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舞い降り過ぎた天使たち

作者: 阿形 肇

 町外れにある小高い丘で、流れる雲の形を眺めるのが僕の習慣だった。

 今日も今日とて、寝転がりながら雲を見つめている。

 雲の切れ間から光が差し込む。天使の梯子(はしご)と言うのだと聞いたことがある。

――その時だ。

 天から地上へ延びる光の中に人影を見たのは。

 スカイダイビング? だとしたら、パラシュートも見えなきゃおかしい。人に見えたのは勘違いだったのかもしれない。

 その考えは半分当りで、半分外れていた。

 光の中から舞い降りていたのは、人の姿でありながら背中に翼を携えた存在、言うなれば『天使』だった。

 天使は、僕の姿を見とめると微笑みを浮かべ、柔らかな動作で近づいて来る。

――その時だ。

 再び、雲間から光が地上へと延びると共に、人影が現れたのは。

 人の姿に、背中の翼。天使だ。天使としか言い様のない存在が、僕に向かって舞い降りようとしていた。

 僕は驚いた。一度に二人の天使が舞い降りて来るだなんて。

 しかし、天使たちも驚いていた。

 まさか同時に同じ人物へと舞い降りるだなんて。

 声には出さずとも、見つめ合う天使たちの表情が物語っていた。

 一方の天使が僕を指差すと、もう一方の天使が頷く。

 後から来た天使の目的も僕なのは一目瞭然だ。この場には天使の他に僕しかいないのだから。

 天使が互いに頷き合い、息を合わせて僕のもとへと舞い降りて来る。

――その時だ。

 三度、雲間から光が差し、天使が舞い降りてきたのは。

 その天使は、先の天使二人を目にすると驚いた顔したが、それも一瞬のことで、直ぐにすました顔をし、僕に近づいて来た。

 だが、それを二人の天使が止める。自分たちが先だと言いたいのかもしれない。

――その時だ。

 またもや、光の梯子が下ろされ、天使が舞い降りて来たのは。

 その天使は、先の天使三人と僕を交互に見つめ、戸惑っている。

――その時だ。

 天使が舞い降りて来たのは。

 もう梯子は下ろしっぱなしで良いだろ。

 一度に何回も天使が舞い降りて来るのなら、光の梯子を雲間に仕舞う必要はない。

――その時だ。

 僕の思いが通じたのか、下ろされっぱなしにされていた光の梯子から、当然の如く天使が降りて来たのは。

 誰が管理していのか知らないが、調整できなかったのだろうか。天使が僕のもとへと舞い降りるタイミングを。




――。

 奇跡も過ぎたればなんとやら。

 一人目の天使から受けた感動も何処吹く風。

 既に数えるのも億劫な程の天使が僕のもとへと舞い降りて来ていた。

 空を覆い尽くして余りある天使たちが話し合っている様には、奇跡の摩耗を感じざるを得ない。

 あの話し合いが終われば、大量の天使たちが僕のもとへと雪崩込むのだろうか。

 たとえ順番に並んだとしても、対応する人間は僕一人で……。

 この後訪れるであろう現実から、僕は目を逸らさずにはいられなかった。

 

 

 

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