第9話: 命の巡りと森の知恵
星降る森での生活に慣れ始めた真央は、次の課題として食の多様化に目を向けるようになった。果物やキノコ、木の実を中心とした食生活が体に優しいことは感じていたが、体力を維持するためにはたんぱく源を確保する必要があることを理解していた。彼は住民たちに教えを乞いながら、森の環境を尊重しつつ肉を得る方法を模索し始めた。
真央の質問に応じて、森の長老であるフクロウが彼に語りかけた。「肉を得ることはただ命を奪うだけではない。それは自然の巡りの中で役割を果たすことでもある。慎重に、そして感謝の心を持つことが大切だ。」その言葉に感銘を受けた真央は、まず狩りの基本を学ぶことから始めることにした。
シエリや住民たちの助けを借りて、真央は森に生息する動物たちの習性を観察し、彼らが森の生態系にどのような影響を与えているのかを理解するための時間を費やした。動物たちは森の循環を支えており、彼らの命をいただくことは慎重かつ必要最小限であるべきだという考え方を学んだ。
狩りを始める準備として、真央は住民たちから弓や矢を教えてもらい、自分で道具を作ることを試みた。倒木や竹を材料にして、森の資源を最大限に活用しながら、自然に優しい狩猟道具を作り上げた。道具作りは慎重な作業であり、完成した弓に矢を番えるとき、真央はその手触りに自分が自然の一部になったかのような感覚を覚えた。
狩りの日が訪れたとき、真央は初めて矢を放つ行為に緊張を覚えた。彼は命をいただくという行為の重さを深く感じ、そのたびに「ごめんなさい」と「ありがとう」という気持ちを言葉に乗せて伝えることを習慣とした。森の動物たちは彼にとってただの食材ではなく、星降る森の循環の中で重要な役割を果たしている存在だった。
最初の狩りで得た食材を調理する際、真央は特別な儀式を行った。森の恵みに感謝し、住民たちと分け合うことで命の巡りを共有する時間を作った。調理にはシエリが教えてくれた技法が活かされ、たんぱく源豊富な食事が完成した。それは単なる食事ではなく、森とのつながりを深めるひとつの形でもあった。
また、真央は余すことなく動物のすべてを活用する工夫を重ねた。肉だけでなく、骨や皮、内臓も資源として利用し、それぞれが森の生活に役立つ道具や材料へと生まれ変わるよう努めた。骨は道具の補強材に、皮は防寒具に加工し、無駄を出さない姿勢を貫いた。
こうして少しずつ生活環境を整えていく中で、真央は自分の生活が森と共存していることを強く実感していた。狩りという行為を通じて得た教訓は、彼に命の大切さを教え、自然の巡りに感謝する心を育てていった。そして、この森で得た知恵が自身の生きる道を形作る一部となることを彼は確信していた。
