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003 今後の方針

 いつまでも3人固まって抱き合っていても、現状把握が出来ません。興奮が収まってきたシロを引き剥がします。


「ここがどこだかわからないけど、まずはこれからの方針を決めよう」


「はい、ご主人様」


「わかったニャ、パパ!」


「まずは、ご主人様とかパパって呼び名をまずは変えようか」


「でも、ご主人様はご主人様なので……」


「もう僕とシロは、飼い主とペットという関係では無く、えーと、そうだな……」


「そうニャ! クロとシロはパパの、じゃなくてマサトの妻ニャ!」


 横からクロが割り込んできて、僕に抱き付きながら、衝撃的な発言をしました。

 ええっ、二人とも妻! 重婚って犯罪では…… いや、この世界では一夫多妻が可能な国が多いようです。貴族とか大商人は、10人以上の妻がいる人もざらにいます。

 それにしても、いきなり抱き付いてくるクロは、鎧を着ていないので、その、胸の感触が…… 胸はシロの方が大きそうだけど、革の鎧が固くて、って何考えているんだ僕は!


「つ、つ、妻! そんな私ごときがご主人様の妻などと……」


「そんなこと無いニャ! 私たちほどマサトを深く愛している女は、この世にいないニャ! 神様も3人で末永く暮らせと言ってたニャ!」


「神様! そうですね! 神様が与えてくださったこの姿と力は、ご主人様を末永くお守りするための力! つ、妻として、旦那様を支え続ける責務が私にはあります!」


「そのとおりニャ! でも、ご主人様とか旦那様って言うのは固い言い方だニャ」


「でも、なんとお呼びすれば?」


「うーん、えー、ダーリンってのはどうかニャ?」


 僕が煩悩を一所懸命振り払っている間に、勝手にどんどん話が進んでしまっているようです。


「ちょっと待って! 僕らの関係性はまだ新たに始まったばかりなので、いきなり結婚というのは早すぎでしょう!」


「ごしゅ、いや旦那様にはご迷惑はおかけしません。妻としておそばに置いていただけるなら、全力でお支えしますので……」


「ダーリン程の男はこの世にいないニャ。世界一だニャ!」


「そうですね。世界一、いや宇宙一です!」


 2人の高すぎる僕の評価が重すぎです。僕以外の人間の男と言ったら、あまり家にいなかった僕の父さんくらいしか知らない2人です。これから人としていろいろな男性と出会ううちに、もっと惹かれる人が出てきても不思議ではありません。

 それと、宇宙って概念は、この異世界の常識にはありません。元の世界の常識もわかっているのでしょうか?



「いきなり結婚とか言われても僕にはわからないので、まずは行商人のパートナーとして、対等な関係で始めようよ。その、こ、恋人とか夫婦とかは、段階を踏んて……」


「確かに、ダーリンは超いい男だから、私たちを現時点で選んでくれれるかは不明だニャ」


「はい。これから旦那様のお役に立てることを証明して、選んでもらえるように頑張ります!」


「いやいや、僕よりももっといい男はたくさんいるだろうから、人としていろいろな男を見ていくと、考えた変わる可能性も」


「そんな男などこの世にはいません!」


「ダーリンは全次元でナンバーワンの男だニャ!」


 僕以外の選択肢もあるということを言おうとしたら、二人とも興奮して抱き着いてきた。まだ飼い主に対する絶大な信頼ってやつにとらわれているような気がします。


「とりあえず、しばらくは、パートナーとして一緒に行動しましょう。次の段階に進むのは、ゆっくり、徐々に、慎重に考えていこうよ」


「しばらくってどのくらいニャ? 三日くらいかニャ?」


「三日は短すぎ…… えーと、3か月くらいかな?」


「長すぎニャ!」


「で、では2か月?」


「長いです!」


「えー、それでは1か月で」


「わかったニャ」


 なんとか1か月は冷静に考える猶予が与えられたようです。ちなみにこの世界の1か月は30日です。1年は12カ月で360日、それ以外の時間などは地球と同じです。言語も日本語だし、あのおじいさんがこの異世界を創造する際に、地球や日本をベースとした感じです。


「で、呼び名については、ダーリンとか旦那様はちょっとアレなので、普通にマサトと呼んでほしいです」


「確かにダーリンはまだ早いニャ。マサトって呼ぶニャ」


「そんな、呼び捨てなんて…… えと、マサト、様?」


「対等な関係としたいのに、『様』はちょっと……」


「では、マサトさんでよろしいでしょうか?」


「は、はい」


 シロは僕に抱き着きながら、うるんだ眼を上目遣いで聞いている。そんな顔で問われると、緊張して、『はい』と言うしかありません。



「とりあえず、ここにいてもしょうがないので、行商人としての行動を開始しましょう」

「どっちに行くニャ?」


「現状の売り物は何ですか?」


 今どこにいるのかは、地図魔法で分かるかもしれません。しかし唱えてみても、この周辺の地図しか表示されませんでした。自分が行ったことのある場所しか表示されないようで、おじいさんがあらかじめ地図情報をインプットしてくれてはいませんでした。


 瞬間移動魔法も唱えようとしてみましたが、先ほどの地図が表示され、最初に目が覚めた木陰のみが選択肢として現れただけです。目視でも30m向こうに見える場所です。しかも今唱えると、次に使えるのは24時間後のようです。空間魔法のレベルが上がれば、もっと短い間隔で使えそうです。現状では無駄に使うのはもったいないので、もっとピンチになった時のために温存したほうがよいでしょう。


 持っている荷物については、馬車の荷台には、紙の束やペン、インクなどの筆記用具がいくつかと、ワインのボトルが3箱、布や糸が少々、チーズや干し肉、飼い葉、少量のジャガイモやニンジン、水の樽が載っています。主力はワインかな? まだまだ荷台には荷物が載るので、農村で作物を買い、ワインやチーズを売るのが基本でしょう。干し肉以降は、自家消費分ですかね。


 さらに収納魔法の中には、ワインやチーズなどがまだまだ入っています。収納魔法の収納量は、空間魔法レベル分の立方メートルです。僕はレベル3なので、3立方メートルってことです。空間魔法のレベル3って、かなり高いほうです。この世界の最高レベルは5くらいなので、あと2段階しか伸びしろはないかも?

 さらに収納+という魔法もありますが、こちらは一般常識にはないようです。使おうと思うと、その概要がわかりました。収納量は空間魔法レベルの3乗、僕のレベルが3なので、3x3x3で27立方メートルもの体積になります。通常の収納魔法だと最高でも5立方メートルなので、その5倍以上ってことは、かなりのチートだと思います。僕の荷馬車を丸ごと入れても、まだ余るでしょう。



 場所と荷物を二人に説明したところ、まずは僕の空間魔法に驚かれました。やはり収納+魔法は2人の常識にも無く、さらに攻撃魔法も使っており、瞬間移動も使えると言ったら、絶句してしまいました。


「これほどの能力を持っているのは絶対に秘密ニャ」


「ええ、そうですね。国や大商人のスカウトがご主人様にたくさん来て、無理矢理労働契約を結ばされかねません」


 国や大商人の元で働くのも、給料や名誉などは満たされる気がしますが、自由気ままに旅をするという当初の目的が果たせません。


「まずは経験を積んで、うまく立ち回れるようになるまでは、瞬間移動とかは秘密にしようか? それと僕の呼び方はマサトで」


「いろんな国に立ち寄って、いざというときに逃げられるようにした方が良いニャ」


 確かに国とかに目を付けられたときに、他国に瞬間移動で逃げられると安心です。


「ごしゅ、マサトさま、いえ、マサトさんのステータスは空間魔法使いとしては高すぎです。なるべく鑑定されないように工夫が必要だと思います」


 空間魔法の収納や瞬間移動は、ものすごくレアのようです。どちらか一つでも持っていれば、それだけで良い暮らしが出来ます。ましてや両方持っていると、軍人や商人としてもかなり重用されちゃいます。高レベルの鑑定をされると、スキルまで判明します。それで攻撃魔法や無詠唱、治療魔法、鑑定まで使えるとなると、激しいスカウト合戦が発生するのは必至です。


 僕の鑑定レベルは5ですが、一般的に知られている上限は3のようです。無駄に高いと思いましたが、レベル5だと自分のスキルを偽装できるようです。


 鑑定結果は自分だけに見えるようにも出来ますし、みんなにも見えるようにも出来ます。2人にも僕の鑑定結果を見せながら、スキル偽装を行いました。


 元のスキルは


【人 マサト 男 16歳 レベル75 商人】

 体力 60/60

 魔力 165/200

 スキル 体術(剣術4、格闘5)

     無詠唱

 魔法 生活3(時間、着火、清掃、照明)

    水3(水生成、氷弾)

    風3(送風、かまいたち)

    雷2(静電気、いかづち)

    身体強化1

    治療3(治療)

    空間3(収納、収納付与、収納+、瞬間移動、地図)

    鑑定5

    特別(モフり)

 状態 正常



 スキル偽装後は


【人 マサト 男 16歳 レベル41 商人】

 体力 40/40

 魔力 110/150

 スキル 体術(剣術3、格闘3)

 魔法 生活3(時間、着火、清掃、照明)

    水2(水生成、氷弾)

    風2(送風、かまいたち)

    雷1(静電気、いかづち)

    治療1(治療)

    空間3(収納)

    鑑定2

 状態 正常



 さらに鑑定レベルを一般的には上限と考えられている3まで下げると、スキルレベルは見えなくなるようです。


【人 マサト 男 16歳 レベル41 商人】

 体力 40/40

 魔力 110/150

 スキル 体術(剣術、格闘)

 魔法 生活(時間、着火、清掃、照明)

    水(水生成、氷弾)

    風(送風、かまいたち)

    雷(静電気、いかづち)

    治療(治療)

    空間(収納)

    鑑定


 自分のステータスに関しては、役人などから公開を求められることがあるようで、その際はスキルレベルまで表示することが可能です。自分自身を鑑定するには、鑑定のスキルは必要ありません。自分を鑑定し、その結果を他人も見られるようにすれば、最大で鑑定レベル5の内容が表示されるようです。鑑定レベル1に限定することも可能で、そのときは種族 人物名、性別、年齢、レベル、職業までしか表示されません。


 これで当面の方針が決まりました。若くしてレベル41と将来有望な、収納が使える駆け出しの行商人として様々な国をめぐり、商人としての基盤を確立したら、瞬間移動も解禁して、世界を股に掛ける商人となりましょう。



 シロやクロもレベルが60代と、まだ10代半ばと若いのに、超一流レベルになっちゃってますが、他人のスキルは偽装できませんし、鑑定レベル1でレベルはばれますので、そのまま超一流冒険者として振る舞ってもらうことになりました。



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