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災難8 王家からの要望

 翌日、二家は再びソチアンダ侯爵家に集まった。今回はアーニャではなくメヘンレンド侯爵が来訪している。

 

 挨拶とお茶とを済ますとメヘンレンド侯爵の願いで人払いがされた。ソチアンダ侯爵一家は『人払いするほどとはどんな話か』と、顔には出さないが驚いている。


「ウデルタとユリティナ嬢の婚約白紙は整いました。後日確認の手紙が届くでしょう」


「お手数をおかけいたしました。では早速ですが、二人―ギバルタとユリティナ―の婚約手続きをいたしましょう」


 ソチアンダ侯爵一家はにこやかに促す。


「それなのですが、王家から二ヶ月ほど待ってほしいと言われました……」


 すでにメヘンレンド侯爵から話を聞いていたギバルタは沈んだ顔で視線を落としており、メヘンレンド侯爵夫人は心配そうにソチアンダ侯爵一家を見た。

 ソチアンダ侯爵一家はア然としている。


「王家から? それはまたなぜ?」


「ユリティナ嬢からお聞きになっていると思いますが、例の女子生徒―シエラ―と不貞関係にあるのはメーデル王太子殿下だと、生徒たちは見ているようなのです」


 ウデルタはメーデルの側近候補として近くにいる。シエラがウデルタの部屋に頻繁に忍び込んでいることや、ウデルタが実家にシエラを泊めたことは生徒たちは知らない。


 ソチアンダ侯爵夫妻の視線にユリティナが頷いた。


「どうやら我々より先に王家とテレエル公爵家で破談がされているようです」


 メーデル王太子殿下とラビオナ・テレエル公爵令嬢は、先駆けて数ヶ月前に婚約破棄となっていた。


「なるほど。テレエル公爵夫妻の仲睦まじさは有名ですからな。夫婦とはそうあるべきとお考えでしょうし、愛娘を侮辱されればお怒りにもなるでしょう」


「「「申し訳ありません!!」」」


 メヘンレンド侯爵一家が頭を下げる。夫婦仲が良く、愛娘ユリティナを溺愛しているのはソチアンダ侯爵夫妻も同じだ。溺愛のためユリティナが十歳になるまでは子作りしなかったほどだ。ウデルタの行為はユリティナへの侮辱そのものだ。


「いやいや、お気になさらず。

茶会やパーティーエスコートなどは先の戦争時以外ではほとんど代役をしていただいておりましたので、ユリティナが寂しい思いをすることはありませんでした。ですから、こちらは何の問題もありませんよ。

侮辱されたなど思っておりません。逆に大切に思われていると感謝すらしております」


「はいっ! お義姉様とのお話も、ギバルタ様とのパーティーも楽しゅうございましたわ」


「私も夢のような時間でした。ですが、もう夢ではないのですね」


 ギバルタがキラキラした目で見つめれば、ユリティナは頬を染めて頷く。

 メヘンレンド侯爵がギバルタの頭を叩き、ため息を大業に吐き捨てた。


「だから、それを待てと……。お前には昨日散々説明しただろう……」


「……わかっております」


「では、こういたしませんか? ギバルタ殿には我が家に通っていただき、私の仕事や領地経営の仕事について勉強していただく。それならばユリティナも不安に思うことがないでしょう。

対外的にはこれまでもウデルタ殿の代役としていらっしゃっていたのですから大丈夫かと思うのです」


 ユリティナの父親ソチアンダ侯爵閣下は、王城で建設大臣を務めている。ソチアンダ家の婿養子はその補佐官をしながら、領地経営も学んでいくものだ。


「お父様! ありがとうございます!」


 ギバルタと距離を取らなくてよいとなり、ユリティナは喜んだ。ユリティナに手を握られたソチアンダ侯爵は眉尻を下げる。


「私も領地経営の仕事だと言えば、王城勤務の休みは取れますから。折角優秀な婿殿の迎えるのですから早く始めたいですな」


 ソチアンダ侯爵はとても前向きな様子だ。


「ソチアンダ侯爵に優秀と言われるほどできるかどうか……」


 メヘンレンド侯爵は謙遜してギバルタの頭をガツガツと叩く。しかし、ウデルタよりギバルタの方が優秀であることはわかっている。


「王家からは二ヶ月ほどと言われておりますので、そのくらいなら我が家も誤魔化しはききます。しかし、王家からの命なので、その期間はユリティナ嬢のパーティーエスコートをギバルタがすることはできません」


「二ヶ月くらいなら、ユリティナが足に怪我をしたとでも、風邪をひいたとでも言えますよ」


「わたくしも、ギバルタ様以外の方と踊りたくなどありませんわ」


 ウデルタのエスコートでなくとも、婚約者の家の者であるギバルタのエスコートであったので男どもはユリティナを誘うことを遠慮していたのだ。さらには、ギバルタが周囲に睨みを効かせていた。


 ギバルタの睨みについては、ユリティナは独占欲のギバルタに喜びを感じていた。ソチアンダ侯爵夫妻は両方の気持ちに気がついていて、微笑ましく思っている。


 だからこそ、ギバルタの保護のないユリティナでは確実に多くのお誘いが舞い込むことは容易に想像がつく。

 

「ユリティナ嬢……」


 ユリティナのかわいい困り顔にギバルタが目をトロンとさせる。

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