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異世界傭兵団の七将軍  作者: Celaeno Nanashi
閑話その一【草燃えぬ】
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閑話その一【草燃えぬ】1

 その日のトキヤもいつも通り旭と円と真仲との激しい夜を過ごした後、いつの間にかいなくなる円を除いた3人で川の字になって熟睡して朝を迎えた。

 珍しく自身が起きても目を覚さない旭が、静かに幸せそうな顔で寝息を立てるその頬を愛おしげに一撫でして、部屋を出た彼の前に、

 「……旭ならまだ寝てるぞ」

 「あっそ。んじゃ馬に蹴られて死にそうな奴と世間話でもするかな」

 藍色の直垂を着た背の高い少年が立っていた。

 「まさか倉庫の米を数えるのが趣味だった田舎傭兵団の名ばかり参謀が、彼氏持ちの領主を寝取った上でそいつ自身の手で自分の領地を滅ぼさせるなんてな。こんなえげつねえ所業、ウチの兄さんでもやらねえよ。お前人の形したバケモンだろ」

 「そういう話を真仲に聞こえそうな所でしないでくれ。……俺の部屋まで来てくれるか?」

 「えぇー? あのホコリだらけでロクに掃除してない部屋に人通すのかよぉー」

 「頼むよ……俺を1人にしないでくれ」

 「どっちが年上か分かったもんじゃねえな」

 「そんなの年取らねえ俺達に関係無えだろ」

 上手く旭達からシャウカットを遠ざけられた事に胸を撫で下ろしながら、トキヤは彼を連れて廊下を歩き始める。

 「正直、もう旭達意外誰も俺とはまともに話してくれないんじゃないかと思ってたよ」

 「世間体考えたらその方が良いんだろうな。でも俺は世間の奴等と同じつまんねえ思考回路はしてねえの。お前がどんどん悪の道を突っ走っていくのがむしろ面白くてさ」

 「お前を引きずり込むかもしれないぞ」

 「安心しろ。俺は悪どい事をしても悪人にならねえよう立ち回っから」

 「俺はそうもいかない。旭が言ってたよ、自分の為に全てを敵に回して死んでくれってな」

 「ホンモノのバケモンはあっちだな……あんなヤバい奴の言う事なんて半分聞き流しときゃいいんだよ」

 「みんなそう言って旭とテキトーな付き合い方しかしないから、旭は誰も信じれないって嘆くんだよ。どうしてそんな酷い事言うんだ?」

 「バケモン同士お似合いだわ、お前等。ところでさ……毎晩2人も相手すんの大変そうだな。片方譲ってくれたら面倒見てやるけど?」

 「この先の事を考えるなら、真仲はお前に任せるしかないのかな、とは思ってる」

 「いやそっちは俺も要らねえよ。旭さんが欲しいの、旭さん」

 「お前な……そんな言い方をする奴には旭は当然、真仲も任せられない。俺だって別に真仲を手放したい訳じゃないから」

 「お前ばっかり好い女独り占めしてずるいんだよ」

 「お前の場合モテたいんじゃなくて逆玉狙いだろ? でなきゃ真仲を断る理由無いし」

 「ふーん……お前ってああいう女がタイプなんだ」

 「逆にお前は興味無いのかよ。あんなに背が高くて、スタイルも良くて……」

 「俺カワイイ系の子が好きなんだよねー。旭さんみたいな感じのさ」

 「それ旭に言ってみろ、足踏まれるぞ」

 「まあ現実問題、口の中に唐辛子塗り込んでキスしてくるようなイカれ女って知った時は、俺も自分の気持ちを考え直したくなったけどな」

 「……ああ。そんな話もあったな(でもその後キスした俺は辛いどころか甘く感じたんだよな。アレも旭の不思議な力の効果なのかな……)」

 歩く2人の足は、あまり手入れのされていない障子の閉じられている廊下の端で止まった。

 ガタガタと立て付けの悪い音をさせながら障子を横に開けて、

 「さ、入ってくれ」

 そう言いながらトキヤは自身も部屋の中へと足を進める。

 「お前な……せめて掃除しろよ、ガチで」

 「片付いてはいるだろ」

 「いや埃掃けっつってんの」

 「なかなか忙しくて部屋に戻る暇が無くてな」

 「自分で掃除出来ねえなら誰かに頼めよ」

 「御所に務める家人や下女達をそんな雑用で消耗させるのは非合理的だと俺は考えてる」

 「だぁー! っもう! 話になんなえなあ! 分かったよ! 俺と一緒に掃除しよう! な! それならいいだろ!?」

 トキヤは、いつまでも部屋に入らず文句を言い続けるシャウカットの様子から『部屋が汚くて足を踏み入れたくない』のだという事に漸く思い至った。

 「……分かった。他にやる事もないからな。ありがとう、シャウカット」

 「有り得ねえんだよ! ったく……何で俺がお前なんかの部屋掃除手伝わなきゃいけないんだよ……!」

 その後、部屋が綺麗になるまでシャウカットはトキヤを罵り続けながら掃除を続け、トキヤもまた只管平謝りをし続けながら掃除をし続けた。





 トキヤとシャウカット。

 自分達の手でそれなりに綺麗にした部屋の中で、2人はぼんやりとお互い向き合って座りながら、シャウカットの持って来た異様に甘い砂糖漬け菓子を黙々と食べていた。

 「……なあ、トキヤ」

 「どうした?」

 シャウカットは、何か思うところがあるのか、じっとトキヤの目を覗き込んで……、

 「いや、ごめん何でもない。これ甘いだろ?」

 「その話これで5回目だぞ。何考えてるのか教えてくれよ」

 やっぱりやめて……を、トキヤの苦言通り5回も繰り返していた。

 「何なんだよ。毒でも仕込んでんのか?」

 「いや、俺達死に戻りあるんだからそんな意味無え事しねえよ」

 「言い辛い相談なら多少ぼかしてくれても聞くから、あんまり俺に遠慮しないでくれよ」

 トキヤの無邪気な微笑を前に、シャウカットは唯々黙して俯き……そして再び顔を上げた。

 「例えばさ……例えばの話な? お前は、ガキを孕めねえ女の事は、好きにならないのか?」

 「ハ? いきなり何の話だ?」

 「い、いや何でもない! 気にすんな……気にしないでくれ」

 冷や汗をかいて苦笑いを向けるシャウカットの様子に首を傾げつつ、トキヤはシャウカットの問い掛けをバカ真面目に受け止めて答え始めた。

 「……本気で好きな相手なら、そんなの関係無いと思う。仮に運悪くこのまま旭との間に子供が出来なくても、俺達ならこの国の後継者に相応しい人材をきっと見つけられるって、そう思ってるから」

 「そうじゃねえよ……」

 「そうじゃないって何だよ」

 トキヤの問いに、シャウカットは何も返さなかった。

 「実はさ……トキヤに興味があるって人が来てて。ちょっと、そこにいといてくれるか?」

 「え……? ま、まあ、分かった」

 シャウカットの突然の意味不明な問い掛けにとりあえず返事をして、部屋から出ていった彼の背中を見送ったトキヤだったが、

 「……いや待て、興味って何だ?」

 思わず自問自答したその問いに、

 「初めまして、トキヤ……さん」

 入れ替わりで入って来た、藍色の直垂を着た女が応えた。

 「お前それはどういうイタズラのつもりだ? シャウカット」

 「何で一瞬で見破るんだよ!」

 女の正体は、変身の魔術を使ったシャウカットだった。

 「前にも似たような事があったから。どうせ正義としょうもない賭け事でもやって、罰ゲームで女に変身して俺を騙しに行くよう言われたんだろ」

 「あー、えーっと……ま、まあそんなとこだよ。まさか一瞬で見破られるとは思わなかったけどな」

 「アレ? でも……シャウカットは転生者なのに、何で変身の魔術が効いてるんだ?」

 「そういうとこは頭が回るんだな……俺もよく分かんねーけど、正義もよく分かってなかったんだよな。ま、そんなんどうでもよくてさ」

 少しばかり残念そうな様子を見せたシャウカットは足下を払うと、部屋の真ん中、グラブジャムンを積み上げた皿を挟んで反対側……ではなく、

 「おい……っ、何のつもりだ」

 トキヤの胡座の中へとすっぽり収まるように、彼に背中を預けて座る。

 「少し……い、イタズラ、したくなったんだよ。俺が、その、女の姿になって、お前を誘ってさ……そしたら……どうするのかなって」

 トキヤは……そんな問い掛けで自分を揶揄ってきたシャウカットを、

 「なるほど? だから俺に、ヤってもデキねえ女とヤる気になるか聞いて来たんだな?」

 「な、何だよ、ホントに今日はやけに察しが良いな……」

 後悔させてやりたい。

 「だったら、俺からも質問だ……その魔術、変身してる間に妊娠しちまったら男に戻れなくなるんだけど、お前それ知っててこんな事してるのか?」

 「……ハ?」

 そんな風に魔が差したことを考えてしまって、有りもしない作り話で揶揄い返してみた。

 「えっ、ちょっ、ちょっと待て! 円……じゃない、正義はそんなコト言ってなかったぞ!」

 「アイツは訊かれた事以外答えないからな。ってか、正体がお前って分かったら俺は気持ち悪がって逃げるとでも思ってたのか?」

 突然後ろから抱き締められて、明らかに焦り散らかして顔を赤らめ、口で息をしているシャウカットの耳元に、

 「これでやっと……お前に俺の子を産ませられるのに?」

 トキヤは面白がって、わざとらしくねっとりと囁く。

 「う、産む……!? いや、俺もお前も転生者だから、子供は……い、いや何でもない、っていうかさ、流石にそれはダメだろ。だって真仲さんならまだしも俺がいきなり側室になりますってのは旭さんドン引きすると思うんだよな。だから、コレ」

 混乱しながらも妙な冷静さを保ったままのシャウカットは、直垂の袖からヒノモトには存在しない筈の小さな個包装の何かが連なった銀色の小さな袋のようなモノを取り出した。

 「コレ……着けてみて欲しいな。それともやっぱり、お前はナマじゃないとやる気になんねーの……?」

 そう言いながら、徐に袋を口に咥えて見せたシャウカットを前にして……、

 「お前、冗談でもそういう事したの、後悔させてやるからな」

 トキヤ自身も、よく分からない衝動を覚え始めた。

 「と、トキヤ、使い方分かるよな? 1回出したら付け替えろよ? 分からなかったら俺がやってやるから……」

 「いや、まあ知識はあるから……でも残念だな。お前のココで、俺のを全部受け止めさせて……」

 「うひゃあぁっ!? い、いきなり触るなあぁっ!」

 シャウカットの下腹部に手を這わせて、

 「旭も真仲も顔負けのデカさしたココの先っぽから出るのは、どんな味だったのか、知りたかったのに……」

 「うぅ……っ、手つきがキショいって……!」

 そのまま脇腹を指でなぞりつつ、辿り着いた先のモノを根元から掴んで、先端まで手を滑らせる。

 「なあ、お前も気にならないか? 自分の味がどんなのか……いつも甘いモンばっか食ってるから、やっぱり甘ったるいのかな」

 「お前の前ではそうなだけで……っ、カレーとか、普通に食ってるよぉ……っ!」

 「カレーか……この世界でスパイス揃えるの大変じゃないか?」

 「兄さんがかなり頑張ったんだよ……っていうか、そんなのどうでもよくて!」

 くるりと身体の向きを変えて、トキヤと向かい合って密着したシャウカットは、

 「ダメだって言ってんだろ!? お前だって旭さん泣かせるような事はしたくねえだろ!」

 トキヤに詰め寄って顔を近付けるも、

 「だったら……コレ、使いきったら、仕方ないよな?」

 「そういう漫画の読み過ぎだろ……普通の人間はこんな量……」

 「仕方ないよな?」

 「いやだから、お前本気で……」

 「仕方ないよな?」

 「……俺、もう旭さんに顔向け出来ねえよ」

 「お前は悪くないから。素直に俺を受け入れてくれればいい」

 長いくせ毛の黒髪に指櫛を通されて、頬を撫でられて、すっかり顔を蕩けさせてしまった。

 「……すぐに使いきるから、その後は俺の子を産んでもらうぞ」

 「それキショいから本気でやめろって……ヤったら100%デキるワケじゃねーんだからさ……」

 「男に戻れなくなるのはやっぱり怖いか?」

 「いや、別に最悪戻れなくても……俺は……俺は……」

 俯いて、息を荒げ続けるシャウカット。

 その冷たくも熱い吐息が、汗ばみ始めた肌が、恐怖か期待か分からない感情に震える、肩に置かれた手が、

 「時間切れな」

 「ひゅっ!?」

 トキヤの理性を破壊した。

 「あ……っ! あぁ……っ!」

 「何だ? 俺の女になれて、そんなに嬉しいのか?」

 「わ、分からない、分かんないよ……っトキヤぁ……!」

 「痛くないか? 耐えられないなら、一旦……」

 「お、お前の粗末なモンで、痛くはならないけどさ……」

 「ハ?」

 しどろもどろのシャウカットの何気ない一言が、トキヤの逆鱗に触れた。

 「でも……やっと女の身体になれて、やっとトキヤと、一つにいぃっ!? ひぎいいいぃっ!」

 「お、ココで結構感じるんだな。やっぱり元々男だからかな?」

 「あうぅっ! ぐうぅ……っ! やめっ! 意識ぃっ! トぶ……っ!」

 「俺の粗末なモンじゃ感じねえんだろ? だったら、他で満足させてやるしか無えだろうがよ」

 転生者に呪いは効かない。

 かといって、ではトキヤは転生者が相手だと手も足も出ない訳ではない。

 彼が身体を重ねた相手を屈服させ、依存させる『色病みの呪い』を与えた呪術師である光円は、呪いがより説得力を持って相手に効くよう、トキヤに夜の営みの手解きを絶えず行っている。

 既にトキヤは、ソレを生業にする者と同じ程度には上手くなっていた。

 「このっ! やめろ……っ! んぎいいいぃっ!」

 「痛っ! おい、暴れんなって!」

 「やだやだやだやだっ! 嫌だっ! 俺が、お前より下なんて! お前なんかに負けるのなんて嫌だあぁっ!」

 「諦めろ! 女に化けたのか運の尽きだ! 大人しく、俺の女になれっ……!」

 「嫌だあああああぁ……!」

 終始嫌がっていたシャウカットだったが、最後にはトキヤと固く手を握り合って、身体を痙攣させていた。

 「う……っ、あ、熱い……っ、一枚挟んでんのに、腹ん中っていうか、何ていうか……ここが、ずっとジンジンする……」

 「本当は欲しがってるのに貰えなかったから、身体が疼いてんのかもな」

 「一々気持ち悪いんだよ……そういうのガチでやめろって」

 悪態をつき続けるシャウカットだったが、トキヤと一つになった事への悦びで身体は震え、顔を赤らめていた。

 「さて、これで1回目だ。ほらよ」

 雑に出口を結ばれたソレを太腿の上に置かれたシャウカットは、

 「えっ……? 今それくれてやっただけで、お前……」

 身体を痙攣させて視線を明後日の方向へ浮かせていた。

 「んん……っ、これが、トキヤの……熱い……熱くって……蕩けてて……」

 口に含んで、愛おしげに中に入った粘液を袋越しに舐り、舌の上で転がし……また身体を軽く跳ねさせたシャウカットは、

 「もっと……もっとコレ、欲しい……」

 熱に浮かされた表情のまま、次の分の袋を開けて口で咥えると、トキヤの股に顔を埋めた。

 「……いやいいよ、変に気使うなって。自分で着けるから」

 「なあ、このままいいだろ? 2回目」

 「別にいいけど……」

 2人は指を絡め合いながら、異様な倒錯に耽り合い始めた……。





 それから数時間経って、昼前。

 「シャウカット、子供の名前、何が良い……? 俺達の子供だけど、お前に名前を決めて欲しいな」

 トキヤに後ろから抱かれて、耳元に囁かれているシャウカットは、最早言葉が届いている様子ではなかった。

 腰に、太腿に、胸に、そして首周りにも大量の粘液入りの小袋を括り付けられて、言葉にならない悦びの嘶きを上げながら、シャウカットは瞳を宙に向け、満足そうに口角の上がった口から涎を垂れ流し、トキヤの上で踊る様に跳ねさせられていた。

 「シャウカット」

 「ん゛お゛ぉ゛っ!? お゛ひっ……と、トキ、ヤ……」

 胸の先を思いきり抓られて、シャウカットはやっと正気に戻った様子となった。

 「さっきも言ったけど、もう使いきっちまったから今、ナマでやってる。お前が嫌だって言うならチランジーヴィさんの手前もあるし、やめとこうと思うけど……」

 トキヤは甘く、痛みの走らない程度に、シャウカットの耳を齧る様に歯を添わせつつ、話を続ける。

 「お前はどうしたい? このまま元の俺達の関係に戻るか? それとも……お前もその目で見たように、昼夜問わず脳が焼き切れる程の快楽を流し込まれる生活をずっと続けて、俺と愛し合う事以外何も考えられなくなって、挙句俺の子を身籠って産むような……そんな俺の愛人になるか。選ばせてやるよ」

 トキヤの意地悪で互いに答えの分かりきった問い掛けに、それでもシャウカットは素直に負けを認める言葉を口にする事は出来なかった。

 唯々、トキヤと絡め合った指に力を入れてその手を握り締め、辛そうに赤面した顔を俯けて涙を流しながら首を横に振った。

 「……元の関係に戻るのは嫌、って意味でいいんだな?」

 「えっ、ち、違……」

 シャウカットが反射的に言葉を発そうとしたが、

 「ふぎいいぃっ……!?」

 「ごめん、我慢出来なかった……お前が可愛過ぎるのが悪いんだよ」

 トキヤが一足早かった。

 「さてと、チランジーヴィさんに報告に行かないとな? この執権、光トキヤがシャウカット・オオニタを嫁に貰うって……」

 シャウカットを抱きながら、調子よく彼……もとい彼女を尚も軽快に言葉で責めるトキヤに、

 「落ち着いて下さいませ、義兄上」

 「うおあぁっ!? 円!?」

 部屋に押し入ってきた尼僧、光円が水を差した。

 「来るの遅えよ……もう俺トキヤのせいでグッチャグチャなんだけど……」

 泣きついてきたシャウカットに、

 「はいはい……とりあえず罹ってしまっている色病みの呪いは、あなた様ご自身に効かないとはいえ放っておきたくないので解いておきますね」

 「あー……いや、それはそのままでも大丈夫です。俺、身持ち固いから!」

 「悪用する気しか無い人にそのまま持ち出されたくないので解きます。せいっ!」

 「そんなぁー」

 円は冷静な対応を下すと、トキヤに向き直って、

 「義兄上? この前自分で呪いを解除する方法を教えましたよね? きちんとこういう時には使っていただかないと」

 「ご、ごめん円……」

 トキヤに軽く説教した。

 「さて、シャウカット様。この度は開発中の幻術の技術実験にお付き合いいただきありがとう御座いました。せいっ」

 「あぁ……戻っちまうのか……」

 更にシャウカットの額へデコピンして、彼を元の姿に戻した。

 「技術実験……だったんだ……」

 「義兄上を騙すような事をしてしまい申し訳ありません。ですが、これでまた色々と研究が進みそうです」

 「ま、まあ何か役に立ったなら、嬉しいかな……」

 「はい。是非これからも私を重用してくださいませ。さ、行きますよシャウカット様」

 「うぅ……っ、ケツ痛え……そんなにデカくなかったのに、何でだ……?」

 「慣れていなければ小指を入れられただけでも痛いものですよ」

 2人は呆然としているトキヤを置いてそそくさと彼の部屋を去り、廊下を2回程曲がって彼の姿が見えなくなった後、

 「それで……如何でした? 義兄上に抱かれた気分は」

 「……軽い気持ちでするモンじゃねえな、コレ。気を抜いたら精神が持っていかれそうになって、ちょっと怖かったよ」

 「そうですか……やはり、流れ者を完全に堕とす事は難しそうですね」

 「当たり前だろ、俺達は呪い効かねえんだから」

 「ええ。『呪いは』効きませんね」

 「……いや、トキヤは俺と比べたら全ッ然ヘタクソだから。さっきはちょっと油断しただけだからな」

 「そうですか。それではまた私の研究に協力してくださいね?」

 「次はジョンヒにでも頼んでくれよ。アイツはトキヤのシモの事にはだいぶ詳しいから」

 「出来れば男性が好いのです。何故なら……」

 ひそひそと、後ろ暗そうに話し合った。

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