登場人物紹介・ヒノモトの人々編
光家
200年前の花治の乱で反カゲツ傭兵団派の武士達を率いていた人間の都『京安』最強の武士団の一族。
当時の女当主は代替わりして間もない若い娘であり、己の信じる正義に従いカゲツ傭兵団に挑むも惨敗。
『義は己に有り』と考えすぐにでも味方が集まると踏んで東ヒノモトへ落ち延び再起を図るが、かつての仲間達が瞬く間にカゲツ傭兵団への恭順を示して自身を裏切ってゆく有様に絶望し、姿を晦ました。
その後の彼女がどうなったのかは、奇妙な程に誰も知らない。
旭はこの当主の子孫にあたる。
光旭
光家の嫡子(この世界では男系・女系の概念が無い為、女性が婿を貰って家督を継ぐ事も珍しくない)。
初代から己の母まで須らくがとある悲惨な憂き目に遭ってきた事に恐怖を抱き、己の一族をそのように追い詰めたカゲツ傭兵団への復讐を果たすため、絶望の運命に抗うためトキタロウを頼って挙兵を決行する。
死なない転生者達の無責任さに違和感を覚える事が多く、特にトキタロウの楽天的な性格に疑問を感じ全く信用していない。
強い責任感を持つ聡明な転生者としてトキヤに目をつけ、挙兵を嫌がる彼を篭絡して共に戦う事を決意する。
自身の一族の『遊女として使い潰されて早死にする』運命の理由が、男に抱かれれば快楽の虜になり衰弱死するまで色情に耽り続ける『色病みの呪い』である事を知った彼女であったが、心労から実の弟を信用出来ず暗殺を企んだり、後述の菱川真仲と自身を比べて武士としての才能の無さに絶望したりと七転八倒を経た挙句、遂には実質的な自害を試みようとしてしまう。
その痛ましい姿に耐えかねたトキヤに無理矢理抱かれて呪いを発動させられてしまい、一時は呪いによる快楽に操られるがまま彼を執権と定め、自身を『執権様の遊女』と名乗って全てを投げ出してしまったが、後述の光円の説得により『真の武士の姿』は一つではない事を悟り、全ての武士を倒し従えて亜人の支配から世を救う事こそ己の本懐と改めて定め、その覚悟と意志で呪いを押し退けて再起した。
光正義
光旭の弟。
旭とは異なり都の寺に預けられ、その後は都から逃れて北ヒノモトの御藤家に身を寄せ、人類反旗の機会を伺っていたところを姉である旭が東ヒノモトに人間の国『神坐』を建国した事を耳にして、旭の為に戦うべく馳せ参じた。
転生者では無い人間の身でありながら天才的な知略と常人離れした身のこなしを誇る。
旭とは似ても似つかない素直で心優しい性格をしているが、直感が異様に鋭く自身につかれた嘘や相手の隠し事の真意を一瞬で見抜いてしまう性質と上手く噛み合っておらず、余計な事を言っては周囲から反感を買ってしまう。
光円
光旭の妹。
正義とは異なる都の寺に預けられ、本人曰くは修行を重ねた結果人間でありながら魔術を扱えるようになったと謂う。魔術を扱う事が出来るようになった為か呪いの類いにも詳しく、表向きは失伝していたとされていた『色病みの呪い』を解き明かした結果、呪いを用いて出奔者を始末していた都の光家……いわゆる『光本家』に目を付けられてしまい、都を追われて神坐に身を寄せる事となってしまった。
こちらも旭とは似ても似つかない素直で心優しい性格だが、少々男癖が悪く隙と言い訳あらば実の兄である正義が相手であってもわざわざ触れ合いに行ってしまう。
男癖の悪さについては旭から呪いを伝染されていたトキヤに手を出してしまった結果、自身も呪いに罹ってしまい、皮肉な事に呪いの効果でトキヤ一筋になった事で男癖の悪さは治ってしまった。
菱川家
人間も亜人も殆ど寄り付かない厳しい自然の横たわる空白地帯、中ヒノモトを所領としている地方豪族。東ヒノモトの亜人の支配体制を崩して彼等を西へと後退させた神坐国に興味を持ち接触を試みた。
現在の当主は光旭とあまり歳の変わらない若い娘である菱川真仲が務めているものの、当主の下には無責任な転生者達しかいない神坐と異なり真仲の裏では多数の間者が犇めき、更に間者達の中で最も強く聡明な歳若い参謀が密かに真仲と恋仲を結んでいる事で、付け入る隙の無い盤石の結束を果たしていた。
第十三話【巴の欠片】において、この地に菱川よりも先に根を下ろしていた『七党』と呼ばれる武士団の頭領達や、彼等を束ねる菱川家の先代当主が菱川真仲の裏で糸を引いていた事が判明し、更に七党は先代の方針に反感を抱いていた事も明らかになる。
神坐のオオニタ傭兵団の協力もあって七党は菱川家を完全に見限る事に成功し、菱川家は族滅となった。
菱川真仲
異世界ヒノモトの神坐と西の都の間、『中ヒノモト』と呼ばれる一帯を支配する豪族『菱川氏』の当主。人当たりがよく見目麗しい外見をしており、その為人で集めた人々からの好意と支持を纏め上げて中ヒノモトの実質的支配者として君臨している。本人は背丈が高過ぎる事と知略に欠ける事を気にしているが、後ろ暗い過去と周囲の人々からはひた隠しにしている事があり……。
後ろ暗い過去とは、魔力を宿して生まれた事で一時は母に捨てられていた半生。
ひた隠しにしている事とは、自身に仕える間者の高巴との恋愛関係。
山に捨てられていたところを間者の高巴に発見・保護された彼女は、その後彼の取り計らいで正当な菱川家の嫡子として認められ、自身の強さと美貌、そして高巴の知略を用いて中ヒノモトで急速に影響力を強めていくと、次に東ヒノモトを手に入れるべく文を送り、光旭との接触を図るも……。
戦の折の一瞬の隙を突かれて神坐へと拐された真仲は、神坐の執権を務める光トキヤに辱められ、色病みの呪いを掛けられてしまう。一時は呪いを振り切って高巴の許へと戻ったかに思われたが、光円によって呪いが改造されていた為か逃れきる事が出来ず乱心。
高巴を斬り殺してまでトキヤの許へと戻って神坐への服従と光旭との婚姻を誓ってしまい、これにより菱川家は崩壊の一途を辿る事となった。
高巴
菱川真仲の側近を務める間者であり、参謀をも担う若い男。幼き日に森に捨てられた彼女を見つけ出すと菱川家の当主として擁立し、その裏で暗躍して中ヒノモトを掌握させた。真仲の望むままに次は東ヒノモトを手中に収めんと謀を始めるが……。
真仲が神坐の用意した偽者とすり替えられていた事にいち早く気付くも、偽者が謀略に疎い事にも気付いた彼は好機とばかりに西の都の女王と接触、菱川真仲を光旭と偽り、菱川真仲の軍と偽って伝えた光旭の神坐軍を追討させようと企む。
計略はあと一歩のところまで進んだが、取り返した本物の真仲に裏切られた事で破綻し、彼自身も斬り殺されてしまった。
第十三話【巴の欠片】において、真仲は菱川家の先代当主が用意した数々の後継候補の一人に過ぎなかった事が明らかとなった。
然し、死体すらも碌に探されなかった他の後継候補と異なり真仲については直々に迎えに行った事から、その愛情が偽りであったとするのは早計だろう。
義巴
菱川家の間者にして高巴の妹。真仲を失った菱川家を立て直すべく、七将軍が一人ジョージ・ヤマモトのリゾートへと従業員として潜入し、神坐の面々への離反工作を図る。元主の真仲や実兄の高巴への思いは好意ではなく、軽蔑であったと語る。
本人の性格自体は竹を割ったような陽気そのもの。
その言葉は偽りだった。
真の目的は神坐に囚われていた義姉とまで慕う真仲を救出し、菱川家を再興する事だった。
わざと暗愚な間者を演じて捕まる事でリゾート深部への潜入を成功させると、ヤマモト傭兵団が密かに製造・所持していた現代兵器を奪取、リゾートを占拠し真仲の奪還に成功する。
だが真仲は既に呪い漬けにされており義巴の菱川家再興の頼みを拒否、自害を果たしてしまう。
その後義巴も郎党諸共に捕縛され、転生者であるトキヤと身体を重ね続けた事で死に戻りの能力を限定的に取り込んでいた真仲と2人、光円の呪術研究の実験台として扱われる事になった。