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狂犬と博識ドール  作者: 星澄


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追跡と狂犬(8)

 猿轡に、両手両足と縛られて、布袋に入れらていた爆弾犯の谷川。

 ここまで大きい袋はサンタの袋か、粗大ごみと相場は決まっているが、今回は間違いなく後者だ。

 台車で運ばれていたところをみると、用済みの粗大ごみとしてどこかで始末される予定だったのだろう。

 そして、運がいいのか悪いのか、俺たちに拾われてしまったらしい。

「んんん…………んんんんん………んん……」

 必死に俺たちに何かを訴えてくるが、もちろんわかるわけがない。

 とにかく、地下駐車場の死角へ台車ごと運び、そこで、さっさと猿轡をとってやる。

「はぁ……助かった……あんたらはやっぱ俺の救世主だな」

 ふるふると犬にように顔を横に振ってから、そんなことを宣ってくる谷川に、俺と風吹は忽ち半眼となった。

 俺たちがいつからお前の救世主となったんだ!

 もちろん内心ではそう突っ込みを入れたものの、今はそんな時間も惜しいため、すぐに本題へと入る。

「ここにサクラたちはいるんだな?」

「あぁ…………いる」

 さすがに罰が悪いようで、谷川の視線がわかりやすく泳ぐ。だが、俺たち相手に誤魔化しきれるものではないと思ったのか、谷川は言い訳をするように言葉を重ねた。

「だが、無事だ!特にあのお嬢さんは組織にとっちゃ金の卵だ!粗末に扱うはずがねぇ!それにあの執事もあのお嬢さんの通訳として丁重に扱われているはずだ!だから心配ねぇ!」

「通訳だぁ?」

 サクラたちが一先ず無事そうなのはわかったが、一つさっぱり意味がわからない単語があった。

 確かにサクラは青い瞳を持っている。が、れっきとした日本人であることは間違いない。たとえ、その祖先だかに外国人が含まれていようともだ。そして日本語はペラペラで通訳など一切必要ない。にもかかわらず、上戸執事が通訳となっている意味がまったくもってわからない。

 そこで、俺と風吹はその理由を乞うことにする。

 決して目が笑っていない笑みを満面に湛えながら――――――――――



 それは、あと五分程で目的地に着くいった頃だったらしい。

 信号が赤となり停まった車。

 その頃の谷川の手には、依然として拘束具が嵌めてあったが、手にナイフを持った状態で、輪っかとなった腕の中にサクラを収めて人質とし、上戸執事の動きを制限していた。そのはずだった。

 しかし、上戸執事にとってそれは、実のところなんの制限にも、脅迫にもなっていなかったらしく、信号待ちで停まるや否や、スパンと右手でナイフを払い落とすと同時に、左肘を谷川の顔面に見舞ってきたそうだ。

 早い話、そこであっさりと谷川の目論見はあっさりと断たれ、形勢は完全に逆転したそうなのだが……………………

『このまま、あなたの立てた恩知らずな作戦に乗っかることにします。そろそろ私もお嬢様も、コソコソと逃げ回りながら暮らすというこの生活に飽きてきましたからね。潮時でしょう。それに、ちゃんと応援も来てくれると思いますからね』

 そう言いながら、上戸執事はちらりとスマホを取り出し見せたそうだ。どこにも繋がっていなさそうなスマホを。

 そしてサクラに尋ねる。

『サクラお嬢様、それでよろしいでしょうか?』

『えぇ、構わないわ。おそらく組織の闇を暴くのに、今が好機であることは間違いないと思うの。すぐにキョウちゃんたちも来てくれるだろうしね。川上、ありがとう。なかなかの手筈だったわ』

『お褒めいただき光栄です』

 そして信号が青に変わり、上戸執事は何喰わぬ顔で車を走らせ、最寄りにあった小さなテナントビルの駐車場に停めた。

 どうやらそこも綾塔教授の関連の建物らしく、諸に上戸執事の左肘を喰らい朦朧としている谷川を改めて縛り上げてから、サクラと上戸執事はそのテナントビルに一度消え、十分程で戻ってくると、すっかり上戸執事は若い素の姿から初老の燕尾服姿の執事に戻っており、サクラもまたボーイッシュな姿から、白のワンピース姿で髪を下ろした幽霊スタイルになっていたらしい。

 そして、上戸執事は戻って来るなり、谷川に告げた。

『これからあなたには、組織の内部まで案内してもらいます。筋書きはもちろん、あなたが立てたあの恩知らず計画でいきます。自分の命の確保のためにお嬢様を売るというあの計画です。但し、そこに加える要素として、お嬢様は一言も口が利けない設定にします。だから通訳である私が常に傍にいなければ事が運ばないと、あなたは組織にしっかりと説明してください。いいですね!』

 谷川はそれに頷くしかなかった。

 もとより、形勢は逆転し、自分が生き残る道は上戸執事に従順となることだけだったからだ。

 それから再び車を走らせ、途中とんでもない豪雨にも見舞われたが、無事に到着した四井商事の地下駐車場。

 そこで谷川は結束を解かれ、表向きはサクラと上戸執事を連行してきたように装いながら、裏のルートを使って組織内部へと入った。もちろん実際は、上戸執事に強制的に歩かされていたのだが………………

 

「それでどうしたんだ?」

「裏の要件だと示す決められた言葉がある。それを裏の警備口で伝えて、組織の連中と会った。ただ俺が連れてきたのがあのお嬢さんだとわかると、いつもは出てねぇ組織の幹部が出てきた。それで…………」

「それでお役御免となったお前は粗大ごみとして始末されるところだった…………と」

「そういうことだ」

 真顔で大きく頷いた谷川に、そこは自信を持って答えんなよ!っていうか、自分でも粗大ごみだってことは認めんだな…………と呆れつつ、さてどうするか…………と、思案に沈むともに風吹に視線を流す。

 谷川を使うことは決定事項だ。

 ただ当初予定していたような案内人としてはもはや使えそうにない。

 なんせ、この谷川は組織にとっては立派な粗大ごみ。そもそも爆弾で口封じしようとしていた人間だ。端からその価値などあるわけもない。

 まぁ、サクラたちを連れて来たことで、最後の最後にまったくの無価値の始末対象から、それなりの役目を果たし終えた粗大ごみまで昇格を果たしたかもしれないが、リサイクル不可の時点で所詮用なしは用なしだ。

 つまり、谷川を組織の繋ぎとしてはこれっぽっちも利用できない。

 だが、怪しまれることなく、サクラたちがいる場所まで辿り着かなければ意味がない。

 ならばどうするか。

 谷川に新たな価値を付け加えるか?

 いや、そう簡単に組織が望むような付加価値を、こいつに与えられるわけもない。

 だいたい、サクラのような美味しい手土産は、そうそう転がっているものではないからな……………

 とまで考えて、俺はあることに気づく。

 そう言えばどうして、上戸執事は俺たちがここまで無事に辿り着くとことができると確信していたのだろう。

 通話は途中で切られた。

 だから俺たちは已む無くサードのデジ専、上指リーダーを頼ることにした。

 そのおかげで運よく辿り着けただけで、本来ならば今も街中を彷徨っていたかもしれない。

 しかし、サクラも上戸執事も俺たちがここへ来ると信じて疑わなかった。

 一体その自信はどこから来たんだ?

 だが、その答えは明白。

 たとえ自分たちが消息不明となったとしても、必ず俺たちが辿り着けるだけのルートがすでにあったからだ。

 俺たちがずっと気づかなかっただけで。

 そしてそれはおそらく……………………

「おい!もう一つ質問だ。サクラと上戸執事は俺たちがここに来るってこと以外に何か言ってなかったか?」

「へっ?」

 谷川は間の抜けた顔をした。しかし、暫し思考を巡らすと「そういえば…………」と呟く。

「そういえば……何かな?」

 笑顔でありながら、風吹の絶対零度の声にびくりと身体を跳ねさせた谷川は、慌てて口を開き直した。

「た、確か……『私たちの想像通りなら、これでオールキャストが揃うはずよ。まだ私のことを思ってくれているなら…………』とか何とか、お嬢さんが言って………………」

 しかし谷川の台詞は途中で断ち切られた。

 着信を告げる俺の腕時計のバイブによって。

 そしてディスプレイに表示された名前を風吹とともに見やって、やはりそういうことか…………と、俺たちは確信を得る。


 あぁ………だからあの時サクラは、あんなにも会いたがっていたのか。この人に………


 ようやくすべての辻褄が合い、自然と上がる口端。

 どう見ても企み顔となった俺と風吹に、谷川の顔が、わかりやすく引き攣る。

 そして俺は、その新たな手駒となる人物からの電話に出るべく、腕時計をタップした。

 

こんにちは。星澄です☆ 

たくさんの作品の中から、この作品にお目を留めていただきありがとうございます♪


さてさてまたまた謎の人物登場の気配。

サードの中にいる裏切り者は誰か?

いよいよ話は後半戦です。


どうか皆様にとってドキドキワクワクできるお話となりますように☆



恥ずかしながら誤字脱字は見つけ次第、すぐに修正いたします。

何卒ご容赦のほど………。:゜(;´∩`;)゜:。


どうぞよろしくお願いいたします☆



星澄

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