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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

瓶の中に生きる愛しき人

作者: らぐどぉる

――このフラコンをお前に渡しておこう。決して、中身を出したり、瓶を割ったりしてはいけないよ。

 フラコンの中には小さな白の花がピンク色した光を泣いているかのように光をゆっくりと落としているのが見えた。

 ――これは、あなたが大事に持ってれば、貴方が困った時にきっと助けてくれる。母さんの形見だと思って大切に保管しておきなさい。

 と言われたフランコ。

 私はお母さんが嫌いだ。昔はお母さんのことを家族として、私の母親として大好きだったけれど、お母さんは私を子供、そう自分の娘とは微塵も思っていなかった。私のことは、母親自身の欲を叶えるための道具としか見ていなかった。「愛してる」や、「お前が大事なの」と言った言葉は1度も聞いたことがない。褒められることもあり、認められたと思って嬉しいと感じた時もあるが、彼女は私が結果を残すことで、更なる要求を求める一方的なものだった。それに気づいた時、私はもう母親を母親として見ることが出来なくなった。今となっては、もう母親が形見として与えてくれたフランコしか残ってない。これを壊せば、私は完全に母親との関係、繋がりみたいなのを断ち切ることになる。母親が私の愛する人を蝕むのであれば、私がすることは一つ。母親の命の花が入ったこのフラコンを壊し、私は愛する人を救う。

 ――私を見放すの?

 そんな声が、私の胸をきつく縛った。気付けば、フランコは割れて、中身の液体が地面に散らばるように広がり、花は既にピンク色の光を放ってはいなかった。私の瞳には、地面にこぼれたピンク色の液体がやけに目に入り、私を魅了していた。今でも覚えている。耳には、何もかもが引き裂かれてそこから光が漏れて解放されていく心地よい音と、手には脳から直接に伝わってくる命令を何も考えずにただひたすら流れてるように動かす美しい手つきに熱が逆流して、私を内側から温めていく感触、目にはあの懐かしい母と私の幼い時の記憶が蘇り、彩り、今ではそれも遠く少し寂しい気持ちを感じていた。そうあの時と同じ感覚、フランコの中にはそんなに美しくて、キラキラしていて、何としてでも、誰もが手にしたいと望むようなそんなもので溢れていたのだ。私の目の前はピンク色の光がいっぱいであった。それが満たされてる感覚はあるのに、聴覚や視覚、感触で感じることが出来ないのは非常に残念で仕方ない。ただ、私が光そのものになっている自覚だけが私の中にあった。

 ――貴方の愛する人、要するに私の実の娘である子はもうこの世にいないの。と言っても、信じないわよね。だって、私が貴方に言葉を交わし、貴方の話を聴いているこの身体は貴方の愛する人なのですから、信じないのは当然のことよね。でも、それは悪魔で外見の話。要するに、私は空っぽになった身体に魂だけを移した。そうね、ぬいぐるみさんや、人形さんが突然人の感情を持ち、人間のように振舞っているのと同じこと。彼女は私の形見であるフランコといった非常に大事なものを壊した。フランコの中に入っていた小さな白い花。白い花はあの子の魂そのもの。私があんな小さな小瓶に詰め込んだため、彼女はある特殊な能力を手にしていた。私を恨む、憎むことであの子は何でも叶える力を手に入れていた。あの子がしたいと思ったことは、全て叶っているはずよ。ただ、私は娘に殺されてしまった。それはあの子の願いでもあり、あの子の終わりでもあった。憎む、恨む相手がいなくなれば、彼女は何も残らない。ただ、お飾り化粧されたお人形さん。相手がいなくなったから、彼女はまだ私に関係しているフランコに手を伸ばす。しかし、それを割ってしまえば、彼女は自分自身で自分の魂を壊すということ。彼女はもうどこにもいない。いや、君の中には愛する人基私の娘が眠っているのかな。君の永遠となり、君は私の娘を君という身体の中に閉じ込めることが叶ったと言っていいのだろうか。君自身がフランコそのもの。きっと、君が私を恨み、憎むのであればきっと、それはとてつもないエネルギーが使われていることだろう。素晴らしいね。ふふっ、そして、君は思うんだ。それじゃあダメなんだと。これでは彼女の思惑にハマってしまう、と。うん、その通りだよ。私はそれを望んでいる。ただ、本心ではない、これは悪魔で最終手段なんだ。最後の最後までに取っておきたい策なのだ。どうしてかって?――君は思わなかったかな、この身体は愛する人であるのに何故この身体は動いているのか。ふふっ、実はこの身体を動かしているのはわたしではないのだよ。この身体を動かすのにもそれなりに色々と莫大なエネルギーを使っているんだ。しかし、私は実の娘に殺された身だよ、魂なんてのはエネルギーはゼロに等しいと言ってもいいんだ。本来ならば、人形とかに入った方が楽であるんだよ。その代わり、人形に出来ることは、会話して楽しませることぐらいのことしか出来ない。因果関係の対象ともならない。一方で、人、まぁ生物としておこうかな、これらに入ることは簡単でもこの身体を動かすとなると、また色々と厄介事が生じるんだよ。このことに詳しい奴がいるんだけど、私はあまり難しい話は苦手な方でね。詳しくは私も知らないんだ。だから、私が明かせるのは、私の目的と結果報告の2点でしかないんだ。まず1つ目、私の目的は私の娘の能力―箱庭。娘の能力は厄介でね、あの子が一人で制御できるものでは無いんだ。それを制御するためのフランコだったりもしたんだけど、壊れてしまった。この能力に限らないんだけど、能力は決してなくならないんだ。必ず誰かに継承されていく。ただ、継承される者が誰なのか、というのは確認する手段がない。可能性としては、その能力に関わったことのある人は継承者とされることが多い。娘の能力は、憎む、恨むといった感情から、絶対なエネルギーを生み出し、大抵のことはなんでも出来るし、叶えられる。自然の摂理に抗うことだって不可能じゃない。そんな凄い能力が一体誰の手に渡ったのかを探るのが私の目的。そして、2つ目はこの目的の結果論。実は、もうその継承者が誰なのかは分かった。それはやはり君であるということ。君は心の底で、彼女が死んだとは受け止めていないんじゃないかな。まだこの世に存在する。どこかに魂が、ひょっとしたら眠ってるだけなんじゃないかって。それは仮定と言えど、君の本当の願いでもある。ただ、現実はいない。そんなのが信じれなくて、君は愛する人をこの世に生かし続けているんじゃないかな。それに、言ってしまうと私がこの体を動かすなは莫大なエネルギーが必要だって言ったでしょ。その莫大なエネルギーを生み、動かしているのは君の能力―箱庭なんじゃないかな。愛する人を殺され、恨まないやつなんていない。表に出てなくても心の底では、メラメラと燃え上がっている。それは絶対に耐えることの無い原動力となって。まぁ、信じても信じなくてもどちらでもそれは君が勝手に良いように解釈すればいいのさ。まぁ仮に、この話を本当だとするなら、どうする?君の愛する人への思いが、彼女を生かし、またその身体に入ってしまった愛する人を殺した真犯人さえも生かすというこの状況。アイロニー。同情するよ。可哀想に、不憫だね。そして、恐らく君が次にとる行動は、自分もまた生命を落とすということ。しかし、それを行えばまた能力は新たな継承者に引き継がれる。私がそれでもこうして彼女の身体で動き回れるのかは不明だけど、まぁ今度こそ私は足を使い立つことも出来なければ、話すことも出来ない。生き殺し状態。身体だけが腐っていき、やがて私の魂もここには留まれないだろう。しかし、君にはその自然の摂理さえも変えてしまえる力がある。彼女の能力を他人に渡すなんて、出来るのかな。私は魂なんて存在だが、私には時なんて概念には縛られてはいない。私がこの身体にいる間はこの身体も時間の概念には縛られない。この身体は、君の愛していた、愛する人そのものだ。君が死ぬのは、非常に勿体ない話だと思わないかい。愛する人が生きている。それを嘘にしていないのは、君の力だ。嘘にすることも出来る。ただ、それは愛する人を生かすチャンスがあるのに、愛する人を見捨てるということ。君にそれが出来るのかな。つまりね、私は君の力が借りたいんだよ。君のおかげで少なくとも動くのは多少なり助かっている。それに君は愛する人が永遠に生きれる切符を握っている。君が私を恨むんでくれるおかげで、恋人の永遠を掴み、私は君の力を借りて、私の組織のお仕事をこなしたい。君にも、手伝って欲しい気持ちはあるけど、そこは自由でいいよ。え、そう、助けてくれるんだ。うん、ありがとう。娘のために、私のそばに居るのは賢い判断だと思うよ。私と私の組織はあなた達の悪者。そんな悪者がこの身体を傷一つつけないなんてことは保証してくれないもんね。きっと、君がいてくれれば何でも叶ってしまうんだろうね。頼りにしているよ。未来のお婿さん。私の娘もきっと、君の頑張りを見るのが好きだからね。そして、君の声、君と触れ合う感触全ての感覚を使って、君のそばにいれることを喜んでいる事だろう。あぁ、アイロニー。きっと、君はいつもにぃじゅう・長い愛がないと生きれないモノとなってしまったんだね。可哀想に、同情するよ。君のドロドロに黒く汚してしまった、汚職に染まり、憎み続けることを与え、私たちはそれさえ利用し、正義と戦うんだ。歓迎するよ、親悪なる、私たちを導く新しき英雄ヒーローよ。

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