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004 攻撃魔法訓練

 馬車で西に進みます。道が東と西に向かっていましたが、とりあえず最初に進み始めた西の方角に行ってみます。道の先には、村や町があるでしょう。


 馬車の操縦方法は、行商人の常識としてインプットしてくれていました。ひたすらまっすぐな道を行くだけなら、馬が勝手に進んでくれるので、やることはほとんどありません。きっと自動車の運転よりも簡単でしょう。自動車も自動運転だとこんな感じになるのでしょうか?


 馬車の御者台は2人乗りくらいの幅しかありませんが、現在は僕をはさんでシロとクロも座っているので、かなり密着状態です。さらにクロは僕の胸に抱き付いて眠ってしまいました。シロも僕の腕にしがみついて、頭をこてんと僕の肩に乗せ、まどろんでいるようです。


 この状態では目がさえてしまい、僕もまどろむわけにはいきません。まあ、自動運転状態とは言え、馬車を操縦しているのだから、居眠り運転はだめですね。

 などと考えていたら、わりと寝てしまう人がいるという常識が浮かび上がってきました。居眠りしているうちに分岐の道を間違った方向に馬が進めてしまい、知らない村に到着しちゃったという笑い話も、常識の中にありました。それが切っ掛けで新たな商材を発見し、大商人への道を進むことになったという、立身出世の有名な話もあります。


 この時間を利用して、攻撃魔法の検証をしましょう。先ほどは右手をふるってかまいたちを発動させましたが、現在は左右をシロとクロに固められているので、両手があまり使えません。手を振ることで発動イメージを補助できたと思うのですが、試しに脳内イメージだけでも発動できました。

 かまいたちは敵に気付かれにくい攻撃魔法と言われているようですが、先ほどの大鬼はとっさに顔を両腕でガードしていました。呪文詠唱はしていないけど、右手を振ったのと、その後になんとなく空気がぶれているのが見えて、ガードされちゃったようです。左右の腕を固められた状況でかまいたちの検証が出来たのは、不意打ち方法を発見できたと言うことで、怪我の功名ってやつでしょうか?


 かまいたちの威力や有効範囲についても検証しました。威力を上げるほど、また有効範囲を広げるほど、魔力の消費が大きくなります。かまいたちの刃も、数が少ないほど威力が上がります。複数の敵に先手を打つときには、広い範囲に数多くのかまいたちを放ち、一対一でとどめを刺すときには、大きな一つの刃をイメージして放ちます。魔力最大で一つのかまいたちを放てば、細い木なら幹を切断することが出来ました。最大魔力といっても、魔力は3までしか込められません。風魔法レベルが大きくなれば、もっと魔力を込められるようになるかもしれません。


 鑑定魔法は、レベルに対応する魔力を消費するようです。地図魔法は今のところ消費しないけど、遠くを表示させようとすると消費しそうです。瞬間移動も距離と運ぶ量で変わってくるようで、最初の木陰に自分一人が移動するなら魔力は1消費し、馬車全体を移動させるなら魔力10が必要なようです。


 かまいたちを10発以上放ったのに、魔力はそんなに減った気がしません。鑑定してみると、魔力は150/200でした。先ほど鑑定したときは165/200、その後自分のスキル偽装をした直後は160/200になったはずで、その後のかまいたちの消費が10しか無いのはおかしいです。魔力は安静にしていればゆっくり回復するはずだけど、それにしては早すぎる気がします。もう一度鑑定すると、151/200でした。たまたま1回復していましたが、やはり僕は普通の人よりも魔力の回復が早いのでしょう。


 攻撃魔法は他に水魔法の氷弾と、雷魔法のいかづちを持っていますが、まずはレベルの高い水魔法の方から検証しましょう。


 氷弾の一般常識は、こぶし大の氷の塊を猛スピードでぶつける魔法です。発動にはイメージが大事で、まずは空気中から水を抽出して集め、大きくなったら冷やして凍らせ、ぎゅっと圧縮してから、一気に加速させてぶつける様子を思い浮かべます。その際に、イメージ補助として決まった呪文を唱え、最後に魔法名を言って発動させます。


 呪文は個人によって内容は千差万別であり、慣れてくると早口で唱えたり、他人に何を唱えているかわからないように口の中でブツブツ言うだけだったりします。

 完全に呪文を省略して、魔法名を唱えるだけで発動させれば『詠唱省略』となり、魔法名も唱えなければ『無詠唱』となりますが、出来る人は非常に限られています。

 特に無詠唱は1秒くらいで唱えられ、立て続けて攻撃が可能なので、破壊力は抜群ですが、出来る人は伝説級となるくらいにレアです。

 逆に初心者は魔法発動までに30秒以上掛かる人もいるし、一流と言われる人でも10秒くらい掛かります。


 氷弾の一般常識はインストールされていますので、何も考えずに発動させると、常識的な氷弾が頭に浮かび、実際に発現しました。

 かまいたちと違って、こちらは目ではっきりと視認できますので、避けたり防御されたりが可能です。もっと速い動きをイメージをして、魔力を3にして発現すると、かなりスピードアップしました。手で投げる速さから、テニスの速い打球くらいの感じです。

 でもテニスの打球も反応できる速度です。拳銃くらいの速さになれば、避けるのも難しいでしょう。氷の大きさを小さくすれば、スピードアップ出来るはずです。まさに拳銃の弾をイメージし、瞬間に爆発的な加速度を付けるイメージで、氷弾を放ってみます。


バンッ!


 まさに拳銃の発射音で氷弾が発動しました。同時に、左右の二人もビクッとなって起きてしまいました。


「ごめん、ちょっと魔法の検証をしていたよ。氷弾を改造すると、拳銃くらいのイメージで使えるようになった」


 通常の氷弾から、早い氷弾、そして拳銃のような氷弾を放ってみます。


「さすがマサト様。これは避けることが出来ません。どんな敵も打ち倒すことが出来ますね」


「さすがマサトだニャ。もう無敵だニャ!」


「いや拳銃程度ではヒグマは倒せないんだし、強い魔物には効かないと思うよ」


「そんなこと無いニャ! 無敵だニャ! ヒグマの魔物もどんと来いニャ!!」


 ヒグマの魔物なんているのか、と思ったら、狂い熊ってのがいますね。レベルもかなり高く、一般的な騎士や冒険者だと10人以上で囲わないと勝てません。


「って、まさかニャ! フラグかニャ! こんな浅いところに出るかニャ!!」


 クロはじっと森の奥を見つめています。木々が揺れており、その奥から狂い熊が飛び出てきました。かなりの巨体ですが、猛スピードでこちらに接近します。

 シロはさっと御者台から降りて剣を抜き、馬車をかばう位置に立ちます。クロは弓をつがえて、放とうとしています。

 多分シロのレベルであれば、狂い熊も一対一で倒せるでしょうが、せっかくなので僕も氷弾で立ち向かってみることにします。


 狙いは目です。拳銃の照準を狂い熊の右目に合わせるイメージで右手を伸ばし、氷弾を放ちます。


バンッ!


「ギャウッ!」


 目に命中しました。猛スピードで接近中だった狂い熊も、思わず停止しました。そのままゆっくり倒れて、魔石を残して消滅しちゃいました。


「えっ、氷弾一発で倒したのかニャ? それはすごいニャ! さすがマサトだニャ! 無敵だニャ!!」


 どうやら弱点を打ち抜いたようです。目から脳に入って、即死したのでしょう。多分胴体とか頭に命中したのであれば、ほとんどダメージは与えられなかったと思います。


 シロが魔石を拾ってきてくれました。かなり大きいので、鑑定してみます。


【魔石 狂い熊 レベル45 100%】


 レベル45の狂い熊の魔石です。100%というのは、魔石を燃料としてまだ使用していないって意味です。レベルが高いほど、燃料として高容量&高出力になるので、このレベルだとかなりの値が付きます。たぶん45万エンになるでしょう。

 他に子鬼の魔石もたくさんあるけど、ひとつ数千エン程度。大鬼でもレベル22が8.8万エン、レベル25が10万円ですね。レベルが小さいと出力が弱いので、用途は照明しかありませんが、10を超えると動力源にも使えるので、希少価値も相まってどんどん高くなります。


 この世界の通貨単位はエンです。日本語が世界共通言語のようなので、元ネタは日本円なのでしょう。通貨価値も似たようなものです。月に20万エンほど稼げれば、そこそこの生活が出来るようです。


 今日だけで60万エン以上稼いだので、かなり贅沢が出来ると思いがちですが、魔石は冒険者ギルドなどで現金化する必要があります。今持っている現金は…… なんと収納魔法の中に200万エンも入っていました。行商人の事業資金としては十分な額だと思います。


 その後も道を進み続けながら、氷弾もサイレンサーをイメージして改良すると、小さく『パシュ』という音のみで、拳銃仕様で発現することが可能になりました。


 さらに雷魔法のいかづちも色々検証しましたが、こちらはスピードはもともと光のスピードで速く、範囲や威力は込める魔力次第で、改良の余地がありません。雷魔法のレベルが2しかないので、工夫の余地がないのです。

 射程が2mもないので、接近戦でのスタン効果に期待しましょう。




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