021 襲撃場所へ
初めてこの世界に来た場所というのは感慨深いものがありますが、今は時間が惜しいので、すぐに出発しましょう。ちなみに狂い熊2匹の襲撃場所は、東街道の森の中の中間地点だったという話なので、ここからさらに東側のはずです。つまり、瞬間移動した15キロメートル分は時間短縮できています。
「さあ、もう出発しよう。早くしないと日が暮れちゃうし」
「そうですね。もう一度、あの木陰でマサト様に膝枕して、御髪を撫でていたいとも思いますが……」
シロが顔を赤くして呟きます。清楚な美少女の一途な姿ってのは良い物です。その愛情が僕なんかに向けられているってのが、ものすごい奇跡です。
「クロももう一度マサトのお腹を枕にお昼寝したいけど、別にこの場所じゃなくてもいいニャ」
クロの思考は相変わらずいい加減です。まあ、気まぐれな猫っぽいと言えば、納得できる気がします。
出発しようとすると、大勢の子鬼が前方からやってきました。昨日も同様に現れたので、ここは子鬼の住処が近いのでしょうか?
シロは腰の魔法袋から剣を取り出しながら御者台から飛び降り、子鬼の集団に向かっていきます。
クロは護衛のために僕の横に残るようですが、同じく魔法袋から弓を取り出して、どんどん矢を放っていきます。
僕も負けじと拳銃魔法やライフル魔法を放ちます。子鬼程度であれば、込める魔力は1で充分なので、数十匹の子鬼などで魔力を枯渇させることはありません。
結局子鬼は28匹も現れ、そのうち12匹は僕が仕留めました。
魔石も多くは僕が拾いました。実際には、収納魔法はレベルに相当する有効範囲があって、僕のレベル3では3メートル先までの物を収納することが出来るため、馬車を通過させながらの魔石回収が可能でした。
念のため、残り魔力を確認しておきましょう。 鑑定(2)!
【人 マサト 男 16歳 レベル82 商人】
体力 72/80
魔力 180/230
魔力の消費は12のはずが、8しか減っていません。やっぱり僕の回復スピードはかなり速い感じです。
ついでに2人の体力や魔力も調べておきましょう。 鑑定(2)! 鑑定(2)!
【犬獣人 シロ 女 15歳 レベル69 冒険者】
体力 299/310 x1.5
魔力 30/30 x1.5
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
体力 202/210 x1.5
魔力 98/100 x1.5
午前中には激しい特訓を2人でして、さらに今も魔物と戦っていたのに、体力がほとんど減っていません。これもバフの効果でしょうか?
「2人とも、レベル2の鑑定魔法で鑑定されると『x1.5』という怪しい記載が鑑定プレートに現れてしまうのは問題だなぁ」
「レベル2の鑑定士ってあまりいないのではないですか?」
「レベル3は非常にレアらしいけど、レベル2はそこそこいるでしょ。あまり目立つことしていると、密かに鑑定される危険性はあるし、やはり特別魔法はめったに使わないで、非常時のみにした方がいいんじゃない?」
「え! そんな……、マサト様に撫でていただけないなんて……」
シロは絶望の表情を浮かべています。撫でられるのがそんなに大事なのでしょうか? まあ、大事に思ってくれていることは理解できます。
「レベル2の鑑定魔法が掛けられそうになったら、事前に察知して良ければ良いニャ」
そこまで言うなら、クロを指さし、詠唱省略で鑑定魔法を放ってみましょう。
「鑑定!」
クロは御者台から飛び降りて、本当に僕の鑑定魔法から逃れちゃいました。馬車を停めて、さらなる追撃態勢に入りましょう。
「鑑定!」
2発目もささっと荷馬車の影に隠れて回避しました。
「当たらなければ、どうということもないニャ!」
そのセリフはどこかで聞いたことがある気がしますが、思い出している暇はありません。僕も御者台から飛び降りて、少し本気を出しましょう!
「鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定! 鑑定!!」
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル63 冒険者】
鑑定魔法はレベル1の公開モードで10回唱えたので、鑑定プレートがクロの移動履歴に沿って10枚現れました。
「認めたくないものだニャ、自分の若さ故の過ちニャ……」
クロは地面に手を突いて、がっくりとうなだれています。orzって形ですね。
今のセリフで思い出しました! あれはガ○ダムの赤い人のセリフですね。僕の父さんがすっごい好きで、幼少期に何度がDVDを見せられました。英才教育だと言ってましたが、あのアニメを見て頭が良くなったりするのでしょうか? あまり興味を引かれなかったので、有名なセリフかもしれませんが、すぐには判りませんでした。
しかし、クロと父さんの接点ってあまりなかったと思います。父さんが家にいるときは、たいてい僕も家にいるので、父さんとクロでガン○ム鑑賞する時間ってとれなかったはずです。
というわけで、再び馬車で走り出した後、クロに聞いてみたところ、
「○ンダムには人生に必要なことのほとんどを教わったニャ。ビデオをでっかいメス、じゃなかった…… えーと……、そうそう! マサトママと一緒に見てたニャ!」
母さんのことを、でっかいメスって…… まあ猫の認識なんてそんなものでしょう。しかし、母さんがガンダ○好きとは知らなかったです。
「マサトママは特にガ○マ様萌えとか言ってたニャ! ガル○様xシ○ーのカップリングがたまらないと叫んでいたニャ! ○ルマ様が先という順番が大事らしいニャ!」
母さんって、もしかして腐女子って人? 今更ながら、そんな情報は知りたくありませんでした……
東に向かう森の中の道は、その後も3回もの子鬼や大鬼の襲撃がありました。これ程の魔物の襲撃があるのは、やはり異常な気がします。狂い熊の影響なのでしょう。
「すごく強い奴が遠くにいるニャ」
馬車に揺られていると、唐突にクロが遠くを見て呟きました。
クロの見ている方向では、遠い空に何か飛んでいます。
「あれは青竜ですね、マサト様」
シロが言うとおり、大きな青い竜が飛んでいるようです。
「青竜と言えば、二つ名の『暴君』が有名ですね」
神獣と言われる竜の中でも、青竜はかなり有名な竜です。非道な行いが目立つ王や貴族、大商人を襲撃した数は断トツに多く、なかには悪いことをしていたのか不明な襲撃例もあるようです。襲撃の原因は青竜のご機嫌を損ねるようなことをしたためではないかという噂もあり、『暴君』と言われる所以にもなっています。
悪い話ばかりではなく、どこかの国では祭りの主役になっているという話もあるようで、慕われている例もあるそうです。
「あれはかなり強いニャ。どれだけ強いのか想像も付かないニャ」
クロは探査魔法が使えるので、ある程度の能力を感じ取れるのかもしれません。しかし、レベル63のクロでさえ想像も付かない強さというのは、さすがに神獣ですね。
「マサト様の鑑定ならおわかりになるのではないでしょか?」
「それはやめておくよ。触らぬ神獣に祟りなしと言われているようだし」
神獣と言われるくらいだから、鑑定されたことを感知できるかもしれません。僕の鑑定レベルは5で、世間的には上限と思われているレベル3よりもはるかに高いですが、わざわざリスクを取りに行く必要はありません。
そして、瞬間移動から1時間くらい走り、とうとう商隊の襲撃跡に辿り着きました。




