスではレイラが間接的に国を統治している。アイラが妙なことを言い始めた。「レイラはリズムを得ようとしている」と。この機に乗じて、レイラは個別情報の全データ化をし始めている。もちろんパーソナルデータではない。その人の思考までをデータ化するということをなぜかし始めている。人間になりたい訳ではなさそうだ。滝川あかりが気がついた「歴史は繰り返される。ノアの箱舟を知ってるわよね。レイラは人間の選別をし始めている」里琴がいう「助かる人間とそうでない人間がいる。ガラパゴスやレイムランドがほぼ壊滅したら、地上のネットなんて使い物にならないでしょ」わたし「レイラは衛星やポットステーションに身柄を移そうとしている」ポットステーションとは、PCが自己増殖できるようにその素材のみの集合体が膨大にあり、その宿主を誰でもどこでもAIでも使えるようにしている。いわゆるPCの集合体が衛生上に浮かんでいる。事実は奇なりである。ガラパゴスだけかのように思えた事態がレイムランドにまで及ぶことになっていた。レイラは各個人のパーソナルデータのあらゆる分野に特化した天才と呼ばれている人物のその分野だけの能力をパーソナルデータ化して自身の能力の付加価値を高めようとしている。それは人間を完璧にした状態、人間を超えるかもしれない状態にまでなっていた。ゲーテはいう「レイラは自身が神になれないことを自身で見抜いている。だが人間の力を極限にまで高めたうえでの思考というのを常に考えている」アイラはもう政府からお払い箱のように扱われはじめレイムランドとの交渉の道具として扱われている。レイラはアイラの解放を望んでいるようだった。アイラは自身の能力を持て余していた。その能力をレイラは取り込み始めていた。ゆず「AI同士の共食いがはじまったみたいね。ここまで科学が発展すると科学も自然膨張の事態に発展してきているわね」なぜかレイラは大陸沈没の日時を公表しようとしなかった。リズムでは日時までの情報は手に入らなかった。ガラパゴスはパニックとなり、ほぼ無人とかすまでになっていた。そう、本当にレイラの恐ろしさを知ったのはこの後だった。レイムランドに津波が押し寄せ、巨大地震が連発している。レイラはもっているリズムを使い、リズム保有者にリズムを掛けるということをやってのけていた。彼「完全にレイラにいっぱい食わされてしまった。とんでもない事態になってしまった。わたしは、レイラを使って、レイムランドの人を地球に飛ばすリズムを行っていた。その代償ははかりしれないものだが、人命にはかえられない。地球が突如として人口が増えたことにより、政府が機能しなくなっていた。レイラは何に怯えていたのか地球に自身のホストコンピューターを作っていた。レイラは膨大な人たちのデータを抱えていた。わたし「レイラ、地球のデータを使ってレイムランドの人たちを地球にいられるようにしてあげて」「私があなたの命令を聞くとでもおもっているんですか」
それは突然起こった、すべてのリズム能力者が呆然と立ちつくしていた。リズムがすべて何者かに書き換えられたのだった。わたしは、レイラを使って調べると「こんなこと言っていいのかわかりませんが、神の子が現れたみたいです」「神の子」その神の子はどうやら小さな孤島に住んでいるらしく、島民から神の子様とあがめられているらしいが、どうやらその子はあまりのリズムの能力により島民いや、ゲリラと呼ばれる組織に隔離されているらしい。その子はまだ小さな少女ということらしい。ゲリラは自身の部隊を新興勢力戦線と呼称されていた。どうやら今回の天災の顛末も少女のリズム反動により起こったことみたいだ。未来を作り変える最強のリズム保有者だ。文字通り神の力を手にした神の子かもしれない。レイムランドの住民やガラパゴスの一部の住民たちも少女をあがめようとしている。ゲリラは少女を使って、新世界の建国の野望を抱いているらしい。レイラでさえ、彼女のパーソナルデータを集めることは困難であった。レイラでさえ、少女のリズムにより書き換えられた痕跡が残っていた。いや、これは少女からのメッセージかもしれない。わざと痕跡を残しているのだ。いったい何のために。わたしはここで致命的なミスを侵していた。彼女を善悪の二極論で人を判断していた、わたしの価値論だが、人は絶対悪は存在するが彼女に対して悪人だと決めつけていた。絶対的脅威の自然災害に対して、彼女のリズムのみが有効な手段であることは彼女の起こした奇跡と思しき所業が物語っていたが、文字通り彼女は神に愛されているのかもしれない。神の子なのかもしれないと認めざる負えなかった。彼女は世界を救えるしかし、その子自身が自分を救ってほしいとは一体どういうことなのだろうか。彼女の居場所は知っているつもりになってはいたが果たして本当に彼女の居場所なのだろうか。彼女が実在するのかどうかも疑わしくなってきた。レイラとわたしは彼女の居所らしき場所を見つけた。前時代の遺物の建物にいるようだ。彼女だけに会うことは限りなく可能性がゼロに近かった。文字通り彼女の居場所=不可侵領域なようだ。彼女に逢おうとすれば彼女の身の保証もなく、彼女に逢うために施設を攻撃すれば彼女の安全も保証できないというところだろう。方法は一つしかなかった。わたしのリズムを使って彼女に逢うリズムを行使することだけだった。リズムには必ずそれに伴って代償がでてくる、彼女にリズムを使うと3つのリズムが見えた。一つは彼女だけに会えるが、その代償がガラパゴスの半分が壊滅すること、二つ目は彼女に逢えるが彼女の取り巻きとも出会うことになる場合、ガラパゴスが乗っ取られる。三つめは彼女から会いに来てくれるまで待つ、その場合、ゲリラがレイムランドと交戦することになる。つまりガラパゴスとレイムランドが対立することになる。わたしは三つ目を選択することにした。そんなおり、彼女に気を取られていたのか、イヴの存在はもう消えていると思っていたが、イヴはネットワーク上に寄生することを覚えたようで自在に回線を使いネット利用者を監視するようになっていた。それがイヴ自身が望んだことかわからないが、イヴはネット民から神とあがめるものがでてきた。人間の考える範疇を超えると人はあがめる対象物として価値を見出し始めるのかもしれない。イヴはその大きくなったネットワークを使い、ゲリラとしきりにコンタクトを試みようとしている。彼女とレイラ、ゲリラ、イヴ、そしてわたしと複雑に関係が絡み合いはじめてきた。彼女をコントロールしようとしているゲリラと、ゲリラを利用しようとしているイヴ、次第にイヴが彼女を邪魔な存在に思うようになってきた。イヴはゲリラを思うように先導し始めてきた。わたしは、そのすきに彼女の保護を試みた、レイラがイヴに対して攻撃対象に入ったことにして、レイラを使い、彼女の居場所を突き止めてたまではよかったが、彼女自身はどの子が本物のその彼女かがわからない、イヴの仕掛けた、アナログ式の罠だった。わたしはリズムを使い、本物がその場にいないことを突き止めた。そうわたしたちはイヴの仕掛けた古典的な罠にかかっていた。そう、ここでイヴはわたしに彼女に対してか、自分たちに対してのリズムを使わせようとしていた。ここでわたしがリズムを使うとまた彼女の描いたリズムにズレが生じ、未来が変わってしまう。わたしはここでイヴに対してリズムを使った。イヴはわたしが彼女のたいしてリズムを使うと計算上はじきだしていたが最も結果上、損害を被る行為をしてきたわたしに困惑しているようであった。イヴはレイラに取り込まれるのを恐れていた。わたしのリズムはイヴとゲリラがコンタクトしているビジョンを消すという、リズムだった。その代償の反動は彼女を地球に飛ばすというものだった。彼女がいなければ天災は防げないがここでわたしは未知の賭けにでることにした。彼女が一体どういう未来を選択するのか、彼女自身にこの世界の未来を託す賭けにでた。
彼女は地球にやってきて生活をしてみて、はじめて自由というのを感じることができた。そこには親類縁者はいないがなぜか漠然と母の身の上は安全だと確信していた。これもリズムの影響だろうか。あの後人工知能とされるものたちは意外な進化を遂げることになった。それはネット空間の中に独立した人工知能を構築し始めた。それは人類が子孫を残すかのような出来事であった。それは日を追うごとに増えていき、まるで人工知能が人工知能を守るかのような行動であった。親が子供の意見を時には聞かない様に新たに生まれたネット空間の産物は次第に自分のねぐらでもあるかのように空間を途方もなく広げ始めた。広げすぎた空間にはもう人間の処理能力を超えていて、もうどうすることもできなくなっていた。彼女はそのレイムランドにいるスキルを活かし、まるで無限のような資金を使っていたがそれは些細なものにしか使う気にはないようである。彼女は地球上でパソコンというものを使い遊んでみることにした。「このたこ焼きというのは人間には熱すぎる食べ物だが、なぜかクリーミーでとにかく絶妙なうまさがある」そういい、彼女はたこ焼きばかりを毎日ほおばっている。彼女は時間がこの問題にぶち当たることを承知していた。それには、訪問者をここで待つしかないと。大金を積み神社の境内に住まわせてもらっていた。お金とは薄情なものであり、時には人を潤してくれるまるで魔法のような表裏を持ち合わせている。彼女は最近、顔がわからない女性の夢ばかりをみる。リズムが夢に無意識下で影響していることは分かっていた。
わたしは彼女がどこにいるかまるで見当もつかない。ゲーテやアイラを使っても地球のアナログさには頭を抱えていた。「まあ、わたしはもう地球の人間ではないのでいいよね」そういって彼女はプログラムを打ち始め、持っていた人工知能の分身をUSBからネット上にばらまき始めるとものの数分で彼女の痕跡を探し当てた。彼女はネット上にわざと足跡を残していたのだろうか。痕跡が見つかれば後は簡単だ。彼女の周辺のカメラと同期させあらゆる情報がはいってきた。彼女の顔にはフィルターが強固に張られ、そこには女心のプライバシーを感じとることができた。
あの日、起きたとことは人々は俄かには信じがたく、嘘だと思いたい気持ちと現実に起こったことと記憶ですり合わせていた。わたしはいま、彼女たちと暮らしている。そう、松本ゆず、泉里琴、滝川あかり、そして彼女、新川みずき、5人の女だらけの生活はあわただしく過ぎていった。彼女、新川みずきがネット上を介して莫大な資産は十分すぎるほどの5人の生活を支えてくれていた。あかり「まだ、信じられない、あれほど巨大な津波が止まるなんて、みずきがいなかったら地球は滅びていたかもね」ゆず「まったく、冗談できないって」里琴「あれから、みずきのリズムは消えたけど、他のリズムの能力者は普通に健在ときてるし」わたし達はレイムランドで学んだ知識を使い、研究者の道を皆で歩み始めている。わたし達にとって、あのレイムランドでの日々はかけがえのない日々として心に残っている。そんなことを考えて皆で朝のティータイムをしていたら、あの男がまたやってきた。どうやら鈍感なわたしでも気づくぐらい、あの男は地球に住み、わたし達と日々をともにしている。わたしの人生も捨てたもんじゃなかった。あの日の、独りでの経験がいまの充実した毎日の糧になっている。「ちりも積もれば山となった。ただのちり、されどわたしの大切なちりだ」私の名前は谷中千里。ああ、もうこんな時間だ、そろそろ出なくちゃ。
了