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異世界傭兵団の七将軍  作者: Celaeno Nanashi
閑話その一【草燃えぬ】
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閑話その一【草燃えぬ】3

 空の目に痛い青色が和らいできた頃。

 「う……あ、僕……じゃねえ、俺だ俺……」

 トキヤは御所の一角、埃を被った家具だらけの部屋で目を覚ました。

 「あいつ等、散々人をコケにし倒しやがって……何が『お姉ちゃん』だ、そんなに歳変わらねえだろ」

 起き上がろうとしたトキヤだったが、

 「……今日は女難の日だな」

 今度は緋色の直垂を着た少女が自身に重なる様に跨って居眠りしていた。

 「ニャライ……おいニャライ?」

 軽く身体をゆすってみると、

 「うーん……お兄ちゃん……私はお兄ちゃんにしよっかなー……」

 わざとらしい寝言が返ってきた。

 「……別れた時に言ったのそっちじゃん。お互いの立場あるから、こういう事は気軽にやっちゃダメだって」

 「ジョンヒとヤりまくってるの見てたら考え変わるんだけど、流石に」

 「アレは、アイツが無理矢理……」

 「私がトキヤの事嫌になったのそういうとこも理由なんだけどなー」

 「手を出してもダメ、手を出さなくてもダメ、じゃあどうしろっていうんだよ」

 「さあねー。そういえばさ、覚えてる? 別れた後に当てつけでシャウカットと一瞬付き合ってた時、トキヤ凄い顔してたよね」

 「それは……くそっ!」

 「きゃーっ」

 トキヤに押し倒されたニャライは、

 「やめろー、けだものー、人間のクズー」

 何処か楽しそうに笑いながらトキヤを罵る。

 「アイツはどうして、何も考えずにお前と……! 俺はずっと、真面目に我慢してたってのに!」

 「何でだろうねー。まるで『転生者はデキない』ってぐらいな感じだったもんねー」

 「ニャライ……俺はどうすればいいんだよ」

 「流石に自分で考えてよ。でも今のトキヤは旭さんのものっていうのは念頭に置こうね」

 「そんな事、言われたら……もう、何も出来ないよ……」

 困り果てたトキヤの頬を、ニャライは不意に撫でながら眩しげに目を細めた。

 「そういう事するだけの関係なら、別にヤる事ヤったって悪くないんじゃない?」

 「……でも、俺は忘れないから」

 「ダメー。忘れてくださーい。でないと私が旭さんにシバかれちゃうから」

 「ニャライ……今も、愛してる」

 「ベタなセリフだなあー。ジョンヒが主導権渡したがらないのも納得」

 ボロクソに文句を重ねながらも、ニャライはトキヤの頭を引き寄せて、舌を絡め合い、唾液を啜り合う。

 「ん……っ、ねえ、やっぱりちょっと待って? 着替えたい」

 が。

 「え……折角良い雰囲気だったのに」

 「ヤダー。私は良い雰囲気じゃないの」

 突然トキヤを押し退けると「おい……何、してるんだ?」「確かこの辺に……あったあった」部屋の押し入れから上だけのセーラー服とスクール水着を出してきた。

 「何勝手に俺の部屋に物置いてんだよ」

 「いやだって、トキヤここ全然使ってないじゃん。だからジョンヒもペイジもシャウカットも、自分の屋敷に置けない私物置いてるよー」

 「……参考までに何置いてるか訊いて良いか?」

 「世間一般で大人のパーティーグッズって呼ばれてるモノ」

 「バレたら俺がヤバい奴になるじゃん……」

 「ま、バレないだろうし大丈夫大丈夫。それより、コレ着て私はトキヤの事『センパイ』って呼ぶから。良い?」

 「そうだった……ニャライってそういうの好きだったよな……」

 ニャライの生着替えを何も有難がる様子も無く視界に収めつつトキヤは、改めて着替え終わった彼女を押し倒す。

 「きゃー、やめろー、けだものー、人間のクズー」

 「それ毎回言いたいの?」

 「だって雰囲気大事なんでしょー?」

 「まあ……うん……うん……?」

 「ほらっ、ぼさっとしてないで脱がせて? センパイなんでしょ?」

 「着たり脱いだり忙しいな……」「何か言った?」「いや、何も。じゃあ、始めるから……」

 要領を得ないまま、理解が追いつかないまま、ニャライに言われるがまま、トキヤは彼女が自分で着たセラスクのセーラー服部分を脱がせ……、

 「なあ、脱がないと汚れるけどさ……」

 「ふふ……っ、いいよー?」

 ずに、そのままするすると両手を水着の内側に潜り込ませた。

 「ねえ、手つきがキモい」

 「そ、そうかな……今朝とかシャウカットはこんな感じでしたら良さそうだったけど……」

 「ハ? 遂に元の世界の女に飢え過ぎて男に手出したの?」

 「ごめん、語弊があった。イタズラで女に化けたシャウカットとヤった時の話で……」

 「っていうかそもそもこういう事ヤってる時に他の奴とシた時の話するの最低だと思わないの?」

 「いや……で、でもキモくないって思って欲しくて……」

 「どう取り繕ってもこれ以上印象良くならないから黙って大人しく言う事聞くぐらいしようね」

 「うぅ……ごめん、ニャライ」

 「もういいから。ご自慢のテクで私を満足させて下さーい」

 「分かった、俺、頑張るから……!」

 「何それ。少年マンガのノリ? まあいいけど……」

 そんな風情もへったくれもない会話を交わしながらも、互いに熱い吐息を漏らしながら、トキヤはニャライの胸をまさぐり、ニャライはトキヤの背中に手を回して、2人は漸く雪融けの時を迎えるに至った。

 「なあ、ニャライ……もう、後戻りは出来ないからな」

 「いきなり何の話?」

 「察し悪いな……デキたら俺の愛人だからって話だよ」

 「センパイさあ、1回ヤったぐらいでそんなに簡単にデキないって学校とかで習わなかったの?」

 「だったらデキるまでシていいか?」

 「下半身で会話デッキ組むのやめてくださーい。私がそんなに体力保たないから1回で許してくれない?」

 「それならこの1回で確実に仕留めてやる……!」

 「カッコつけて最低な宣言しなくていいから」

 緩急の無い会話。

 どこからどこまでが真面目でふざけているのかも分からないやり取り。

 それでも既に2人は互いに渇きを満たし合っていて、少なくともニャライは心を幸福感で満たされて、徐々に余裕が無くなり始めている様子だった。

 「ね、ねえ、ひょっとして、旭さんとも……こういう、ヘッタクソな感じなの?」

 「いや、ど、どうしてだろう、ニャライが相手だと、上手く出来ない……」

 「緊張してる、のー?」

 「するだろ、だって、ずっと好きだったから……」

 「その、割には……そういう言葉が詰まらずに、スッと出てくるんだから、トキヤ……じゃなかった、センパイって面白いんだよねー」

 何の気無しにトキヤを揶揄うような事を言ったニャライだったが、

 「なあ、あのさ……俺だとやっぱり、全然感じないのか?」

 不意にトキヤは余裕が無い様子で訊ねる。

 「急にどうしたの?」

 「だって、さっきからずっと、俺ばっかり……」

 自身の上に圧し掛かっておきながら弱気な事を言う目の前の青年に、ニャライは只管嗜虐心をそそられてしまう。

 「(ホントはもう限界だけど平気なフリしてるだけって言ったら調子に乗るから黙ってよ……)えー、もうなのー? 流石に早すぎない?」

 「みんな上手いっていうか、やっぱり俺、ダメ、なのかな……呪いが無いと、まともに出来ないのかな……」

 詰れば詰る程に美味しい言葉を返して、辛く苦しそうな顔を見せる彼の言動。

 「まあ能力値はシャウカットよりダメかもね」

 「他の男の名前出すのやめろよ……!」

 貶せば貶す程に動物的な欲望を露わにして貪ろうとする彼の言動。

 そのすべての言動が、ニャライから社会性を、建前を、良識を脱ぎ去らせてゆく……。

 「今更嫉妬してるのー?」

 だが、

 「……するだろ。アイツ、俺より年下なのに、背も高いし、人伝に聞いた話だけど……大きいんだろ?」

 流石に言葉責めが過ぎた。

 そう感じたニャライは、

 「男ってする時の二言目にはソレだよねー。正直、私はそこまで拘り無いんだけど。っていうか、大き過ぎると疲れるんだよね。だから私は、ずっとセン……ううん、トキヤとしたかったの」

 「……信じていいんだよな?」

 「男だって胸がデカ過ぎると興奮しないんでしょ? さ、文句ばっか言ってないで、頑張って続けて?」

 とりあえず取り繕っておいて、トキヤの背中に腕を回した。

 「う……うぅっ、ニャライ、締め過ぎ」

 「私全然力入れてないよー?」

 「えっ、そうなんだ……」

 「今思った事言い当ててあげよっか? ジョンヒ、ガバ……」

 「やめとこうな、ニャライ。俺……違った、センパイが悪かったから」

 冗談交じりに『センパイ』を自称したトキヤだったが、

 「えへ、えへへへ……じゃあ、センパイと私は、相性抜群ってコトで」

 ニャライは思いの他、顔を赤らめながら幸せそうな様子を見せる。

 「なあ、俺嬉しいよ。やっとニャライと、分かり合えた、そんな気が、するんだ」

 「うん……っ、うん……! 私も、嬉しい……! センパイ、センパイ……っ!」

 「いつも俺の事、助けてくれてありがとうな。だから、今日はセンパイに、思いっきり、甘えて、くれ……っ!」

 「センパイ、すきっ、センパイ、センパイ……っ!」

 その瞬間だけは、2人の心はひとつになった。

 ……と、信じていたのはトキヤだけで。

 「……好き、だった(……のかな。旭さんが来てから、分からなくなっちゃったよ」

 




 湿った薄布の中に潜らせた両手は、相手の汗で塗れているのか、自分の手汗で塗れているのか……最早トキヤには分からない状態になっていた。

 「ねえ、やっぱりトキヤってこういうピチピチのヒカリモノが好きだよね? 最初直垂着てた時こんなじゃなかったし」

 汗で光沢を帯びたスクール水着をわざとらしく夕陽に当てながら、ニャライは自身の内で尚も欲望を為そうとするトキヤの劣情を煽る。

 「ニャライだからだよ。誰でも嬉しい訳じゃない」

 「信じないからね」

 「で、でも俺自身はそういうつもりでいるから……」

 「じゃあ試してみよっか」「ハ?」

 言うや否や、トキヤからあっさり離れたニャライは部屋の端の畳を跳ね上げて、またガサゴソと物を探し始めると……。

 「じゃじゃーん、コレ、私のお気に入りなの」

 赤白帽子、『いしはら』と書かれたワッペン付きのシャツ、そして膝上丈のズボン……それは、見紛う事無く体操服だった。

 その姿を見るや否や……トキヤは無言で近寄ると、

 「えっ、ちょっと、何……」

 シャツの裾を臍上できつめに縛って胸を強調させると、ニャライが開けた畳下からW字の紐にしか見えない何かを取り出した。

 「下、こっちに着替えてくれないかな」

 「あー、それパンツだったんだ。履いたら丸出し過ぎたから何なのか全然分からなかったんだよねー」




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