表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/285

002 ステータス

 僕の右手を胸に抱き寄せて「ご主人様……」と繰り返し呟いている少女は、白い髪の毛に、白い肌、大きな黒目の美少女で、なんといっても頭に犬のような耳がピンと生えています。年齢は僕と同じくらいに見えます。ちなみに右手は硬い革の鎧に押しつけられているので、ちょっと痛いです……


 僕の胸に抱き付いている少女は、黒髪から猫のような耳が生え、褐色の肌を持ち、華奢な体は僕よりも少し若く見えます。もしもこの少女がクロであれば、その瞳は青と緑のオッドアイだと思うけど、僕の胸に額をグリグリこすりつけているので、確認できません。というか、少しくすぐったいです……


 ふたりを抱き寄せて落ち着かせるなんて事も出来ないし、とりあえず現状把握に努めましょう。


 この異世界の常識らしき物は、習った覚えは無いけど、記憶の中に一通りあるようです。おじいさんが必要な知識はあらかじめインプットしてくれたようです。


 この世界では獣人は普通に生活しており、犬獣人や猫獣人ももちろん存在します。国によっては差別の対象となっていたり、人とは分かれて暮らしている所もあるようですが、平和に共存している国の方が多いので、差別の無い国に転移してくれたはずです。


 行商人として生活していくはずの僕の現状から把握しましょう。鑑定能力を持っていることがわかるので、自分を鑑定してみます。魔法は一般的には長い詠唱が必要とされますが、僕は無詠唱が使えるようです。かなりレアな能力なので、おじいさんはサービスしてくれたようです。鑑定のレベルも高いものを持っているようなので、最高レベルで唱えましょう。


 えーと、頭の中で魔法発動を念じれば良かったはず。では、鑑定(5)!



【人 マサト 男 16歳 レベル75 商人】

 体力 60/60

 魔力 200/200

 スキル 体術(剣術4、格闘5)

     無詠唱

 魔法 生活3(時間、着火、清掃、照明)

    水3(水生成、氷弾)

    風3(送風、かまいたち)

    雷2(静電気、いかづち)

    身体強化1

    治療3(治療)

    空間3(収納、収納付与、収納+、瞬間移動、地図)

    鑑定5

    特別(モフり)

 状態 困惑


 目の前に白いプレートが現れ、僕のステータスが表示されました。


 名前と性別、年齢までは、元の世界と同じステータスです。しかしレベル75というのは、この世界では超一流の範囲です。まだ成長期なので、さらなる上乗せがありえます。あまり目立ちたくはないのですが……

 体力は一般的には少し大きめな程度ですが、魔力はかなり大きめです。体力は成人以降は飛躍的には増えませんが、魔力はある程度までは使うほど増えていきます。200は既に一流の魔法使いと言えます。魔法を唱えると、最低でも魔力1を消費するはずですが、自分を鑑定するだけなら消費しないようです。


 スキルの剣術4はかなり優秀なレベルだし、格闘5は一流レベルです。もともとの運動神経は良くなかったけど、武術の型みたいな物は、インプットされたのか記憶にあり、実行できる自信もいつの間にか備わっています。

 無詠唱は先ほども言及したけど、かなりレアです。一流の冒険者として生きていくことも可能な感じですね。


 魔法は、水、風、雷の攻撃魔法のレベルが2か3で、そこそこ使える程度ではあるけど、3つもあるのはやはりレアです。また、治療、空間、鑑定も非常にレアな魔法が揃っています。空間魔法はほとんどが探査魔法のみ使えるのが一般的ですが、僕は逆に探査魔法が使えず、レアな収納と、さらにレアな瞬間移動、さらにさらにレアな収納付与まで使えます。おまけに収納+というのは、うーん…… これは収納の強化バージョンって感じですね。空間魔法は行商人向けと言うことで、チートてんこ盛りなのも当然と言うことでしょうか。

 最後の特別(モフり)というのは、自動学習された異世界常識の中にも該当項目はありません。後で試してみましょうか。



 次に、僕に熱い視線を向けている犬獣人、たぶんシロと思われる少女を鑑定してみます。


【犬獣人 シロ 女 15歳 レベル68 商人】

 体力 300/300

 魔力 30/30

 スキル 体術(剣術6、槍術6、盾術5、格闘6)

 魔法 生活1(時間、着火、照明)

    火1(火の玉)

    身体強化5

 状態 感激


 やはり元ペットのシロでした。獣人は魔法が苦手な替わりに、身体能力が高いとは言われてますが、高すぎです。体力と体術が超一流レベルです。剣術、槍術、格闘の3つがレベル6です。レベル6は超一流といわれますが、3つもレベル6というのは常識外れな気がします。例えば剣術6というのは、剣の道を究めた一握りが到達できるレベルであって、複数の体術でレベル6を達成できるのは、伝説級の達人くらいでしょう。


 次に僕の胸にしがみついている猫獣人、こちらもほぼクロとみて間違いないですが、鑑定します。


【猫獣人 クロ 女 14歳 レベル62 商人】

 体力 200/100

 魔力 100/100

 スキル 体術(剣術5、弓術5、格闘7)

 魔法 生活1(時間、着火、照明)

    水2(水生成、氷弾)

    身体強化4

    空間1(探査)

 状態 興奮


 こちらもやはりクロでした。身体能力はシロほどではないですが、やはり超一流レベルです。特に体術レベル7は達人級です。魔法もシロよりは得意なようです。



 日差しがチラチラと覗く木陰で、いつまでも呆然と座っているわけにはいきません。色々と確認する必要があるため、まずはシロに声を掛けようとしたところ、


「敵が接近しているニャ!」


 クロが立ち上がり、森の中を見つめます。僕らがいるのは森の中を通る道沿いで、大きな木の木陰です。近くには僕の行商用に用意された馬車と馬が停まっています。

 シロも立ち上がり、腰に佩いてた剣を抜き、森に近づいていきます。クロはいつの間にか弓をつがえていました。


「ご主人様は、後ろでお待ちください」


 シロが森の中に駆け出すと同時に、森の中から子鬼が飛び出してきました。元の世界のファンタジーではゴブリンと呼ばれていた魔物のようですが、学習した知識では子鬼です。


 子鬼は10匹くらい出てきましたが、シロによって一瞬で7匹は切り倒され、残り3匹もクロが射止めました。さすがに超一流の体術です。

 倒された魔物は魔石を残して消えます。シロがその魔石を拾いながら戻ってきます。クロはまだ森の中を監視しているようで、耳がピンと立っています。

 魔石は様々な魔導具の燃料として使います。多くの冒険者は、魔物を狩って魔石を集め、売却することで生計を得ています。


 近づいてきたシロに生活魔法の清掃を掛けます。清掃魔法は物や部屋の他、人体や服にも有効です。返り血はもちろん、汗などの老廃物も綺麗にするので、この魔法が使えると宿屋などでも重用されます。


「ご主人様、ありがとうございます」

「いや、僕の方こそ、守ってくれてありがとう。それよりも、ご主人様という呼び方を……」

「パパ! 大物が来るニャ! 馬車に乗って避難しているニャ!」


 森の中を見ていたクロが叫ぶ。森の方をみると、確かに大きな魔物が接近しているのが見えた。先ほどの子鬼は身長1m程度の大きさだったが、接近中の魔物は2m以上ありそうです。そうだ鑑定してみよう。



【大鬼 レベル23】


 名前とレベルしか表示されませんでした。先ほどよりも情報量が少ないのは、そういえば鑑定レベルは5なので、鑑定魔法もレベル5を意識する必要がありました。魔物接近で焦っていたようです。しかし、再鑑定する余裕はないので、馬車に乗ってここから離れることにしましょう。


「……火の玉!」


 シロは森のそばで立ち止まり、攻撃魔法を大鬼に放ったようです。しかし、あまり効いている感じはしません。大鬼は森の奥からはめったに出ない大物です。普通の冒険者だと数人掛かりで挑む必要がある強さです。

 馬車がやられたら行商人としての商売が成り立ちませんので、後ろはシロやクロに任せてとりあえず避難しましょう。シロやクロは一流冒険者レベルの実力があることは鑑定で確認済みです。たとえ大鬼と一対一でも苦戦するはずがありません。


 木に繋がれていた馬を急いで馬車に繋ぎ直し、大鬼と反対方向の道へ逃げようとすると、なんとその方向からも大鬼が現れました。

 かなりびっくりしたけど、馬はぜんぜん動揺していません。馬って臆病だという知識が、元世界でもこの異世界でも常識としてありましたが、特別に図太い馬なのでしょうか?


「パパ! 今すぐ行くニャ!」


 後ろでクロの声が聞こえるけど、僕だって攻撃魔法は色々使えます。魔物への恐怖は、さっきの子鬼の集団襲撃でだいぶ慣れたし、大鬼といえど一匹ならなんとかなるはずです。馬車の横に立ち、大鬼を見つめます。


 攻撃魔法として、かまいたちを放ってみました。右手をさっとふるって、魔法発動をイメージします。ゆっくり歩いて接近してくる大鬼の顔を狙ったけど、腕を顔の前でクロスして防御されました。腕から血が出ているけど、致命傷には遠く及びません。


 風魔法のレベルが3だったことを思い出し、かまいたちもレベル3を意識して放ってみます。すると、先ほどと同じように顔面は腕で防御されましたが、傷が深く付いているようです。

 防御態勢にいる間は大鬼が立ち止まることを良いことに、かまいたち(3)を連続して顔面に放ちます。そういえば、普通は魔法ってこんな連続では放てなかったはず。まあ、放てるのだから、かまわず魔法を打ちまくりましょう!


「ギャヒー!!」


 大鬼にかまいたちを何発も打っていると、そのうちの1発が頸動脈を切ったようで、首から血を盛大に吹き出して倒れ、消え去りました。


「さすがパパだニャ」


 大鬼を倒したとほぼ同時にクロがやってきました。笑ってはいるけど、呼吸は激しく、かなり心配を掛けたようです。


「そういえばシロはどうなってる?」


 後ろを振り向くと、ちょうどシロが高くジャンプし、大鬼の首を切り落とすところでした。シロは大鬼が残した魔石を拾ってから、こちらに走ってきます。返り血でまた赤く染まっています。そういえば、魔物本体は魔石のみを残して消えるのに、血が消えないのは何故でしょう?


 走ってくるシロに清掃魔法を掛けると、そのまま僕の方に止らず突っ込んできて、抱きしめられました。身長は僕の方が高いので、首に少しぶら下がる感じです。首に熱い吐息が掛かって、なんだかドキッとします。


「ご主人様、ご無事で何よりです! ご主人様の方にも大鬼が現れたのを知り、焦ってしまい、少し手こずってしまいました……」


「ぼ、僕も攻撃魔法は使えるので、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」


「ママは心配しすぎだニャ。パパはものすごく強いので、大鬼一匹程度に後れを取ることはないニャ」


 僕が倒した大鬼の魔石を、いつの間にか拾ってきたクロが、シロの背後から抱き付いています。僕とクロとでシロをはさんだ感じになってます。



 とりあえず、この3人で異世界を行商で回るには十分な戦力がありそうです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ