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異世界傭兵団の七将軍  作者: Celaeno Nanashi
登場人物紹介(十三話以降)※初めに人物情報を知りたい方向け
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登場人物紹介・西ヒノモトの人々編(十三話以降)

 ヒノモト朝廷

 人間と亜人の犇めき合う混沌とした時代の古代ヒノモトを統一し、地域一帯の名を『ヒノモト』と定めて秩序を齎した人間の政権。

 神にも等しき不老不死の王を中心として、その神の御使いである各氏族達が協力して王を支える政治形態をとる。現在王位に就いている白鳥女王は七十七代目。

 ……というのがヒノモト朝廷の主張する公式見解だが、不老不死である筈の王が七十七回も代替わりしている事から分かる通り実際には度重なる史料の改竄が為されており、朝廷の始まりはおろか、その沿革や調伏した亜人達の記録すらも信用に欠ける誇張・虚偽に満ちた内容ばかりで、彼等自身すら歴史の正確な把握が出来ない状態にあるものと思われる。

 現在は西ヒノモトに『京安』と称する都を置き、建前としてはヒノモト全土を統治している事になっているが、実際のところは亜人の軍事組織『カゲツ傭兵団』に武力で支配された傀儡政権と化してしまっている。


 余談だが、地理としての『ヒノモト』と政治機関としての『ヒノモト』が別々に存在するせいで会話や文章における『ヒノモト』と謂う言葉の扱いはかなりややこしい事になっている。



 白鳥

 ヒノモト朝廷の当代女王。少なくとも二百年以上の時を生き続ける、神にも等しき不老不死の超人。

 常に御簾の向こう側におり、その顔や姿を目にしている者は強引に御簾の中へと押し入ったアミカや彼女と詳細不明の確執があるカゲツ以外には全くおらず、後述の側近を務める暁ですら知るところではない。

 カゲツ傭兵団によって政治の権限を奪われている現状を快く思っておらず、ヒノモト中にカゲツ追討の院宣や助けを求める手紙をばら撒いているが、その度にカゲツにあっさりとばれてしまい彼から暴行や罵倒を受けている。

 そんな事の繰り返しが二百年に渡って続いた為か、現在の彼女はしきりに自分自身を貶しては乾いた笑いを上げる自暴自棄状態になってしまった。

 東ヒノモトからカゲツ傭兵団を追放して自身を救出せんとしている光旭については期待を寄せる一方で、その光旭を騙って本物の光旭を討ち倒そうと企んだ菱川真仲にわざと騙されて兵を貸し彼女達を争い合わせる等、光旭と謂う人物そのものには興味が無くただ自身を救ってくれる力にのみ関心のある様子が伺われる。





 浅葱家あさぎけ

 亜人の武装勢力であるカゲツ傭兵団に乗っ取られてしまったヒノモト朝廷の中で、人間の立場を守り続けている貴族の一門。

 元々は長きに渡ってヒノモト王家に嫁や婿を差し出して摂政職を独占していた御藤家ごとうけの分家で、幾つかあった其れ等の中では最も弱い立場にあったが、本家を含めてその全てがカゲツとの政争で壊滅してしまった為、現在は当主の浅葱束核あさぎつかざねが分家を含めた一族の頂点である御藤長者ごとうちょうじゃも兼任している。



 浅葱暁あさぎあき

 白鳥の実質的な側近を務める女官。浅葱家の三女。

 十二単を着て、緑色の髪を床に届く程長く伸ばした女。貴族然とした服装や髪型ではあるが近寄り難い雰囲気ではなく、特に女王や女官に対しては自身の不興を買わない限りは温厚な態度。

 元々は三姉妹で宮仕えをしていたが、長女と次女が早々に本家である御藤家の有力者へと嫁いだ為に、彼女が全てを押し付けられる形で大内裏に取り残されてしまった。

 上記の経緯がある為かは定かでないが、男や結婚と謂うものに対して並々ならない嫌悪と拒絶を抱いており、他の貴族達へ私情を挟んだ嫌味をぶち撒けては窘められる事も。

 光旭に対しては『女の身でありながら猛き武士共を取り纏め世を救わんとする光明』として少々美化し過ぎた敬愛を抱いているが、女性ならば誰でも好きと謂う訳ではなく、真仲については殿上で己が話をしていたにも拘らず目の前で居眠りをされた事から酷く嫌っている。



 浅葱あさぎ束核つかざね

 ヒノモト朝廷の右大臣を務める老翁。殿上でなくとも常に黒い束帯を着て顔を白く塗っており、更に目つきが鋭く背丈もそこそこ高い事もあって、世の人々の想起する雅やかでおっとりした貴族の雰囲気とはかけ離れた、かなり堅苦しく威圧感のある近寄り難い雰囲気を纏っている。

 現在ヒノモトに残る数少ない人間の貴族一門である浅葱家の当主を務め、更には先述の理由により一族全体の頂点である御藤長者の立場もやむを得ず担う。

 棚ぼた的経緯から現在の立場になっている事は否めないが、元々の御藤家ならびに分家筋が常人離れした政治の才能を誇る高級官僚集団である為、亜人によるヒノモト朝廷への政治的圧力に対抗するには申し分ない実力は備えている。

 その立場が故か生来の性格の為かは定かでないが、初対面の相手を一切信用せず、耳に届く噂話で事前に相手の素性を決めつけてしまう悪癖があり、こうした軽率さのせいで政治的素養を台無しにしている点はヒノモト朝廷に務める貴族達の象徴的な側面とも謂える。





 光本家ひかるほんけ

 都の貴族の一門。その歴史は相当古いと伝わる一方で、祖先はヒノモト王族に通じているらしいと謂う事以外は謎が多く、大内裏へ姿を見せる事も数十年単位で殆ど無い。

 その一方で独自の常軌を逸して厳しい一族の掟が定められている様で、光旭の祖先であったひかる義日よしかは二百年前、この掟を破ったとして一族を破門となり東ヒノモトへと追放された挙句、本家の息の掛かった呪術師に襲われて呪いを掛けられ、実質的な誅殺を下されたと都の人々には伝わっている。

 現在の当主は光導ひかるしるべと謂う名の女性であり相当な高齢と伝わるが、彼女が最後に公へと姿を見せたのは何十年も昔で、当時を知る者も先述の浅葱束核や後述の石菖以外には存在しないものと思われる。



 こう長者ちょうじゃ

 現在の光本家の当主。名前は光導ひかるしるべと伝わるが、彼女自身あまりその名を名乗らないか、呆けて忘れてしまっているのか名を呼ばれても応えない、または自ら何代か前の違う当主の名前を名乗る事もあり、人々は『長者様』と呼ぶ。

 かなりの高齢である為か屋敷からは殆ど出て来ず、たまに屋敷に呼ばれる者があっても白鳥女王の様に御簾で周りを囲った一角から出て来ない為、その姿を見た事のある者はここ数十年屋敷に仕える下女も含めて存在しない。

 カゲツ六鬼将の光アミカは当初は彼女の許へと身を寄せていたが、すぐ長者の手に負えなくなり、そのまま自由を求めて出奔してしまった。





 カゲツ傭兵団

 二百年以上昔から異世界ヒノモトの首都京安を守護する亜人の傭兵団。

 初代頭領は転生者であったと語られるが定かでなく、彼等の記録で正式に記されているのは二代目頭領を担った鬼族の女、桔梗から。

 彼女の時代に転生者の参謀を迎えたカゲツ傭兵団は、先代女王と政略結婚して政治の実権を握ろうと企んだ御藤家のとある貴族を成敗した功績を讃えられ、亜人の集まりでありながら殿上に上がる事を許された。

 その後、若くして病に倒れ夭折した桔梗の子、団の名前を授かったカゲツが跡を継いで引き続き朝廷守護の務めを果たしていたが……。

 いつの頃からか守護と謂うのは建前の話になり、実態としては団内の主要な幹部を朝廷の高官に捩じ込んでヒノモトの政を乗っ取り、人間に対して圧政を敷いている状態にある。

 人間の女王である白鳥が果敢にも何度も反旗を翻しているが、近年は食い詰めた貴族や一発逆転を狙う地方武士以外にまともな味方がおらず、瞬く間に鎮圧されている。



 カゲツ

 亜人達の傭兵団であるカゲツ傭兵団の頭領。二百年の長き時を生きて遂に人間の都を手中に収めた。

 人間をひどく嫌い亜人によるヒノモト支配を進めているが、当の亜人達も恐怖から従っているに過ぎない。

 鬼族の寿命は人間とさして変わらない筈だが彼は二百年以上生きており、更に外見は老翁然としながらも力自慢の鬼族として不足の無い背の高く筋肉質な体躯をしている。

 ほぼ常に鎧を着込んで女王が謀反を焚きつけた貴族や武士を誅殺して回っている為に、ヒノモト朝廷で太政大臣として政務に辣腕を振るう事はあまり無いが、普段着である赤い僧衣を身に纏ったその姿を見て初めて彼が出家の身である事を知る者も少なくない。

 過去に起きた何らかの事件が原因で人間を嫌っているが、決して亜人贔屓と謂う事もなく、盤石な支配体制が長く続き過ぎた結果として組織の下部が腐敗し、獣族や妖精族の幹部が何の罪も無い人間を虐げる様になった事へは心を痛め、彼自ら全国行脚をして目に余る者は制裁して回っている。

 光旭については挙兵に失敗した初めこそ謀反を企てた地方武士程度にしか扱っていなかったが、己の手から逃げおおせた上で東ヒノモトの人類を瞬く間に結束させ、自身が支配下に置く妖精の国、月夜見つくよみを滅ぼした事から考えを改め始める。

 そして彼女が中ヒノモトの盟主、菱川真仲の野心的な言動を前に心を挫かれた折には、その夢枕に立ち再起を促す程に武士としての才覚を認めており、旭であれば己では救えなかったものですらも救えると激励を残した。



 (さわら)

 カゲツの側近を務める魚族の老婆。専ら青い壺装束を着ている。後述の六鬼将は団内では彼女よりも格下。

 何らかの外法によって魚族本来の寿命を遥かに越える時を生き続けており、カゲツの事を『坊ちゃま』と呼ぶ程に長い付き合いだが、カゲツ本人からはその呼び方をやめる様に何度も頼まれている。

 戦場であろうと構わずカゲツの側に仕える肝の据わった女性であるが、宴の場は苦手である様で、何らかの政治的駆け引きが無い限りは姿を見せない。

 


 カゲツ六鬼将

 光旭や菱川真仲をはじめとした人類に反旗を翻された結果、組織が半壊し再編を余儀なくされたカゲツ傭兵団が新たに設けた団内将軍。

 後述の白菊が実力のみを評価基準としてかき集めた結果、ヒノモト朝廷で大臣職を持つ者や団内で実力を認められた猛者、果ては都を脅かしていた盗賊の長まで抱え込んでおり、白菊を中心として結束してはいるものの、白菊を介さない付き合いはほぼ無い。

 全員『石蒜はな散らし』と呼ばれる対転生者用死に戻り能力無効化装備を有している為、転生者ですら不用意な戦闘が出来ない強敵。 


 光アミカ

 カゲツ傭兵団の雇われ将軍。元々は光本家の嫡子だったが弱く愚かな都の人々を見限り、カゲツ傭兵団に身を寄せた。人間でありながら団内将軍の地位に就く程の実力者。

 短い金髪に赤い服が特徴の女。光本家を捨ててカゲツ傭兵団へと属する間の野盗時代も、その後カゲツ傭兵団に入り将軍に選ばれるまで属していた特殊部隊『花童かむろ』の長を任されていた頃も、常に衣服の詳細は違えど真赤な服を好んで着ていた。

 六鬼将となった現在も赤い大鎧に赤い直垂と全身赤ずくめの格好をしている為、野盗時代より彼女を知る者はその特徴的な外見から一目で彼女と認識し、恐怖に震え上がる事となる。

 亜人達から狡猾で冷酷と評されるのがヒノモトの人間であるが、彼女はそんな人間達でさえ常軌を逸していると恐怖するほど残忍かつ邪悪にして嗜虐的。

 気に食わないと感じた相手は躊躇なく殺し、その死体へ悪罵の限りを尽くして嘲笑する。

 武装解除が定められているヒノモト朝廷の殿上であろうと構う事無く刀を持ち込み、丸腰の貴族達を虐殺する。

 彼等の敬愛する女王を相手に怒鳴り散らして恫喝を行う。

 ……等々、その悪行は枚挙に暇がない。

 所持している石蒜散らしは最初に開発された試作品であり、彼女の意見を取り入れた結果、彼岸花を模した形状に開いて魔術光線を放つ変形機構付き拳銃の形をしている。

 この魔術光線は喰らった相手の時を止める効果を持つが、本来は直接命に関わる魔術以外なら完全に無効化できる筈の転生者の時をも止められる。そして時を止められた転生者は致命傷を負い命を落としても即座に再生する死に戻り能力が発動しなくなり、その無防備な状態のまま攻撃されると死亡してしまう事が確認されている。

 

 紅葉

 六鬼将の一角。カゲツ傭兵団の右団長も務める、赤い髪を真っ直ぐに伸ばした褐色肌に緑色の瞳の少女。炎の魔術を用いて戦う事を得意としている。

 普段は黒い束帯に身を包み、戦闘時はその上から赤い鎧を着込む。

 幼い頃から自身の面倒を見てくれていた白菊に憧れ、単なる傭兵団員ではなく武士になる事を志す様になった。

 彼の後を追って自身も傭兵団員と宮仕えを兼任し始め、今やカゲツ傭兵団では武断派を取り纏める右団長、朝廷でも軍事を取り仕切る将軍の立場にある。

 常に武士たらんと落ち着いた雰囲気で古風な敬語を話す様にしているが、鬼族は一蓮托生の意識が強く上下関係の概念が薄い為に、人間の礼儀作法に慣れていない慇懃無礼な印象を与える歪なそれになってしまっており、彼女自身その儘ならなさを『武士の真似事』と自嘲している。

 白菊からは何故か『清四郎』と呼ばれ弟として扱われているが、彼女はその事にもどかしさと暗鬱を覚えている。

 所持している石蒜散らしは真黒な刀の形状をしている。


 芍薬

 六鬼将の一角を担う男。紫と黒と白で構成された十二単を着て顔の下半分を黒布で隠している、腰まで伸ばした長い黒髪に紫の瞳をした軽薄な言動の青年。

 直情的な性格の傾向があるからか魔術や呪術に疎い者が多い鬼の生まれでありながら、それらに対して長けた者の多い妖精族の水準すら軽く越えた魔術を研究・行使する。

 ここ最近興味の対象としているのは『屍操術しそうじゅつ』と呼ばれる死体を操る呪術で、後述の白菊よりも年上でありながら異常に若々しい外見をしている事から、近年人目に付く所へ現れる彼は本物ではなく同族の死体を練り上げて作った肉人形なのではないかと囁かれている。

 白菊からは『清次の兄上』と呼ばれ慕われている。


 牡丹

 六鬼将の一角を任されている女。水色地に牡丹の花柄の狩衣を着て、藍色の髪を横で一つに結った黄色い瞳の鬼族の女性。

 武勇だけでなく見目の麗しさも評判で、更に人当たりの良さから鬼でありながら京安の民からも好かれている。

 白菊を介さない付き合いが少ない六鬼将の中では珍しく、紅葉との個人的親交の方が白菊との付き合いよりも長く、彼女が六鬼将に任じられたのは紅葉の推薦が理由でもある。

 『嘘が苦手』と謂う亜人の特性が強く出た性格をしているために自身の感情に対して素直過ぎる言動をしてしまう悪癖があり、常に笑顔に囲まれてはいるがその少し外側では彼女の自覚出来ていない憎悪が渦巻いている……。

 白菊からは『清五郎』と呼ばれているが紅葉と違ってあまり気にしていない。


 (れん)

 六鬼将の一角。黒い束帯を着た金の髪に碧い瞳をして頭頂部の左右から角が生えている見目麗しい鬼族の青年だが『意味の無い事』や『非合理的なもの』に対しては苛烈なまでに否定的で、常に頭の中は『戦いで自身の力を示す』事への考えしか無い。

 白菊からは『教経』と呼ばれているが、名前に対する拘りはそれほど無いのか幾ら呼び間違えられても怒らない。


 白菊

 六鬼将の一角にしてカゲツ傭兵団左団長。黒い束帯に身を包み、後ろで一つに結った藍色の傷んだ髪、黄色い瞳、色白、瘦せこけた頬、長身といった外見をした、額の左右から角の生えている鬼族の男。

 一見すると折れそうな程に細い印象を抱かせる儚い姿をしているが、戦の折には彼が『石蒜散具足はなちらしぐそく』と名付けた、転生者がまともに立っていられなくなる程の精神攻撃を与える全身真黒な鎧を纏い、恐らくヒノモトの如何なる者でさえ太刀打ちできない程の圧倒的な魔力・腕力を振るう。

 ヒノモト朝廷では左大臣の官位を持ち、これは太政大臣を務めるカゲツの次に高位の役職となるが、カゲツ自ら各地の謀反を鎮圧しに行く事が多い為、ヒノモト朝廷への政治的圧力を加える役目は専ら彼が担っている。

 光旭の事を『異の世の頼朝殿』と謂う妙な呼び方をしたり、光トキヤに対しても彼から何度訂正されようと『北条殿』『北条義時』と呼び間違える。家族の様に溺愛している六鬼将の面々とカゲツに対しても同様に、何故か度々不思議な名前や『兄上』『父上』と呼び間違え、まともに名前で呼べているのはアミカぐらいのもの。





 検非違使

 検非違使庁を拠点としている京安の都の治安維持機構。元々は衛府や京職が律令の複雑化によってまともな警察的機能を果たせなくなっていた為に生まれた組織だったが、それら全てをひっくるめて人間贔屓の沙汰をいつまでも止めなかった事に業を煮やしたカゲツによって組織再編・一大改革を行われた経緯を持つ。

 この為、亜人と人間の垣根を無視した徹底的な実力主義の組織となっており、組織を統べる検非違使別当も人間と亜人が入り混じった混沌とした人選が脈々と続いている。

 また、建前上はカゲツ傭兵団の孤児教育機関兼スパイ組織として設立された花童かむろを半ば吸収しており、花童の中で著しく秀でた者は朝廷ではなく検非違使へと務める事が多い。

 現在の検非違使別当は石菖せきしょうと謂う名の鬼族の老婆が務めているが、彼女はカゲツ傭兵団に属しておらず、組織が朝廷や寺社とも敢えて必要以上の繋がりを持たない様にも努めている為、実質的な独自勢力となっている。



 石菖せきしょう

 検非違使の役人を率いる検非違使別当を務める鬼族の老婆。

 身の丈は十尺近い異常な長身で、赤い束帯を着て、肩口まで伸ばしっ放しにした藍色の癖毛の間から額に生えた二本の角を覗かせ、ぎょろ目の強面、と謂う役目に対して微塵の不足も無い姿をしている。

 鬼族にしても高過ぎる背丈や、妖精との混血の鬼族でもなかなか習得が難しい陰陽術を易々と行使出来る高い呪術適性、そして当然ながら刀捌きも戦闘能力も圧倒的で未だ現役で都を自ら見回り罪人を締め上げている事から、その素性については様々な噂が語られる。

 然し石菖自身が語るのは『道端で飢え死にしかけていたところをカゲツ入道に花童として拾われ、程々に務めていたら検非違使になり、また程々に務めていたら別当になっていた』と謂う雑な話だけで、だがそれ故に都の孤児や花童の少年少女、検非違使の役人達は『己もいずれは別当に』と夢を抱いて日々を生きている。

 得意な呪術は五行を限界まで濃くして膿ませた液体を生成し、敵を溶かし殺す『毒術』とでも謂うべき独自開発の術。

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