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第17話「再び」

 瓦礫の山を退け、サンダー少尉は一階下に繋がる大穴を見つける。爆破による影響でできたものだ。彼は先に降り、アンナに飛び降りるよう促した。彼女は躊躇うことなく、大穴へダイブする。サンダー少尉は彼女を両腕でキャッチし、そっと足を床へ着けた。直後、廊下側から複数人の足音が響く。階段を駆け上がり、2人のいる階へ到達した。サンダー少尉はアンナに物陰へ隠れるよう合図する。


「ローチ起動します」


 サンダー少尉らがいる階へ着いた兵士らの一人は、腰を低くしてそう喋った。彼は片手に収まる小さな箱から、黒い虫を放つ。虫の頭部にはカメラや電子機器が装着されており、赤いコードが尾に2本繋がっている。赤いコードを伝い、電流が生きた虫へ流れ込む。するとその虫は端末を持つ兵士の操作によって、前後左右へ移動を開始した。フロアの各部屋に放たれた虫は、サンダー少尉らの探索を行なっている。


「ローチか、そこまで警戒して殺しにくるか。破壊してもバレる、どうすれば」


 アンナはサンダー少尉がそう愚痴る最中、ふと何かを思いつく。彼女は「私が囮になる!」と言い残し、走り出した。追いかけようとしたサンダー少尉は、部屋に侵入したローチの存在に気づき固まる。アンナは近くの持ち運べそうな瓦礫を持ち上げ、その中に入っていった。上半身だけを瓦礫から出し、コホコホと咳き込み出す。その姿を見て、サンダー少尉はアンナの意図を察した。


「ったく、いつもの下手な演技はやめてくれよ」


 侵入したローチは、咳き込むアンナをカメラに捉えた。映像を監視していた兵士は、上官へそれを報告する。


「軍曹、これを」


 一等兵の彼は映像を見せる。そこには兜を被った少女がいた。


「よくわからんが、サンダー・ウォルフを始末するのが俺らの任務だ。救助は下の階にいる別動隊に任せろ」


 上官の言葉に従い、彼はローチを再び動かした。虫の頭部カメラはアンナを映像から外し、移動し始める。


「あっ、サンダーお兄さん助けてー」


 アンナは棒読みながらも、そう声を漏らした。


「き、聞きましたか? あの部屋に恐らく」


 上官は音声を聞き、一等兵と顔を見合わせて頷いた。彼らは部屋の入口の壁へ身を寄せ、中を覗く。部屋の中は瓦礫が散乱しており、数か所の人が潜めそうな山があった。一等兵は上官の指示を受け、山の一つへローチを向かわせる。しかし、先ほどよりも咳の具合が酷くなったアンナの様子に不安を覚えた。部下の一人は、ローチの操作を他の者に預ける。


「軍曹、ローチがクリアしたポイントへ向かわせてください」

「ダメだ。あの兜の少女には悪いが、ブービートラップの危険性が高い」

「……そんな」


 部下の一人はローチを進め、サンダー少尉が潜む物陰の手前まで迫った。サンダー少尉は壊れたデスクの脚を拾おうと手を伸ばすと、近くに人の切断された腕がある。彼はその手に拳銃を握らせ、遠くへ投げ捨てた。音に反応したローチは、その腕が落下したポイントにカメラを向ける。


「死んだのか?」


 上官がそう呟くと同時、部下の一人は部屋の中へと突入した。


「おい、馬鹿か!」


 怒鳴る上官の言葉が入らず、彼はアンナが下敷きになった場所に着いた。


「さぁ、もう安心だ」


 彼は瓦礫を持ち上げ、アンナに声をかける。その瞬間、背後に迫ったサンダー少尉が彼の頭に衝撃を与えた。大きな音が響き、上官らも突入を開始する。サンダー少尉は、奪い取った小銃のストック部分でさらに一等兵へ追撃を加えた。気絶する兵士を無理矢理立たせ、彼の肩に銃身を乗せる。撃つのを躊躇った彼らへ、サンダー少尉は銃弾を浴びせた。軍曹を残し、他の兵は銃弾によって沈黙した。


「クソ、汚い真似を!」


 軍曹だけは盾にひるまず、応戦していた。サンダー少尉は背後の物陰に後退し、撃ち合いを続ける。しかし、弾切れした彼は気絶して倒れ込んだ一等兵の近くにある弾倉へ腕を伸ばした。軍曹はそれに気づき、弾倉をはじく。断続的に撃ち続け、彼は片手で手榴弾のピンを抜いた。瓦礫の壁を貫通し、サンダー少尉は左肩を損傷する。


「修復を待っている余裕はない。……どうすれば」


 アンナは一心不乱に突進し、軍曹を数歩後ずさりさせた。 

「な、離れろ!」


 彼はアンナを蹴飛ばし、彼女に銃口を向ける。サンダー少尉は咄嗟に物陰を飛び出し、投げ飛ばした手の中にある拳銃を拾い上げた。軍曹のもう片方の手にある手榴弾が撃ち抜かれると、爆発が起こる。破片が吹き飛び、アンナの兜を僅かに掠った。激しい音が止み、煙漂う室内をサンダー少尉は歩く。


「お兄ちゃん!」


 サンダー少尉は声を頼りに、アンナと合流を果たした。震えた腕で抱きしめる彼女に、サンダー少尉は「怖い思いさせたな」と呟く。彼らが落としたスーツケースを奪い、彼はアンナを抱えて闇夜を飛んだ。地上から放たれる銃弾を避け、ビルを曲がった直後に煙幕を張った。


 サンダー少尉は気絶するように眠り込んだアンナを背負い、路地裏の廃墟に入っていった。座り込む彼は自身の太ももを枕代わりに、アンナを横にする。彼女は眠りながらも、少し寒がる仕草をした。


「アンナ、君は俺が思っているより大人だったんだな」


 彼はアンナに上着を被せ、一晩周囲を警戒し続けた。翌日、サンダー少尉は腕の操作パネルでネットを開く。周辺のニュース一覧を確認するが、どれも昨夜のビル爆破騒ぎ一色だ。街の中は厳戒態勢が敷かれ、軍の警備が厳しくなっていた。


「真田は……カンザスか」


 サンダー少尉はリストバンドに埋め込んだチップから、真田の位置情報を把握した。彼の表示している画面にある点滅する点は、丁度カンザス州を移動している。彼はパネルを閉じ、廃墟の外の様子を見に行った。入口を出た瞬間、彼の髪は後ろに靡く。何かが高速で真横を通り、突風を引き起こしたのだ。振り返ったサンダー少尉は、琥珀色の目をした機械人間と出会う。


「「お前は……!?」」


 向かい合う林田とサンダー少尉は、互いに武器を向けた。


「カレンは…….」


 林田は構えたまま、そう話しかける。サンダー少尉は冷や汗をかきながらも、冷静に口を開いた。


「あいにく、君にかまってる余裕はこちらにはない」

「お兄……ちゃん?」


 睨み合う中、林田は少女の声に一瞬隙を作った。サンダー少尉は、サプレッサーを付けた拳銃で銃弾を放つ。肩を損傷し、林田の反撃は壁へ反らされる。追撃を行おうとするサンダー少尉に対し、彼は閃光を浴びせた。視界を失ったサンダー少尉は、身体を糸で拘束されてしまう。林田は彼の首元に鉤爪を突きつけ、情報を待った。


「ははっ、チートだな君は」

「自分勝手に迷惑ばかりまき散らして……いい加減にしてくれ!」


 鉤爪の先端が刺さり、サンダー少尉の首元から一滴血が垂れる。


「ふん、若いな。大切な人は、犠牲なくしては守れないんだよ。君のその身体、犠牲といわずしてなんというんだ?」

「俺は……!?」


 突如、アンナは林田に後ろから抱き付いた。


「お願いします。お兄ちゃんを……お兄ちゃんを殺さないで!」


 彼女は絞り出すような声色で、林田に頼み込んだ。

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