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狂犬と博識ドール  作者: 星澄


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脱出と博識ドール(15)

 部屋と言っても、物置部屋といった感じの然程広くはない部屋。

 両側の壁に設置されている棚には、高級そうな調度品の隣にしれっと並べられている、エアガンやらボーガン、鞭に何故かヌンチャク、さらには縄や鎖にローソクと、怪しげというより妖しげな道具の数々。

 そしての部屋を手狭にしている大量のモニターと、部屋の真ん中に吊り下げられた水色の生地に白の刺繍が美しいカーテン。

 ここまでは俺がこの部屋を出る前となんら変わらない。

 だが、そこにはサクラたちの姿はなく、その代わりに招かざる客が二人いた。

 俺が感知した通りの数。このクソ暑い日にやはりスーツ姿。問うまでもなく組織の人間だ。

 それもそいつらは隠れるでもなく、襲い掛かってくるでもなく、必死に大量のモニターと格闘しているところだったらしい。

 こちらとしても潜んでいる様子がないため、そのまま堂々とドアを開けて部屋に入ったのだが、まさかそんなお取込み中とは思いもしなかった。おそらく、俺の位置でも見ようと思ってモニターをいじくっていたのだろうが、案外早く到着してしまったらしい。

 なんか、悪い…………

 ちなみに、さり気なく床を見るが、脱出口が閉じられているところを見ると、まだその存在に気づいていないのか、それともこいつらの仲間がすでにサクラたちの後を追い、こいつらは俺の足止め役なのか、その判断はつかない。

 とはいえ、邪魔者を全員沈めて前に進むしかない俺は、早々に判断の棚上げを決める。

 そして、こいつらにしても、早々にモニターとの格闘を止め、一人は瞬時に銃を構え、もう一人は拳を振り上げてきた。

 なんともまぁ…………ご親切なことで。

 そんなことをつい思ってしまったのは、片方が銃を構えたというに、もう片方が飛び出している状況では撃つにも撃てないだろうと思ったからだ。むしろ「邪魔だ!退け!」と叫びたくなるところだ。っていうか、俺なら叫んでいる。いや、もしかしたらそのままそいつを撃って沈めてから、本来の敵を撃つかもしれない。

 まぁ、今の俺の立場からすれば、身を挺して守ってくれてありがとう。ご親切にどうも――――――となるのだが。

 案の定、銃を持つ男にとってはただただ邪魔な存在だったらしい(そりゃそうだ)。そしてその男はよりにもよって、仲間を叫んで退かすではなく、仲間として、人として、どうかという選択をした。そう、俺が提示した後者の選択だ。

 サイレンサー付きの銃が、プスッと音を立てた。その刹那、今にも俺に殴りかかりそうだった男が、志半ばにして床に沈む。

 俺をそれを冷ややかに見つめてから、ぶわっと感情を高ぶらせた。早い話、ぶち切れただけだ。

 すかさず二発目を放ってくるが、俺の動きの方が断然速かった。

 当然、弾丸より速く走れるわけはないが、発射距離、その角度、銃のタイプそれを見切った俺にとっては、男がトリガーを引く前に弾道を先読みして、弾を躱すことくらい朝飯前だ。さらにそのまま男の懐へ飛び込み、銃を掴みながらその手を容赦なく捻り上げ、トリガーにかかる指の骨をへし折る。それから奪い取った銃を、指の痛みに悶絶する男の頭にピタリと押し当てた。完全なるゼロ距離で。

「なぁ……今の俺はかなり機嫌が悪い。言っとくが、俺がサードだからってこの引き金を引けないと思ったら大間違いだぞ。俺は自分の守るべきもののためならこの手を汚すことも厭わないからな。で、質問だ。お前らの探しモノは見つかったのか?」

「…………こ、答えるわけが……ないだろう…………」

「なるほど。指の骨くらいじゃ、その口は軽くならねぇってことだな。だったら、このまま沈め」

「なッ……ッ‼」

 銃のグリップで男の頭を殴りつけ、意識を強引に奪う。

 あっけなく床に沈んだ男。そいつを一瞥することもなく、銃で撃たれた男のもとへ行き、傷の具合を確認しながら声をかける。

「おい!大丈夫か!」

「…………ッ」

 男の意識レベルは20。大きな声で呼びかけたり、強く揺すれば開眼する状態だ。撃たれた箇所は背中で、場所的には右胸付近。致命傷は避けているようだが、このまま放置すれば出血死する恐れもある。

「仕方ねぇな……救急車を呼んでやるから、もうしばらく辛抱しろ」

 俺はそう声をかけてから左右を見回し、棚にかけてあったタオルを取ってくると、傷口に押し当てた。

 すると男は朦朧としつつも、視線を床へ差し向ける。

 どうやら、これがこの男なりの恩義ってやつらしい。

「了解。救急車が来るまで大人しく寝とけ」

 その言葉に従い、男は忽ち意識を手放した。



 一先ず、救急車を一台呼んでから(俺と風吹が沈めた男たちの数を思えば一台では足らないかもしれないが)、俺は脱出口の扉となっている床下収納の蓋を持ち上げた。

 気配を探るが、さすがに何も感じない。

 しかし、サクラたちがここから脱出したことはほぼ間違いない。そして先程の男の視線からも、こいつらの仲間が後を追った可能性も高い。

 つまり、四の五の悩んでいる時間はないということだ。もちろん、救急車を待っている時間も、風吹を待っている時間もない。

「この先の状況がまったくわからねぇが、行くしかねぇか…………」

 俺はそう決断すると、ズボンのポケットに突っ込んでいたペンライトを取り出し、その脱出口へと足を踏み入れた。

 錆の臭いが手に染み付いてしまうほどに錆び付いた鉄はしご。

 それを慎重に降りて、ひんやりとした地下道をひたすら進む。

 サクラの話によれば、この地下通路は幽霊屋敷から坂を下って三軒向こうにある無人の民家へとたどり着くそうだが、まさかその間にある家の住民も、自分の家の下にこんな地下通路があるとは、夢にも思わねぇだろうな…………などと呑気にも思う。

 しかし地下通路だけあって、非常に横幅、高さともに狭く、どこからか漏れ出してきた雨水で足元は非常に滑りやすい上に、やたらと足の多い虫が駆け抜けていったりと、なかなかスリル満点なことになっている。虫嫌いなら間違いなく発狂ものだ。

 おそらく気化爆弾を運んだ赤松リーダーも大変苦戦を強いられたに違いない。それを手伝った風吹にしてもだ。

 だが、今の俺は爆弾を運んでるわけでもなく、とても身軽な身となっている。だからこそ、焦燥と苛立ちと、サクラへの想いに駆られて進む足も速まる一方で、二分ほどで終点となる鉄はしごへとたどり着いた。

 だが、ここからが問題だった。

 風吹や赤松リーダーならば、この上が民家のどの部屋に繋がり、どのような景色が広がるのかを既に知っている。

 しかし俺は生憎それを知らない。だからこそ迂闊に出ていくわけにも行かない。

 ペンライトを口に加えて、鉄はしごを数段上り、上の状況に神経を尖らせてみるが、見事に無音。

 気配という気配がまるでない。

 先程までは少なくとも爆専のメンバーがいたはずなのだが、その気配すらも感じ取れない。

 

 一体、この上はどうなっている…………?

 サクラたちは無事に逃げおおせたのか?

 それとも……………………

 

 交互にやってくる楽観的な予想と、最悪な想像。

 しかしここで手をこまねいている場合でもない。

 やっぱ…………出たとこ勝負だろ。

 ま、いつものことだしな…………

 

 ――――――――なんてことを思いながら、俺は鉄はしごの上の扉を慎重に押し開けた。

 

こんにちは。星澄です☆ 

たくさんの作品の中から、この作品にお目を留めていただきありがとうございます♪


皆様にとってドキドキワクワクできるお話となりますように☆


恥ずかしながら誤字脱字は見つけ次第、すぐに修正いたします。

何卒ご容赦のほど………。:゜(;´∩`;)゜:。



星澄

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